その姿を現すだけで彼女達に生気を吹き込んだか...さすがだな、アキト。

にしても、

「やっ〜ぱり、生きてたよ。」

「まあ、殺しても死なない奴ですからね。

 隊長もそう思うでしょう?」

おいおい、この時・この場所でその台詞を言うのか。

...カズシ、お前ナデシコに来てから命知らずになったな?

正直、俺は周りの視線が恐いぞ...

「・・・野暮な事は、言わない方がいいぞ〜」

「へ?」

どうやらまだ理解していないみたいだな。

だが...もう遅い。

一度言った言葉は取り消せないぞ?

「カズシ補佐官殿・・・

 後で私達の招待を受けて貰えますか?(はーと)」(ブリッジの女性陣)

「え、遠慮をしたいな〜〜〜〜、ははははは・・・」

健闘を祈るぞ、カズシ。

すまんが俺にはどうすることもできないからな。

もし必要になったら香典ぐらいは奮発してやるから安心してくれ。

 

 

 

時の流れに十七話補完

中年おやじのひとりごと

 

 

 

 

戦闘は続いているにもかかわらず、先程までの沈みようが嘘であったかのように艦橋は

明るい雰囲気に包まれていた。

人は希望を持つことで生きていける。

戦場であろうとそれは変わらない。

いや、むしろ戦場にこそ希望が必要だといえる。

そして、彼女らにとってアキトは希望そのものということか。

戦闘状況を表示するウィンドウを見ながら俺は無言でそう考える。

その戦況ウィンドウには危機一髪の状況に陥っていたアリサ機とリョーコ機が突然出現したアキトの機体に救われたことを示されている。

「艦長、アカツキ達に当面は戦線維持を最優先するよう伝えたほうがいいだろう。アキトが戻ってきた以上、

 無理な攻撃をかける必要はないしな。」

「そうですね。ルリちゃん、お願い。」

「わかりました。」

艦長の指示に対しホシノルリが応答する。艦橋にいる女性は皆嬉しそうだが、その中でも

彼女が一番嬉しそうだな。まあ、あれだけ悲しむほどアキトに想いを寄せているんだからそれも当然か。

埒もないことを考えながら、再度ウィンドウに目をやると、アキトから分離した機体が

アリサ機とリョーコ機を回収してこちらに向かっているのが見えた。

「アキトに対しての援護射撃は不要だ。

 かえってあいつの邪魔になりかねない。砲火は、アカツキ達の方に集中し、その間に

 アリサ機とリョーコ機を艦内に収容したほうがいいな。」

「ミナトさん、ナデシコ左舷急速回頭!

 回頭終了次第、アカツキさん達に援護射撃集中斉射!!」

「了解!」

艦長の指示に敏速に反応する乗組員達。

さすがにアキトが信頼するだけのことはあるか。

こちら側のエステバリスが防御戦闘に集中したため、アカツキ達の方は戦線が膠着状態になっている。

数的劣勢を考えると上出来だろう。もし、余裕があればヤマダ機も回収したいところだが、さすがにそこまで贅沢はできないか...

 

まあ、彼は不死身だと聞いたことがある。

多分、大丈夫だろう。

 

あっさりと区切りをつけると、俺はもう一方の戦いに注意を移した。

そこでは案の定、アキトと北斗が常識を逸した戦闘を展開していた。

「やれやれ、本当に機動兵器同士の戦闘かねぇ。」

「いうだけ野暮ってもんですよ、隊長。」

しばしその戦闘を見守った後、俺とカズシは顔を見合わせると深いため息をついた。

あんな常識はずれの戦いをされちゃ、作戦も何もあったもんじゃないなあ。

「「ふうー。」」

「敵機、後退します!」

ため息をついていた俺とカズシははじかれたように顔をウィンドウの方に向けた。

そこには、確かに後退していく北斗の機体とそれに追撃をかける様子のないアキトの機体が写っていた。

また、北斗の機体の後退に合わせて、アカツキ達の方の敵機も後退を開始し始めているのがわかる。

「ダリアは左腕を損傷しているようです。追撃しますか?」

ホシノルリが艦長に対し確認している。

さて、どう答える、艦長?

「追撃はしません。もし、他に伏兵がいた場合厄介なことになります。それに、アキトも新型機に慣れる時間が必要です。」

見事だ、艦長。

「ヤマダ機とアキトを収容した後、この空域を離脱します。ミナトさん、コースの算出よろしく。」

「任せて。でも、艦長はどうするの?」

ハルカミナトが怪訝そうに尋ねる。

「もっちろん、アキトのお迎えだよ(はぁと)」

返事と同時に一陣の風と化した艦長の姿は、すでに艦橋から消えていた。

 

・・・・・見事だ、艦長(汗)

 

「やれやれ、艦長にも困ったものね。」

ハルカミナトが苦笑しつつ隣席のホシノルリに話し掛けている。しかし、話かけられたホシノルリの方はそわそわして落ち着かない。まあ、無理もないが。

「ミナトさん、ルリくん、二人ともアキトの迎えに行ってくれ。」

俺が話し掛けると二人ともびっくりしたような顔で見返してくる。

「艦橋には俺とカズシがいれば十分だ。それにオモイカネもいるしな。」

そういって正面の方をみる。

 

[大丈〜夫、まーかして!]

 

と、でかでかとウィンドウが表示されていた。

どうも、最近読んだ古典漫画の影響を受けているようだが・・・まあ、オモイカネだしな。

「ほら、オモイカネもこういってくれてることだし、行ってくれないか。」

「でも...」

ハルカミナトはまだ躊躇の様子を見せている。多分、艦長から頼まれたことが引っかかっているんだろう。

そう判断した俺は、すっと近づくとホシノルリに聞こえない程度の声で話し掛けた。

「貴方が行って下さらないと、彼女達が暴走した場合、手綱を取れる人がいませんよ。」

その一言にハルカミナトは驚いた顔をしたが、同時に納得したように深く肯いた。

「ルリルリ、アキトくんを迎えにいくわよ。」

「はい!」

嬉しそうにうなずくと、彼女は跳ねるような足取りでハルカミナトと連れ立って艦橋を出ていった。

そんな彼女達を笑って見送りながら、俺は内心アキトに話し掛けていた。

 

アキト...

お前は以前、言っていたな。

血に狂い、戦いに酔いしれる自分が恐いと。

この艦に乗る前は、確かに俺も一抹の危惧を感じていた。

だがな、この艦に乗ってそれが無用の心配だったことがわかったよ。

ここが、お前の守るべき場所であり、戻るべき場所なんだと。

この艦に彼女達がいる限り、お前は狂ったりしない。

この俺が保証してやる。

だから、安心して自分の思う通りに行動しろ。

お前自身と彼女達のためにな。

 

 

 

ところで、俺は花婿1人に対し、何人の花嫁がいる結婚式の仲人をすればいいんだ?

その点ばかりはなんの保証もできんぞ?

 

 

 

独り言

 

オオサキシュン提督登場♪

 

お茶目なのに、渋いですねぇ。

なんか、一部お父さんといった感じですけど(苦笑)

第二部でもなかなか渋い役回りを見せているシュン提督。

このころはカズシもいましたしねぇ・・・

最近は、第二部で一番最初に大魔王の毒牙にかかるのは誰か心配で心配で・・・(^-^;)

でも、シュンよ、カズシの墓碑銘になんて書いたんだ?

すっごく気になるぞ?(笑)

 

 

 

 

代理人の感想

 

う〜む、ちょっとやりすぎだったかなこのタイトル(笑)。

 

でもまともな中年ってこの人とカズシくらいしかいないんですよねぇ、「時の流れに」では。

(ちなみにサイゾウさんは未登場)

まあ、「まともなキャラ」自体が少ないという話もありますが。

一応ナデシコだし(笑)。