機動戦艦ナデシコ
古代の涙
第二話 新しい出会い
西暦2196年
この時代、突如木星から現れた木星蜥蜴と呼ばれる無人兵器により人類は大きな被害を被っていた。
一番被害を受けたのは火星だった。
いきなり現れた木星蜥蜴により木星在中の軍は浮き足だって態勢を建てる事ができなかった。
結果的に軍は火星を放棄、防衛線を月まで交代させた。
しかし、木星蜥蜴の猛威は月の防衛線を破り、地球にまでその進入を許してしまっていた。
そして……。
「……………ここは?」
テンカワ・アキトは緑の草原に倒れていた。
「ここは……地球か?」
疑問に思いながら今の状況を確認をしようとした。
「星が見えると言う事は地球か火星って所か……だがこの草の臭いは…って臭い!?」
行きよいよく起きあがり顔に在るはずのバイザーに手を持っていくが……。
「バイザーが無い!それなのに物が見えると言うことは五感が戻っているのか……。」
自分の身体になにが起こったのか確認しようと起きあがろうとした所、左手に何か地面と違う感触があるのに気が付いた。
「なんだ、これは?」
急いで左側を見てみると……。
「なっ!!」
そのまま固まってしまった。
そこには……一人の女性が倒れていてその手はその女性の胸の上にあった
アキトは女性の胸に手を乗せて固まったままでいた。
暫くすると女性が目を覚ました。
「う、うぅ〜ん…………あっ」
女性は目を覚まし自分の胸に他の人の手が乗っている事に気が付いて顔が真っ赤になった。
「あっ、あの……そっ、その……。」
女性が声をだした所でアキトが起動した。
「あっ、ご、ごめん!!」
急いで手を離すがどちらとも顔が真っ赤になってしまっている。
「………………………………。」
「………………………………。」
二人の間に気まずい沈黙が流れた。
「……あ、あの……。」
そんな沈黙を破ったのは女性の方だった。
「な、なにかな……。」
「あ、あなたは一体誰ですか?」
「あ、ああ俺の名はテンカワ・アキトだ。」
「テンカワ・アキトさんですか……。」
女性は相手の名前を聞けて少し安心したようだった。
「それで君の名前は?」
この場に慣れたのかいつもの調子に戻ったアキトが相手の名前を聞いた。
「あ、はい。ええっと…………あ、あれ?」
女性は自分の名前を言おうとして詰まった。
「?どうしたんだ。」
「ええっと…………名前がわかりません。」
「は?」
アキトは女性の言ったことに反応できなかった。
「だからその……自分の名前がわからないんです。」
「………………………………………。」
アキト、再び固まる。
「あ、あの……テンカワさん?」
「……あ、悪い。
しかし本当にわからないのか?」
アキトが再び起動して確認した。
「はい……。」
「じゃあ、自分の昔のことは。」
「…………ダメです、わかりません。」
不安げに首を横に振る。
「あ、あの私これからどうすれば……。」
「そうだな、まずは何か自分を証明できる物を持ってないか調べてくれ。」
「はい。」
それから直ぐ……。
「あの、持ち物なんてなにも無いみたいなんですが……。」
彼女が着ているのは淡い藍色のワンピースで、ポケットなど何処にも無かった。
「そうか……困ったな。」
暫く考え、辺りを見回すが近くには何もなく少し行った所に町並みが見えた。
「取りあえずここでこうしててもしょうがないから、とにかく町まで行こう。」
「はい。」
アキトたちが歩いていくと段々町の風景がわかるようになってきた。
(ここは……俺がナデシコに乗る前に働いていた所の近くじゃないか!)
懐かしい想いを感じながらアキトたちが向かった先は交番だった。
「あの……何で交番なんですか?」
「それは君の事がわかるかも知れないからだよ。」
今の時代では交番でDNAの照合が出来るようになっている。
それと言うのも、家出や行方不明などのために必要不可欠だからである。
「すいません。」
アキトが交番に入ると五十代位の人の良さそうな人がいた。
「どうしたんですか?」
「あの……彼女の事についてなんですが。」
警察官が驚いた表情でアキトたちを迎えた。
「今時こんな時間に出歩くとは、早く入りなさい。」
アキト達は進められるままに中に入った。
「あの、今時ってどう言うことですか?」
「何を言ってるんだ、今は戦争中だから夜なんかに出歩く人は滅多にいないんだよ。」
「は?戦争中?」
惚けた声で聞き返すアキト。
「?そんなこと子供でも知っているぞ。火星が襲撃された確か今月で……。」
そう言いながらカレンダーの方を見た。
「そうそう、今月で丁度一年になるんだな。」
しかしアキトはそんなことは聞いてはいなかった。
アキトはカレンダーに書いてある西暦を見て大声をあげた。
そこには『2196年』と書かれていたのだった。
「あの、大丈夫ですか……。」
「ああ…………。」
アキトたちは交番を出て当てもなく歩いていた。
交番で彼女のDNAを調べた所、該当する人はいなかったのである。
まぁDNAデータ自体戦争のせいで無くなっている人が少しばかり存在するのでこれと言って騒がれる事はなかった。
しかし……。
(あの時、ジャンプ装置が暴走したせいでこの時代に飛ばされたというのは何とか理解したが、何故俺はあんな所で寝ていたんだ?身体は今の時代の頃の体つきと言う事は精神か記憶がジャンプしたんだろうが、それなら俺はサイゾウさんの食堂で働いていたはずだ。)
アキトは自分の身に起こった事を考えていた。
(それにジャンプの間際に聞こえたあの声、いったい誰なんだ?……そう言えばルリちゃんとラピスは!!)
いそいでラピスにリンクでコンタクトをしてみるが何の返事もなかった。
(ラピス!ラピス!!……ダメだ、リンクが切れているのか……いったいこれからどうすればいいんだ。)
「あの…………。」
「ん?なに?」
考え事をしていると隣を歩く彼女が恐る恐る声を上げた。
「私、これからどうしたら良いんでしょう……。」
「そうだな……取りあえずは……ええ〜っと、名前を決めよう。」
「名前、ですか?。」
「そう、何時までも名前がないと何て呼んだら良いか困るしね。」
アキトは改めて彼女の容姿を見た。
髪は腰近くまである濃い紫で、目は珍しく髪の色より少し薄い紫色と透き通った常磐(ときわ)色とのオッドアイ、顔はあのナデシコの中でも上位に入る位、となかなかの美人。
「う〜〜〜〜ん…………紫翠って言うのはどうかな?」
「紫翠……ですか?」
「そう、ほら君の目って紫と緑だろ、だからどうかなって思って……もしかしてイヤだった?」
「い、いえ!とんでもない!折角考えて貰った名前ですからそんなことは無いです!」
首を大きく横に振り否定する。
「そっか、よかった気に入ってもらって。」
「はい、大切にしますね。」
紫翠の笑顔につられて笑顔になるアキト。
しかしそんな二人とギリギリの所をを一台の車が通り過ぎていった。
「きゃ!」
「だ、大丈夫!?」
「は、はい何とか。」
心配の言葉をかけるアキトだが、その目線は通り過ぎた車の方に向かっていた。
(あの車はユリカの!と言うことはまさか……。)
アキトが思った通り歴史は繰り返される。
アキトの頭の中と全く同じ事が……。
「くっ!」
車のトランクから落ちて飛んできたスーツケースを何とか受け止めた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あぁ、なんとかね。」
そう言いながらも心の中では色々な感情が蠢いていた。
その全てを無理矢理押さえ込み、今から出会うであろうその時を待った。
過去の出会いであり、今また新しき出会いである、その時を……。
そして……再び出会った。
「済みません!!済みません!!……怪我とか、ありませんでしたか?」
続く
あとがき
どうも、瑞白です。
第二話読んでいただいてありがとうございます。
いや〜それにしてもSSって難しいですね。
自分が書いててなんか落ち込んでしまいましたから(汗)
やっぱり一人称の方が書きやすいかな?どちらにしろこんな風に書いていかないと自分が混乱するから変えられないけど(涙)
あと前回、ちょっとは長くはなると言いましたが……ホントにちょっとでした(激爆)
自分の才能の無さにはつくづく悩まされます。
と、言うわけで申し訳ありません。
次回こそは長くなると思いますので長い目で見てやってください(見てくれている人がいるのかな……(汗))
ではでは。
代理人の感想
オッドアイ?
あ、左右の瞳の色が違うアレのことですか。
某「世界の相」とか黒髪の女性不信提督とか、オッドアイのキャラって
性格に問題のある人が多いような気がするんですが彼女はどうなんでしょ(笑)。
・・・・ちなみに「常磐色」ってどゆ色(苦笑)?