藪から蛇・・・とも言う
「ラピス、さっきから何しているの?」
ハーリーは不思議そうにラピスに声をかけた。
ここはナデシコ艦橋。
そして今現在、当直を兼ねて艦橋にいるのはハーリーとラピスだけだった。
もっとも、当直といってもオモイカネに全てを委ねてしまっていて特にすることはない。
・・・ないはずなのだが、ラピスは先程から忙しそうにIFSでオモイカネにアクセスしている。
普段でも、そんなにすることがないはずなのに、しかも現在、ナデシコは月面ドッグに入港中なのだ。
そんな中、忙しそうにしているラピスに、疑問に思ったハーリーが声をかけるのも無理はないだろう。
「ねえ、ラピスってば!」
「・・・ハーリー、うるさい。」
「ご、ごめん。」
ラピスは一言でハーリーを切って捨てた。
強気ででられると、途端に逆らえなくなるハーリー・・・
このあたり、教育が行き届いているといっていいのだろうか?(笑)
しかし、打たれ強いのがハーリーの持ち味である!(爆)
そして、ハーリーの打たれ強さがどれほどのものかは、皆さん、既にご存知の通り!!(核爆)
ラピスから返事を得られないと理解したハーリーは、自分もオモイカネにアクセスし、ラピスの痕跡をトレースし始めた。
[これって、月面シティのネットワークだよな?]
[何しているんだろう??]
[・・・月面シティのネットワークへのハッキング???]
ハーリーのアクセスは特にオモイカネに弾かれることなくラピスの痕跡を追うことができた。
しかし、ラピスが月面シティのネットワークへのハッキングをしていることがわかってもハーリーの疑問は解消されず、
むしろ、ますます好奇心を誘った。
[よし、もっと追いかけよう!]
そう決心したハーリーは、ラピス同様、月面シティのネットワークにハッキングを開始した。
一方のラピスは、ハーリーが自分のハッキングの痕跡をトレースしてきているのを気づいていたが、
[邪魔しなければいいや。]
[それにわかったらわかったで楽しめるし♪]
と思い、特に何もせず放っておいた。
そして、目当ての情報をそのまま収集する。
ハーリーは、厳重ではないもののそれなりの目くらましがかけられたラピスの痕跡を簡単に追跡していた。
普段の様子から既に女性陣の玩具とかしている印象の強いハーリーだが(笑)、彼とてマシンチャイルドの一人。
その能力はルリとラピスを別格とすれば他のものにおさおさ引けを取るものではない。
さらに、追跡されているラピスが本気ではない以上、その後を追いかけるのもそう困難なことではなかった。
[これは、月面シティの監視カメラのネットワークだ・・・]
[いったい何の映像を集めているんだろう?]
ラピスの最終的なハッキング先を突きとめたハーリーは、その映像を自分のモニターに表示させた。
そして、その映像に映っている人物に思わず声を上げてしまった。
「こ、これはサブロウタさん!?」
そこには月面シティの街角で女性をナンパする木連の大関スケコマシこと高杉三郎太の様子が
「ででん!」とばかりに写っていた。
[なんでラピスがサブロウタさんの映像を集めているの???]
頭の中でクエスチョンマークを大量にぷかぷか浮かべながら、うんうん考え込んでいたハーリーのすぐ耳元で、
ささやくようなラピスの声がした。
「見たね、ハーリー?」
ピキッ!
至近距離から浴びせられたラピスの低く甘い声にハーリーの身体はその神経シナプスの電流の流れを狂わせ、
動きを凝固させた。
数瞬の沈黙・・・
そして、ギギギッという音が聞こえてくるようなぎこちなさでラピスが座っていたはずの席の方を振り向く。
そこには、いつのまにかサブオペレーター席から降りてハーリーのすぐ後ろに立っているラピスがいた。
「やあラピス、いい天気だね。」
混乱のあまり訳の分からないことを言い出すハーリー。
しかし、冷ややかな笑みを浮かべたラピスはそんなハーリーをあっさりと無視した。
「見た以上、ハーリーも共犯だからね。」
「共犯って、一体何の?」
「何でもいいの!とにかく見た以上ハーリーも共犯なのは決定なんだから!!」
結構無茶苦茶をいうラピス。
その無茶苦茶さにカチンときたのか固まっていたハーリーが珍しく言い返した。
「僕はラピスのハッキング先を調べただけだろ!
それがなんで共犯になるんだよ。」
ハーリーが言い返すとは思っていなかったのか、ラピスは一瞬驚いた顔をするが、すぐさま先程より深い笑みを浮かべた。
「ふーん。そういうこと言うんだ。」
「な、何だよ!?」
ラピスの深い笑みに言い返したことを既にマリアナ海溝よりも深く後悔しているハーリーだったが、つい虚勢をはってしまう。
「じゃあ、ハーリーが当直の時に集めているルリの映像集について本人に言ってもいいよね?」
「な、何でそれを!?」
秘密を保てていると思っていたことをあっさり暴露されて、瞬く間に剥がれ落ちるハーリーの虚勢であった。
「ふふん、ハーリーが当直の時にこっそりオモイカネにアクセスしているのを気がつかないとでも思っていたの?」
ズズンッ
致命的な弱点を押さえられたハーリーに、もはや逃れる道はなかった。
「それじゃ、ハーリーはこのままサブロウタの映像を集めて。
私は集めた映像の編集をするから♪」
「・・・はい。」
首根っこを押さえられたハーリーはラピスのいうことに唯々諾々と従うしかない。
それでも最後の勇気を振り絞ってラピスに尋ねる。
「ねえ、ラピス。こんなサブロウタさんの映像を集めていったいどうするの?」
そんなハーリーの疑問に、ラピスはあっさりと答えた。
「サブロウタがナンパしている映像を編集して木連への報告書に添付するの。」
「はいぃ!?」
ラピスの返事にコンソールに手を伸ばそうとした格好のまま、再び凝固するハーリー。
「アキトが悪い影響を受けないように、悪い虫は排除するの。
害虫は早期駆除が基本だから。」
そういって浮かべたラピスの表情にハーリーは背筋を凍らせた。
それでも、未来の自分の危険を察知したのか声を振り絞ってラピスに哀願する。
「で、でも、僕がそんなことを手伝ったってサブロウタさんにばれたらいったいどんなことをされるか分からないよ!」
それを聞いたラピスは小首をかしげ、頬に指を当てながら無邪気そうに尋ねた。
「将来、サブロウタに報復されるのと、今すぐ、ルリにお仕置きされるのとどっちがいい?」
「・・・・・」
真っ白になって固まるハーリー。
そのハーリーの脳裏では、まるで今、人生の終焉を迎えたかのように、
これまで受けてきた数々のお仕置きが走馬灯のように流れていた・・・
すると、そんなハーリーの目の前にでかでかとオモイカネのウィンドウが表示される。
[ハーリー、あきらめが肝心だよ。]
「・・・・・そうだね・・・」
そう返事をすると、のろのろと監視カメラからの映像の収集に取り掛かるハーリー。
彼の脳裏では一つのことわざがエンドレスでループしていた。
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
好奇心、猫を殺す...
...後日、ラピスの策通り?見事薔薇色の鎖に繋がれたサブロウタが、その遠因の一つとなったこの事件で(笑)、
ハーリーが映像収集を手伝っていたことを知り、ハーリーに再教育を施すのはまた別のお話・・・・・
独り言
ハーリー&ラピス登場!
いやあ、いじめられてますねぇ、ハーリー君。
でも、これでこそハーリー君という気がするは私だけ?(爆)
今回の話は、もちろん本編18話3日目が元になっています。
サブロウタのナンパ映像を添付したラピス。
まさか、その目的が害虫(笑)の早期駆除だったとは...
哀れサブロウタ(爆)
でも、そのおかげで無事、人生の墓場入りしたんだから文句はないだろうな・・・多分。
それに、巻き付いている薔薇色の鎖は1本だけだし!
アキトみたいに十数本、へたをすれば20本を超えそうな鎖に比べれば、全然問題なし!
・・・ないよね?
管理人の感想
鳥井南斗さんから22回目の投稿です!!
想い出のワンシーンですね。
あの頃は複雑な事を考えなくて良かった・・・(核爆)
しかし、ハーリーも自ら虎口に飛び込むとは。
あい変わらずチャレンジャーな奴よのう(苦笑)
まあ、今回の事を教訓にして今後は無駄な事をしないように!!
・・・でも、無理だろうな(笑)
それでは、鳥井南斗さん投稿有難うございました!!
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