逆行者+突破者

 

 

 

 ヒュルルルルルル!!

 

 ドォォォォォンン!!

 

 パチパチパチパチ!!

 

 

 ………空に色とりどりの大輪が舞う。

 まったく、爆弾ではなく花火だとはな。

 

「いやー、失敗失敗。

 まさかポチッと押しちゃうとはな〜」

 

 ふざけた事抜かしながら深雪が起き上がってくる。

 見たところ、たいした怪我はなさそうだ。

 

「てゆーか深雪、お前わざと押したんじゃないだろうな?」

 

 俺がそう問うと、

 

「いやだな〜、そんな事する訳無いじゃないですか」

 

 などと底の知れない笑みを浮かべながら答えてきた。

 

「それよりもそっちの方が驚きですね。

 身を挺してその人を庇うなんて」

 

「別に。所詮アイツのやった事だし」

 

 そう言ってチハヤを立ち上がらせる。

 

「お前もたいした怪我、無さそうだし、

 とりあえず、今の内に逃げな」

 

「…………いいの?

 私は…………敵なのに」

 

 確かに、とっ捕まえてもいいんだがな。

 

「これはアイツの希望だ。

 別にこの後、アキトや俺を殺しにきても良い。

 どっちにしろ、やりたい事をやれずに死ぬのは不本意だろ?」

 

 俺がそういうと、チハヤは足早に去っていった。

 

「…………良いんですか?

 生きていた方が不幸という事もありますよ」

 

「どんなに不幸でも、死ぬよりかはましだ。

 特に、自分の道を貫けない死よりはな」

 

 そう言い捨てて、深雪の方に向き直す。

 

 途端、空気が凍り始めた。

 

「さあ、殺ろうか?」

 

 

 

 

「やめときます」

 

 あっさり否定され、空気が軟化する。

 

「僕は刀を、ツバキさんは爪を持ってませんしね。

 それに今の僕にツバキさんと戦う理由はありませんから。

 それでも、あなたは戦おうとしますか?」

 

 そう言われ、俺は肩をすくめる。

 

「バカを言うな。

 俺は平和主義者だぞ」

 

 途端に、深雪は笑いをこらえだした。

 ふん、笑いたきゃ笑え。

 

「それじゃ、向こうにでも行ってみますか。

 多分、世紀の大決戦が行われているでしょうから」

 

 そして、俺と深雪は揃って歩き出した。

 

 軋んだ空気の修羅場へと………。

 

 

 

 

 

「北斗って…………………女だったんだな」

 

「そうですね、僕もさっき教えてもらうまで知りませんでしたよ」

 

 その場所では、アキトと赤い髪の女の子が闘っていた。

 闘いは壮絶を極め、はっきりいって人の闘いとは思えなかった。

 

「ねえねえ。この場に割って入ってさ、

 隙を突いて二人を殺しちゃったりなんかしたらどうなるかな?」

 

 深雪が無邪気に笑いながらとんでもない事を言ってくる。

 

「…………そんな事、俺が見過ごすと思うのか?」

 

「そうですね〜。じゃあ今度、

 見つからないようにやりますか」

 

 こいつは………冗談か本気か分からんからな。

 

 

 そんなことを言っていると、

 闘いはお互いに必殺の一撃を受けてダブルノックアウト………、

 にならず、示し合わせたように立ち上がり、

 二人の身体が薄っすらと光り始めた。

 

「………………非常識な」

 

「………………というより非現実的ですよ」

 

 それなりに異常な俺達でさえ呆れてくる。

 

 二人の話しだと昂氣というらしいが、

 まったく、どこまででたらめになれば気がすむ………、

 

「………待てよ?」

 

 昂氣………でたらめ………、

 なんか聞いた事あるような………、

 非常に記憶の底にあるような………。

 

「おっ、次で最後みたいですね」

 

 深雪の言葉に、とりあえず思考を現実に戻す。

 

 衝突する蒼銀のアキトと朱金の北斗。

 お互いに力場を拮抗しあい、

 そして周りを壊しながら、二人を弾き飛ばす。

 

「相討ちか………まあ、妥当な結果か」

 

「そうですね。じゃっ、僕も仲間内に帰りますので」

 

「そうか、じゃあな」

 

 深雪と別れ、俺も倒れたアキトの方に向かっていった。

 

 

「そういえば、高杉さんに爆弾の件、どう言い訳しようかな〜。

 …………まっ、いいや。

 ツバキさんが邪魔したんですって言っちゃおっと」

 

 …………聞こえてるぞ、この野郎!(怒)

 即座にエンタイトルツーベース君を取り出し、投げつける!

 

 ズガシュッッッ!!!

 

「あうっ!!」

 

 後頭部に命中して刺さった!

 

 よしっ!悪は滅びたっ!!

 

 

 

 ちなみに俺はしっかり深雪の過失だと報告した。

 こっちは紛れも無い事実だからな。

 

 

 

 

 

 この時点で僕のピースランドでの出来事は8割が終わった。

 あの後、アキトさんとルリさんが割の合わない取り引きをしたり、

 そのためにナデシコメンバーがチューリップ複数を殲滅したりしたが、

 

 ………………フッ、

 

 スケアクロウ使いこなせない僕に活躍の場なんて無いじゃないですかっ!!

 

 どうせ僕はDFS使えませんよーだ(泣)

 それでもチューリップ一つ落としましたけど。

 

 

 そんなわけで後はお酒でも買って帰るだけ。

 途中、熊のぬいぐるみを持った大男を見かけたり、

 ヤクザな人が店を荒らしている所を通り過ぎたり、

 なぜか知らないが影の薄いミイラ男の幻覚を見たが、

 全て他人のふりをして、乗り切ってやった。

 

 

 

 

 唐突に、ある人を思い出す。

 

 僕を人と認めてくれた彼女。

 ………彼女にとっては何気ない言葉だっただろうし、

 僕もその言葉を都合良く解釈しただけ。

 

 

 

 それでも…………嬉しかったな。

 

 

 

 願わくば、彼女と再会………、

 

 ………しませんように。

 

 

 

 

 

 

 闘う二人………

 闘わざる二人………

 相反する者が交錯する綱渡りの一時………

 ……それは安定しているが故に危険である………

 

 

 

 

 

 

後書き

無識:色々あったが全て不完全燃焼に終わる。

ファル:いいの?こんな終わり方で。

無:まだ早いからね、役者も全部揃ってないし。

  ………ただ一つの誤算は深雪だけだ。

深雪:えーー!どうしてですかー?

無:なんでギャグキャラになっちゃうかな、君は!

  一度ギャグキャラと認識されちゃうと、

  シリアスでもオチがつくと読者は期待しちゃうんだぞ!!

ツバキ:オチをつける作者が悪い。

無:シリアスの中にある一服の清涼剤のつもりだったんだよ(本当です)

 

 

 

代理人の感想

 

期待しちゃ・・・ダメ(爆)?