アキトとセイナが睨み合ったまま二分過ぎた。

 しかし、依然として両者の様子は変わらない。

 二人の周りで動いているのは風と緊張感で震えるタクマだけだった。

 そのまま永遠に続くかと思われた視線のみの攻防は近年、誰もが持っている電子機器によって破られた。

  トゥルルル、トゥルルル

 音源はセイナの胸ポケットだった。

 「……取らないのか?」

 「そんな隙見せるわけにはいかないでしょ。」

  トゥルルル、トゥルルル

 しかし、携帯電話は一向に止まない。セイナは留守電にしとくんだったと後悔するが、今更遅い。

  トゥルルル、トゥルルル

 とうとう、セイナがポケットから携帯を取り出す。

 「………」

 『あんた、電話に出たら何か答えたほうがいいぜ。』

 電話越しに皮肉を込めた声が聞こえる。その声の主は一時間以上前に電話をかけてきた<アマルガム>の一員を名乗る男だった。

 「こんな時に何かしら?」

 答えながらもアキトからは一瞬たりとも目を逸らさない。

 『あんたたちはパイロットを取り戻せたのか?』

 「お陰さまで、今取り戻した所よ。」

 嘘をつく必要はなかったのだが前回の電話の内容を思い出してつい嘘が口に出た。

 『そいつは良かった。なら、取引材料はいらねぇな。じゃ。』

 「ちょ、ちょっと待ちなさい。協力お願いするわ。」

 『そうそう、人間正直に生きねぇとな。』

 「それで取引材料って一体何なの?」

 『そいつの連れていた白人の女だ。あんたたちはパイロットにこだわりすぎなんだよ。』

 「ご忠告ありがとう。それでどこにとりに行けばいいの?」

 全く感謝していない冷たい声音でセイナは聞く。

 『まぁ、いい。俺はそこから東に四百メートルほど行った所にある公園に居るから受け取りに来い。じゃぁな。』

 「どうも。」

 セイナは携帯を切ると、そのまま無線機を取り出した。

 「タケナカ、東に四百メートルの地点にある公園から人質を預かりに行って。監視班を連れて行っていいわ。」

 無線をしまうと宗介に向かって微笑みかける。

 「人質交換といかないかしら?

 今、こっちはあなたの連れていた女を一人、人質に取っているわ。

 一対一、妥当だと思うけど。」

 「一人?二人じゃなくて一人なのか?」

 訝しげにアキトが問い返す。

 「ええ。白人の女、一人よ。」

 (……おかしい。もし、捕まったというなら二人同時じゃないのか?

 ……いや、考えてみればテッサちゃんは控えめに見ても運動は得意ではない。

 それに、意外と頑固な所があるしな。)





 複数の敵から逃げる宗介たち。

 敵はかなり近くまで迫っている。

 「く…。タクマだけが狙いだと踏んだのだが予想は外れたようだな。」

 敵の数はかなり多い。いくら宗介が卓越した戦士でも多勢に無勢だ。追いつかれれば死しか道は残されていないだろう。

 宗介が対策を考えていると後ろから「きゃっ」と声が聞こえてきた。

 振り向くとテッサがこけていた。足を挫いたのかテッサは左足を押さえている。

 「大佐殿、大丈夫ですか?」

 気づくのに少し遅れたことと元々テッサが遅れていたせいで宗介とテッサの間には少し距離が開いている。

 「サガラさん、先に言ってください!」

 テッサが叫ぶ。

 「し、しかし……」

 「今はかなめさんの安全が最優先です。

 私は軍人ですよ?情けは無用です。」

 テッサの瞳には断固たる決意の色が見えた。

 今の彼女には何を言っても聞かないだろう。

 それでも宗介は少しためらうが、その間にも敵が迫ってきている。

 「……はっ。申し訳ありません。大佐殿。」

 そう言うと宗介はためらうかなめの手を引いて走り去った。

 その顔は憎々しげにゆがめられていた。

 自分の不甲斐なさを呪って。




 
 (……ありうる。ソースケは俺と違って感情を挟まずに冷静な判断が出来るだろうからな。)

 アキトはその後少し逡巡して、

 「……わかった。」

 承諾した。




 その十五分後、校門からテッサを連れた男があらわれた。

 男に連れられてきたテッサの表情は俯いていて分からないが、多分これほどに無いほど青ざめていることだろう。

 よく見ると肩が微かに震えており、手は硬く握り締められていた。

 「さて、交換しましょうか。

 人質を同時に歩かせる。良いわね?」

 「あぁ。」

 アキトがそう答えると、セイナがテッサの背中を軽く押す。

 テッサがそれに従い弱々しく一歩踏み出す。

 それにつられるかのようにタクマも一歩踏み出す。

 テッサが一歩、歩くのに合わせてタクマも一歩、歩みを進める。

 二人の距離は少しずつ狭められていく。

 タクマの後姿しか見えないアキトも俯いて地面を見つめながら歩くテッサもタクマの表情に気づかなかった。

 そのどこか虚ろな表情に……









「With Mithril」

〜第五話〜









 (僕の前方には最愛の姉さんとテスタロッサさんが立っている。

 テスタロッサさんの表情は見てて痛々しいほど青ざめている。

 体は震えており、時折こちらをチラッと見るがそのまま俯いてしまう。

 自分の全てが許せなく自分の命を絶とうとしていた頃の自分を見ているようだ。

 姉さんが何かを言っているようだがテスタロッサさんの様子が気になって耳に入らない。

 後ろでアキトとかいう男が何か答えるが、これも耳に入らない。

 必要のない情報は要らない。

 テスタロッサさんが姉さんに押されて一歩踏み出す。

 それに合わせて僕も踏み出す。

 一歩ずつ彼女との距離が狭まっていく。

 このまま歩み続ければ彼女はあの男の元にたどり着くだろう。

 それは彼女にとって本当に安息といえるのだろうか。

 現に彼女は痛々しいほど青ざめているんだ。

 彼女が帰るべきところはあそこではない。

 彼女がいるべきところは………)

 あと一歩でテッサとタクマがすれ違うという所でタクマはテッサに向かって飛び掛った。

 「な…」

 脱力していたテッサはタクマにいとも簡単に組み伏せられる。

 それを見たアキトが駆け寄ろうと踏み出した瞬間、アキトの目の前にライフルの弾が撃ちこまれる。

 「くそっ。」

 そのライフルを皮切りに無数の銃弾がアキトに向かって放たれる。

 アキトは救出に向かおうとするが前に踏み出すことも出来ない。

 タクマを攻撃しようと銃を構えたがテッサが反撃を開始し始めたため断念せざるを得ない。テッサに当たったら元も子もないのだ。

 狙撃手を狙おうと自分の左側に位置する校舎の屋上を見上げるが、リボルバーの射程では到底届かない。

 そのままアキトは進むことも出来ずに銃弾を避けることしか出来なかった。

 アキトがどうすることも出来ずに、ただ避けている間にセイナがタクマ達に走り寄る。

 「きゃぁ。」

 セイナの手によってテッサが無理やり立たされる。テッサは嫌がるが、肘の関節を決められては抵抗のしようがなかった。

 そのときにどこかに引っかかったのか、テッサの髪留めが外れてミツアミが解ける。

 テッサが嫌がって頭を振るたびに髪が宙を舞う。

 それを見たアキトの動きが一瞬止まった。

 その隙を見逃してくれるほど敵は甘くなかった。

 アキトの腹部にライフルの弾がめり込み吹っ飛ぶ。そのままもんどりうって茂みの中に倒れる。

 その茂みに向かってダース単位の銃弾が撃ち込まれる。

 それを見たテッサの悲鳴が伏見台学園に響いた。




 セイナ達が引き上げてから少し時間がたった。

 「く…」

 体中に無数の銃弾を受けたアキトがむくりと体を起こした。

 彼が体をパンパンとはたくと彼の服にめり込んでいた銃弾がポロッポロッと落ちる。

 ホッと息を吐く。

 今までに起こった事を頭の中で整理する。

 様々な失敗がありありと頭に浮かぶ。そして、一番最後に起こった一番自分を許すことの出来ない失敗にたどり着いた。

 拳を地面に打ち付ける。

 「くそ!!くそ!!くそ!!

 俺はいつまで未来に縛り付けているんだ!!」

 そのまま拳を何度も地面に叩きつける。

 アキトの動きが鈍った原因はテッサが捕まったことではなかった。

 テッサの髪が降りた姿に動きが止まったのだ。

 その髪の舞う瞬間。

 ただそれだけだ。

 それだけの情報から彼の頭は昔一緒に暮らしていた少女。

 今では手に届かない少女。

 彼の義娘―――ルリを思い出した。

 その一瞬、彼の動きは記憶に魅入られて止まってしまったのだ。

 実はこのようなことが起こったのは今回が初めてではない。

 この時間に逆行して二、三ヶ月間は一日に一度のペースで出会った少女や女性をルリやユリカに間違えていた。

 それは耐えがたいほどの苦痛だった。

 会おうと思っても決して会えない、そう思うだけで胸が痛み寝ることも出来ず食事も出来ない。

 こうして見ると復讐を誓って生きていた頃は隣に居なくてもルリやユリカにどれだけ支えられてきたがよくわかった。

 また、この相手を他人とダブらせて行動するということをアキトは許せなかった。

 見間違うことは幸運なことに一年も経つとだいぶ収まってきた。

 そんな自分にアキトは呆れながらもホッとしていた。

 そして、この半年間一度も起きることはなかった。

 しかし、また起きた。それも決定的な瞬間に。

 もしアキトが気絶しなくても事態が良くなるとはいえない状態ではあった。

 しかし、何か出来たかもしれないと思うと、彼は自分が許せなかった。

 ひとしきり拳を地面に打ち据えたあと、木に背を持たしかけて体の細部までチェックする。

 多少打ち身になってたり茂みに飛ばされたときに擦り傷は出来ているものの他に怪我はなかった。

 「だけど運が良かった。頭に貰ってたら即死だっただろうな。」

 周囲にある銃痕と自分の戦闘服を見てホッと息を着く。

 いま、アキトの着ている服は前の時代からジャンプしてきた時に来ていた服だ。

 この時代ではオーバーテクノロジーで作られているこの服はそこらに捨てられなかったため今までずっと隠し持ってきていたのだった。

 まだ、体に合ってないが、ミスリルから戦闘服が支給されていなかったため仕方なく着てきたのだがそれが良かった。

 今の時代の戦闘服の強度は分からないが、あれだけの銃弾をくらえば間違いなく死んでいただろう。

 「これからどうするか……」

 第一にやることはテッサの救出だが、肝心のテッサがどこにいるのか手がかりすらない。

  ババババババババ……

 「ん?」

 (これは…ヘリが近くにいるのか?)

 茂みに身を潜め上空を見渡す。

  ババババババババババババ……

 少しづつ音は大きくなっていく。

 しかし、上空にはヘリの陰すらも見当たらない。

 (なんだ?おかしい。音からするとすぐそこに来ているはずなのに。)

 校庭の砂が舞い上がり、あたりに撒き散らす。それがアキトに襲い掛かってくる。

 「くそっ、次は何なんだ!?」

 身を潜めたまま相手がいるであろうポイントに銃口を向ける。

 その何もい無いはずの空間から二つの巨大な人影とそれに手を添える一人の人影が現れる。

 その三つの影を残してヘリのローター音は夜闇に消え去っていった。

 あとに残った人影の内、小さい人影がキョロキョロと周囲を見渡す。

 砂煙が薄れて、人影がだんだんはっきりしてくる。

 人影の正体に気づくと、アキトはすっとその場に立ち上がった。

 「マオさん。」

 人影―――マオがアキトの存在にそのときになって初めて気がついた。

 「アキト。アンタは無事だった見たいね。」

 マオがホッと息をつく。

 その両脇には二機のASが跪いている。

 マオの右に漆黒のM9、左にはアキトは見たことの無い白いASがあった。

 「『アンタは』ってことはもしかして?」

 「ソースケがココから少し離れていた所で倒れてるのを発見したわ。

 もうすぐクルツが連れてくるはずよ。」

 「くそっ、そうだったのか。

 と言うことはもしかしてかなめちゃんまで攫われたんですか?」

 「カナメ?どういうこと?」

 アキトは今まで起こった事を全てマオに話した。

 「――というわけなんです。」

 「な〜んかかなりややこしい事になってるわね。」

 マオが頭をかく。

 「すいません。」

 「ああ、アキトは気にする必要なんてないわ。

 こっちはあまり装備の無い二人の兵士、しかも三人の荷物付き。

 それに対してあちらさんは十人を超える完全武装の兵士。

 こんな状況、いくら架空の人物でも潜り抜けるのは無理よ。」

 優しくマオが語る。

 アキトはその優しさが心地よかった。

 「ありがとう。」




 かなめとテッサが攫われた路上。

 「ソースケ!おい、起きろ!!」

 クルツが気絶している宗介の肩をつかんでゆする。時々ゴンゴンと音がするが気にせずゆすり続ける。

 余程与えられたダメージが大きかったのか、それでも起きない。

 顔を往復ビンタするが起きない。

 頬を引っ張ってみるが起きない。

 脇をくすぐってみるが起きない。
 
 「…よし、最終手段を使うか。」

 そう言うとクルツはおもむろにポケットから愛用のMDウォークマンを取り出した。

 そして、MDを入れ替えると宗介の耳にイヤホンをつけ最大音量で再生した。

 『ソースケェ!!!アンタはぁぁぁ!!!!』

 「ち、千鳥!」

 かなめの声に反応して宗介が身構える。

 数瞬経って一向に来ない攻撃に宗介が辺りを見回す。

 辺りにはもちろんのことかなめは居なく、居るのは声を殺して爆笑するクルツだけだった。

 「……クルツ。」

 「ヒイ、ヒイ…よお、ソースケ。」

 クルツが片手を上げてもう一方の手で腹を押さえながら挨拶する。

 「コレは何だ?」

 宗介がそう言いながらイヤホンを外す。

 「MDウォークマンだよ。お前、しらねぇの?」

 「それぐらいは知っている。俺が聞いているのは、どうしてカナメの怒鳴り声のはいったMDを持っているかだ。」

 宗介の持つ銃がクルツに向けられる。

 「ああっと、それよりも外傷も火傷も無いようだけど、お前、どうやってやられたんだ?」

 クルツが話を逸らそうとするが効果がありすぎた。

 「敵の打撃だ。いきなり腹部に衝撃が走ったかと思うと、壁に叩きつけられて呼吸さえ出来なかった。

 俺がガウルンに固執しすぎていた。周囲に気を配ってさえ居ればカナメや大佐殿は…」

 宗介は肩を落とす。場の雰囲気が一気に重くなる

 「そ、そんなにも思いつめんなよ。二人もお荷物が居たんだからしかたねぇさ。」

 そこまで言うとクルツは顔を引き締め、

 「それよりもガウルンって、順安事件のときのアイツか?」

 「ああ。」

 「生きていやがったのか。」

 クルツは苦々しく呻く。

 「片足は義足だったが。」

 「そうか。憎まれっ子世にはばかるか。あいつが関わってるってことは二人が危険だな。

 集合地点に急ごう。また姉さんにどやされる。」

 そう言ってクルツが走り出す。

 宗介もつられて走り出した。




 「はぁ、はぁ。くそっ。血が足らない。」

 そう呟く男の背後には病院があった。

 もう、十二時にさしかかろうとしている夜中である。

 病室には明かりは灯されておらず、どこか不気味に感じる。

 彼は患者が手術のとき着る服を身に着けていた。

 それから幾ばくか走り病院が見えなくなったところで近くにあった電話ボックスに駆け込む。

 「持っててくれよ。」




 「お〜い、アキト〜、大丈夫か〜?」

 と、のんきに声をかけてくるのはクルツだった。

 「ああ。」

 「ソースケ、大丈夫?」

 マオが問いかける。

 「問題無い。」

 宗介は相変わらずの仏頂面で答える。

 「で、これからどうするんだ?」

 「そうね。まず、状況を整理しましょ。」

 「「なっ」」

 そのマオの提案に抗議の声を上げたのはアキトと宗介だった。

 その二人を見据えながらマオが口を開く。

 「アンタたちはすぐにでも助けに行きたいでしょうけど、計画なしで特攻するほど愚かなことは無いわ。

 相手は人質をとってるんだし、人数も上なのよ。アキトの話ではASも所有しているみたいだしね。」

 「ごめん。」

 「すまない。」

 二人は同時に頭を下げる。

 「アキトからは話を聞いたけどソースケ、アンタの方も説明して。」

 宗介が説明を始める。

 それを聞き終わったあと一番に口を開いたのはマオだった。

 「と言うことはカナメとテッサは別々の組織に拉致された確率が高いってことね。

 はぁ、タダさえ数で負けてるってのに。

 問題はテッサね。カナメは発信機があるからまだ良いけど、あの子は発信機は持ってないからね。

 あっ中佐に連絡を入れないと。テッサに何かあったら連絡するように言われてたんだった。」

 マオはM9に向かって駆け出す。

 するするとM9の装甲伝いに登り、コックピットにたどり着くと搭載されている衛星通信機を操作する。

 『はい。』

 女の声がコックピットに響く。

 「シノハラ?こちらは<ウルズ2>マオ。B−2988。」

 『確認完了。マオ、どうだった?』

 「結構やばいわよ。至急、中佐の所にお願い。」

 『わかったわ。』

 数秒通信が途絶える。

 『なにがあった?メリッサ・マオ曹長。』

 重々しい声が響く。マデューカス中佐の声だ。

 「はっ、残念ながら私が着いたときにはタクマはさらわれていました。」

 『そうか。しかし、それだけならその後の対応はもう話してあったと思うが。』

 「タクマだけでなく、大佐とチドリ・カナメもさらわれてしまいました」

 そう言いながらM9の内部スピーカーの音量を最低に変更する。

 『なんだと!!!!』

 最低にしてもマオの耳に響くような雄叫びがマデューカスの喉から発せられた。

 ブリッジに居たクルー達は今頃意識が飛んでいるだろう。

 『サガラ軍曹とテンカワ軍曹は何をしていたんだ!!!』

 「相手の数が数ですから、過ぎたことを言っても仕方ありません。

 それよりも今後の対策を考えませんと。問題はカナメと大佐が違う組織にさらわれたことです。

 カナメは発信機がありますが、大佐には…」

 『そのことなら問題ない。大佐には常日頃からS型の発信機を付けている。認識番号はS−003だ。』

 「へっ?」

 それを聞いたマオが変な声を上げる。

 「S型とは最新式のS型ですか?」

 『そうだ。あとの判断は全てそちらに任せる。通信終了だ。私はガレ…』

 それを聞いた後、通信機のスイッチを切り受信機の設定をかなめのA−846からS−003に変更する。

 緑色の画面に赤い点がある。それはお台場に向かってかなりの速度で移動していた。

 コックピットから這い出す。

 「テッサのことは解決したわ。」

 マオがタンタンと身軽にM9から降りながら言う。

 「どうなったんですか?」

 「中佐の過保護のお陰よ。あの子にS型の発信機が付けてたんだって。」

 マオがため息を吐きながら呆れたように言う。

 「「なっ?」」

 それを聞いたクルツと宗介が口をそろえて驚きの声を上げる。

 アキトだけはその意味がわからず、キョトンとしていた。

 「そのS型ってなんですか?」

 「おまえしらねぇのかよ。

 S型って言うのはミスリルの最新式発信機でまだ試作品が四個しか出来てないっていう奴なんだよ。

 しかも一個の製作費用だけでM9が一機買えるようなアホな奴なんだけど。

 あ〜〜、そんな金があるんなら給料上げろよな〜〜〜!!」

 クルツが足で地面を踏みつける。

 S型発信機とは、従来のA型に比べてより小さく発見率が低い。

 更に探索可能範囲がやたらに広く半径10キロまで可能なのである。

 そのくせ特定の受信機じゃないと受信できないという優れものだった。

 欠点はその製作費用なのだが。

 「だけどこれで何とかなったわ。あとはカナメだけど受信機にはどう?」

 マオが宗介に問いかける。

 「…受信可能範囲にはもう居ない。」

 宗介が受信機を見て答える。

 「カナメの方はしらみつぶしに探すしかないか。」

 マオが頭をかきながら言う。

 そのとき、タイミングを計ったように宗介の携帯が鳴る。

 「相良だ。」

 『こちら、ウルズ9。』

 「!!ヤンか。怪我はどうだ?」

 『もう大丈夫だ。そっちは?』

 「相手にしてやられた。」

 『そうか。大佐は?』

 「敵の手に渡ってしまった。」

 宗介の携帯からミシッと音が聞こえた。

 『○○付近にいる!!今からそっちに向かう!!!』

 ヤンが宗介の周りにもハッキリと聞こえるほど大きな声で言う。その音量はマデューカスと良い勝負だった。

 携帯に耳を当てていた宗介はたまらない。

 「す、少し待て。」

 そういうと、マオに代わり、フラフラと腰を下ろした。

 「ヤン、あんた。お台場近くまで来て。そこまで行ったらA−304番の発信機に電波を合わせて。

 アキトにその番号の発信機を付けるから。」

 『了解。俺の持ってるのはA−209番だ。』

  ガチャッ

 「わかったわ。」

 携帯を切るとため息をつきながら宗介に投げ渡す。

 「さて、今後の作戦を言うわ。」

 三人の視線がマオに集まった。

 




 後書き

 作:ふぅ〜。目指していた二週間更新は無理だったな〜。

   どごっ

 作:ぐはぁっ

 か:何で原作ヒロインのあたしが出ないのよ!!

 作:いや、原作でも私の心のヒロインはかなめじゃなくてテッ…

   ごぎっ どすっ ぐぎっ どすん ぼごっ

 か:ハァ、ハァ、ハァ
  
   悪は去ったわ。

 マ:まぁまぁ、カナメ落ちついて。

 か:マオさんは良いですね。真ん中辺からずっと出てるんですからね〜。

 マ:いいじゃない。あなたなんか第二、三、四話全部出てるんだから。

 か:そうですね。次回に期待することにしましょう。ね、作者さん?

 作:ひぃぃ

 マ:それぐらいにして話し進めない?

 作&か:(いつもは自分がやってるくせに)

 マ:なぁに?かなめ?

 か:いえ、何にもないッスよ、うはははは

 作:そうそう。

 マ:それで今回の御題は何?

 作:え?

 か:後書きには何らかの意味があるんでしょ?

   プロローグは挨拶とゲリラの言い訳。

   第一話は作品の時間。

   第二話はあたしの性格

   第三話は復帰と死んでた言い訳

   第四話はマオさんが出なかった謝罪

 作:そういや、一応テーマ見たいのがあったような…

 マ:え、ということは御題はないの?

 作:うん。

 か:なら、今回の後書きどうすんのよ?

 作:それなりの長さになったからこれで良しということで(笑)

 か&マ:長ければ良いわけじゃない!!

   どどぐぅぅっ

 作:がはっ

 マ:やっぱり一度は殴らないとね。

 か:浅川さん、谷城さん、v&wさん、危険地域さん、ノバさん感想ありがとうございます。

   こんな後書きもまともに書けない作者の作品ですが読んでくださった方、ありがとうございます。

 作:げほっ、ごほっ。それと最後に言い訳を。

   まず、ヤンの言ってる○○付近の○○は適当にあてがって置いてください。東京の地理に詳しくないもので。

   それと、発信機がどうのこうの出ていますが私は実際の発信機がどういうものか知りませんので番号があるのかとかは知りません。

   なにかと下調べのないSSで、すいません。ではまた〜。

 

 

代理人の個人的な感想

うわはははははははは(爆笑)。

かなめの声で跳ね起きる宗介が可笑しすぎ。

マデューカスさんもいい味出してます。

 

話も緊迫してきた所で続きましたが、A-21の連中は原作通りとして

ガウルンの方はどう動きますことやら、さて。