ふにふに。

 

 

 

 

 ナデシコ艦内の通路を、一つの人影が移動していた。

 「やれやれ、メグミちゃんも無理しなければ良いのに・・・」

 苦笑しつつ、胸元あたりを見下ろすアキト。

 そこには、アルコールによって薄紅色に上気したメグミの寝顔があった。

 ちなみに、現在の状況は、アキトがメグミの両膝の後ろと背中を両腕で支えている・・・つまり俗にいうお姫様抱っこと呼ばれる状態だ。

 なぜ、このような状況にあって、他の女性陣から邪魔が入らないかというと・・・

 何が原因かは不明だが、食堂にて行われた飲み比べで多数の女性陣が大破・沈没し、ナデシコの最大にして最後の良識防波堤ことホウメイの指示により、アキトがひとりひとり女性を抱えて、それぞれの部屋に送っている最中である。

 ・・・という状況が大いに影響している。

 しかし、普通、こんな場合は男性が女性を送ったりはしないような気もするが・・・そのために、世の中には、送り狼という言葉が存在するのだと思うのだが・・・

 まあ、ナデシコだしね。

 さらに、某同盟メンバーにとってはアキトが送り狼になるようだったら喜んで食べられるだろうし(爆)

 まあ、それはともかく、こうしてアキトは食堂から一人ひとり、抱きかかえては運んでいるわけである。

 ちなみに、他の男性(某組織上層部)がつぶれている女性を運ぼうとしたところ、寝返りによる裏拳などにより多数の負傷者が出ていたりする(笑)


 「むにゃむにゃ、アキトさん・・・」


 アキトの温もりに包まれていることが分かるのか、至極上機嫌のまま、時折幸せそうな寝言を呟きながら、運ばれていくメグミ。そんなメグミに苦笑を押さえながら、既に何人もの女性を運んだことなど全く感じさせない、力強い足取りで歩いていくアキト。

 ナデシコ艦内のよくある風景の一つである。

 やがて、メグミの部屋の前についたアキトは、よっと一声かけてメグミを抱え込み直すと、そのまま呼びかける。

 「オモイカネ、開けてくれ。」


 プシュ


 そのアキトの頼みにすかさず応じるがごとく、メグミの部屋の扉が開く。

 そう、某同盟メンバーの部屋の扉が、アキトの前に閉ざされることはないのだ。

 ・・・つーか、アキトだったら某同盟メンバー全員の部屋の扉をフリーパスで開けられるようになっているのは、公然の秘密である。もっとも、その権利をアキトが行使しようものなら、次の日から、どんなことになるか、考えるだに恐ろしい物があるが・・・・・

 アキトも薄々そのことに感づいているのだが、彼の場合、女性関係に関しては、危機察知能力と危機回避能力が極端に低下する、あるいは、全く機能しなくなるという極めてアレな男なので、導火線に火が点くのもそう遠い日ではないのではないかと、ナデシコ男性陣が考えているのも、これまた公然たる秘密である。

 「それでは失礼するね、メグミちゃん?」

 返事がないことを知りつつも、それでも律義に声をかけるアキト。

 案の定、メグミはむにゃむにゃと言葉にならないことを繰り返すばかりで、まともな返事は返さない。

 「さてと・・・オモイカネ、明かりも頼む。」

 それでも、生真面目にメグミを返事をしばし待った後、そうオモイカネに声をかけ、ゆっくりとメグミ部屋に入るアキトだった。

 「やっぱり、ひとりひとり違うものなんだな・・・・・」

 部屋に入ったアキトがしばらくして呟くようにいう。

 「・・・って、俺は何をいっているんだ(汗)」

 何故か、一人ぼけ一人突っ込みを、額に冷や汗を浮かべながら演じた後、あわてたようにベッドに近づき、起こさないよう静かにメグミを横たえる。

 そして、数秒様子を見、起きる気配がないことを確認するとそのままベッド際から離れようとする・・・




 ガシッ!




 ・・・正確には、離れようとした瞬間、メグミの両手が蛇のように伸び、アキトの襟首を掴んでいた(^^;)

 意識は戻っていないようだが、本能で自分にとっての心地よいものが離れようとするのを察知したのか、まさに電光石火と呼ぶのが相応しい早業だった。

 「・・・はあぁ〜。」

 一方のアキトは、己の襟首を万力のごとく掴んで放さないメグミの両腕に大きなため息を吐いていた。これまでの経験から、自分がメグミの両腕をはずすことができないであろうことが十二分に予測できたからだ。

 ・・・もちろん、彼の経験が、メグミだけで積んだわけではないことは自明の理である。

 ちなみに、こうなると、寝ているメグミを起こすしかないことも経験上よくわかっているアキトであった。

 「メグミちゃん、メグミちゃん・・・」

 決断したアキトがメグミの両肩をつかんで、優しく揺すりながら呼びかける。

 だが、メグミにはまだ目覚める様子がなかった。

 「メグミちゃん、メグミちゃん!」

 先ほどより、やや強く、それでも優しく揺すりながら呼びかけを続ける。

 すると・・・


 「う、うーん・・・」


 悩ましげな声と共に、不意に、パチリとメグミの目が開いた。

 そして、メグミの頭上にあるアキトと見詰め合う。

 当然のことながら、メグミを揺するためにアキトの身体は、ややベッドに乗り出すような状態になっている。

 「目が覚めた、メグミちゃん?」

 優しく微笑みながら、そうメグミに声をかけるアキト。


 「・・・アキトさん?」


 こちらは状況がわかっていないのか、不思議そうな声で返事をするメグミ。

 まあ、目を覚ましたら目の前に愛しい男性の顔があったりしたら、たいていの女性はびっくりするだろうが・・・・・

 「すまないんだけど、この手を放して「アキトさんだぁ!」

 アキトの願いをぶった切り、覚醒したメグミの両腕が襟元からいったん離れ、そのまま彼の首の後ろに回ると、そのまま自分に引き寄せた。

 「うわっ!」

 そんな声とともにベッドの上に倒れ込むアキト・・・

 ・・・正確には、ベッドの上に横たわったメグミの胸の上にだが・・・

 「アキトさんだ、アキトさんだ(はぁと)」

 「ちょ、ちょっと待って、メグミちゃん(おたおた)」

 がっちりと自分の胸にアキトの頭を抱え込み、喜びのあまりゴロゴロするメグミ。当然、アキトも彼女の動きに巻き込まれ、結果としてより強く顔をメグミの胸に埋めることとなってしまう。


 (メグミちゃんて、思ってたより胸あるんだな・・・)


 そんな風に、甘い匂い顔中に感じる甘美な刺激から逃れようと現実逃避的な考えをするアキトだった(笑)




 十数分後・・・




 ようやくのことでメグミの行動を止めることに成功したアキトだったが、彼の頭は、未だにメグミの胸の双丘に埋められたままだった。

 「あの、メグミちゃん?そろそろ放してもらえないかな?」

 「うーん、どうしようかな♪」

 にこにこ笑いながら(といってもアキトに彼女の表情は見えていなかったが)考え込むメグミ。

 「頼むよ、メグミちゃん。

 こんなことがばれたりしたら、今度はどんな目にあうことか・・・」

 メグミの胸に顔を埋めたまま、何とか説得しようとあがくアキト。

 もっとも、アキトが何かを話すたびにメグミの身体が胸からの刺激によって、まるで感電したかのようにビクッと動くのには、まるで気づいていなかった。さらに、メグミの顔が、アルコールとは別の意味で紅色に染まっているのにも、気づいていなかったのはお約束である。

 「どうしましょう?(あぁぁん)」


 ・・・メグミに何が起こっているのか、それは全くの謎であるが(爆)


 「ねえ、お願いだから。」

 「でも、もう遅いと思うんですけど?(はふぅ)」

 「・・・・・へっ?(汗)」

 その一言とともに、アキトの頭はようやくメグミの胸から開放された。正確には、それまでアキトから受けた数々の謎の刺激に、メグミの身体から力が抜けたというべきだが・・・。

 それと同時に、今迄、メグミの胸の感触によってオーバーフローしていた危機察知能力が復活する。

 そして、復活した危機察知能力は、全会一致でこのまま後ろを見ずに逃走することを推奨していた。

 もっとも、同時に復活した危機回避能力が、全会一致で回避不可能を提示しているところがとってもシュールだったが。

 それでも、絶望的な回避を行おうか思案したアキトだが、そうした場合の被害がかつてなく大きくなることを過去の経験から学んでいた彼は、内心、滝のような涙を流しながら後ろを向いた。




 そこには、氷の微笑を浮かべて彼を見ている妖精がいた。




 沈黙の空間・・・

 まるで、真空の世界にいるがごとく全ての音が消え去る・・・

 ただ、存在するのはこの世のものとは思えぬ美しき微笑のみ・・・




 それを崩したのは微笑の主である妖精だった。

 「アキトさん?」

 「はい・・・」

 「いつもの部屋に出頭して頂けますね?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・はい(がくっ)」

 こうして、毎度のことながらお仕置き部屋行特急列車の指定席に乗車することになったテンカワアキトだった。




 ちなみに、アキトはこの路線の定期券を持っていたりする(核爆)

 さらに余談だが、某組織主要メンバーと某投稿作家の一部が、同じ特急列車の行き先が違う定期券を持っているという未確認情報がある。一体、誰が持っているのかは全くの謎であるが・・・・・







 独り言

あははははは、前回と同じ落ち(核爆)
でも、今回の方が影響度合いは大きいはず・・・
某投稿作家って・・・・・いったい
なんでしょうね?

・・・
・・・・・
・・・・・・・・・・

まあ、それはともかくとして、議長に捧げるSSっす(笑)
・・・それともラブラブシリーズ第二弾?(^^;
なんか、メグミSSが書きたいかな?
と思ったら、あーら不思議、さくっと出来上がってしまったこのお話・・・(^○^;
意味は全くないですけど、すこしは転がって頂けるでしょうか?
少々、というか、か〜な〜り、メグミらしくないところがありますが
まあ、その辺は、目をつぶっていただければと(苦笑)
それとも、某組織構成員のようにめらめらと嫉妬の炎を燃やしていて
そのあたりは眼中になかったりして(爆)
ちなみに、シチュエーションや設定についての突っ込みは
受け付けませんのであしからず(笑)
特に、
とか(核爆)
しかし、HTML化ってセンスが問われるなあ・・・難しいものだ。

 

 

代理人の感想

 

タイトルつけるのってセンスが問われるなあ・・・難しいものだ(超爆)。

(その結果がこれか、と言うツッコミは却下)