逆行者+突破者
第五話「過剰殺人=過剰防衛」
「暇だなー」
そんな愚痴も出てしまう今日この頃。
前までの騒動が嘘のように今は平穏無事。
平和が嫌いと言うわけじゃないけど火星まではまだ遠い。
「暇だなーー」
そんなことを言いながら歩いていると、
トレーニング室に通りがかった。
入ってみると人が居た。
「こんにちは、アキトさん」
「ああ、こんにちは。今日はアヤトなの?」
はい、と言って肯定する。
この頃は日ごと不規則に僕とアイツが入れ替わってるためだ。
「よくトレーニング室には来るんですか?」
「うん。料理でもパイロットでも体力は必要でしょ」
………アキトさんはいつも僕を気にしている。
いや、警戒していると言ってもいい。
だから話してみることにした。
「アキトさんって強いですよね」
「俺は強くなんか無いよ」
下手な謙遜は無視する。
「でもあなたは強さを求める人じゃない。僕もそうだからなんとなくわかるんです。けれどあなたは強さを持っている」
それは矛盾だ。小さな、矛盾。
「強くなるためには傷が必要だ。人は傷無しでは強くなれない。けどね、逆にいうとこう解釈も出来るんです。
傷ついて強くなるのは必然だ、って」
アキトさんはじっと僕の話を聞いている。
「あなたは傷ついたんじゃないんですか?だから強くなった、強くならざるをえなかった」
アキトさんの顔に軽い驚きと深い悲しみが浮かぶ。
「君はいったい、何を知っているんだ?」
「アキトさんのことは何も知りません。けどアキトさんが思っている以上に、僕は普通じゃないんです」
そう、認めたくないが、僕は普通じゃない。
「それでも僕は、人と仲良くしたいです」
沈黙が辺りを支配し、そして、
「………アァァァキィィィトォォォォォーーーー………」
………艦長の声が響いてきた。
見るとアキトさんは明らかにトレーニングによる汗でない汗を流している。
「じゃっ、僕はこれで」
「ああっ!?ちょ、ちょっと待って!!」
後ろから聞こえる悲鳴を無視して、僕はトレーニング室を飛び出した。
入れ替わりに誰かが入ったみたいだがかまわずそこから離れる。
まあ、最後はうやむやになってしまったけれども、
とりあえず僕の意思は伝えた。
それをどうするかは、アキトさんの問題だ。
今日はヤマダさんの見舞いに行こうか。
僕のせい、というかアイツのせいだが見舞いぐらいしておこうと思い医務室に来てみると艦長がいた。
「あれ?艦長、どうしたんですか」
「あ、アヤトくん。ヤマダさんのお見舞いに手作りクッキー持ってきたんだ。
よかったら一個食べる?」
「あ、はい。いただきます」
その時気づくべきだった。
ベッドでヤマダさんがクッキーをくわえて気絶しているのを。
そして僕は一口食べ、
「……………………」
「あれ?どうかした」
無言で意識を無くしていった………
「しかし不運だったな。あんなことで意識を無くすとは」
「あんなことじゃないよ、あれは一種の兵器だね」
愚痴をもらしたアヤトの首を飛ばす。
「しかししばらくは目を覚まさないぞ、これは」
「ま、いいじゃない。どうせ暇だったんだし」
横から飛び込んできたアヤトの頭を粉砕する。
「よくない。俺はこの装置のチューンナップをしたかった」
そう言って右手にその装置を創り出し、背後にいたアヤトの腹に叩きつけ真っ二つにへし折り両断する。
「どうでもいいけどこういう場所でそれ使うのやめとけば?」
その意見を聞き入れ装置を消し、アヤトの頭に拳を当てようとする。
アヤトはかろうじて避け、俺が第二撃を放つ前に上半身だけになった自分の死体をこちらに投げてくる。
特に気にせずその死体を突き破りアヤトの心臓を握りつぶす。
視界が揺れ、衝撃が走る。
見ると俺の目の前にアヤトがいて親指を俺ののどに深々と突き刺している。
改めて見ると心臓を握りつぶしたのは首の無い死体だった。
そうか、最初の死体で俺の視界を隠し、もう一つの死体を囮に使ったか。
「僕もチューンナップはしたかったよ。でもしばらく無理だね」
その声を聞きながら俺は死んだ。
そして
新たに浮かび上がった俺は、アヤトの心臓どころか上半身を、まだ持ってる俺の死体ごと吹き飛ばした。
飛び散る血の雨を見ながらつぶやく。
「そうだな、この対絶死夢は始まったばかりだからな」
俺が目を覚ますとそこは医務室だった。
隣にはヤマダさんが居る。
「お前も食べたのか。あれを………」
「ああ、そうだ」
俺達はそれだけで理解しあえた。
「あのことは水に流そう」
「ありがとうなヤマダさん」
「俺の名前はダイゴウジ ガイだ」
「了解した、ガイ」
俺達は握手をして、苦しみを耐え抜いた戦友となった。
ブリッジで叛乱が起こっている。
セイヤさんたちが男女交際の事で起こしたのだ。
まあたしかに、こんな細かい文字、僕も気づかなかったですけど。
ちなみにみんな見てなかったというセイヤさんの論拠は、今さっき目を通していたと言うルリさんの意見で脆くも崩れた。
「ならば、残るは実力行使のみ!!アヤトッ!ここは共闘だ。出でよ!リリーちゃんスーパー!!」
「しょうがないですね、言っときますけど義理ですよ」
そう言って僕もエンタイトルツーベース君ΖΖ(ダブルゼータ)を出す。
そしてブリッジに衝撃が走る!
ドゴォォォォンンンン
………弁解しときますけれど僕はまだ内蔵式ハイ○ガキャノンは撃ってませんからね。
「これは………木星蜥蜴からの攻撃です。これには迎撃が必要です、艦長!!」
「そうなの、ルリちゃん?それでは総員戦闘態勢に移行して下さい!!」
艦長の命令で僕達は格納庫に向かう。
さて、がんばりますか。
ツバキは過剰に殺人する………
アヤトは過剰に防衛する………
その二つに違いは在るか………
……無いならそれはただの殺し合いだ………
後書き
無識:今回のΖΖは不発に終わりました。
ツバキ:毎回それでひっぱるな!
無:しかし今回は山が二つ!予想以上にきつかった。
ツ:ところで今回のミニジェノサイド風味ってあれか?
無:なんだよ、十分ジェノサイドじゃないか。
あっ、ちなみに夢の中ではツバキ強いです。
昂氣付きアキトでも瞬壊できます。
ツ:ついでだが夢の中で俺が使った装置についてはノーコメント。
無:余談だが。
ツ:なんだ?
無:枝織ちゃんのアヤトの呼び方、どうしよう?
ツ:………突発的に思いついた心配事より次の話をさっさと書け!!
無:がふっ(吐血)。お、おっしゃる通りで………
代理人の感想
そうか、エンタイトルツーベース君は究極の調停存在をめざし、
常に進化しつづける装置なのかっ(笑)!
いやぁ、次回はまたどんな進化を遂げているか楽しみですねぇ。
と、言うわけで個人的には毎回それで引っ張っても全然問題ありません(笑)。