「う〜ん、この茄子のほうがいいかな。」

 アキトは手近のスーパーで買い物をしていた。

 現在、冷蔵庫の中身がほとんど空なのである。

 「過去でも日本は物価が高かったんだな〜。」

 

 「よし、こんなもんかな?」

 アキトはスーパーのかごを二つ持ってレジに向かった。









「With Mythril」

〜第三話〜









 宗介は黙って歩いていた。

 目の前にはかなめの後姿があるが、話しかけられる雰囲気ではない。

 黙々と歩き続ける。

 先に折れたのはかなめだった。

 「あ〜っ、さっきからいらいらすんのよ、あんたの行動は!

 言いたい事があるなら、さっさっと言いなさいよ!」

 かなめは振り向いて怒鳴る。

 「……俺が何をしようと君には関係ないだろう。」

 そう言った後、宗介は目を逸らす。

 その仕草からも思いっきり宗介がかなめを気にしているのは見え見えだった。

 「はぁ、ならあたしの後をつけるの止めてくれる?」

 「俺はただ帰宅しているだけだ。別に君を尾行しているわけではない。」

 「ふ〜ん、そうなんだ。」

 かなめはスタスタと歩き始めた。

 その後、宗介は一定の距離を保ち歩き出す。

 かなめが少し速度を上げる。宗介もそれに合わせる。

 かなめが立ち止まる。宗介も立ち止まる。

 「………あんた、ほんとにあたしの後をつけてないの?」

 振り向きもせず、押し殺した声で言う。

 「肯定だ。」

 「ならなんで立ち止まっているのよ?」

 「む……靴紐が解けたからだ。」

 「…その間はなんなのよ。

 一応言っておくけど、あたしはもう怒ってないからね。」

 実際、かなめがいらいらしているのは宗介の今の態度である。

 その言葉に宗介顔を上げる。心なしか嬉しそうに見える。

 「本当か?」

 「本当よ。」

 「しかし、君は昼休みから全く口を利いてくれなかったが……」

 「そ、それは、うははははははは。」

 よもや宗介の負け犬顔の印象を薄れさせないためという水星先生的な考えからということは口が避けても言いたくは無かった。

 「ま、いいじゃない。それよりも約束通りソースケの家で古典の勉強しよ。ちょうど今日、古典あったから用意もあるし。」

 かなめは宗介の背中を押しながら歩みを進めた。




 宗介は部屋の扉に鍵を刺す寸前に中にある気配に気がついた。

 「かなめ、少し離れていろ。」

 「なんかあったの?」

 「鍵が開いている。それに中に人の気配がする。」

 「天河君じゃないの?」

 「いや、アキトなら息を潜めたりしないだろう。」

 「ということなら空き巣か強盗?」

 「それならいいんだが。」

 最悪の場合、自分を狙ったテロリストの可能性も否定できない。

 「千鳥、ここで待っていてくれ。」

 宗介は深呼吸をした後、扉を勢いよく開け、一気にリビングまで駆け抜け侵入者に対して銃口を向け、彼らを見てピタッと制止した。

 そこに居たのは二人の男女だった。

 「サ、サガラさん。…よかった。」

 宗介に銃口を向けた少女がホッと息を吐く。

 「た、大佐殿?」

 少女――テレサ・テスタロッサ大佐は宗介の顔を確認するなり銃口を下に向けた。

 「敵だったらもうお仕舞いだと思いました。私は戦闘関係はてんで駄目で。」

 「どういうことです?それに彼は?」

 テッサの後ろには少年がベッドに両手を手錠で繋がれた状態で気を失っていた。

 「あの、それは後で説明しますから、取り合えず銃口を私から逸らしてくれませんか?」

 「はっ。し、失礼しました。大佐殿!」

 その声に反応したのだろう、部屋の外からかなめが、

 「ソースケ?どうなったの?」

 「千鳥、大丈夫だ。敵はいなかった。」

 宗介がそう言うとかなめが入ってきた。かなめはそこにいる三人を見た瞬間、ピシッと固まってしまった。

 (こ、これはまさか!!いや、早計かもしれない。よく考えなくいと。だけどこの状況はどう考えても怪しすぎる。

 銃を持って軍服を着た少女、両手をベッドに繋がれている少年。これはどう考えても怪しすぎるわよ!!

 その上よく見たらこの子の軍服ボロボロじゃない。あの男の子の服も、更に気を失ってるみたいだし。

 うあ、この子、家の中でハイヒール履いてる。やっぱこの状況は……)

 「ソースケ、これはどういうこと?」

 「これとは?」

 「この状況に決まってるじゃない!!これはどう考えてもSMの現場じゃない!!」

 「エ、SM?」

 「そうよ!まさかあんたにこういう趣味があったなんてね!じゃあ!」

 そう言うと同時にかなめは駆け出していた。

 「千鳥!」

 宗介はかなめに向かって手を伸ばすが掴んだのは空気のみだった。

 「あ、あのサガラさん?」

 かなめの勢いに押されて驚いていたテッサがやっと復活した。

 「なんですか?大佐殿。」

 「彼女が千鳥かなめさんですか?噂通り活発な人ですね。」

 「は、肯定であります。」

 「何か勘違いしていたようですが、いいのですか?」

 「そ、それは……」

 その時、玄関の方から、

 「ただいま。」

 と、アキトが帰ってきた。

 「遅かったな。」

 「お帰りなさい。」

 「あれ、テッサちゃん?どうしてここに?」

 「はい、実は……」

 「あ、それよりも椅子に座ってお茶出すから。」

 テッサがしゃべるのを遮ってアキトがお茶の準備をする。




 その後、宗介とアキトはおおよその事情を理解した。

 要約して言うのなら

 『そこにいるクマガヤ・タクマは重要人物である。そして何故かテッサは日本のタクマのいる研究所に来ていた。

 しかし、それと時を同じくしてその研究所をテロリストが襲い、タクマをさらいにきた。

 テッサはヤンの助けを借りて何とかタクマをつれて逃げたがヤンの怪我が重かったため途中で降ろし、ここまで逃げてきた』

 という所だろう。

 しかし、解せない。襲撃はASによって行われたと言う。いくらASが優秀だといっても人を奪うための襲撃には不適切だ。

 下手をすればタクマを殺してしまうかもしれない。それともそうしない自信があるほど錬度が高いのだろうか?

 「タクマはなんで重要人物なんですか?」

 アキトが尋ねる。

 「ごめんなさい。テンカワさん達には知る資格が無いんです。」

 「そうですか。それで彼はこの後どうするんですか?」

 「とりあえず、基地に連れて行きます。彼の処遇については、その後検討されます。」

 その顔に少し翳りが見えた。

 「それで…ヤンは助かりそうですか?」

 「はい、急所は外れてましたしちゃんと救急車も呼んで置きましたから。」

 そう言ってテッサは紅茶の水面に目を落とした。

 「サガラさん、すみませんでした。」

 「は?」

 「私を庇ったせいでカリーニンさんが逃げ遅れてしまいました。あなたには父親同然のはずなのに。」

 「いえ、少佐は当然のことをしたまでです。それにまだ死んだと決まったわけでもありません。

 実際、彼はしぶとい人間です。彼を殺すにはM9でも持ってこなければ無理でしょう。」

 「慰めてくれて、ありがとうございます。」

 そう言って初めて微笑んだ。テッサにとってカリーニンの死(?)を宗介に伝えることが最も辛かったことなのだ。

 「あの、シャワーを借りていいですか?」

 緊張が解けたのだろう。テッサが自分の体を見ながら言ってきた。

 「どうぞ。<デ・ダナン>への連絡はどうしますか?」

 「お願いします。多分今は深く潜っているでしょうからメリダ島基地経由で潜望鏡深度まで浮上するように伝えてください。

 私の今週の識別コードは『ナンタケットのおじさん』です。秘話回線が開いたら私が直接話しますから。」

 テッサはバスルームに向かいながら指示を出した。





 「はぁ、あたしの馬鹿。」

 かなめはエレベーターの中で呟いた。

 (やっぱ帰るんじゃなかった。今頃三人で何をやっているんだろうか?見るからにあの少年は受けだろう。

 ソースケはたぶん受けだろうが分からない。案外攻めに回るとすごいかもしれない。

 あの少女は軍服にハイヒールなのだからたぶん攻めなのだろう。いや、あのときあたしを見た瞳にはおびえを感じた。

 彼女はもしかすると攻めと受けで性格ががらりと変わるのではないのだろうか?

 ……はぁ、やっぱ混ぜてもらえばよかったな〜。)

 などと、とても怪しげなことを考えていた(笑)





 数分後、テッサはさっぱりした表情でバスルームから出てきた。バスタオル一枚という悩ましげな格好で。

 「テッサちゃん!?」

 「大佐殿!?」

 「アキトさん、アキトさんのTシャツかなんかありますか?」

 少し頬が赤く染まってるのは風呂に入ったのだけが原因ではないだろう。

 「まだ、荷解きがすんでないから玄関前の段ボール箱の中だけど……。」

 「そうですか。分かりました。サガラさん<デ・ダナン>繋げましたか?」

 「はっ、後二分で潜望鏡水深まで浮上するそうです。」

 「なら、着替えてきますから。」

 と言ってテッサはリビングを出ていった。



 それから一分も経たないうちに玄関からチャイムが聞こえる。

 「あ、私が開けますね。」

 着替え終えたらしく、テッサがそう声をかける。

 少しボーっとしていた二人だったが、チャイムでいつもの感覚が戻ってくる。

 その時感じ取った空気は今まであった空気ではなく、彼らの日常である戦場の空気だった。

 「テッサちゃん、開けちゃいけない!!」

 アキトのその言葉と同時にガチャンと窓ガラスを割ってスタン・グレネードが放り込まれる。

 アキトはそのスタン・グレネードに対して先ほどから洗ってたまな板を投げつける。

 その次の瞬間、部屋の外から数メートルの地点に大きな爆発が起こった。

 スタン・グレネードの爆圧と閃光を利用して二人の人間が部屋にそれこそ飛ぶように飛び込んでくる。

 しかし、そんな奇襲もこの二人の前には意味は無かった。

 宗介は冷静に飛び掛ってくる方向を予測してそこに逃げ場の無いくらいの銃弾を叩き込む。

 アキトはあらかじめ目を閉じ気配を頼りに包丁を投げる。

 「きゃぁっ!!」


  バァン


 テッサの叫び声と爆発音が響く。

 たぶん、玄関の敵が鍵を壊そうとプラスチック爆弾を仕掛けたのだろう。アキトがすかさずリビングの扉を開ける。

 そして、扉を開けた敵の眉間にはアキトの銃弾が撃ち込まれた。

 ドサッと敵の体が外に倒れる。

 足元を見ると座り込んでいたテッサがアキトの足にしがみついていた。

 「ごめん、テッサちゃん。俺は今から死体の片づけをするからちょっと……」

 「すみません、後、十秒でいいんです。もう少しだけお願いします。」

 テッサが足に額を押し付けている。

 「……ありがとうございました。もう大丈夫です。

 いけませんね、私みたいに実際に手を汚さない人は私の言葉一つで何人もの命を奪っているのに……」

 テッサはすまなそうに顔を俯かせる。

 そんなテッサにアキトはかける言葉が見つからなかった。もし何か言ってもテッサにとってプラスにはならない気がしたのだ。

 「すみませんでした。私は大丈夫なので作業を続けてください。」

 「うん。」

 とりあえず死体を家の中に引き込む。そして雑巾で外に飛び散っている血をふき取った。

 この一部始終の目撃者がいなかったのは非常に運が良かったことだろう。

 しかし、このままここにいてはもう一度襲ってくださいと言っている様なものだ。

 どこか場所を変えなければならない。全ての処理を終え、リビングに戻ったときにはその問題は解決していたようだった。

 「アキトさん、千鳥かなめさんの部屋に移動することにしました。」

 と、入った早々言われたのだ。

 「いいのか?」

 アキトのこの問いは宗介に向けられたものだったがそれを答えたのはテッサだった。

 「仕方ありません、そこ以外行く場所がありません。」

 「たとえば学校とか……」

 「駄目です。」

 テッサは横に首を振る。

 「ここの場所が分かったいじょう、敵の情報網はかなりのものです。

 アキトさん達が通ってる学校のことぐらいすぐに調べが着くでしょう。」

 「いくら逃げようと逃げ切ることなんて出来ないよ。」

 その言葉に反応したのはアキトでも宗介でもなく先程まで気絶していたタクマだった。

 「目覚めたのか。」

 「はい、アレだけ騒がれて目を覚めない人はいませんよ、相良宗介さん。」

 不敵な笑みを浮かべたままタクマがアキトに言う。

 「いや、俺はテンカワアキトでこっちが相良宗介なんだけど。」

 「えっ。」

 気まずい沈黙が流れる。表札を見たのだろうが昨日来たばかりのアキトの名前が表札に書いてはなかったのだ。

 「な、名前なんかどうでもいい!!どうせお前達は見分けが付かない肉塊にさせられるんだからな!!

 例えどこに逃げようともすぐに分か……」

 一通り叫ぶと荒い息をついてタクマは黙った。宗介が首筋に手刀を決めて黙らせたのだ。

 「大佐殿、タクマに発信機らしきものはありましたか?」

 「いえ、その点はもうすでに日本政府が念入りに調べているはずですから……」

 「いや、発信機は付いていると思う。」

 アキトがテッサの言葉が終わるのを待たずに意見する。

 「まず、この場所が分かったのがおかしい。

 この場所を知っているということはミスリル内に内通者がいるか、発信機しか考えられない。」

 そうなのだ。ミスリル以外の組織にはこのセーフハウスのことは一切知らないはずである。

 「しかし、目撃情報から割り出したのかもしれません。」

 「それにしては部屋の特定までに早すぎると思う。」

 テッサの状況を聞く限りでは一時間にも満たない時間でこの部屋の場所まで特定したことになる。

 もし尾行されていたとするのなら、ここに来る前に襲撃を受けているはずだ。

 「しかし、研究所については……」

 そこまで言ってテッサはハッと息を呑む。

 「そう、研究所の襲撃には十日以上の遅れがあった。しかし、それは研究所の地理条件に問題があったんだと思う。

 テッサちゃんの話を聞いた限りでは研究所は磁場の影響で電波関係の通信方法は不可能らしい。

 相手がタクマへのコンタクトを発信機に頼ってるとするならそれだけ時間がかかってもおかしくはない。」

 「金属反応のない、アクリル、シリコンでほとんどが構成されてる発信機を使ってるのかもしれませんね。」

 テッサは納得したようだった。

 「それなら、電波が弱まらないように皮膚のすぐ下にあるはずです。たぶん手探りに体を触れば分かると思います。

 「では。」

 「きゃぁ。」

 宗介がテッサの目の前でタクマの服を脱がし始める。

 「宗介、そういうことは風呂場でやってきてくれないか?」

 「何故だ?この状態で戦力の分散は極力避けた方がいい。」

 この男に乙女の羞恥心というものが理解できるはずは無かった。

 それを悟ったのか、

 「サガラさん、上官命令です。バスルームでやってきてください。」

 「はっ。」

 (千鳥かなめさんは苦労しそうですね。)

 バスルームに向かう宗介の後姿を見てテッサはため息をついた。

 「先ほどはすみませんでした。」

 「俺も偶々思いついただけだし。」

 「いえ、それだけでもすごいです。このまま気づかずにかなめさんの家に言っていたら、そこも襲われてしまったでしょう。」

 少し目線を落としてテッサが

 「駄目ですね、私は。さっきから全然何も事をうまく進めていない。ミスばっかり。

 さっきの襲撃のときもアキトさんが開けるなと言ってくれなければ私は今頃死んで居たでしょうね。

 今のこともそう。私がもう少し早く気づいていなければならなかったのに。」

 「そんなこと無いよ、テッサちゃん。なんて言ったらいいのか分からないけど、テッサちゃんはがんばってるよ。

 数百人の人の命を背負わなければならない艦長をしっかりこなしている。

 それは俺なんかには到底出来ないことだよ。」

 アキトにはこんな事を言っても意味の無いことに思えたが、言わずにはいられなかった。

 「すみません。私、さっきから愚痴を言ってばかりでしたね。安心してください、これからはミスなんてしませんから。」

 テッサは笑顔をアキトに向けるが、それが無理のある笑顔だということは容易に分かった。

 「見つかりました。」

 宗介のその言葉を聞いて、アキトとテッサはバスルームに入る。

 「ここです。」

 宗介はタクマの手首を指差すが、それを見ることが出来たのはアキトだけだった。

 「……宗介、せめてパンツぐらいはかせてやろう。」

 「むう……すみませんでした、大佐殿。」

 「いえ、謝罪はいいですから服を着させてあげてください。」

 タクマに服を着させてから、テッサにタクマの手首を再度見せる。

 「…大佐殿、ここなのですが。」

 「ここなら簡単に除去できますね。

 やはり予想通りの発信機ですね。サガラさん、テンカワさん。今すぐ除去します。

 今から言うものをすぐに用意してください。まず、………」




 「これです。」

 テッサが血まみれの発信機を手の上にのせる。

 「とりあえず、これはここに囮として置いておいてかなめさんの家に行きましょう。

 サガラさん、テンカワさん。この家にあるミスリルとかなめさんに関係のあるものを全てもって行きます。

 今から五分以内に準備してください。」





 (はぁ、あたしは何をしているんだろう。

 本当だったら今頃、ソースケのぬいぐるみが完成して喜んでるはずだったのに。

 あいつらは何をやっているんだろうか?何をやってるにせよ、楽しんでいるんだろうな。

 それに引き換えあたしはソファーに寝転んで、はぁ。)

  ピンポーン

 玄関のチャイムが家中に鳴り響く。

 居留守を実行するが相手はしつこかった。

  ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 「……はぁ、こんなにうるさくちゃ考え事も出来ないじゃない。」

 気だるげにソファーから身を起こし玄関に向かう。

 玄関のドアを少し開けると、目の前に居たのは額に汗をかきながらチャイムに手を伸ばしている宗介だった。

 「何よ、さっきからピンポン、ピンポンと。」

 「すまん、匿ってくれないか?」

 「はぁ?さっきの娘に追い出されたの?」

 「いや、そうではなく…」

 「あ〜もぉっ、ハッキリしないわね!」

 起こったかなめが思いっきりドアを開け放つ。

  ガン!

 「はうっ。」

 「あれ?あ、天河君も一緒だったの?……それとさっきの二人も。」

 開け放った先には未だに目を覚まさないタクマと今ので目を回しているテッサと苦笑いをしているアキトだった。

 「一体なんなのよ。」





  カキンッ


 黒づくめの戦闘服を着た男がバスルーム前の最後のトラップを解除し終える。周りにも同じ服を着た男が三人、女が一人いる。

 男は無言でドアノブに手をかけ、勢いよく開け、中に向かって銃を突きつける。

 しかし、その中には人っ子一人いなかった。

 「くそっ、奴ら。発信機に気づきやがったのか!」

 ドアを開けた男がドアを力任せに殴りつける。

 「どうするんだ、セイナ?アレはタクマが居なかったら何の意味もねぇんだぞ。」

 男が振り向きながらその中の唯一の女――セイナに言う。

 「とりあえず、そんなに遠くには行ってない筈よ。すぐに探せば……」


  トゥルルル、トゥルルル


 セイナの言葉を遮るかのようにセイナの携帯がなる。


  ピッ


 「……」

 『なんだよ、出たんなら何か言えよ。』

 「初めて聞く声ね。どちら様?」

 『<アマルガム>だ。』

 「……一体何があったの?『ベヘモス』の返品はしないわよ?」

 『さらわれたパイロットの居場所を教えてやろうか?』

 「!どうしてそんな事を知ってるの?」
 
 『今回の『ベヘモス』はこっちとしてもテストなんでな。それに関することは逐一調べさせてもらってる。』

 「それならどうしてタクマがさらわれたのを黙ってみてたの?」

 『俺はあんたたちのプライドを考えてやったんだがなぁ。』

 「くっ。」

 『まぁ、いい。ヒントは『千鳥かなめ』だ。後は自分達で調べな。じゃぁな。』

 「ちょっと!」


  ツー、ツー、ツー


 「ちっ。」

 セイナは携帯をポケットにしまう。

 「どうした?何か分かったのか?」

 「ええ、タクマは『千鳥かなめ』のところに連れて行かれたらしいわ。急いで調べて。」





 大通りから少し行った細道二人の男がそこに立っていた。
 
 「はぁ、情けねぇな。」

 男は携帯を背広の胸ポケットにしまいため息をつく。

 「役に立たぬものなど、捨てておけば良いものを。」

 男の目の前の男が無表情で言う。

 「そういうわけにはいかないからな。これだから雇われるってのは面倒くさいぜ。

 さて、マイダーリンはどこまで頑張れるか。」

 そう言うと、男はもたれてた壁から背を離し、細道より義足を引きずりながら奥に歩き出す。

 「しかし、珍しいな。あんたが監視なんていう仕事を自分から志願するなんてな。」

 義足の男がもう一人に向かって話しかける。

 「見届けねばならぬものがある。」

 「そうかい。あんたがそこまでご執心とはそいつは不幸だねぇ。ククク」

 
 

 


 後書き

 作:うわ〜〜。SS書くの何ヶ月ぶりだろ〜(水爆)

  ドゲシッ

 作:ぐはぁっ!!

 か:なによ!これは!!ますますひどくなってるじゃない!!あたしの性格!!

 作:いや〜、誰一人とかなめはこのままで可ということだったんで。

 か:それは前回までのでしょ!?今回のは更にイッチャってるんだから絶対クレーム来るわよ!!

 作:それは困るが、皆さん気にしないでOKって感じだったから本能の赴くままに書いたらあんなふうになっちゃったんだよ〜。

 か:本能で書かずにしっかりと脳みそ使って書け〜〜!!

 作:はっはっはっ、それは無理というものだよ、かなめ君。

 か:え・ば・る・なーーーー!!!

  ドスッ、ゴスッ、グギッ、ブチッ

 作:ハウアッ

 か:はぁ、はぁ。それともう一つ言うことがあるでしょう!?

 作:いや、最初に言おうと思ったんだけど君が暴れるから……

  ゴスッ

 か:言い訳はいいから早く言いなさい。あたしはもう帰るから。じゃね。

 作:ふう、邪魔者は消えた。さて、遅れましたが、みなさん、お久しぶりです。二ヵ月半以上ぶりに復活しましたnelioです。

   取り合えず非常に男らしくないですが、遅れた言い訳をさせてもらいます。

   私は八月九月と実家に帰って家業の手伝いをしていました。

   その間も暇を見つけて書こうとしていたのですが、執筆環境が変わったら何故か書けなくなった〜(涙)

   いや、これは大マジです。更に何故か私の寝る部屋にはマッサージ機があり、家族がしょっちゅう来ます。

   そのせいもあるのかもしれません。気が散ってしまうんで……。

   十月に入ってからは完全にスランプです。さすがに二ヶ月も離れていると……。

   それと、題名が変わりました「With Mithril」から「With Mythril」です。

   一見すると分からないかもしれませんが、『i』が『y』になっています。

   ○○さん(本名らしいので伏字にさせていただきます。申し訳ありません)御指摘、ありがとうございました。

   ちなみに今まで書いたものは変わってませんがご容赦ください。

   そして、allさん、リンさん、SHKさん、花の男子校さん、ペドロさん、AKF-11さん、v&wさん、智さん、平田さん、

   語部悠真さん、谷城拓斗さん、ヴェルダンディーさん、M=2さん(上同様、本名らしき人は書いてありません)

   感想ありがとうございます。それと今まで紹介しないですみませんでした。

   (もしかすると、感想掲示板に書いたのに名前が無いという人は、すいません。)

   最後に、復帰SSのため、下手で短いですがご容赦ください(泣)

 マ:あら、これで終われるつもり?

 作:うぐぅ(核爆)

 マ:な・ん・で・あ・た・し・は・で・な・い・の・か・し・ら?

 作:原作でも出てないんだし(汗)

 マ:原作と話を変えなきゃSSの意味が無いでしょうが〜!!

  バキッ、ドスッ

 作:ぐあぁぁぁぁ

 マ:次回こそは出るんでしょうね?

 作:そ、それは……

 マ:読者様に誓いなさい!!

 作:は、はいぃ!!『私、nelioはメリッサ・マオを次回、このSSに登場させる事をここに誓います。』

 マ:さて、読者様に誓ったのよ?これで破ったらどうなるか分ってるわね?

 作:ひぃぃ、ナイフで頬をペタペタやらないで〜。

 マ:さて、みなさん次回は私が出る事を期待していて下さい。ではまた〜。

 作:また〜(泣)



代理人の感想

気になったことが二つ。

ひとつ。

地の文で 「(笑)」という表現は余り好ましくないと思います。

一人称ならまだしも三人称と言うのは「誰の主観も入らない客観的な描写」ですから、

たとえ作者の物であってもなんらかの主観が混ざるのはよろしくないかと。

 

ふたつ。

妙に「間」の悪い所が目立ちます。

例えばタクマが宗介とアキトを取り違えるシーン。

「間」が悪いのでいまいち笑えません。

具体的にどうすればいいんだ、と言われると困るのですが

取合えず「時の流れに」を参考にして見てください。