月面での胎動

 

 

 

 

 

「こ、これは...」

 

月面にあるネルガル造船ドッグの最下層。

そこには、禍禍しくも美しいフォルムを持った漆黒の機動兵器が一機、鎮座していた。

 

「開発コードND−BSF000、機体名ブローディア。

 それがこの新型エステバリスの名前です。」

 

「・・・・・」

 

ここまで案内してきた整備班長の説明を上の空で聞き流しながら、しばしの間、無言で眼前の機動兵器を

凝視していた。

しかし、このまま無言でいるのもせっかく説明してくれている作業班長に悪いよね。

「BSF?どういう意味なんだい?」

 

「何でも、ブラックサレナファイナルの略称だそうです。」

 

その場で簡単に聞けることを質問し、ちゃんと説明を聞いていたよとアピールしつつも意識はこの

ブローディアという機体に吸い寄せられたままだった。

現在ナデシコに搭載されているブラックサレナをさらに上回る、史上最強の機動兵器。

ただし、並みのパイロットでは動かすことすら難しい。

これほどの機体を半年以上も前から製造していたとはね。

 

テンカワ君、君は本当に隠し事が多いね。

 

思わず、そうつぶやいてしまう。

ナデシコの深夜の格納庫で聞かされたテンカワ君の話には正直なところ度肝を抜かれた。

あれほど驚かされたことは今までの人生で一度もなかったな。

地球圏でもごく一部の人間しか知らないはずの木連、その木連との和平交渉の準備、

そしてネルガルの株の買い占め、それも巧妙なダミーを経由して本当の持ち主が分からないようにしてあると

きたもんだ。

しかも、彼は両親がネルガルによって暗殺されたことを知っていた...

にもかかわらず、それを親同士のことだから水に流そうと僕にいってくるとはね。

このぶんだとおそらく火星極冠遺跡の件もテンカワ君にはバレバレだろうね。

やれやれ...

テンカワ夫妻の暗殺を知ったとき、ここまでする必要があるのか疑問に思ったことは事実だ。

そして、そんなことを考えた自分はどうやら根っからの悪党にはなれないと分かった。

だから、会社の利益を確保しつつもおちゃらけた会長をやってきた。

それが、兄さんを亡くして会長にならざるを得なかった自分を守るための術だったんだが...

こんな出来事が待っているとはね。

ほんと、人生ってわからないものだ。

 

「スペックを詳しくご覧になりますか?」

 

「ここにくる前にざっとスペックには目を通してきた。

 それに、そんなもの見なくてもこいつがとんでもない力を秘めていることは分かるよ。

 これでも僕は一流のエステバリスライダーのつもりなんでね。」

 

「なるほど、そうでしたな。」

 

整備班長の申し出を辞退し、僕は漆黒の機体を凝視しつづけた。

それにしても、こいつはもうナデシコに搬入できるのかね?

 

「こいつは完成しているのかい?」

 

「基本部分は完成しています。

 しかし、最終調整が終わるまではとてもじゃありませんが完成したとはいえませんね。

 小型相転移エンジンに、縮小版オモイカネ級の中枢コンピュータ、そしてマイクロブラックホール砲。

 全く、これで機動兵器っていうんだから世の中何が起こるかわからないもんですな。」

 

「物理的に必要とされる機器は全て組み込んでありますが、肝心のコンピュータOSの部分は私達の方では

 ほとんどタッチしていません。

 これからくる製作者にお任せするしかないというのが実情です。」

 

「まあ何にしろ、こいつが前代未聞の化け物ということは保証しますよ。」

 

整備班長は機体をなでながら、少々悔しそうに僕の質問に答えた。

なるほどねぇ。

一目見ただけで、これが並みの機体でないことはわかったけど、こうして簡単に話を聞くだけでこいつが

とんでもない代物だということが実感できるねえ。

 

「ふーん。月面基地のメカニックの中でも、鬼班長として知られている君の言葉だ。

 信じるよ。」

 

「お褒めの言葉はありがたいのですが、こいつを設計したのは誰かそろそろ教えていただきたいですな。

 これまでは、極秘事項ということで一切合切謎のまま組み立ててきましたから。

 正直、あまり気持ちのいいもんじゃありません。」

 

僕と同じように漆黒の機体を見上げながら整備班長が尋ねてくる。

ふーん、防諜も念入りに行われていたわけね。ほんと、たいしたもんだよテンカワ君。

 

「設計者はこれに乗るパイロットだよ。」

 

「はっ?」

 

聞き取れなかったのか、それとも信じられないのか聞き返してくる。

まあ、普通はすぐには信じられないかな。

 

「これの設計者は漆黒の戦神その人だ。

 自分の乗る機体を自ら設計して製造させていたんだよ。」

 

「そうですか...」

 

おやおや、ちょっと呆然としているね。

いや、あきれているのかな?

まあ、無理もないか。普通はパイロットは機体の設計なんてしないし、ましてやこいつはこれまで聞いたことも

見たこともないような未知の技術がこれでもかといわんばかりに使われているからねえ。

 

しかし、ここまで全てのことに先手先手を打たれると、かえってすっきりするものだな。

再び機体に目をやりつつそんな風に思う。

いや、正しくないな。

そう、自分自身に訂正の言葉をかける。

僕は間違いなく悔しさを感じている。だが、それ以上に現在の状況を楽しんでいる。

それが正解だ。

そう、自分自身を騙すことはできない。

ネルガルの会長としては失格だけど、テンカワ君が次に何をしてくるかわくわくしながら待っている僕がいる。

まさか、僕にこんな気持ちがまだ残っているとはね。

でも、悪い気持ちはしないな。

ブローディアの優美なフォルムを目で追いながらそうごちる。

 

「会長、そろそろお時間です。」

 

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ姫君達の騎士を迎えにいくとしますか。」

 

自分でも楽しそうな声だと思いながら、僕はスペースポートに向けて歩き出した。

これから先も僕を驚かせてくれる人物を迎えにいくために。

 

さてさて、テンカワ君。次はどんな風に楽しませてくれるのかな?

 

 

 

独り言

 

時の流れにのアカツキって何かいいやつだな〜。

でも、実際はどう考えているんだろう。

アカツキを主役にできる個所はどこかな?

本編検索開始。

検索中...

検索中...

発見!

ほほう、なるほど、ここが使えるな。

よし、このシチュエーションを使って適当に書くとしよう(笑)

 

カキカキカキ

 

結果、こうなった(爆)

うーん、書いた本人にも何が言いたいのか良く分からない(苦笑)

まあ、不幸じゃなさそうだからいいか。

時の流れにには不幸のツープラトンがいるし(笑)

そうだ、Benさん時の流れに不幸度ランキングとかやりません?

それとも、やるだけ無駄かな(苦笑)

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

鳥井南斗さんから15回目の投稿です!!

アカツキですね〜

ある意味、目立たないキャラの彼ですが・・・鳥井南斗さんに拾われたようです(爆)

確かに、アカツキを一人で活躍させる場は少ないですよね。

この格納庫の場面も、話の都合上出せないシーンの一つですしね(苦笑)

 

ですが、不幸キャラのトップは聞くまでもなくあの人でしょうね(笑)

 

それでは、鳥井南斗さん投稿有難うございました!!

 

さて、感想のメールを出す時には、この 鳥井南斗さん の名前をクリックして下さいね!!

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