穏やかな時間

 

 

 「ここは・・・」

 ぼんやりと開いた目にうっすらと人影が入り込んでくる。

 「目が覚めた?」

 鈴を鳴らすような声音で問い掛けられ、俺の意識は覚醒を果たした。

 「・・・イネスさん?」

 「おはよう、アキト君。」

 にっこり微笑みながら、挨拶してくるイネスさんの顔が妙に近くにある。

 そして、後頭部に感じる柔らかな感覚・・・・・

 誰がどう見ても膝枕の状態だった。

 「えーと、ああ、そうか・・・」

 事情の説明を求めようとして、俺は何があったのかを思い出した。

 

 

 まあ、簡潔に事情を説明すれば、事故だったんだよ、うん。


 ・・・・・そう考えなければ、ユリカの料理を口にしてしまうようなことが起こるはずがない(爆)


 それにしても、以前より破壊力が上がってないか?ユリカの料理?

 そんな風にこうなるに至った原因を思い返していると、何時の間にかイネスさんの指が俺の髪を、まるでようやく手に入れた愛しいもの・・・そんな風に梳いてくれていた。



 暖かい・・・


 ふと、そう思う。

 ここのところ、落ち着けるような状況ではなかったため、これほど静かな時間を持てたのは久しぶりだ。

 そのままイネスさんに髪を梳かれながら、今の時間をじっくりと味わう。

 

 うん。

 ナデシコらしいどたばたした雰囲気は大好きだけど、偶にはこんな時間があってもいいな。

 「珍しいわね?」

 「何がです?」

 そんな風に今という時をしみじみ噛み締めていると、瞳に悪戯っぽい光を浮かべたイネスさんが尋ねてくる。

 ずいぶんと上機嫌みたいだな。

 イネスさんの表情を見ながらそんなことを考える。

 「いつものアキト君だったら、とっくに私の膝から飛び起きていそうなものだと思うけど?」

 「確かに・・・」

 イネスさんの指摘に苦笑しながら、自分でも不思議に思う。

 でも、まあ、そんな日もあるのかもしれない。

 幼い日、何も考えずただ母の膝の上で甘えていた時のように・・・

 「ご迷惑ですか?」

 「だったら、最初からこんなことしていないわよ♪」

 俺の問いかけに、はずんだ口調で返事をするイネスさん。

 本当に嬉しそうだ。

 そういってもらえると俺も助かるな。

 「じゃあ、もうしばらくこのままでいいですか?」

 「もちろんよ。」

 そういうと、髪を梳いていた手で、今度は頬から顎先にかけてのラインをなぞり出す。

 「・・・ちょっとくすぐったいんですけど?」

 「ふふふ・・・」

 そう笑いをもらすだけで止めようとはしない彼女。


 まあ、膝を借りているのはこっちだしな。


 イネスさんの好きにさせることに決め、彼女の顔を見上げる。


 シャープさを兼ね備えつつも柔らかな曲線を描く頬のライン・・・

 理知的でありながら、悪戯な少女のような光を浮かべている瞳・・・

 きらめく太陽の光を取り込み、そのまま結晶化させたような輝きを持つ髪・・・


 こうして、改めてみるとイネスさんって、美人だよなぁ。

 つらつらとそんなことを考える。


 ・・・あれ?



 イネスさんの頬がに染まっていくな?

 「・・・アキト君(ぽぽぽっ)」

 そういって、みるみる耳の先まで真っ赤になる。

 こんなイネスさんは珍しいな?

 って、ちょっと待て!

 ・・・まさか、思ったことを口に出していたとか?(滝汗)


 じんわりと背筋に流れる冷たい汗を感じながら、あいまいに笑みを浮かべる。

 その笑みに、こぼれんばかりの微笑みを返す彼女・・・


 まずい!



 非常にまずい!!



 こんなことが他の彼女達にばれたりしたら!!!




 そんな俺の内心のパニックをよそに、頬を薔薇色に染めた状態のまま、イネスさんの顔が近づいてきた。

 「ありがとう、アキト君。

  これは、ほんのお礼よ・・・」

 そういって俺の頭を抱え込む。


 どこにって?

 もちろん、彼女の超弩級の胸にだよ・・・


 後頭部は、太股のむっちりした感じを味わいつつ、顔のあたりは、柔らかでありながらそれでいてはずむような弾力のある二つの果実をぴったりとくっつけられている・・・


 ううっ、いくら服越しとはいえ、これじゃ拷問だよ・・・


 他の男が知ったら、刺されかねないような感想を持ちながらも、ついついその感触を堪能してしまうアキト。

 ・・・・・彼もれっきとした煩悩を抱く一人の雄であった(爆)


 そんな状態がしばらく続き・・・

 唐突に終わりがきた。


 「アキトさん・・・」



 ピシィ!




 アキトは自分の身体が凍り付くのを黙ってみているしかなかった。

 これほどの殺気を浴びたことはかつて一度もない。

 この殺気に比べれば、あの北辰の放つものさえそよ風に等しい。

 そして、彼はこの声の持ち主を良く知っていた。


 イネスが抱え込んでいたアキトの頭を放すと同時に、ギギギッと思うように動かない首の関節を何とか動かし中空に開かれているコミュニケを見る。

 そこには、予想通り絶対零度の視線で彼の身体を貫こうかといわんばかりに、じっと凝視している銀髪の妖精がいた。

 その口元に浮かんでいるうっすらとした笑みが、アキトの恐怖をさらに誘う・・・


 「アキトさん?」

 「は、はい!」


 陳腐な表現だが、こういうのをヘビに睨まれたカエルっていうんだろうな・・・

 現実逃避とばかりにそんなことを考えているアキトだったが、妖精がそのままにしておくはずもない。



 「後で、いつもの部屋に出頭して下さいますよね、アキトさん?」




 彼に拒否権のあるはずもなく・・・


 お仕置き部屋行特急列車の指定席 に乗り込むアキトであった。







独り言

祝!初自力HTML化!(核爆)
・・・いや、そんな大袈裟なことじゃないんですけど、
今回初めて自力でTag打ちしてhtmlファイルにしてみたんですよ(苦笑)
いつもは鋼の城さんにやって頂いてたものですから、
どんな風に加工されるのかが、私の投稿の楽しみのひとつだったんですが、
ここまで投稿が多いとそんなことも言ってられないですよね。
今回、見づらいところがあったらそれは私のせいです(笑)
鋼の城さん、もし、おかしなところがあったら直して下さいねm(_ _)m
まあ、それは置いておいてと・・・・・

ただ、つらつらと文章を打ってみたらこんな風になった(笑)
いつ頃なのか等、さっぱり考えてません。
でもまあ、ラブラブだし問題なかろう。
・・・問題ないですよね、涼水夢さん?
この後、イネスさんも同盟法廷に出廷したのかなぁ。
その場合、書記はやっぱりあの方に出てもらうのだろうか?(笑)
今度、メールで聞いてみようかな(核爆)

 

 

 

代理人の感想

 

ふむ、こういうのもアリですよね。

人間誰かにすがりたくなる時、誰かにそばにいてほしい時と言うのは必ずあるものですから。

・・・・・・・まあ、オチはいつも通りでしたが(爆)。

 

なお、最初に題名を考えた時、「すべらかでそのくせむっちりとした太ももの感触」

と言う電波が飛びこんで来ていたのはここだけの秘密(爆)。