『あ〜、あ〜、……え〜。本日はお日柄もよく、楽しんでいますかぁ〜っ!』

「はいはぁ〜い、楽しんでますよ〜」

「これは何だ、新手の毒物か?」

「これが桜……やはり綺麗ねぇ」

 

地獄絵図。

そこに正常な者が居たらそう名付けずにはいられないようなドンチャン騒ぎが起こっている。

ある者は笑いながら酒を飲む。

またある者は泣きながら隣にいた者に絡んでいる。

もっと非道い者になると――――

 

「おいおひゃえ、しょんなひょころにたってるにゃ」

「ダメッ!!それは人じゃ無くて壁だよ、北ちゃん!!」

「誰でも良いから北斗を止めろぉ〜〜〜!」

 

今、ナデシコ史上最大の危機が訪れようとしている……お酒で

 

 

 


 

宇宙で一番危険で騒がしいお花見

中編

 


 

 

 

 

何故こうなったかについては誰かの過去を振り返るとわかりやすいので、ここは主人公であるアキトの過去を振り返ってみよう――――

 

 

アキトサイド

 

「で、その日程は何時なんだ?」

 

全く、何でユリカはこう騒ぎを起こすことに長けているんだ?

その被害を確実に喰らう俺の身にもなってくれよ。

 

「ん?ゴクッン、え〜っとね、フーフー、3日後だよ、ズルズル〜」

「それはまた急な、って喋るか食べるかどっちかにしろ、じゃないとそれは没収するぞ」

「え〜、だって美味しいんだもん」

 

そう言いながらも黙々とラーメンを食べるなよな、行儀が悪いぞ。

言っても無駄だってわかっているのについつい言ってしまう。

 

「それにお花見なんて何処でやるんだ?流石に地球に北斗達を連れて行くのは不味いだろうに」

「もぐもく、その辺は、はむ、もぐもぐ、私達に任せて下さい」

「……俺的には大いに不安なんだが、ってルリちゃんも行儀が悪いよ。ラピスも」

「ぱくぱく、アキトの、もぐもぐ、美味しい」

 

そりゃあ俺が作った料理を美味しいと言って食べてくれるのは嬉しいさ。

だけどさ、みんな行儀良く食べてくれよ。

 

「これなら、ズルズル〜、はむはむ、お花見の料理も期待できるよねっ」

「どうせ俺に作らせようとしていたんだろうに」

「エヘヘ〜〜〜、やっぱりアキトはユリカの考えていることをいつも察していてくれているんだ」

「違いますよユリカさん、はむはむ、そんなこと誰にでもわかります」

「ぱくぱく(こくん、こくん)」

 

だから……もういいや。

 

「へぇ〜、お花見かい、そりゃ面白そうだねぇ」

「あっ、ホウメイさん」

 

そんな俺達の所にホウメイさんがやってきた。

 

「あっホウメイさん、洗い物終わったんですか?」

「ああ、後はあの子等に任せたよ」

 

ホウメイさんが指差した方を見てみると、ホウメイガールズのみんなが働いているのが見えた。

それもあと少しの洗い物だけみたいなのでノホホンとやっている。

 

「それにしてもお花見かぁ、ナデシコに乗っているから出来ないと思っていたんだけどねぇ」

「俺もですよ、楽しみですね」

 

ここで肝心の桜はどうするんだ?などと言った疑問はこの際無視する。

このナデシコなら何が起きてもおかしくはないからな。

一晩でナデシコの中に桜が植わっていてもここではあり得ないことではない。

いや、むしろその可能性の方が今は大きいと言ってもいい。

大体主催者がユリカからしてこのお花見が無事に済むはずがないんだから。

 

「それでね、せっかくお客様をもてなすんだからパァ〜ッ!と豪華な物を作ってね」

「?お客様って何だ、誰か来るのか?」

 

まさか、いくらユリカの頭が天然だからって言ってクリムゾン関係の奴らをご招待〜♪って言い出すんじゃないだろうな?

そんなことになって見ろ、その場紅い桜を作ってやるぞ。

何で紅くなるかは各自の想像に任せる、ふふふっ。

…………っていかんいかんっ!近頃戦闘が相次いでいるせいか考えが好戦的になっているぞ、俺。

 

「うんっ、舞歌さんと優華部隊のみんなだよ」

 

 

                  ピシッ!!

 

 

「ん、どうしたのアキト?」

「…………イマ、ナントオッシャイマシタカ、ユリカサン?」

 

ソラミミダ、ゲンチョウガキコエタンダ。

ウン、ソウニキマッテイル。

 

「だからぁ、舞歌さんと優華部隊のみんながお花見に来るんだよ」

「ハ、ハハ…………」

「アキトどうしたの?(ちょんちょん)」

「つっついたらダメですよラピス、今はアキトさんをそっとしておいてあげましょう」

 

舞歌さんが来る、そうだったら必ず北斗も来るだろう。

舞歌さんとは会ったことはないが、話を聞くとかなりの策士らしい。

どんな風な策士かわからないが、俺にとって歓迎できるものではないだろう……多分……いや、絶対。

そんな人が北斗をおいてくるだろうか?

そんな可能性宝くじが当たるより低いだろう。

なら結局――――

 

「俺か、俺なのか、俺なんだな、ハハハッ……」

「アキト、どうしちゃったの?」

「……アキトが壊れた」

「ラピス、その言い方は止めなさい。せめて別世界へ旅立った位にしなさい」

 

なにやら散々言われていたみたいだったが、結局ホウメイさんが投げたトレーが頭に直撃するまで俺は真っ白に燃え尽きていた。

…………ホウメイさん、何だか性格変わってません?

 

 

 

 

 

零夜サイド

 

「……と言うわけで早速準備を始めなさい」

「舞歌様、まだ何も言ってません」

「あら、千沙もツッコミが出来るようになったのね、お姉さん嬉しいわ」

「ただ真実を述べただけですっ!」

 

…………何、もしかして私達を集めた理由って漫才を見せるため?

 

「まぁ、その話はまた後でじっくりと話すとして今は本題に戻るわ」

「永久に戻らないで下さい…………」

 

ダメですよ千沙さん、そんな願いが通じる人じゃ無いんですから。

それよりも今日は非番だったから北ちゃんと洋服を買いに行こうと思ったのになぁ。

あんな服やこんな服なんて北ちゃんに似合いそうなのに……ハァ。

 

「先ず千沙は知っているのだけれど、ナデシコのクルー達と私達が和平の為親睦を深めようとしてお花見が催される事になったわ。

 私達はそれに出席するの、そのための準備よ」

「日時は何時なのですか?」

「3日後よ、場所の方は追って知らせるそうよ」

 

はぁ、お花見ですかぁ。

木連ではお花は貴重品でそんなことをするだけのお花なんて無いものねぇ。

 

「おい零夜、お花見とは一体なんだ?」

 

後ろから北ちゃんが私に尋ねてくる。

そっか、北ちゃんはお花見なんて知らないんだ。

私もそう言った物がある程度しか知らないもんね。

 

「えっとね、お花見とはね主に桜の下で宴会をすることを指すものなの」

 

たしか……こんな感じだったと思うけど、違ったっけ?

 

「櫻、なんだそれは?そんな奴の下で何故宴会などしなくてはいけないのだ?」

「…………北ちゃん、櫻じゃなくて桜、桜って花の木の下で桜を見ながらみんなで騒ぐことなの」

 

私が北ちゃんに説明している間も舞歌様の説明は続いていた。

 

「そんなわけだから各自準備しておくこと。もちろん北斗もね」

「えっ、北ちゃんも連れて行くんですか?」

 

スラッと疑問に思ったことを口にする舞歌様。

まぁ北ちゃんも一緒に行けるのなら良いんだけど……

向こうにはあのテンカワ アキトがいるのよ、最悪の場合お花見会場が焦土になっちゃうんじゃ。

そんな私の危惧も舞歌様にはお見通しだったみたい。

 

「それは大丈夫よ。もし北斗が暴れるようなことがあればこれを向こう一週間着て貰うから」

 

そう言って舞歌様が取り出したのはフリルの沢山着いたピンクのワンピース。

なんだか……凄い。

 

「そっ、そんなヒラヒラした物着るかっ!!」

「そんな、せっかく私が選んだのに」

 

舞歌様はガックリと肩を落として後ろを振り向いてしまい、北ちゃんは怒ったまま出て行ってしまった。

舞歌様、その気持ち凄くわかります!

あれを着た北ちゃん…………いいなぁ〜。

新しい北ちゃんだよ、もちろん写真と録画は即スタンバイ!

絶対に着せるべきです舞歌様っ!

 

「舞歌様、そう落ち込まないで下さい」

 

なにやら部屋の角に行ってしまった舞歌様に先程の案を後押ししようと近づいたところ何やらやっているみたいだった。

 

「これがダメならこっちなら……いえ、こっちもやっぱり捨てがたいわね」

 

あの〜そのダンボールの中にある可愛い系の服の山は一体……

明らかに手作りだとわかる物もあるんですけど。

 

「ま、舞歌様それらは一体?」

「これ?私が北斗の為に作った服よ。まぁ何着かは手伝って貰った物もあるけどね」

 

舞歌様…………

 

「舞歌様、絶対に北ちゃんにこれらを着せましょう!!」

「零夜貴女ならわかってくれると思っていたわ!」

 

この瞬間私と舞歌様の共同戦線が始まった。

目指すは北ちゃんにこのフリルのついたスカートを着せることっ!

頑張りましょう舞歌様っ!

 

「何だか話がズレてない?」

「気にしちゃダメよ、つきあったら疲れるだけ」

 

 

 

 

 

アキトサイド

 

「オーライ、オーライ!」

 

俺の目の前にはエステが入るぐらいのコンテナがぶら下がっている。

これは今さっき搬入された物なのだが……

 

「なぁ、これ中身は何が入っているんだ?」

「えっ、え〜っと…………見て下さい」

 

そこら辺で働いている人に聞いてみたら何かを手渡された。

 

「なになに、お花見の材料?」

 

このコンテナにそんなに入っているのか?

 

「一体何が入っているんだ?」

「それは企業秘密ですっ」

 

いつの間にかユリカが俺の横にまで来ていた。

一体何時来たんだ?

 

「なぁ一体……」

「大丈夫だよ、アキトには後でお料理の材料を渡すから」

「いや、だからそれ以外の物は……」

「あっ、それじゃあユリカ用事があるからまたねっ」

「お、おいっ!」

 

…………なんか凄く不安になるぞ。

 

 

 

 

 

舞歌サイド

 

「ここをこうして、こうやってっと」

「何で私がこんな事を……シクシク」

「ほら口じゃなくて手を動かすっ」

 

う〜ん、このペースだと間に合わないかしら、お花見までにはもう一着作りたいのだけど。

 

「舞歌様ぁ〜止めましょうよ、もう夜中の2時ですよぉ」

「何を言っているの、まだ2時よ。6時までなら大丈夫」

「舞歌様は大丈夫かもしれませんが、私は無理ですよ〜」

 

軟弱者ね、近頃の若い子達はこれぐらいでへばっていてはやっていけないわよ。

 

「ふぅ、いいこれは貴女のお父様から頼まれた事なの。

 私は貴女の将来の事を考えて今の内からこういった夜の仕事に対処できるように訓練させているのよ」

 

そのついでにこうして私個人の趣味を手伝わせているだけ。

一石二鳥の素晴らしいアイデアよ。

 

「舞歌様、そこまで私のことを思ってくれていたなんて……」

「そうよ、わかってくれた?」

「はいっ!私舞歌様の事あらためて尊敬しなおしましたっ!」

 

                  チクッ

 

な、なにか今ちょっと胸に来る物が…………

 

「お父様が舞歌様の事を幅広い知略と鋭い洞察力を持ち、部下の事を深く考える人だって言ってましたが本当ですね!」

 

確かに知略と観察力と部下の事を考えているわよ。

でもそれは貴女が思っている方面へは近頃全っ然使っていないわ。

しかし、もの凄く合っているわ、私をたとえる表現としたら。

 

「私、舞歌様の事を聞いてから将来は舞歌様みたいな人になりたいってずっと思っていたんです。

 そんな舞歌様の下で働いてこうして御指導して頂けるなんて……もの凄く感激です!!」

 

                   グサッ 

 

…………もしかして私ってこの子の将来を台無しにしてる?

こんな、北斗の為の服を作らせているのに目を輝かせて尊敬の眼差しで見られるとちょっと、いやかなり罪悪感が。

とっ、とりあえずこれだけは言っておかないとっ。

 

「沙緒ちゃん、私みたいになっちゃダメよ。もっと他の人を目標にしなさい!」

「えっ、何故ですか?」

 

『私がもう一人いるなんて想像もしたくないから』なんて思わず本音が出そうになるのをグッと押し込んで立前を口にする。

 

「それは私がまだまだ他人の目標になるような人物じゃないからよ。

 私自身もっと勉強しもっと多くの事を学ばなくてはいけないと思っているから私なんかを尊敬するんじゃなくてもっと別の……そうね、貴女のお父上の方がよっぽど尊敬に値する方よ」

「舞歌様…………」

 

よし、これで何とか切り抜けられそうね。

 

「わかった、それじゃあ……」

「私っ、一生舞歌様について行きます!!」

「へっ?」

「ご自分をそこまで謙遜して何時までも上を目指して頑張るなんてとても真似できるものではありませんっ。

 やはり舞歌様は私の想像通りの方でしたっ!」

 

                           ザシュ

 

ま、まさかそう来るなって。

やめてお願い、そんなキラキラした目で私を見ないで。

そんな目で見られたらなんか裏であれこれやっている自分に罪悪感が芽生えちゃう。

 

「さぁ、頑張って続きをやりましょう舞歌様!」

「お、お願い、私の話を聞いて……」

 

その後、沙緒ちゃんの頑張りで予定の3割早く北斗の服は完成したけど、私の良心には深い傷が出来たわ。

人選ミスッたかしら。

それはそうと西沢さん、貴方が私の事をどう思っているかよっくわかりました、今度ゆっくりとお話しするといたしましょう、ふふふっ。

さてっと、後は当日をむかえるだけね、楽しみだわ。

 

 

 

 

 

続く…………

 

 

 

 

あとがき

 

いや〜、なんて言うか一年ぶりの続きですねぇハハハッ(爆)

いえ、けっしてネタが無かったとか前回の続きの先を考えて無かったとかじゃありませんよ。

ただ、そんなのも書いてたなぁって気がついたもので(核爆)

まぁ、この話プロットからしておかしいですからねぇ。

以下プロットより抜粋。

 

お花見をする場所………………広いところ

メンバー………………面白い人達

目的…………………お花見の時期だから

 

…………私はこれを一年ぶりに見つけたときは過去の自分に対して、

 

俺は馬鹿かっ!?

 

って思いっきりツッコミを入れていました(笑)

なんて言うか計画性ゼロって言うかプロットにもなっていません

なので一から考え直しましたよ。

 

まぁ、こんなのでも読んでくれて面白いと感じて下されば私的にはギャグが書けるんだと認識します。

 

あと、前回と今回出てきたキャラはオリジナルで西沢 学の娘で西沢 沙緒です。

話を書いた後になってちゃんとした紹介がされていない事に気がついたので補足です(爆)

 

 

 

 

代理人の感想

うわ〜、丁度一年振りですねっ!(爆笑)

忘れてなかったんだ、えらいえらい(核爆)。

 

何はともあれ、続きが出ただけで胸が一杯です。

今なら大統領だってぶん殴って見せらぁ。

でも後編は一年後ってのは勘弁な(謎爆)