注1)このSSはナデシコとは一切関係ありません。

 注2)このSSは時系列を中心に突っ込みどころが満載ですが突っ込んではいけません(爆)







 Scene1:発端



 今日も今日とて波瀾万丈の一日を終え、仕事帰りの夜道をてくてくと歩いている一人の男性がいる。

 外見は二十代後半のいかにもさわやか系の青年だが、某所では大魔王と呼ばれているこの青年、通称をBenという。

 「はあぁ〜、疲れたなあ、もう。仕事は忙しいし、バイクにはなかなか乗れないし、力石には雪辱できないし、カラオケじゃ、皆でよってたかって追い詰めるし、そんなにダークがお望みなら本当に皆殺しエンドにしちゃるぞ、まったく・・・」

 ・・・・・失礼、どうやらとんでもなく鬱憤がたまっているらしい(笑)

 と、突然複数の黒い人影が闇の中より忽然と現れ、Benを取り囲んだ。

 「Benだな?」

 人影達のリーダーとおぼしき、鋼のごとき雰囲気を纏った人物(爆)が質問の形を取った確認をする。

 「そうですが、な、何ですか、あなた達は?・・・というか、代理人、その格好は何?」

 唖然としたままだんだら模様の入ったACTION風羽織袴姿の謎の人物を見やるBen。

 「ふっ、今の我は代理人にあらず!

  我らは、私設北斗応援団真紅の羅刹!

  Ben。お前は、自らの書いたSSの中で北斗様をあろうことか朝帰りさせたな?」

 「ち、ちょっと待て!あ、あれは話の展開上やむを得なかったんだってばぁ!

  それに最近は、真紅の羅刹に真っ正面から挑戦する北ちゃんSSが山盛りじゃないかあ!」

 「むろん、きゃつらにはそれ相応の償いをしてもらう。

  だが、まずは諸悪の根元たる貴様からだ。

  そもそもいつまで俺に感想を書かせる気だ・・・(ぼそっ)

  やれ!」

 

 パチンという指鳴りと共に一斉にBenに襲いかかる羅刹達。


 「「「「「天誅ぅぅぅ!!!」」」」」


 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 ・・・しばし後、アスファルトの上に夜の闇でひときわ黒く見える液体が、街灯の光の下、倒れ伏したBenの下からゆっくりと広がっていった。

 「ふっ、今回は北斗様に一線を超えさせなかったことに免じて命までは取らん。

  だが、もしも今後同じようなことがあれば・・・・・

  我らはまた現れる。そのことをよく覚えておくのだな。」

 その台詞と共に羅刹は次々と夜の闇に消えていく。

 「次は十傑衆がひとり、命の鐘の森田正義を抹殺せねばな・・・だが・・・しかし・・・更新が・・・・・」

 最後まで残っていたリーダーとおぼしき鋼の人物も何やら謎な一言を残して闇の中に姿を消す。



 深深と冷え込む冬の夜の下、人影が去った路上ではピクピクと痙攣するBenだけが残されていた...











 Scene2:激突



 自宅に向かって街角を音も無く歩いている森田正義。

 と、突然その前後を複数の人影によって遮られた。

 「森田正義だな?」

 人影達のリーダーとおぼしき影が、森田正義の正面に歩み出ると質問の形を取った確認をする。

 「そうだ。」

 特に動揺した様子も無く森田正義は質問に応じる。

 「・・・ふむ。どうやら我らが何者かわかっているようだな?」

 「ああ。ActionHomePage界最強と呼ばれる武闘派集団、真紅の羅刹の構成員達だろう?」

 「その通り。では、我らが何故に貴君の前に姿を現したかも理解していような。」


 じわり・・・


 その一言と共に、森田正義を囲む人影から、まるで陽炎のごとく闘気が立ち上る。



 「真紅の羅刹の行動原理は唯ひとつ。

  全ては北斗のために・・・だろう?

  ならば、お前達が北斗の尊厳を貶めると判断した人物への制裁がその目的だと黙っていてもわかるさ。」

 「たいしたものだ。さすがは十傑衆のひとり、命の鐘の森田正義だな。」

 「おだてるなよ。俺はお世辞に弱いんだ。」

 そういって、照れたようにぽりぽりと人差し指で頬のあたりをかく。

 しかし、そんな男の様子を見ながらも周りを囲む男達の気配は小揺るぎもしていない。その男達のもつ気配はまるで殉教者のように一色に染まっている。




 わずかな沈黙の空間・・・




 それが、頬のあたりをかいた状態のままの男に崩される。

 「さて、おおよそ用件の見当がつくが、尋ねるのが礼儀というものだろう。

  俺に何の用かな?」




 そして、決定的な一言が下される。




 「我ら真紅の羅刹、例え十傑衆のひとりといえども北斗様を愚弄した罪は贖って貰わねばならん。」




 ザアッ




 リーダーとおぼしき人物の断罪の言葉と共に、それまで立ち上るだけだった闘気が、一斉に中心に向かって吹き付ける。だが、なまじの者ならばそれだけで気死しそうなほどの圧力を受けながら、森田正義はその闘気をまるでそよ風をのごとく受け流し、平然と言葉をつむぐ。

 「ふむ。あの独特の気配がないな。”衝撃”はいないのか?」

 「党首はActionHomePage界の更なる拡張のため日夜戦っておられる。よって、党首に代わり突撃隊隊長こと、我、音威神矢がお相手仕る。

 いざ!

 「ほう?真紅の羅刹突撃隊隊長音威神矢か・・・

  噂は聞いているよ、断罪の斧の二つ名をもつ者よ。

  だが、”衝撃”なしで、俺を討とうとは舐められたものだ。

  よかろう・・・・・十傑衆がひとり、命の鐘の森田正義、いざ参る!




 いまここに、真紅の羅刹 vs 命の鐘の森田正義の戦いが始まろうとしていた。










 Scene3:傍観者あるいは扇動者



 





 街の一角から爆風が吹き上がる。

 ビルの屋上でその爆風を頬に受けながら、その人物は楽しそうに戦いを観戦していた。

 「くっくっく、真紅の羅刹が命の鐘の森田正義に戦いを挑んだか。

  まあ、北斗至上主義の連中にしてみれば、あの話は容認できなかっただろうな。」



 ドオォォォン!

      ドオォォォン!

           ドオォォォン!



 連続して街から爆炎の柱が天に向かって立ち昇る。

 「ほう。さすがは武闘派集団真紅の羅刹の突撃隊隊長を名乗るだけのことはある。たいした攻撃力だ。」

 その人物は、心の底から楽しくてしょうがないとばかりに、眼下の闘いを夢中になって眺めている。

 「しかし、暮れなずむ日和見としてはどう行動すべきかな?」

 戦闘見物の合間に、ふとそうつぶやく。

 「このまま見物しているだけでは灰色の魔女の二つ名に申し訳がない。

  なあ、そう思わないか?」

 日和見は眼下の闘いから視線はそらさずに、そう後ろに声をかける。

 「・・・そうかもしれんな。」

 いつのまにか日和見の後方、数メートルの場所に現れた一人の男性がそれに応じた。

 「やっぱりそう思うかい?なら、あんたはどうしたらいいと思う、”直系”よ?」

 「勘違いしないでもらおう。私は貴君の考えに賛同しているわけではない。」

 Enopiはそう答えながら、静かに日和見から1m程離れたビルの端にまで歩み寄ると同じ様に眼下の闘いを見下ろした。

 「へえへえ、相変わらず議長はお固いこって。」

 日和見はそういっておどけたように肩をすくめる。

 だが、Enopiはそんな日和見の行動を咎めようともせずに、眼鏡をくいっと直すと、眼下の闘いを悲しげな瞳で見つめていた。

 そんなEnopiの様子を見ることなしに見ていた日和見は、まるで子供がとっておきの悪戯を思い付いたかのように、にやりと笑みを浮かべ、戦場とは反対方向に視線を飛ばす。

 視線の先には何もない。

 だが、まるで何かを見つけたかのようにしばらく視線を動かさずにいる日和見。

 傍目には視線で何かを伝えようとしているようにも見える。

 やがて、満足したのか、視線をEnopiに戻すと馴れ馴れしく問い掛けた。

 「やはり、メグミ至上主義者としては、崇める対象が違っても別の至上主義者が気になるかい?」



 「・・・私の前でメグ様を呼び捨てにするのは止めてもらいたいものだ。」



 「そいつは失敬、失敬!

  じゃあ、言い直そう。メグたん至上主義者として気になるのかい?」

 「・・・ああ。何せ、彼らは我らが組織の真の宿敵なのでな。」

 再度の問いかけに、眉を顰めるEnopiだったが、律義に答えを返す。

 「そうかいそうかい、わかったよ。多分、あんたは俺が手を出して火種を大火事にするんじゃないかと思っているんだろ?安心しな、今回は両者の闘いに手は出さんよ。俺はな?

 「・・・感謝・・・・・すべきなのだろうな?」

 「おうっ!目一杯感謝してくれ!」

 「抜け抜けと言うものだ・・・」

 日和見の楽しげな言葉に、苦々しい表情を浮かべ、Enopiは先ほど日和見が視線を飛ばしていた辺りを見やる。そのまま数秒、じっと見つめていたがあきらめたように首を振ると視線を戻す。

 そして、その言葉を最後に両者の会話は途絶え、爆音のみが辺りを包んでいた...






 日和見とEnopiが視線を飛ばしていた辺り・・・

 何もなかったはずのその場所に、いつの間にか薄いもやのようなものが浮かんでいた。

 「けっけっけ、お任せ下さい日和見様。Enopi殿との約定にて動かない貴方様に代わり、BB団がエキスパートのひとり、この這いよる混沌ORACLEが、闘いに相応しい、きらびやかな舞台を整えてご覧にいれましょう。」

 もやが集まり、一人の男性が姿を見せるとビルの屋上に向かって深々と一礼し、再びもやと化して消えていった。






 一方、その闘いを潤んだような瞳で別の場所から眺めている人物がいた。

 「素晴らしい・・・」

 極上の美酒に酔いしれるかのように、うっとりとした様子のまま、それでも食い入るように闘いから目を離さない。

 「己が理想をかけてぶつかり合う漢達・・・なんて情熱的なんだろう。

  この熱い光景は、是非とも残しておかなくては・・・・・素晴らしき八影の名にかけて!」

 そう言って、八影はすっと右手を顔の前に掲げる。

 すると、右手の掌から一本の絵筆が出てくる・・・・・身体の中から。

 ひょっとして、GBに出てくるDr.ジャッカルの親戚だろうか?

 もっとも向こうが取り出すのはメスなんだが・・・



 「ふふふ、我が筆は絶えることなく、そして、我が前では森羅万象あらゆるものが我の画布と化す。」



 その言葉と同時に右手の絵筆が踊りだす。

 絵筆が通過した空間に色彩がきらめく。

 見る見るうちに、八影の前が色彩で埋まりそして、一枚の絵画が完成する。



 激闘という名の絵画が・・・



 「フフッ、八影流画術の一『百画繚乱』・・・・・まだまだこれからさ♪」



 そうつぶやくと、八影の右手を休ませることなく踊り続け、次々と絵画を生み出してゆく。

 しばらく後、八影の周りの空間は数十枚の絵画で埋め尽くされた。

 だが、それを生み出した当人は・・・・・




 「足りない・・・」

 そう言って、何かを渇望するように辺りを見渡す。

 「もっと描きたい。もっと熱い闘いを、もっと大規模な闘いを、もっと激しい戦いを、怒涛のごとき闘いを・・・・・

 それからしばらくの間、自らの欲求に悶々としていた八影だったが、とあることに気づき、ころっと機嫌を直した。

 「ちょっと考えれば、策謀大好きという方々がこんなイベントほっとくわけないよな。

  何やら、灰色の魔女も影で動く気配みだいだし。

  よし、この闘いが大きくなるよう私も協力するとしよう!」

 いそいそと空間に描き出した絵を回収すると、今度は新たに扉の絵を十数秒で描き出す。

 「さて、それじゃ、ちょっと準備を整えてから出直しだ。」



 カチャ



 自分で描いた空間の扉絵を開けると、そのまま扉の中に入る八影。

 八影が扉の中に消えた後、扉絵はそこに元から何もなかったかのように自らの姿を消した・・・・・










 Scene4:全ては創造主の望みのままに



 「真紅の羅刹と命の鐘の森田正義が激突したようだ。さらに、火種を大きくしようと策謀好きの者たちを中心に動き始めているようだが・・・・・」

 黒檀のような深い色合いのソファに腰掛けた人物が、目の前の人物に話し掛ける。

 「止めなくてもよろしいのか?」

 「フッ・・・

  止められたからといって、闘いを止めるような彼らではないでしょう?」

 そう答えた人物は、サイドテーブル上のワインをグラスに注ぐと相手の目の前にそっと置いた。

 「冷えているうちにどうぞ、師匠。」

 そういって、今度は自分のグラスにワインを注ぐ。

 「・・・今の貴方なら、彼らを止めることなぞ造作もないと思うがな、BIG-Benよ?」

 「ふふふ・・・私が決して動かないことを知っていながら、そういうことをいうとは、相変わらず人が悪いですね、師匠?

 ワインの入ったグラスを目の前でゆっくりと振り、そのグラスから湧き上る豊潤な香りを楽しんだ後、そのままワインで喉を潤したBenは不敵な笑いを浮かべながら、マルよを見つめる。そのさまは、重厚にして剛毅、優雅にして華麗、畏怖を感じさせながらそれでも思わず目で追うことを止められない、帝王という存在の具現化そのものであった。

 そう、これこそが混世魔王マルよしか知らないActionHomePage界の創造主、支配者としての面をあらわにしたBIG-Benであった(本邦初公開)。

 「・・・確かにな。」

 「ええ。これは私の望んだ世界の有り様ですから。」

 そういってBenはワイングラスを手にソファを立ち上がると、ゆっくりと窓際まで歩いていった。

 「十傑衆をはじめとする多くのつわもの達には本当に感謝していますよ。いかに創造主とはいえ、私だけでは、この世界をここまで大きく育てることはできませんでしたからね。」

 そういって、まるで世界に捧げるようにグラスを掲げるBen。

 「貴方の持論、世界の成長には混沌が必要・・・か。」

 そのBenをみながら呟くように言葉をもらすマルよ。

 「その通りです。

  私は、私にかしずく臣下など必要としません。

  私が必要としているのは創造主にすら刃向かう混沌の申し子達・・・

  そう、師匠、貴方達のような人たちなのですよ。

 「そのために自ら道化を演じるか・・・」

 そう感慨深げにいったマルよの視線は、テーブル脇のウィンドウに映し出されている真紅の羅刹によるBen

 の襲撃映像に向いていた。

 Benはそれには応えない。


 しかし、その無言こそが肯定の返事であることをマルよは誰よりもよく知っていた。伊達にActionHomePage界で師匠と呼ばれているわけではないのである。


 「そういえば、乾杯の音頭がまだでしたね。」

 そんなマルよを横目で見ながら、ふと思い出したかのようにBenが言葉を上げる。

 「・・・そうだったな。だが、何について乾杯するつもりだ?」

 いぶかしげに視線をBenに向けるマルよ。

 だが、その視線は実に楽しげなBenの視線に迎え撃たれた。

 「ふふ、決まっているじゃないですか。

  私に刃向かい、そしてこの世界に活力を与えてくれる混沌の申し子達に・・・」

 「・・・混沌の申し子達に。」




 「「乾杯!」」




 チンッ




 静寂の中、ただワイングラスがぶつかる音だけが響いた...







 敬称略




 この話はフィクションです。実在の人物、団体には一切関係ありませんのでご了承ください(笑)










 独り言



 そういえば、去年の終わりごろ、投稿作家を登場させる小話を掲示板に書いたなあ・・・

 そこで、そのファイルを引っ張り出し、加筆修正を加えたのがこれである。

 もったいないから投稿しておこうと考えたんだが・・・

 なんだかなあ(苦笑)

 ちなみに鋼の城さんの服装は新撰組の隊服で背中にACTIONと入っているのをイメージしてください。

 いや、真紅の羅刹の隊服を考えていたらそんなBen波を受信してしまって(爆)

 ところでこれ、楽しんでくれた人いるのかね?

 でも、Benさんをかなり格好いいと思うのは私だけだろうか?

 それに他の方々も妙に格好がいいような???(爆)

 ・・・いつもお仕置き部屋でしか見かけないからなあ(笑)

 ・・・まあよいか。

 こんなBenさんもありということで(^○^)




 でも、マルよ師匠に夢落ち返しを食らったんだよな、この話(笑)

 

 

 

 

代理人の感想

懐かしいなぁ。

このオリジナルが掲示板に載った時はまだ代理人じゃなかったんですよね、私も(笑)。

まぁ、思うことは色々ありますがそのうち一つは作中で代弁してくれてるので良しとしましょう(爆)。

タイトル?

ああ、些細なことですのでお気になさらぬ様。

 

 

注:「邯鄲の夢」 中国の古い小説に登場する話で、

  若者が立身出世し栄耀栄華を欲しいままにして天寿をまっとうした後、

  気が付いてみればそれは粥が煮えるまでのわずかな時間に見た夢に過ぎなかった、という話。