逆行者+突破者

 

 

 

 ………今朝のことは詳しく話せない。

 というか、話したくない、思い出したくも無い。

 ただ一ついえることは…………、

 

 

 

 

 エンタイトルツーベース君VS昂氣(朱金)

 

 

 

 

       引き分け!

 

 

 

 

「ふっ、アキト以外で俺と対等に戦える奴がいるとはな」

 

「えーーと、ギャグの話の中でだけですけどね」(汗)

 

 とりあえず北斗さんの服も購入して、

 只今は焼肉屋で食事中。

 

「それにしても二人とも、肉ばっかりじゃなくて野菜も食べましょうよ」

 

「そうだけど、昨日昂氣をたくさん使っちゃったからね。

 手っ取り早いエネルギー補給にはやっぱり肉だよ」

 

「俺もアキトの意見に賛成だ」

 

 ガキン!!

 バシッ!!

 ヒュバシュ!!

 

 そんな事を言いながら、二人は激しい肉の取り合いをしている。

 やれやれ。

 サッ、と奪い合っていた肉を取り、食べる。

 

「「ああっ!?」」

 

「行儀の悪い二人がいけないんです」

 

 あのままじゃ、焦げそうでしたしね。

 

 

 

 

 

 食後のコーヒー(僕は紅茶)を飲みながら、

 アキトさんと北斗さんの話は和平などの方向に進んだ。

 

 和平はアキトさんの願い………、

 だが和平が成り立つと、アキトさんや北斗さんなどは、

 社会からどうしても、厄介者として扱われることになる。

 

「そういえば、アヤトは和平についてどう考えているんだ?」

 

「そうですね………僕自身は正直に言うと深く考えていません。

 ただ、アキトさんが和平を願うから、協力している訳です」

 

「ふん、なら俺がアキトと戦おうとしているのにはどう思うんだ?

 大切なアキトが死ぬかもしれないんだぞ」

 

 北斗さんの問いに苦笑を浮かべる。

 

「どうぞご自由に、って感じです。

 お二人の生き方を、僕がどうこう言う気はありませんから。

 ていうか、アキトさんに加担するのだって自分の為なんですから」

 

 ちらっとアキトさんを見てみると、複雑な表情を浮かべている。

 

「アキトさんには悪いとは思いますが、

 僕にとって重要なのはアキトさんの生死ではなく、

 アキトさんが人間のままでいられるかって事ですから」

 

「?…………どういう意味だ?」

 

「気にしないでください、北斗さんには関係ないことですから」

 

 薄笑いに近い表情を作って、僕はそう答えた。

 

 

 

 

 

 そして、そろそろ帰ろうとしていたその時、

 

 誘いをかけてくる敵が出てきた。

 

 北斗さんは躊躇無く、殺気を放っていた黒コートに向かい、

 アキトさんは火災警報機を作動させる。

 僕は複数の敵を警戒して周囲を見渡した。

 その時、

 

「……え?」

 

 ひどく間の抜けた声を、僕は上げてしまった。

 

 眼鏡をかけた、銀髪の少女。

 特におかしな所の無い、平凡なその子を見て、

 場違いなまでの………違和感を感じた。

 

 

 ――何でこの子………生きてるんだろうって――

 

 

 ドゴォォォォォォォンンンン!!!

 

 意識を戻したのは、突然の爆音。

 見上げた先には、落ちてくる天井っ!

 

 

 

 

 

 あー、いてて。

 なんとか、大きな怪我も無く俺は生きている。

 

 天井が落ちてきたあの時、アヤトは………、

 落ちてきたコンクリートの脆い部分を正確に見極め、

 持っていた十数本のナイフを、その部分に正確に投げ当てて、

 塊のコンクリートをバラバラに砕いた。

 

 まあ、欠けらになったコンクリートでも十分脅威だ。

 それに俺が耐えられるかは、一種の賭けだったがな。

 

 

 

 アキト達はもう戦いを始めている。

 敵さんが俺の事を眼中に無いのはいいんだが、

 ………アキトや北斗は少しぐらい俺の心配をしてくれてもいいだろうに。

 ……前向きに、信じられてるって思っとくか。

 

 

 戦いは乱戦になっている。

 これだと下手に飛び込んだら不利だな………。

 

 俺がどうしようかと逡巡していると、

 アキトの方にボール大の光る球が飛んできた。

 アキトがそれを避けると、そのまま壁にぶつかりはじけて消えた。

 飛んできた方向を見ると、眼鏡に銀髪のガキが一人………。

 

「なるほど………後方支援の仲間だったのか」

 

 すぐさま俺は、そいつの方に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 ………あたしは右手を、黒髪のターゲットの方に向ける。

 センサーが大気中の電磁場勾配を測定し、

 瞬時に空間を微積分して振幅と周波数を設定する。

 そうすることにより、右手から発生した電気は孤立波(ソリトン)になり、

 球電となって空間を飛ぶ力を得る。

 

 バシュッ!!

 

 球電は一直線にターゲットに向かうが、

 あっさりとかわされてしまう。

 エル達と戦ってる状態で、あれをかわすんだ。

 若干のデータ修正を加えて、ふたたび右手を向けた時、

 

 シュンッ!!

 

 嫌な予感を感じて、とっさに後ろに下がったあたしの鼻先を、

 ナイフが掠めて飛んでいった。

 驚いて飛んできた方を向くと、黒髪の子供がこっちに向かってきていた。

 あわてて電気を指先に集中させる。

 

 バババババッ!!

 

 五本の指から放たれた、五つの小さな球電は一斉に敵に向かうが、

 走りながらの横移動で全てをかわしてしまう。

 一気にあたしに肉薄すると、

 

 ドゴッ!!

 

「がはっ!」

 

 あたしの腹に爪先からの蹴りをくらわしてきた。

 

 ………………………………………痛い。

 

 さらに、

 

 ガスッ!

 

 裏拳をあごに放たれ、あたしは仰向けに吹き飛ばされる。

 

 …………………………痛い。

 

 そこへ馬乗りに乗っかってきて、とどめをさそうとしてくる。

 右手につけられた爪が、真っ直ぐにあたしの喉に迫る。

 

 …………………多分、刺されたら、すっごく痛い。

 

 それは………………………、

 

 

 …………………………嫌だ!

 

 

 

 

 

 ガシッ!

 

 喉を狙ったスケアクロウの一撃を、そいつは右手を掴んで食い止めた。

 

 バチィッ!!

 

「がっ?!」

 

 掴まれた所から焼けつく痺れを感じて、俺は一瞬怯んだ。

 その隙に、そいつはマウントポジションから脱出する。

 そして、両手をこっちに向けて、

 

 バシュッ!!

 

 ひときわ大きな電撃を放ってくる。

 かわせる距離じゃない事を判断すると、

 ナイフを投げて迎撃した。

 

 バチィィィンッ!!

 

「「っ?!」」

 

 あたりに予想外の電撃を撒き散らす。

 ちっ、金属のナイフと変な風に反応したか。

 

 さらに距離をおいて、再び対峙した時、

 

「トール!引くわよ!」

 

 アキト達と戦っていた女の方から、そんな声が飛んでくる。

 トールと呼ばれたそいつは、こっちを見ると、

 

「…………痛かったからね」

 

 と、ぞっとするほど無邪気な笑みを浮かべて言った。

 

 そしてトールは、仲間と合流して、

 黒服の男が放ったディストーションフィールドが、デパートを崩壊させた。

 

 

 

 

 

 あたしはエルにさっき戦っていた人の事を聞いた。

 

「ああ、資料で見た気がするわ。

 確か……ツバキとかいったかしら?

 あいつらの次に強いらしいけど、侮ってたわね。

 まあ、後援のあなたが苦戦したからって、悔やむ事は無いわ」

 

 そう言って、頭をなでてくる。

 

「………ねえ」

 

 思っていた質問を聞いてみる。

 あたしより経験豊富なエルならわかるだろう。

 

「あいつを死ぬほど殺したくなったの。

 これって、ヒトメボレって言うんだっけ?」

 

 なぜかエルは、変な顔をして固まった。

 

 

 

 

 

「生きてるか、アヤト?」

 

「………ぎりぎりって所ですね」

 

 アキトさん達も、結構な重傷らしい。

 ほんと、難儀な人達が出てきたもんですね。

 

 あの、トールって言う少女。

 

 なるほどあの子も、僕達よりの場違いな子、か。

 

 …………深雪さん並に嫌いですね。

 

 

 

 

 

 

 その手に雷を授かった少女………

 その心は無垢にして無知………

 理性にも本能にも染まらないほど無垢で………

 ……死ぬことも生きることも知らないほど無知………

 

 

 

 

 

 

後書き

無識:新キャラのトールちゃん登場っ!!

ファル:寡黙&不思議系のロリっ子ですね〜。

無:ああ、でも、そんないたいけな少女を、うちのツバキはぁぁ!

  蹴るっ!殴るっ!あまつさえ馬乗りっ!!

  さて、その心境をトールちゃん、一言どうぞ。

トール:………………痛かったです。

フ:もー、この犯罪者!もはや責任の一つや二つはとらないとねえっ!

ツバキ:おまえらな〜〜〜〜〜〜(怒)

    いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 ドガッ! ズガッ! バキッ!

 

深雪:……え〜と、実際は殺伐とした子供の喧嘩、という感じです。

 

 

 

 

代理人の感想

祈! ラディカルグッドスピード復活ッ!

 

 

まぁ、それは置いといて。

そう言えばツバキも子供だったんでしたっけ。

いやぁ忘れてました(笑)。