逆行者+突破者
第十四話「出会い≠別れ」
頑強な部屋………
暗く閉ざされた部屋………
取り調べ室と呼ばれる部屋で、
さっきまで座っていた男の人がいた。
サイトウ タダシ。
嫉妬に…、恐怖に…、不和に…、
様々なものに動かされて、手に入れたのが、
後悔だけだった人。
スパイと呼ぶには…哀れすぎるかな。
「しかし、君は何者なのかね、いったい?」
僕と同じく残っているシュンさんが嘆息しながら言ってくる。
「アキトと一緒にいて隠れていたが、
アキトと引けを取らない技術を持ち、
メティス テアを救い、
そして、あんな言葉を言える。
とても常人とは思えないな」
僕は苦笑しながら答えた。
「僕はただ背伸びをしているだけですよ。
さっきの言葉だって自分の言葉じゃないです。
僕が感銘した言葉を引用しているだけですから」
そう言いながら思い返す。
後悔したいのならまず生き続けろ……、か。
死んだら終わりだ。
意思も、理想も、夢も、誇りも、…懺悔も、
全て意味を無くしてしまう、無くなってしまう。
生きなければ全て、消えてしまう。
わがままだと思う、正しいなんて断言できない。
それでも、サイトウさんには生きて欲しい。
まだ死んでないのだから……
朝日に輝く漆黒の機体。
ブラックサレナ テストタイプ。
機械音痴の私にとってはどういう物かわからないけど、
これがもたらす結果は既に知っている。
「……ファルさん」
背後から声がかかって振り返ると、
パイロットスーツに身を包んだアキトくんがいた。
「面と向かって話すのは初めてだったね」
なんせ今まで立てこんでたからねー。
「本当にありがとうございました。
自分の責任でメティちゃんを危険にさらしてしまったのに、
俺は、何も出来なくて……」
「ああ、別に気にしなくていいよ。
正直言うとね、私は仕事と女の子が殺されるのがいやだって理由だし、
ツバキくんにかぎっては自分の為に助けたんだから。
人なんだからなんでも一人で出来るわけがない。
アキトくんが気にかけなくちゃなんないのはこれからの戦闘、でしょ?」
「………そうですね」
アキトくんはアサルトピットに乗ろうとした所で振り返り、
「あの、あなたもやっぱり、ツバキ達と一緒で…」
「ちがうよ。私は人間。
それなりに、普通じゃないけどね」
そうして、笑って送り出した。
「さて、それで、あなた達は………」
苦笑しながら後ろを向くと、
サラちゃん、アリサちゃん、レイナちゃんがいた。
……こちらに絶対零度の視線を向けて。
「なんで……アキトさんとあんなに親しげなんですか?」
「秘密を共有している関係は、はたから見ると仲良く見えるものだよ」
「ツバキ君とはどういう関係なんですか?」
「建前は私の被保護者。
実情は私の依頼人」
「そもそもどうしてこの基地にいるんですか?」
「許可は貰ったよ。シュン隊長さんから」
ふう、これ以上からかうのは危険かな?
「まっ、安心していいよ。
アキトくんがいい男だとは思うけど、
そういうのにあたしは参戦しないから」
そういうと体感温度が数度上がった。
「参戦してもいいけど、
私じゃ、まず無理だから」
「……どうしてですか?」
微笑を浮かべながら答える。
「あなた達も気をつけた方がいいよ。
あんまり仲間になりすぎると、
恋愛対象に見られなくなるから。
ああいう鈍感な人は特に……ね」
年上からのアドバイスを送り、彼女達の前から去った。
虹色の光、ボソンジャンプ。
アキトさんたちの始まりの光。
それに乗ってアキトさんは帰ってきた。
多分、あの人も正面から英雄と対峙できただろう。
とりあえず、全ての山場は終了した。
後は事後処理のみ……かな(汗)
そして、俺は今、病院に来ている。
アキトが今回の関係者に事情を説明するみたいだ。
目的の病室にたどり着く。
名札にはメティス テアとかかれていた。
特にメティスは外傷等は無かったのだが、
精神的な面と念のためと言うことで入院していたのである。
病室のドアを開ける。
「あっ、こんにちは、ツバキさん」
「おーす、まだアキト達が来てないぞ」
「早いねー、やっぱり心配なの」
「こ、こんにちは……」
病室にはすでにミリアさんとナオさんとファルがいた。
ああ、ちなみにミリアさんとナオさんはあの後に恋人同士になったようだ。
なんでも、妹が誘拐された時にずっとそばにいて励ましていたみたいだ。
ファルに言わせると「そりゃ転がりもするわ」ということらしい。
「それでね、とあるところで食べたレイクドラゴンのフルコース。
これがけっこーおいしいのよ。時間かかるのが難点だけど」
「へー!、ところでレイクドラゴンって何?」
なぜかファルとメティスの仲が意外といい。
何でもファルの旅話が気に入ったようだ。
だが異世界の話しまでするのはどうかと思うぞ。
それになぜかメティスは、俺が一人で助けたと思っているらしい。
なにをふきこんだ、ファル?
少々早く来すぎたので俺も病室で待っている事にした。
「そういえば、ツバキくん。
前、メティちゃんにひどいこと言っただろ」
「初恋云々の事か?俺はあくまで一般論を言っただけだ」
「そんなこと言っていいのかな〜。
あのねメティちゃん、実はツバキくんも昔年上の初恋で破れ、しかも…」
ガシィッ!!とファルの頭を掴む。
「……俺がスイカを潰せるって信じるか?」
「いやー、俺も詳しく話しを聞きたいね」
グワシィッ!!とナオさんの延髄を掴む。
「……ナオさん。好奇心は猫を殺しますよ」
「へー、経験者だったんだ……」
「メティス……その言い方はなんとなく嫌だぞ」
「ツバキさん、なんか楽しそうですね」
……はあ、ミリアさんの言葉で毒気が抜かれてしまった。
二人を解放する。あっ、ナオさんはちょっと泡吹いてる。
なんかどっと疲れたな。
メティスの頭に手を乗せながらつぶやく。
「…あっ、………」
「まあ、そんだけはしゃげられたら十分だろう。
俺も心の端の切片のひとかけらぐらいは心配してたからな」
「……………」
「どうした?黙りこくって。
なんか顔赤いし、風邪か?」
「う、うるさいな!子供扱いしないでよ!」
十分、子供が何を言う?
……なんだファル、その不敵な笑いは?
そうしているとアキト達も集まってきた。
だが始まる前にシュンさんが、
「やはりメティスくんなどにも聞かせなければならないのだろうか?」
その気持ちもわからないこともない。
この事件は大人の汚れた事情が表面化したようなものだからな。
だが、
「……でも、私聞きたい。ううん、聞かなきゃダメだと思う」
「そうだな。こいつは今回の事件の唯一の被害者だし、
それに、知らないと知ったなら知ろうとしなくちゃな」
結局、本人の意見が尊重され、
全ての真実を、アキトが話し始めた………
話し終わった病室には重い沈黙しか残らなかった。
「……その、質問をいいかな?それではツバキ君やファル君は何者なんだね」
その言葉で皆の視線がいっせいにこっちに向く。
さてと、
「俺の事情を全て話すと常人では信じられないような話しになってしまう。
だから俺が言えるのはこれだけだ。
アキトが悪魔にでもならない限り俺は味方だと言う事」
静かな、言葉。
ファルが後に続く。
「私は仕事としてこの地に来た。
ほんとはアキトくんたちが西欧にいるまでの契約だったけど、
私もナデシコに乗ろうと思う。
この世界の続きを……見たくなったからね」
アキト達は静かに俺たちの話しを聞き、
俺たちを信用してくれた。
青い空の下を、俺たちは歩く。
「テツヤから伝言だよ。見逃してもらって礼を言う、って」
「そうか、怒ったか?敵をみすみす逃して」
「いや、ツバキらしいなって思うよ」
風は緩やかに通り過ぎていく。
「西欧とも……お別れだな」
「……また来ればいいさ。いつだって来れるよ」
「ああ……そうだな」
「………ほら、いつまで感傷に浸ってるんだ!
いくぞ!『漆黒の戦神』!」
「なんだよ、それを言うなら『漆黒の戦鬼』だろ」
「『鬼』は俺が受け継いだ。だからお前は『戦神』だ」
様々な出会いと幾場かの別れ………
全てを刻み込み戦神と鬼は戻っていく………
出会いや別れを無駄にしない為に………
……新たな出会いと別れの為に………
後書き
無識:西欧編無事完結!!
ファル:どこが無事なの!どこが!
無:完結した事が!
フ:志が低ーーい!!
アヤト:ところでメティちゃんはどうなったの?
無:一応保留………かな。
できればおまえに転がって欲しい。
あの格闘術は争奪戦でもかなり使い勝手があるからな。
ア:なんで僕とくっついて争奪戦なの?
無:…………………にはは。
フ:……正直に言え。後何人落とす気だ?
無:………最低一人、最高三人。
フ:……ちなみにメインキャラはいないだろうな?
無:……………………非常にでかいのが一人。
フ:……(ふるふる)……それなら私の伴侶を考えろーーーーー!!!
無:本音はそれかーーーーー!!!
代理人の感想
メティ格闘術・・・あれを押し進めていくと、
その内手足が伸びたり炎を吐いたり、
「気」を体中にまとって回転しながら突撃して来たり、
瞬○殺ぶちかましたりしそうな気がするのは私だけでしょうか(笑)?
(今でもサマーソルトキックとか波○拳くらいなら使えそうな気がしますし(爆))
ああ、メティちゃんがどんどん普通の女の子から遠ざかっていくなぁ(お前が言うなお前が)