ねぇ、憶えている?

貴方と私が初めて出会った時のことを。

私達は本当はもっとずっと昔にあっていたことを。

貴方に出会うまで忘れていた記憶。

ううん、違う。

私は貴方と出会ってから思い出した。

あの日々を。

楽しかった毎日。

一緒に怒られたあの日。

私達がまだ何も知らないあの頃に。

全てがもう心の中にしかないあの場所で。

――――火星で出会ってたんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

夢視ぬ星々の創世曲

 

SESSION 3 今、旅立つ

 

 

 

 

 

 

続的に続く揺れの中、俺は格納庫へと走っている。

目的はただ一つ、敵を倒すため。

とにかく今の俺はこのやり場のない怒りを早く発散したかった。

しかし……俺が名前も知らない人様の事を考えるとはな。

今まではそんな事を考えなかったのにな。

……いや、今はそんな事考えるより怒りを発散させた方がスッキリするな。

警報が鳴り始めて1分位で俺は格納庫についた。

そこでは既にカザマが自分のエステに乗り込んで発進準備をしていた。

「早いな」

「まぁね、それよりも早く発進準備を!」

「わかった」

俺はカザマと短い会話を交わして自分のエステに乗り込んだ。

色の方は時間が無かったのか俺が指定した色ではなかったが。

「おい、発進許可はまだでてないのか?」

俺はカザマに先にエステの発進準備を済ませているのに発進しない理由を聞いた。

『うん、なんかブリッジとの連絡が付かないから確認ができないの』

「わかった、こちらでも確認してみる」

俺はブリッジに通信を入れてみるがやはり繋がらない。

「こちらも繋がらないみたい……ん?繋がったか?」

カザマに繋がらないと言おうとした時、急に通信が繋がった。

そこでは……なんというか、変な会話が飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょっと!オペレーターがいないなんてどう言うことなの!!』

ブリッジらしき所でキノコみたいな奴が金切り声を上げている所だ。

……こいつは典型的な馬鹿だな、絶対に。

『そう言われましても……オペレーターであるホシノさんはただいま医務室で寝ておりまして』

対してその馬鹿にハンカチで汗を拭きながら答えているのが確かプロスペクターと名乗っていた奴だ。

こんな馬鹿によくつき合っているな。

『だから何でよ!!』

『私も詳しいことはわからないのですが……なんでも通路で倒れていたらしいのです』

『だったら叩き起こしてきなさいよ!!

 このままだとやられちゃうでしょうが!!』

こいつは……とことん自分の事しか考えていない奴か。

救いようのない奴だな。

『それって酷いです!

 ルリちゃんはまだ子供なんですよ!!』

キノコ馬鹿の言葉に俺と同じぐらいの歳の女が反対している

『そうよねぇ、流石に倒れた子を無理矢理起こすのはちょっとねぇ』

そいつの意見に賛成しする奴がいる。

こっちは俺より少し年上の女だった。

『キ〜〜〜〜!!

 だったらどうするって言うのよ!!」』

やたら鬱陶しい声を上げて叫ぶな、迷惑だろうが。

だが、そいつの言うとおりだ。

船が動けないのなら動かなくてすむ方法を考えるしかない。

それは…………

『艦長は何か意見はないかね』

いきなり話に入り込んで艦長に意見を求める奴がいた。

そうか……そんな所にいたのか。

まぁお前の立場を考えるとそこがお似合いだろうがな。

――――なぁ、フクベ・ジン。

お前には色々と用件があるんだ。

お前が、火星であんな事をしなければ……あいつらは死ななかったんだ。

その落とし前はきっちり付けてもらうぞ!

『ナデシコが動かないのならばエステバリスで応戦し、その間に軍に救援を頼みます』

フクベに艦長と呼ばれた女はその問いに即座に答えた。

今の状況からするとそんなところだろうな。

『そこで俺の出番と言うわけだな!

絶体絶命の危機に現れ敵をやっつける、く〜〜!!燃える展開だぜ!!』

な、なんなんだこいつは?

嫌に熱血している奴だな。

『おたく、足折れてるよ』

『し、しまった〜〜〜〜〜〜〜〜!!」』

……ここにも馬鹿がいたか。

『スグに他のパイロットの人と連絡をとって下さい!』

「その必要はない」

俺は繋がっている通信から声を上げた。

『誰だ!名前と所属を述べよ!』

フクベか、本当は貴様の言う事なんか聞きたくはないが今は時間が惜しい、ここは我慢してやるか。

「テンカワ・アキト、パイロットだ。

 話は全て聞いていた、これから敵の迎撃に出る、発進許可を願う。」

『同じくパイロットのイツキ・カザマ、発進許可を願います』

カザマも会話を聞いていたのか通信を開いてきた。

『艦長いいかな?……艦長?』

フクベは艦長に許可を求めるがその艦長は、何というか、ボーっとしている。

大丈夫かこんな奴が艦長で?

『……私から発進許可を出そう』

フクベが艦長の替わりに発進許可を出した。

一応は提督だからな、命令権はあるだろう。

「わかった」

『わかりました』

そうして通信を切ろうとした時。

『あ〜〜〜〜!!アキ……ピッ』

「……何だったんだ、今のは?」

艦長が大声を上げて俺の名前を言おうとしたみたいだが俺はそのまま通信を切ってしまった。

『さぁ?何だったのかな』

俺の独り言にカザマが答えてきた。

「まぁそんな事よりさっさと上に行くとするか」

そうして俺達は搬送エレベーターに乗り上に上がり始めた時通信が入ってきた。

「なんだこんどは?」

俺は通信機のスイッチを入れた。

『む〜〜〜〜〜!!アキトったら酷いよ!!

 いきなり通信を切っちゃうんだから!!』

通信を開くと同時にさっき大声を上げていた艦長がアップで出てきた。

『なんなんだ一体?』

やけに馴れ馴れしく話しかけてくる奴だな。

一般教養が足りないんじゃ無いのか。

『何言ってるの、ユリカだよ!!

 ほら、火星でお隣同士だった!!』

火星?

……………………

…………

……

「あっ、そう言えば確かにいたな、そんな奴が」

何故かしつこく俺についてくる奴がいたな。

あの時鬱陶しくてしょうがなかったのを憶えている。

『そうだよ!!うわぁ〜〜〜懐かしいなぁ。

 でアキトはどうしてそんなところにいるの?』

「どうして、ってあのなぁ……」

こいつは人の話を聞いていなかったのか。

『まって!言わなくたってわかるよ。

 アキトは自分の身を危険にさらしてでもユリカを助けてくれようとしているんでしょう』

「は?」

何を言ってるんだこいつは?

『アキトにそんな危険な事をさせたくないけど、そんなアキトの気持ちを無駄にするわけにはいかないもの。

 アキト、ユリカとナデシコの命貴方に預けます』

「…………………………」

……なんか戦う前に疲れた。

こんな奴が艦長だと思うとこの先思いやられる。

頭のネジが5、6本抜けてないかこいつ?

『私もいるんですけど……』

カザマが引きつった笑みを浮かべている。

多分俺と同じ事を考えているんだろう。

そう言えばあいつカザマのこと忘れてないか?

俺達がそろって同じ事を考えていると丁度エレベーターが地上に出た。

そこは辺り一面バッタとジョロの海だった。

俺は……またここに立っている。

戦場という舞台の上に。

舞台の上に立つからにはミスはしない。

もう二度とあんなのを見たくはない。

俺は通信から聞こえる声も聞こえなくなっていた。

全てはこの戦いに全神経を集中させる。

――――さぁ、始めようか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、鬱陶しい!」

俺は今日何回目かの愚痴をこぼしながらジョロに向けてライフルを撃つ。

敵自体は雑魚だがそれも数による。

今俺が落とした数は大体30機程度だが敵はまだ100機以上はいる。

『これじゃあキリがないわ』

カザマの方も愚痴をこぼしながら敵を倒している。

このままだと少しヤバイな。

そんな事を考えていると通信が入ってきた。

『テンカワさん、イツキさん、そのまま海の方へ進んでください』

通信に出たのは通信士らしき女だった。

「どうしてだ?

 このエステは陸戦型で海では戦えないんだぞ」

俺がそう言うとその通信士は何故か涙目になりながら頼んできた。

『お願いします、何も聞かずにそのまま来て下さいぃ〜』

「わ、わかった」

切羽詰まった表情で言われたので仕方なく了解した。

『どう言うことなんでしょう?』

カザマが不思議そうに首を傾けている。

「それは行ってみればわかるだろう」

そう言い俺はエステの進路を海に向けた。

途中何体か邪魔をしてきたバッタを始末しながら俺達は海を目指した。

『ここまで来たけど何もないよ』

周りを見渡しながらカザマが呟く。

「ああ、そうだな。

 後ろはそうでもないがな」

俺達が来た道をバッタやジョロが大量に押しかけてくる。

「一体どうする気だ?」

そう呟くと意外にも答えが返ってきた。

……意外すぎる所からだが。

『はーはっはっはっはっは!!

 これだよこれ!!

 味方のピンチに駆けつけそして一気に殲滅!!

 く〜〜〜〜、燃えるぜ!!!』

目の前に熱血している男が出た。

確かこいつは……足を折っていた馬鹿だったな。

「おい、おまえ足を折っていたんじゃなかったのか?」

『ふっふっふっふっふ、甘いな、俺はそんな事でくたばるような奴じゃない!!』

いや、確かに足の骨を折った位じゃあ死にはしないが、っと言うか会話が成り立ってないぞ。

『なんか……頭が痛くなってきました』

今日はよく意見が合うな、俺もだ。

『見よ!!この移動要塞ビッグゲキガンガーZを!!!』

馬鹿が何かを言い終わると同時に海から何かが出てきた。

『な、ナデシコ!』

そう、海から出てきたのは紛れもなくさっきまで俺達が乗っていた船だった。

っておい、確かオペレーターが倒れて船は動かせなかったんじゃないのか!

……まさか。

「おい、そこの馬鹿」

『違う!!俺の名前はダイゴウジ・ガイだ」』

「そんな事はどうでもいい、その船を動かしているのはお前か?」

『おお、そうとも!!』

こいつは……確かにパイロットならIFSを持っているがそのIFSじゃあ普通は動かせないはずだが……

「おい、通信士」

『は、はい!』

「もしかしてこいつ無理矢理動かしてないか?」

『そ、そうなんです!

 今でも船が揺れているんですよぉ〜!』

もう泣く一歩手前の状態で通信士は答える。

そりゃあそんな状態だと泣きたくもなる。

何時落ちるかわかったもんじゃないからな。

『さぁ、食らえ木星蜥蜴ども!!

 必殺!!ビックガンガービーーーム!!!』

その本人は自分の世界に旅立っているようだ。

その後、ナデシコの主砲が発射され俺達の後ろに群がっていたバッタ達は全て全滅した。

『凄い……』

カザマが主砲の威力に驚いているようだが、この船は最新鋭の戦艦だからこれぐらいのことは出来てもらわないとな。

『……正式名称はグラビティブラストなんですが……』

その馬鹿の後ろではプロスがなにやら言っているがそんな事はこいつは聞いちゃいないぞ。

『よっしゃぁ〜〜〜〜〜〜!!』

『やっつけちゃったぁ……』

『う、嘘よ!!こんなのデタラメよ!!』

『よ、よかったぁ〜〜〜〜』

『…………………………』

それぞれが色々と叫んでいるがそんな事知った事じゃない。

『やっぱりアキトは私の王子様だね!!』

俺は…………

『どうしたのアキト?

 あっ、わかった、アキト照れてるんだ。

 やっぱりアキトは昔と変わらないね!!』

「……ちょっとお前は黙ってろ……」

『もう、アキトったら照れちゃって!』

俺はこのナデシコに乗って一日もたたずに降りたくなった。

この船にはまともな奴がほとんどいないのか?

何で俺がこんな目にあっているんだ!

それもこれもあの髭爺が俺にこんな仕事を押しつけるからだ!

あの髭爺!帰ったら憶えていろよ!!

『……大変だね、アキト』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『社長、例の船は色々とトラブルはありましたが無事に出航いたしました』

「そうか……」

儂は会社の中の自分の部屋でその連絡を受けた。

「ご苦労だった」

「いえ……なぁ、ゴウジ」

儂は通信を切ろうとしたら時、向こうが儂に話しかけてきた。

「仕事の最中は社長と呼べと言っているじゃろうが」

「俺の仕事はもう終わったんでな」

そいつは儂の言葉に笑いながら返してきた。

「そうじゃったな……で、何のようだ、アザマ」

「本当にこれで良かったのか?」

「なにがじゃ?」

儂はアザマの質問に質問で返した。

こいつと話すと自然にこんな風に話してしまうから不思議じゃ。

「アキトのことだよ。

 本当は行かせたくはなかったんだろ」

「…………………………」

儂は正直驚いた。

アザマがそんな事を言ってくるとは思わんかった。

「あいつは本当は優しい奴だ。

 態度ではそうはわからないがきっとお前に感謝している」

何故こいつはそんなに人の心を読めるのじゃろうか。

「だから……無事に帰ってくるさ」

そう言ってアザマは通信を切った。

儂は溜めていた息を吐きながら背もたれに倒れた。

確かに……儂はアキトを行かせたくはなかった。

アキトは儂にとっては孫みたいな存在じゃ。

いや、儂にとっては孫同然じゃ。

一年前のあの時から……

だからアキトよ。

儂が苦労してまで手に入れた今いるその場所を無駄にするんじゃないぞ。

そこにいればお前の過去に決着をつけれるじゃろう。

そして、無事に帰ってきてくれ。

儂が言えるのはそれだけじゃ。

『願わくば……お前の苦しみが癒されんことを――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

はい!215万HITおめでとう御座います。

はぁ〜、何だかアッという間にカウンタが回るな(汗)

それはさておき、お読みいただいてありがとう御座います。

えっ?今回のお話?

………………………………いや〜カウンタの回りが速いですね〜(核爆)

では次回をお楽しみに!!(逃げ)

 

 

 

代理人による次回予告(うそっぱち)

 

副提督ムネタケはキョアック星人の手先、キノコ男だった!

無敵のビッグゲキガンガーZも内部からの攻撃には抗すべくもない。

あえなく囚われの身になるクルー達。

最後の希望は艦長・ミスマルユリカの奇策と、オペレーター・ガイの熱血!

そして炸裂するのは漢の浪漫砲!

 

次回『移動要塞ビッグゲキガンガーZ』

「ストップ・ザ・キノコ軍団」をみんなで見よう!

 

 

 

 

 

・・・・・いやその・・・つい(汗)。

まさかガイに動かさせるとはねぇ。