逆行者+突破者
くそ………
意識せずに僕は毒づいていた。
サツキミドリ2号に潜入した僕達は、敵の襲撃を受けていた。
サツキミドリを地球に落とす。
そんな事をすれば地球には多大な傷跡を残すことになる。
なによりも、そんな事になったらもう和平なんて出来なくなる。
なんとか阻止できないかとヤガミさんや僕達が潜入したのはいいが、
敵……それもこの前のブーステッドマン達の襲撃が待っていた。
そのため、僕は皆とははぐれてしまい、
「よかった………また逢えた」
無邪気すぎる笑みを浮かべたトールが、僕の前に立ちふさがっていた。
「よかった………ですか、僕は会いたくなかったですけどね」
「あれ?……、前と『なにか』違うね」
「アヤトって言います。
もっとも、今は詳しく話す気は無いですけど」
「ふーん、まあいいや」
そう言うと、こちらに向けた右手に青白い光球が生まれる。
「……どうせ殺すんだし」
バシュッ!!
飛んできた球電を身をひねってさけ、そのまま僕は逃げ出す。
「あっ?!逃げるな、こら!!」
「残念ですけど、今回の目的はトールと闘う事じゃないですから」
すかさず、右手で投げナイフを二本投げる。
バシュバシュッ!
トールは球電で撃墜しようとするが、
「えっ?」
ナイフは球電を素通りして、
ザクッザクッ!
「きゃっ!」
トールの肩と足に突き刺さる。
よし、これで足止めになったな。
トールに投げたナイフはポリカーボネイト樹脂の特別製。
絶縁体で突くのに向いている、対トール用に作った武器だ。
「悪いですけど、そこで大人しくしていてください」
そういって、僕は皆の所に向かって駆け出した。
アヤトに投げられたナイフはあたしの右肩と左足の腿に刺さっていた。
幸い、そんなに深くは刺さっていなかったけど………、
………すごく痛い。
特に抜いた時が一番痛かった。
…………絶対殺す。
だがその時、Dからの集合命令がかかった。
……………次は絶対殺す。
そう思いながら、あたしはなぜか笑みを浮かべていた。
僕が皆と合流したとき、全員無事でいた。
ついでに………あんまし会いたくなかった人もいた。
「……こんな所で会うとはね、チハヤさん」
「ええ………本当にね」
結局、クリムゾンにも捨てられたチハヤは、
僕達とともにナデシコに来ることを選んだ。
「出来れば、そのまままっとうに生きてください。
それまでなら、僕もあなたを守りますから」
「そう……うん、そうね」
……前にあったときより、吹っ切れましたかね。
「………おい、あいつらいつ知り合ったんだよ?」
「………こっちが知るかよ!まったくアキトといいあいつといい……」
「………うう、僕もいいかげん頭にきますよ」
「なにか言いましたか?」
「「「いいや、別に」」」
?………まあいいか。
他の人たちは皆、先に脱出ポッドでサツキミドリを飛び出した。
後は僕とチハヤさんとジュンさんだけだ。
「………何で僕が……ラブラブカップルの隣……」
なんかジュンさんはぶつぶつ言ってるけど、
まあ、些細なことですし。
そして、僕が乗り込もうとしたその時、
嫌な予感を感じて、僕はその場から飛びのいた。
ドガッ!!
それまで僕のいた場所で、破壊的な音が鳴り響く。
そこにいたのは、カエンと呼ばれるブーステッドマン。
「よう、ちょっとナオに恨みがあってな。
あいつに死ぬほど後悔させてやろうと思ったんだがな………、
そういやお前には仲間が世話になったんだよな。
気が変わったよ………てめえはこの場で死ねっ!!」
こっちに突っ込んでくるカエンに向かってナイフを投げる。
ナイフは心臓に刺さる………が、かまわず突っ込んでくる。
「はっ、すでにそこは壊れちまってるよっ!」
カエンの右ストレートを辛くもガードする。
だが、その衝撃でこちらの体勢は崩れる。
「ちっ!てめえ如きに炎を使うのは勿体ねえが……」
カエンの右手を炎が纏う。
「……大人しく焼け死になっ!!」
その右手を体勢を崩しているこちらに繰り出してくる。
…………………ふう、……
…………まったく、命懸けとは……
……本当に、救い様が無いですね………
左手の痛覚、温感を遮断。
カエンの炎の右手を無感覚の左手で受け止める。
「なにっ!?」
右手でナイフの刺さった心臓に掌底を放ち、
ナイフをそのまま抉り込みつつ、カエンを押し倒す。
「ぐがっ!」
そして僕は真上に飛び、カエンの喉にめがけてナイフを投げ、
僕自身も蹴りを喉にめがけて繰り出す。
………本当はこの技、使いたくなかったんですよね。
………アイツが考えた技だから……ね。
しゅうげき けづめ
襲撃の蹴爪
ゴガシャッッ!!
ナイフは喉に突き刺さり、
蹴りはそのナイフを楔にして、喉を貫通し、踵で完全に踏み砕いた。
「……本当は、僕の趣味じゃないんですよね。
………たかが殺しの技に、名前付けるのなんて」
カエンはもう、動かない。
対人型用では、かなりえぐい殺し方ですからね。
「………生きるのに諦めてしまったあなたに、
何かを成し遂げられる訳が無いんですよ。
………それでは、さようなら」
そして、倒れこむように脱出ポッドに乗り込む。
「アヤトっ!!」
「アヤト!大丈夫か!」
「……ジュンさん、とりあえずポッドを打ち出して」
「わ、わかったっ!」
・・・ドゴン!!
……僕たちのポッドも、無事打ち出された。
後はやっぱり、神頼みならぬアキトさん頼みか……
ちょっと口惜しいな……、
結局、僕の成果は人を一人、殺しただけだったからな。
「アヤト………その手……」
「…うっ!」
チハヤさんが驚愕し、ジュンさんが顔を背ける。
改めて左手を見てみると………、
あ〜あ………、
もう、使い物にならないですね、これは………。
アキトさんはブローディアの『封印』を解き、
見事にサツキミドリを破壊した。
……文字通り、跡形も無く。
これで、御偉方はアキトさんを排斥しようとするな。
肉体的にも、アキトさんは極度の衰弱で意識不明。
ついでに僕の左手。
………これが、代償か………
破壊を誘う巨星は………
解き放たれた漆黒の竜に喰われて消えた………
目覚めた竜が導く明日は………
……破壊と、怨嗟のみか………
後書き
無識:ダークアヤト登場!さっそく名前キャラを一人殺害!
アヤト:えぐい殺し方に注目してくださいとの事です。
無:いやー、わたしゃ殺し合いは大好きだね。
ファル:……やだなー、こんな作者のキャラなんて。
無:はっはっはっ、キャラの生殺与奪は私次第ー!
ザクッ!! バチバチッ!!
深雪:……すいません、とりあえず狩っときました。
トール:……ストーリーの平和はあたし達が守る。
ア:最後にポリカーボネイト樹脂の元ネタをくれたラルさん。
どうもありがとうございました!
代理人の感想
うわ、スプラッタ(爆)。
なんかの映画で倒れこんだゾンビの口にスコップを突き刺し、
体重をかけてそのまま踏みぬくと言うシーンがありましたが。
ああ、思い出しちゃいましたよ〜(エロエロエロ)。