逆行者+突破者
「落ち着きました?アヤトさん」
首をコキコキとほぐしながら聞いてくる深雪。
まあ、首が直角に曲がりましたからね〜。
僕の方もひとしきり騒いだら、とりあえず落ち着きましたし。
「ええ、状況から推測すると、ここはシャクヤクの深雪の部屋なんですね?」
部屋に椅子が一個しかなかったので、
とりあえず今まで寝ていたベットに座る。
「ご名答。殺風景な部屋ですいませんが」
ゴジ○型コーヒーメーカーでコーヒーを入れて持ってくる。
……なぜかコーヒーカップの絵柄はキン○ジョーだった。
「それで、なんでそんなにアヤトさんはかわいくなっちゃったんですか?」
ジェロ○モのコーヒーカップを傾けながら質問してくる。
「……ツバキの時には禁句ですよ、それ」
「なんでですか?」
「女装恐怖症というか……この姿を見たら壊れちゃうかもしれませんね」
その状況を想像してしまい思わず笑ってしまう。
「けど本当に綺麗ですよ。
まあ、天使の笑顔ってよりは魔女の微笑ですけど」
それは………喜んでいいのかな?
「身体の成長については、元々18歳なんだから足りないぐらいですよ。
なんにしても、変化にきっかけはナノマシンですね。
山崎にナノマシンをうたれた所までは覚えてますから」
「ああ、そういえば僕がアヤトさんを攫った理由もそうでしたね。
それにしても腕や眼が再生してるのはどういう事で?」
「ああ、それは僕が『鬼』になったからですよ」
「………それはおとぎ話に出てくる鬼ですか?」
疑わしいといった口調で深雪は言ってくる。
まあ、信じられないのが正常な判断ですね。
「僕の言う『鬼』は人間から派生した亜種という意味です。
詳しい事は説明し切れませんけど、
これでも僕は中位の鬼ですから、腕などの再生は可能です。
左眼の金色などは同時にナノマシン強化体質になったという事でしょう。
ジャンプ……跳躍できたのもその為ですね」
もっとも、ジャンプ自体は『彼女』が、
僕を強制的に排除しようとして起こした事でしょうけど。
「しかし、なんでナノマシンをうっただけで、
鬼なんて非常識なものになったんですか?」
「多分ですけど、遺伝子を組み替えられたんでしょう。
ちょうどうたれた後は、鬼であるツバキに換わってましたし、
特に僕の場合、脊髄に直接うたれましたからね。
鬼と人間の大きな違いの一つに血液があります。
まず血液が変化し、それから全身が作り変えられたんですよ」
ツバキにとって、鬼になる事は悲願だったでしょうからね。
……人でいたい僕にとっては、悪夢ですけど。
「あっ!そういえば、アヤトさんに渡しとく物があったんですよ!」
深雪は布に包まれた細長い物を手渡してくる。
持ってみるとひんやりと冷たい。
「なんですか、これ?」
「冷凍保存しておいたアヤトさんの左腕」
ボガッ!!
深雪の顔面に向けて、力いっぱい投げ返した。
「捨ててください、つーか焼いちゃってくださいっ!
まったく、そんな気色悪いものいりませんよ」
「ううう……、でもですね……」
顔を抑えながら、拾い上げた左腕を突きつける。
「さっきの話を鵜呑みにするなら、
もう人間の身体はこれだけになっちゃったんでしょう?
ならアヤトさんが納得のいくように処分してください」
「……………………」
……確かに正論ですね。今度は素直に左腕を受け取っておく。
「………そういえば、あのアヤトさん?」
「ちょっと待ってくださいっ!もうちょっとで4万点に行きそうなんですっ!」
和んでいた時に偶然見つけてしまったポケットゲーム。
懐かしさでつい熱中してしまい、もう少しで最高点です。
「アキトさんはどうしたんですか?
アヤトさんの後に捕まえられたはずなんですけど」
グシャッ!!
思っても見ない情報にポケットゲームも潰して問い詰める。
「それっ!本当のことなんですかっ!?」
「え…ええ、今頃は失敗して北斗さんが出動する頃じゃないですか?」
くっ!容易に想像できる。
確かにアキトさんが実験なんてさせられたら、
狂った獣と化すだろう。
なら、僕のやるべきことは………。
ドガッ!!
深雪の部屋のドアを蹴り破り、格納庫へと駆け出した。
「ちょっと、ドアを壊さないでよ〜」
………聞こえないふりをして駆け出した。
意外とアヤトさんも無鉄砲なんですね〜。
結局格納庫の場所がわからなくて、僕に案内させに戻りましたし。
それにしてもあの壊されたドア、
修繕費って僕持ちなんですかね〜、とほほ〜(泣)
ズザザザァァァァ!!
そんな事を思っている間にツバキさんが、
地滑りをしながら格納庫に到着する。
見るとちょうど北斗さんがダリアに乗り込む所だった。
「良しっ!!ギリギリセーフッ!!」
格納庫に居た人たちは皆こっちの方を振り向く。
あうっ、ツバキさんの隣に居る僕もちょっとドキドキです。
「ちょっと待った、北斗さんっ!」
「………ほう、ずいぶん様変わりしたな、アヤト。
それで、俺に何の用だ?」
呼び止められた北斗さんはアヤトさんの方をまっすぐ見ている。
その威圧感。そばに居るだけの僕でも鳥肌が立つ。
けれどアヤトさんは平然とし、北斗さんを見返しながら言った。
「アキトさんを殺すのは僕がやります。
ですから北斗さんはお引取り願おうと思いましてね」
北斗さんのような威圧感の無い声。
その声はただ冷たく鋭く響く。
そこに仲間としての温情は微塵も存在していなかった。
さっきは冗談で言ったが、その姿は本当に、
魔女というにふさわしい姿であった。
「ほう、お前がアキトを殺そうというのか?」
「ええ、機体は深雪さんのを借りますからご心配なく」
はぁっ?!いきなり何を言い出すんですか?
あぅぅ、けどこの状況で口はさむ勇気は〜ちょっと無い〜。
「……だが、俺もみすみすアキトを手放そうとは思わんがな」
「ええ、そういうと思いましたけどね」
空気が逆巻く……って、ちょっと待ってくださいっ!
もしかしてここで戦う気ですかっ!?
いやー!とばっちりはいやー!!
「はい、ストップッ!二人ともやめなさいっ!」
突然、舞歌さんが割り込んでくる。
……どっから出て来たんだ、この人?
っていうか、舞歌さん絶対出るタイミング計ってたな。
「よく考えなさい、ツバキアヤト君。
あなたと北斗でどちらが戦うのにふさわしいのかをね」
「…………………」
「それに、いくらポンコツ機体といえど、侵入者のあなたには貸せないわ」
ポ……ポンコツ………、
そ、それはいくらなんでも酷いっすよ………。
「…………わかりました。ではこの件は北斗さんに一任します」
アヤトさんは難しい顔をしながら、
それでも納得したように北斗さんを見送った。
「まっ、まあこれで良かったんじゃないんですか?
北斗さんと戦えばアキトさんが正気に戻る確率もありますし。
アヤトさんじゃ問答無用で殺しちゃうでしょ?」
「…………そうですね、僕もちょっと気が動転してました」
そんで結果は、見事北斗さんがアキトさんを正気に戻しました。
いやー、穏便に済んでめでたしめでたしです。
ちなみに、アヤトさんがナデシコに戻った時、
「「「「「「「なにぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!!」」」」」」」
「…………そこまで驚きますか」
「どうしたーっ!!アヤトーーっ!!!」
「……いや、どうしたと言われても」
「いやー、化けたもんだねー。
ちなみに誉めてるつもりだよ」
「……………そのわりに顔笑ってますよ」
「なんか………私より美人だね………」
「いや、そんな悲しそうな顔をされても………」
ついでにツバキくんが自分の姿を見た時、
「がぁぁぁぁぁぁっっ!!!俺は男だぁぁぁぁぁっっ!!!」
「だっ、大丈夫だっ!お前は男だぞっ!!」
「あっ、あははははははははははは!!!!!!」
「やばいっ!壊れ始めたぞっ!!」
「は、ははは………あなたは………神様?………」
「やっ、やめろっ!!そっちに行くなっ!!」
「神よっ!俺を導いてく…」
「「うるさいっっっ!!!!」」
メキョグギャシャァァッッ!!!
「どぅぐはぁぁぁぁぁぁ!!」
メティちゃんの崩拳とチハヤちゃんのホーロー鍋が炸裂っ!!!
何とかツバキくんは正気を戻しました。
やれやれ、手間がかかる子だね〜。
人外の力を手に入れた者………
人外に成り変った者………
世界を完全に切り離した者………
……世界はそれを嫌悪する………
後書き
無識:アヤトっ!!アーマー進化っ!!!
アヤト:って、デジ○ンかよっ!!
ファル:じゃあ、かみなりのいしでサンダーアヤトっ!
ア:古いっちゅーねんっ!!
深雪:えーと、えーと……。
ア:探すな、ネタをっ!!
浮かばなかったらあきらめいっ!!
トール:……どうどう、かっかしない。
無:鬼ツバキの実力は今後、明らかになります。
フ:これでアキトくん達とも良い勝負をするでしょう。
ト:………では次回「墓標÷過去」で僕と握手。
代理人のネタ
「俺は・・・・・手に入れたぞ! 鬼の力を!」
・・・さすがにこれだけだと、どこの何だか分からんな。
「お前ら人間はこのアヤトにとってのモンキーなんだよぉぉぉぉ!」
・・・これも古いな。
「チェェェェェンジッ! 鬼アヤト! スイッチオンッ!」
やはりこれか(爆)?