シリアス-mode

 

 

「ルリの願い」

 

 

 

 

 

 

 

「アキト君ちょっと待ちなさい!!スラスターのタイミングの事でー」

 

「アキト君、貴方の身体負荷を考慮して念のためにこれから全身検査を・・・」

 

「テンカワ!てめー逃げるなー!!」

 

 

ナデシコでは今日もいつもと変わらず追いかけっこをしています。

 

皆さんほんとにバカばっ・・・いえ、これは卒業したんでしたね。

 

私もそんなバカの一人だと気づいたんですから。

 

でも、なんていうか・・・こんな騒動を見てるとやっぱり思ってしまいますね・・・

 

バ・・・

 

 

 

 

あれ?なんだか視界が白くなっていきます。

 

目の前に床がゆっくり近づいてきて・・・

 

「ルリちゃん!!」

 

どうしたんですかアキトさん・・・私を抱きしめたりして・・・

 

嬉しいですけどまた皆さんにお仕置きされてしまいますよ?

 

そんな事をなんとなく考えてるうちに世界は白一色になっていきました。

 

 

 

 

 

・・・ここは・・・

 

「ルリちゃん気がついた?」

 

横にはアキトさんがいます。

 

「どうして私は寝ているのでしょうか・・・たしかさっきまで」

 

「ルリちゃんは急に倒れたんだよ。それで医務室まで運び込んだんだ」

 

 

なるほど、それで・・・

 

「ありがとうございます。でももう大丈夫みたいなのでブリッジに戻ります」

 

「今日は休むといいよ。ブリッジのほうはハーリー君にお願いしたから」

 

「ハーリー君にも迷惑をかけてしまったんですね・・・」

 

「艦長に無理はさせられないってやる気一杯だったよ」

 

もう艦長じゃないんですけどね・・・でも嬉しいですよ、ハーリー君・・・

 

 

「そういえばラピスは・・・」

 

「そのハーリー君をいじめてる」

 

アキトさんは苦笑。なんだか状況が目に浮かびますね。

 

「それでしたら私は自室で休ませてもらうことにします。ここは賑やかになりますから」

 

私はベッドで上半身を起こすと靴を履こうとします。

 

「送っていくよ」

 

アキトさんは左手の指で私の靴を引っ掛けると私を抱きかかえてしまいました。

 

「そんな!看病までしていただいたのに・・・ちゃんと歩けますから」

 

「いいから、俺に運ばせてくれないか?」

 

そういいながらも有無を言わせずに自室のベッドまで運ばれてしまいました。

 

 

 

「ルリちゃん何かほしいものある?」

 

「いえ、特には・・・」

 

 

 

妙な沈黙が流れた後、私は聞いてみました。

 

「アキトさん、どうかしたんですか?」

 

なんだかアキトさん、さっきから様子が変です。

 

なにかと世話を焼こうとしてくれるのですが妙にギクシャクしてます。

 

 

 

すこしたって、アキトさんは話しだしました。

 

「イネスさんが言ってたんだ、ルリちゃんが倒れたのはおそらく過度のストレスで身体機能の調節が不安定に

 なったからだって」

 

「ですからこうやって休息をいただいていれば・・・」

 

「違うんだ!!」

 

私はいきなり感情をたかぶらせたアキトさんに驚いて・・・紡いだ言葉がとまります。

 

「違うんだよルリちゃん・・・俺は過去に戻って、あの未来を防ごうと、今度こそ前よりみんなに幸せになって

 もらおうと懸命に行動してきた・・・」

 

「ハーリー君やラピスだってそうだ、俺が直接保護すれば不幸も防げるしルリちゃんも交代ができて楽になると

 思ってたんだ・・・」

 

「たしかに今はルリちゃんの代わりにハーリー君が頑張ってくれてるよ」

 

「でも・・・そもそもなんでルリちゃんだけが倒れたんだ?三人体制になってるのに?」

 

「前のときはルリちゃん一人でもこんな倒れ方をしたことなかったじゃないか」

 

「だいたい過度のストレスって何だよ・・・」

 

「そんなの原因は俺しか考えられないじゃないか!!」

 

「はは・・・なにやってんだよ、俺って」

 

「イネスさんに言われるまで気づきもしなかったんだ」

 

「ルリちゃんが一番・・・自分の望みや希望を黙って、自分を殺して・・・俺の行動に付き合って無理をしてるって

 のに・・・」

 

「・・・・・」

 

 

「教えてほしいんだ・・・ルリちゃん。君自身は本当は何を望んでいるの?」

 

「俺のしている行動がそのままルリちゃんの望みと同じなはず無いよ」

 

 

 

 

 

「・・・・聞いて・・・どうします?」

 

 

 

「ルリちゃんの望みをかなえてあげたい・・・かなえる手伝いをしたいんだ」

 

「それは・・・アキトさんには出来ない事でも・・・私の望みでアキトさんの大切なヒトが泣いてしまうことになっても

 ですか?」

 

 

 

「・・・・・」

 

 

「人の本心は・・・話すのも・・・聞くのも・・・とても強い痛みを伴いますよ」

 

 

「・・・・それでも、聞きたいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重い沈黙の後、ルリは静かに話しだした。

 

「アキトさんはこの前、アカツキさんの機体に『ラグナ・ランチャー』を渡されましたね」

 

「・・・ああ」

 

「あの武器はアキトさんのブローディアをも打ち砕く破壊力があります」

 

「・・・そう設計したからね」

 

「何故ですか」

 

「俺の・・・俺たちの破壊力が強すぎるから・・・」

 

「強すぎるから?」

 

「俺たちが、俺が間違っていても止められるように・・・」

 

「今のアキトさんを止めてほしいのですか?」

 

「違う!!だがいつか俺が間違った選択をしてしまったら・・・」

 

「それはいつですか?」

 

「・・・・・・」

 

「今は自分は正しいといつも思って行動している人がいつアカツキさんの審判を受けいれるんですか?」

 

「実際に戦闘すれば勝ってしまう程度の抑止力って意味があるんですか?」

 

「・・・・・・」

 

「気づいていますか?今のアキトさんは自分の行動に責任をとらずに甘えているって」

 

「!!」

 

「自分の行動が不安で責任を誤魔化すために言い訳を作ってるだけだって」

 

「・・・もういい」

 

「自分が始めた和平なのに、自分は和平の名のもとに流す血の責任をとりたくないんだって」

 

「やめてくれ!」

 

「甘えてるんです」

 

「違う!!俺の間違った独断で大量の血が流れていいわけないじゃないか!!」

 

「なら遺跡のユリカさんを助ける時はこんな事をしたんですか!!」

 

 

 

「!!」

 

 

「今はラピスをユーチャリスの戦闘に巻き込んだ程の覚悟がないんです」

 

「コロニーで流したような血の責任をもうとりたくないんです」

 

「あのときは誰の制止も聞かずにすべて自分で行動していましたよね」

 

「どんな事でも、誰にも甘えず、ただ一人で」

 

 

「・・・・・・」

 

 

ルリはベッド上の上半身で脇のアキトにすがるように抱きついた。

 

 

「アキトさん・・・」

 

「甘えてください」

 

「甘えていいんです」

 

「貴方は一人じゃないんです」

 

「もう貴方一人が責任を取る必要はないんです」

 

「自分の正義が不安なら言ってあげます。貴方は間違っているんです」

 

「何もかも自分ひとりで決めてしまうから不安になるんです・・・」

 

「一人で決めて・・・一人で背負い込もうとして・・・」

 

「戦争も、平和も、一人で背負えるものじゃないのに・・・」

 

「間違った独断で血を流したらいけないのは当然じゃないですか・・・」

 

「そうならない為に、ユリカさんや、アカツキさんや皆に相談すればいいんです」

 

「正しい判断でも貴方は心に相手と同じ痛みを感じる人なのに・・・」

 

「アキトさんは強いです。誰にも負けないかもしれない・・・」

 

「でもアカツキさんやみんな・・・誰かが止めればきっとアキトさんは止まります!」

 

「ラピスを巻き込んだ時の覚悟はもういらないんです」

 

「遺跡のユリカさんは助けたんですから・・・」

 

「だからもう自分を追い詰めて・・・苦しまないでください・・・」

 

「それに・・・アキトさん・・・ご存知ですか?」

 

「私、体は子供になっちゃいましたけど・・・もう18歳になるんですよ・・・」

 

「アキトさんがナデシコに乗ったのと同じ年なんです」

 

「ですからどうか私にも相談してください・・・小さな事でもいいですから・・・」

 

「もう自分一人を追い詰めて・・・苦しまないでください・・・」

 

「貴方は・・・一人じゃないんです・・・」

 

 

 

 

 

 

そういい終わると、ルリは視線を避けるようにアキトの胸に顔をうずめた。

 

言葉の槍を放つ時、彼女はどれだけその身を傷つけたのか。

 

俺は今まで何をしてたんだろう・・・

 

この少女はアキトの不安を癒すために、自らを傷つけたのだ。

 

ルリの目に光るものを見たアキトは申し訳ない気持ちと共に、背中をさするしか頭に浮かばない自分を恨み

ながらもルリの背中をやさしくさすった。

 

 

やがて小さな嗚咽の声がして、それはしだいに静かな泣き声へと変わっていった。

 

 

女の子が泣いてるのにそれが嬉しいなんて不謹慎だよな・・・

 

そんな事を考えながらアキトはルリの背中をいつまでもやさしくさすりつづけていた。

光学迷彩文章

後書きの後に書いてるのでこっちを先に読むとへんかも。ちなみにここ、秘密じゃないです。

読後の余韻の空白と、書いたら雰囲気壊しそうなことを書いてるので見えなくしてます。

このお話の副題は《ピースランド編ってこの流れにはならないのね(泣き笑い)編》だったりします

ひそかにこんな展開を期待してました。Benさんにそれとなく吹聴して(笑)

んでわまた自己満足な設定を

医務室に誰もいなかったのはイネスさんから病状を聞いたアキトの雰囲気が変わったのでみんな気を利か

しました。ガイも処置済

ラピスハーリーがこないのは二人とも覗きたいんだけどハーリーがラピスを牽制してラピスがハーリーを苛めてと

千日手になってます。

 

ルリちゃんはアキトが正しくても「間違ってる」と言います。

不安を取るにはそういわないと駄目だから。

アキトは後でルリちゃんが結局本当の願いを言っていない事に気が付きます。

理由はルリちゃんはあんな不謹慎なカマかけはしないと思うから。

ちなみにさっきから外で雷がすさまじいです。うう、ラピス様のたたりって、ほんとにあるんだ・・・こわい(^^;

その後、ルリが歳をごまかしていたのを知ったのは4年後の事となる(笑)

 


後書き

 

「いぶんいぶん」を待ってたみなさんごめんなさいです。こんなの書いてみました。

先頭に《シリアス-mode》って書いといたから非対応の人は読んでないといいのですが。

オイラは本当はこんな感じの人です。

時期的には・・・ピースランド前って事で。

勢いで書いたので矛盾とかあると思います。致命的な矛盾があったらそっと教えてください。

Benさんに泣いて頼んで掲載止めてもらいます(^^;

歳は勝手に決めました。話中では実年齢は16歳なのに火星帰還ジャンプ×2を含めて18歳と言っています。

アキトもまさかルリちゃんが嘘つくとは思ってないし。

ルリちゃんも二人になったら素の性格が出るんじゃないかな〜とか思って書きました。

でわでわ

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

もものきの犬さんから投稿第二弾です!!

う〜ん、シリアスだな〜

でも本編の十八話ラストも・・・アレだしな(苦笑)

まあ、シリアスはもものきの犬さんにお任せして。

・・・でも、前作と180度方向が違うよな(笑)

これだけ全然違う内容の話が書けるのは凄いですよね。

ギャプの差に苦しんでしまいます(苦笑)

 

では、もものきの犬さん!! 投稿有難うございました!!

 

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