逆行者＋突破者
第二十九話Ａルート「剣聖×雷獣×鬼人」
―――空気が帯電する。
微電流が手足を走り、自律神経を無視して躍動する。
白光を光らせ迫り来る刃を紙一重でかわし、
特定震動を与えて力を持った球電を敵に向けて撃ち出す。
目の前の刃物を持った人は敵。
邪魔な敵はさっさ殺さないと……。
あたしにはやる事があるんだから。
しかし……、
キャリリッ！
突き出された長い刃物を手で滑らせ弾く。
お返しに側頭部に向けて飛び蹴りを放つ。
カンッ！
短い刃物で防がれ飛び去るように後方に下がる。
うまくいかない……イライラする……むかつく……。
まるでうまくいかないルービックキューブのような戦い。
攻撃の一手一手が噛み合わず、無駄に終わる。
それもこれも、みんな目の前のこいつのせい………。
人形みたいな無表情で調子が狂う。
あんまり戦った事の無い刃物なのでやりにくい。
………理由は無いがとにかく腹が立つ。
地面ギリギリを疾走してくる長い刃物を蹴り上げて弾き、
浮いた胴体めがけて回し蹴りを叩き込む……が、
ガキッ！
やはり寸前で短い刃物で防がれる。
この防御用みたいな刃物が厄介なんだ………。
苦し紛れに球電を二発放つが当然あっさり回避される。
…………………我慢の限界。
…………一気にけりをつけよう。
ジェネレーターを１００％限界起動。
筋力を１５０％まで弱電流で引き出す。
こちらの変化を感じ取ったのだろう。
敵も構え直し、張り詰めた気配を漂わせ始める。
日常ではありえない静か過ぎる静寂……………。
――――敵が、動いた。
間髪入れず腕を振り、楔形の電撃を撃ち出す。
球状よりはるかに速く、まるで矢のように迫るが、
――――――速いっ！
さかかみかぜ
木連式弐刀術 奥義 逆神風
大きく弧を描くように旋回し、
あたしの背後で急停止、
即座に斬撃を繰り出そうとする。
………だけど、この距離を私は待っていた。
ガッ、ガギャンッ！！
「なっ！？」
長い刃物を右手で掴み、短い刃物を右腕に食い込ませ、止める。
パチッ、パチチッ！
内部の機械がスパークする………けど、それより……、
―――痛い………涙が出るくらい。
でも、それでも我慢して、必殺の一撃を与える為に左手を動かす。
ガッ、ググッ！
敵の胸、心臓の部分に手を当て、握り込む。
そして、心臓にとって致命的な電撃を放った。
バチィッッ！！！！
感電衝撃が心臓に直撃して揺さ振る。
そして………。
ドサッ………。
倒れず、膝を折ってひざまずく死体。
カラカランッ！
腕から刃物が落ちる。
痛い……痛い、痛い痛い痛い！！
今頃になって腕の痛みが響いてきた。
………眼鏡の内側が涙で濡れる。
どれくらい経っただろうか……。
唐突に、足音が響いてきた。
驚いてすぐに後ろを振り向く。
―――待ち人が、やっと来たのだ。