夢を見ている。
あの頃の夢。
私がまだ感情という物を表に出すことを知らなかったあの頃の夢。
私が私になれた時間。
その一分一秒が今の私を作り上げた。
そして……
私が一番思い出に残っている場所。
――――今、私はそこにいる。
夢視ぬ星々の創世曲
SESSION 4 小休憩
「カザマ、中に入れてくれ!」
俺は今カザマの部屋の前に来ている。
今まで走っていたので肩で息をしながらだが……
「ど、どうしたの、アキト?」
カザマが出てくるなり俺を見て驚いている。
だが今の俺にはそんな事より早く中に入りたかった。
「すまん!今は何も聞かずに中に入れてくれ!」
俺は半ば無理矢理部屋の中に入り込んだ。
「ちょ、ちょっとアキト!」
カザマの抗議する声が聞こえるが今はそれどころではない。
「もう、一体どうしたの?」
「この部屋に俺を探しに来た奴がいても知らないと言ってくれ」
カザマは意味が分からないと言った顔で俺に問いかけて来る。
と、そこへ部屋のチャイムが鳴った。
「頼む、カザマ」
俺が頼み込むとカザマは納得はしてないようだがなんとか出てくれた。
「はい、どちら様でしょうか?」
「あっ、イツキちゃん、私ユリカなんだけどちょっと良いかな」
こちらからは見えないが多分カザマは驚いているだろう。
「艦長ですか、どうしたんですか?」
「あのね、アキト来なかった?」
「テンカワさんですか?いえ、知りませんが」
「そう?おっかしいな、こっちの方に来たと思ったんだけどなぁ。
もう、アキトったら恥ずかしがり屋さんなんだから。
アキト〜〜〜〜〜!!どこいったの〜〜〜〜〜〜!!」
声が少しずつ遠ざかっていく。
そしてドアが閉まる音がしてカザマが戻ってきた。
「……で、どういう訳なんですか?」
心なしか表情が不機嫌に思える。
「いや、ただあいつがしつこく俺に付きまとうんだよ」
あいつは先の戦闘から帰って来てからずっと俺に付きまとってくる。
何度もついてくるなと言っても聞きもしない。
やっぱり頭のネジ数十本抜けてないか?
って言うかあいつ艦長の仕事はどうしたんだ?
…………まぁ別に俺が知った事じゃないか。
俺は素直に話したがカザマはまだ納得していないようだ。
「それにしたってあの妄想は凄すぎますよ。
一体昔に何があったんですか?」
もう勘弁してくれ……
俺がカザマにユリカとの事を色々と突っ込まれている時、コミュニケの通信が入ってきた。
「なんだろう?」
「さぁな、見ればわかるだろう」
俺達は通信に目を向けた。
そこはブリッジでこの船の主要人物が全員そろっていた。
「今までこのナデシコの目的を発表するのを避けていたのは妨害者を防ぐためでした。
以後我々はスキャパレリプロジェクトの一端を担い、軍とは別行動を取ります。
ナデシコは火星に向かいます!」
プロスがそこまで一気に言い切った。
そうか、だからあの髭爺は俺をこの船に乗せようとしたのか。
くだらない事をしやがって……
やはり帰ったら一発殴った方がいいな。
俺がそんな事を考えている横ではカザマが驚いている。
無理も無いだろう、いくら最新鋭戦艦だろうがこの船一隻で火星に行こうと言うのだからな。
それにこの船が火星に行くと今の地球の状態からして喜ばしくないからな。
この船は木星蜥蜴達と互角以上に渡り合える貴重な船だからな。
元軍人のカザマにはなかなか割り切れないだろうな。
「では今地球が抱えている侵略は見過ごすというのですか!?」
誰だ、こいつは?
ブリッジにいるからには一応何かの役割があるのだろうが……
まぁ、そんな奴のことは関係ないか。
「連合軍は木星蜥蜴の来襲以来地球にのみ防衛線を引きました。
では残された火星の人たちやその資源はどうなったのでしょうか?
答えはわかりませんが行ってみる価値は……」
ピッ!
「無いわね」
プロスの言葉を遮るようにウィンドウが開きあのキノコ馬鹿が現れた。
その後、ブリッジに銃を持った軍人が現れブリッジクルー達にその銃身を構えた。
なに考えているんだ、こいつは?
「血迷ったか!ムネタケ!」
「提督、この艦は頂くわ」
フクベの言葉にも動じず小馬鹿にした風にキノコ馬鹿は答える。
「はて、困りましたな。
貴方の行動は完全な契約違反ですが」
「勘違いしないで……ほら、来たわよ」
キノコ馬鹿がそう言うと連合軍の船が海から浮上してきた。
なるほど、ちゃんと考えていたと言うことか。
そしてその船からの通信が入ってきた。
そこにはいかにも軍人としての鏡みたいな奴が出てきた。
「ユーリーカーーーーーー!!!」
「お父様!!!」
……軍の奴はこんなのばっかか?
なんか嫌だぞこんなの。
隣ではカザマが呆然としている。
驚きの連続の後あの声だからな、そうもなるだろう。
さて、これからどうなるかな。
「ねぇねぇ、アキト君ってどうしてこの船に乗ろうとしたの?」
俺達は今食堂にいる。
あの後艦長達はこの船のマスターキーを抜いて軍の船へいったようだ。
で、俺達は一ヶ所にまとめられていると言うことだ。
別に俺はこの船を占拠した奴らなどアッという間に倒せる自信はあるが、余りネルガルの奴に目を付けられるのもウザイからな。
で今は操舵士のハルカとか言う奴の話のネタにされていると。
「別に、ただ上からの命令だよ」
鬱陶しいので俺は適当に返事をした。
「ふ〜ん、そうなんだぁ」
相手も深くは追求しては来なかった。
「そんな事より、あいつはいったい何なんだ?」
俺が指差した方向には全身を包帯で覆っている奴がいる。
いったい何なんだ?
「ああ、あいつは少し俺達の苦労をわからせようとした時に出来たんだよ」
後ろからウリバタケか俺の疑問に答えてきた。
「苦労?」
「あいつはオペレーターでもないのにこのナデシコを動かしやがったもんで、あっちこっちの回路がショートしたんだ。
そのせいで俺達はこのナデシコ全ての電気系統を見なくちゃならなくなったんだ!
わかるか!このでかいナデシコをだぞ!!」
涙を流しながら力説するな、気味が悪い。
「それで俺達がどうなったかわかりやすく教えてやったと言うわけだ」
その本人は何か騒いでいるが気にしないでおこう。
ああいうのにつき合うと疲れるだけだ。
「そう言えば本来いるはずのオペレーターはどうしたんだ?」
「あぁ、ルリルリの事ね。
ルリルリは倒れたみたいで今は医務室にいると思うわよ。」
「そんなんでこの先この船でやっていけるのか?」
いくら何でも敵が来たときに倒れられると困るからな。
「まぁ仕方ないわよ。
いくら何でもまだ十一歳なんだから」
「そんな子がこの船に乗っているのか…………って待てよ」
確か……俺が出撃する前に現れた奴もそのぐらいだったな。
「そいつは金色の目と瑠璃色の髪をした奴か?」
俺が訪ねるとハルカは驚いた顔をした。
「もしかしてテンカワ君ってルリルリの知り合いなの!?」
「いや、一度あっただけだ」
何をそんなに驚いているんだ?
「そっか。
ルリルリの知り合いならあの子が何であんなに感情を出さないのかを教えてもらえるかな、っと思ったんだけど」
「感情?俺が会ったときには一応人並みには出していたぞ」
あの事を思い出すので余り考えないようにしているが、それでも人並みの感情は出していたな。
「えっ?そう?
一体どうしちゃったんだろうルリルリ。
さっきだっていきなりブリッジから出ていくし」
「そうですよねぇ。
いきなり立ち上がったと思ったら凄いスピードで出ていっちゃいましたよ」
俺達の話にいきなりメグミが入ってきた。
なんかタイミングがよすぎるなぁ。
「そうか……ん?何だ?」
急に部屋の照明が消えた。
その中で壁際の一部が何かに照らされている。
「何が起きるんだ?」
俺が訝しげに立ち上がると包帯男の声が聞こえた。
「モガモガモガッ、モガモガモガ〜〜〜!!!」
……何言ってるんだ?
顔にまで包帯が巻かれているため言葉が聞き取れない。
「モガモガッ、モガモガ〜〜〜、モガガ〜〜〜!!!」
「…………うるさい!」
「ゴカッッ!!!……バタッ」
ふぅ、これで静かになるだろう。
しかし……こいつ何処で息をしているんだ?
鼻にまで包帯をしたら普通は生きていないぞ。
「ア、アキト、いくら何でもそれは……」
何時の間にかカザマが俺の側にまで来ていた。
どうもこの包帯男に気を取られ過ぎたみたいだな、ここまで来ていたのに気づかなかったとは。
「別に大丈夫だろう。
それより相手の配置はわかったか?」
「うん、大体は把握できたけど」
「何の話だ?」
カザマと話しているとゴートが訝しげに聞きに来た。
「軍の奴らの動きだよ。
そろそろここにいるのも退屈になってきたからな」
「イツキが調べてきたのか?」
「はい、そうですけど?」
何驚いているんだ?
それぐらいの力量はあることは知っているだろうが。
じゃなきゃこの船のクルーにはしないだろう。
「取りあえず入り口の兵士は眠らせておきましたから何時でも行動できますよ」
「そうか、それじゃあ動くとするか」
何故か放心しているゴートや他の奴らをほかって俺等は動き始めた。
「フガ〜〜〜〜〜!!!」
……何か踏みつけたようだが気にしないことにしよう。
さて、どれぐらいの手応えがあるかな?
テンカワ・アキト、あいつは何者だ?
サヤバ社が無理矢理乗せようとしたほどだからこのナデシコの詳細なデータ収集を目的としているのかと思えばどうも違うみたいだな。
それに……あの動き、相当な数の修羅場をくくり抜けて来たみたいだな。
それに……イツキ・カザマの動きも気になる。
確かイツキはエステバリスの操縦技術は高いが、生身の技術は軍では平均的だったはずだ。
それも最近は少しずつ上がっているみたいだがさっき言っていた様な事は出来るレベルではなかったはずだ。
……これはミスターと話し合う必要があるな
『あいつ等が……敵でないことを願う事にしよう――――』
あとがき
さてっと、それでは220万HITおめでとう御座います。
しかし、今までのこのSSの更新を見てみると約一週間でアップしているんですよねぇ。
と、言うことは……約一週間で5万HIT達成しているんですよねぇ。
これを一日になおすと……約7千人の人がここに来ていると言うことになるんですよ。
………………………………ぐはっ!(バタリ)
あんまりカウンタは見ていない代理人の感想
一日七千人・・・そんなに来てたのか、このサイト。
やっぱり商売繁盛の願掛け(詳しくはイベント報告の大阪オフを参照)が効いたのかなぁ(苦笑)。
それはともかく。
ガイが活躍してない(しくしく)。
前回の様子からして今回も見せ場を決めてくれると思ったのに(しくしくしく)。