人類がいまだ解明できていない遺跡の中で一連の演算が行われていた。
まるで大河のように流れる膨大な演算の流れ・・・
その整然とした演算の流れの中に突如として不協和音が奏でられた。
『アラート。』
みれば演算の流れの中に赤く輝いている個所が存在している。
それは遺跡にとって忌むべきもの・・・
『ジャンプハザード検知。』
遺跡は、ジャンプハザード監視ユニットによる優先事項の発生を確認、自らに設定されている基準に従い瞬時にそのユニットの優先度を上げる。
優先度を上げられたユニットはそのまま入力される情報の取捨選択を続行する。
『太陽系公転軌道座標x:45.y:37.z:9にて2隻の宇宙船がランダムジャンプシークエンスに突入。』
『ジャンプ質量から周辺時空間への影響を予測する。』
『エマージェンシー。』
『時空間安定基準制限をオーバー。』
『緊急ジャンプ安定化ユニットの起動を要請。』
『承認手続き中・・・・・承認完了。』
『緊急ジャンプ安定化ユニットを起動。』
一連の情報収集を行っていたユニットからの緊急要請により、遺跡中枢部は非常時用ユニットの起動を決定。
起動された緊急ジャンプ安定化ユニットは即座に己の作業を開始する。
『ランダムジャンプ安定化プロセススタート・・・』
『プロセス実行中・・・・・』
『・・・・・・・・・・エマージェンシー。』
『ランダムジャンプ安定化プロセスの阻害要因を検知。』
遺跡の中枢部は困惑した。
通常であればランダムジャンプ安定化プロセスを阻害することは不可能のはず。
『当該宇宙船の1隻にランダムジャンプに対して矛盾するジャンプ制御コードを持つナノマシンを複数保持する生命体を確認。』
『現状のままでランダムジャンプ安定化プロセスを開始することはできません。』
『阻害要因の除去を申請します。』
『阻害要因の除去方法のレポートを要請する。』
『ランダムジャンプシークエンス初期化時に当該生命体を粒子波動状態に変換。矛盾するジャンプ制御コードの内、優先度の高い1つを除いて当該生命体よりナノマシンを除去。その後、粒子波動状態より通常状態に再変換を行います。』
『阻害要因の除去時の問題点のレポートを要請する。』
ジャンプ可能な生命体の生命活動を害してはならない。
それは遺跡の最重要事項のひとつ。
それを犯すような場合、この方法が承認されることはありえない。
『ランダムジャンプシークエンス中に粒子波動状態に変換するため時空還流の影響を受けます。そのため、コード220Xの時空間にジャンプアウトすることは不可能です。』
『もっとも影響の少ないジャンプアウト時空間の算出を要請。』
『了解しました・・・・・現在算出中・・・・・』
『算出完了。当該生命体の最終的な不確定イメージより、コード2196へのジャンプアウトを推奨します。』
遺跡中枢部は緊急ジャンプ安定化ユニットの回答を自身の最優先規則と照合。
規則に抵触しないことを確認した。
『阻害要因除去申請を許可する。』
『了解しました。除去を開始します。』
『粒子波動変換シークエンススタート・・・』
遺跡の措置により、人類の一人であるテンカワアキトは一時、人類ではなくなった。
だが・・・
『エマージェンシー。』
もしも、音量が観測できればこれまでの警報音に倍する音量が観測できたであろう。
少なくとも、緊急ジャンプ安定化ユニットにとってまったく予期していなかった更なる非常事態が発生したのだ。
『粒子状態変換中にジャンプ制御ナノマシンが相互干渉を起こし、ナノマシンの一部が暴走を開始しました。』
『この影響により当該生命体のランダムジャンプが失敗する可能性が著しく上昇しています。』
その報告により遺跡中枢部内最優先ユニットのひとつ、生命活動保護ユニットが起動する。
『当該生命体の生命活動を保護する最良の方法の検索を要請。』
『了解しました・・・・・現在検索中・・・・・』
『算出完了。コード2196に存在する当該生命体の同一存在に粒子状態での融合を推奨します。』
『その方法の問題点のレポートを要請する。』
『当該生命体のみ粒子波動状態での融合は他の生命体との連動が取れず危険度が極めて大です。他の生命体も粒子波動状態に変換し各々の同一存在に融合する必要があります。』
『了解。当該方法を承認。』
『了解しました。当該方法を実施します。』
こうして、テンカワアキトに続き遺跡に生命体と認識される者達も、一時的に人類ではなくなった。
だが、遺跡にとってはそれは問題ではない。
ただ己の役目に従って処理を続けるのみ。
『コード2196への宇宙船2隻のジャンプアウト確認しました。』
『・・・問題は見受けられません。』
『生命体の同一存在への融合を確認しました。』
『・・・同様に問題は見受けられません。』
『了解。ジャンプハザードの対応を終了する。』
『緊急ジャンプ安定化ユニットの活動を終了する。』
『生命活動保護ユニットの活動を終了する。』
『割り込み処理の終了を確認。ジャンプハザード監視ユニットの優先度を低に再設定。』
『・・・・・』
こうして遺跡による一連の処理は終了した。
もっとも、これが始まりに過ぎないことは皆さんご承知の通りである。
独り言
・・・久しぶりに書いたSSがこれか(苦笑)
いったい何が言いたいんだ私?(^^;
鋼の城さんいわくピロ線菌保有者筆頭のはずの私が!(爆)
(↑言ってない、菌名を名付けただけでそんなこと決して言ってない)
ちなみに本文の一部を読んで中央公論新社や要塞シリーズを思い起こした人はそのまま黙って静かに笑っていて下さい。
それでは、本来のハンドルネームである鋼の城を改め、確固たる地位を確立した「代理人」さん〜(笑)
いつものようにSSのタイトル命名をよろしく〜。
えっ、改めた覚えはない?
代理人の反論
ないっ!(爆)
まぁ、それはさておき実はタイトル案はですね、
「我等のビッグファイヤBenの為に!」とゆーのも考えたりしたんですが。
採用案とどっちが良かったでしょうね?
ん? 感想?
いや、タイトルが全てなんですが(爆)。