劇場版機動戦艦ナデシコ

後伝

【ベアルファレス】

 

第一話 牢獄の街

 

 

 

 

 

一人の中年がやってきた人物の書類を作成していた・・・

 

「今回は少ないねぇ・・・次は・・・」

ドアの方を見るとボロいフード付マントをした男が入ってきた

「まず名前と性別を言ってくれ」

「ウェルド、男だ」

「ウェルド・・・男っと、見りゃわかるんだがな・・・順番に書いていかにゃ書く欄を間違えるんでな」

呟きながら書類に記入していく

「・・・国はどこだ?」

「トラドア王国からだ」

「トラドアっと・・・懐かしいねえ、俺は昔船乗りをしていてな・・・

 あの国には何度となく行ったもんだ・・・

 そういや、確かバルデスはトラドアから来たんだっけな・・・って言ってもお前には誰だか分からねえか

 それから、と・・・お前の身分は?これも決まりでな」

「貴族だった・・・今じゃただの平民だけどね」

「ん?どういうこった?」

「なに、話すほどのもんじゃ無いからね・・・」

「そうか、しかしここじゃ『元』貴族でも嫌な顔をされる、その事は絶対誰にも言うな。

 この町は貧乏人が命の危機の代償に富を掴む場所だ、貴族や騎士は歓迎されねえからな」

「わかった」

「まあいい、最後の質問だ。

 ・・・ここに来た目的は?」

「金と永遠の命・・・」

「欲張りだな・・・おまえさん、

 金はともかく・・・永遠の命・・・アザレの石か?」

 

(アザレの石・・・40年前に震災の跡地で発見された鈍い光を放つ奇妙な石・・・

 その場にいたアオゥル族の人間の怪我や病気を治し・・・不老不死へと変えた・・・)

 

「・・・助けたい奴がいるんでね・・・」

「水を差すようで悪いが、その石が本当にあるかどうかが・・・まず問題だな

 なにせこの38年間一度も見つかったことがねえんだ、

 あまり期待しない方がいい・・・

 よしっと、これにサインしろ」

書類が差し出される

 

「そういえばあの男は?」

「ああ、あの黒尽くめの男か?奴は教会で治療してもらってる

 どういう奴か知らんが、この町に入れるしか無いだろう・・・

 暫くは出れなくなるがな・・・」

 

 

(ここは・・・何処だ?)

黒服の男・・・

テンカワアキトは周囲を見渡した

(やけにボロイ部屋・・・そしてボロボロのシーツ?・・・

 !?バイザーが無いのに目が見える!)

アキトが驚愕していると

 

「お〜いティアラちゃん、あいつ目が覚めたみたいだぜ!」

 

(ティアラ?誰だ・・・それにココは何処だ?)

体を起こそうとした時、一人の少女がベットの並んだこの部屋に入ってきた

 

「あ、まだ横になっていてください。大変でしたね崖崩れに巻き込まれるなんて

 私はここ、カルス・バスティードでアイノア教会の司祭をしていますティアラといいます。どうぞよろしく」

「・・・アキトだ」

(カルス・バスティード・・・なんなんだ?

 それに崖崩れ?俺は・・・ユーチャリスから放り出されて・・・

 !?ユーチャリスはどうなったんだ?)

「まだ体調が思わしくない様ですね・・・しばらくお休みください」

「すまない・・・」

〔ラピス・・・ラピス・・・どうした?・・・〕

(通じない?何故・・・もしかして五感が戻ったせいか?なら自力で探すしかない、今日は体を休めておくか)

 

そのままアキトは眠りについた・・・

 

 

「なあティアラちゃん、あの男は目覚めたかい?」

「あ、オイゲンさん・・・先程目覚められたのですが、今また眠ったところです」

「ちっ少し遅かったか・・・今日中に書類を送らんにゃいかんのに・・・何か聞いてないかい?」

「お名前はアキトと・・・それ以外は・・・すみません」

「まあいいか、名前以外は勝手に書いておくさ、邪魔したね」

「いえ・・・」

初老の男はそう言うと教会から出て行った・・・

 

 

 

宿舎に三人の人影があった

「なあサラ、あの男助かったってよ」

「ホントですか?良かった〜」

「・・・そう」

「なんだノエル、そのやる気の無い声は」

「私には関係無いもの・・・」

馬車で会話をしていた二人、ウェルドとノエル

そしてアキトを見つけた少女、サラの三人がウェルドの部屋で会話をしていた

「しかしあのケイプバイパーって楽だったよな〜」

「貴方があんなに強いとは思わなかったわ」

「オイゲンさん驚いてたもんね〜すごいよウェルドさん」

「いやいや二人の魔法があったからさ〜ノエルはクムランさんに師事するだけの事はあるよな〜」

(クムランさん・・・学者でありながら実質ここカルスのナンバー3

 しかもそれを表に出さずに研究に励んでいる・・・トラップカプセルの解析もこの人が行なったらしいしね)

 

※トラップカプセル

手のひらに入るくらいの小さなカプセルのに人より大きな柱や機械を収納できるアイテム。個人によって機能が違う

 

「これで奥に行けるようにもなったし、明日からは本格的に探索だね」

「・・・ええ(でも奥に行けば行くほど魔物は強くなる・・・私が行けるの?)」

「さ、明日の昼にでも ドンドンドン!

 

「!?なんだ・・・?」

「さあ・・・」

「判らないわね・・・」

 

ドアを開けるとそこにはパスカ(同じ商隊できた同期の冒険者)が立っていた

 

「なんかみんな教会に集まれだとさ、俺は先行くぜ」

それだけ言うとそのまま宿舎を出て行った

 

「?なんだろね」

「・・・行けばわかるわ」

「そりゃそうだ!じゃ行こうかね」

「うん」「ええ」

三人も部屋を出て教会に向かった

 

 

教会に着くとそこには同期の冒険者が全員・・・いやアッシュという青年を除いてそろっていた

 

「来た来た。

 これでみんな集まったんじゃない?

 歓迎会でもしてくれるのかな?」

入り口の近くにたっていた少女・・・元盗賊のジェシカが近くの少年・・・パスカに話しかける

「だといいけどさ」

 

「シーっ!」

それを咎める革鎧を着た少女・・・シャルン

 

「この教会で司祭を勤めさせていただいているティアラです」

静かになると、一番奥に立っていた少女が一歩前に出て話はじめた

「つい数時間前、私宛に一通のお手紙が届きました。

 差出人はアスロイト王国バルム郡第十二教区の司祭の方です。

 この手紙にアッシュさんの妹さんの事が書かれていました。」

 

「どうしてその手紙があなたの所に?」

「下々の人間は地区教会の司祭に手紙を書いてもらうんですよ。

 庶民はあまり字を知らないし、支配する側にしてみればその方が何かと管理しやすいですからね」

アーサーの問いにオルフェウスが答える

 

「で、当の本人は?」

「サディーヤさんの家で話し合っています。」

パスカが聞くとティアラが即答した

(サディーヤ・・・確か毒術士、セディク族の人間だったよな〜

 毒術士なら薬草にも詳しいし効能の高い薬を精製できるはず・・・まおそらく何かを探して欲しいってトコかい)

ウエルドが頭の中で考えていると

「後は俺が説明する。ティアラちゃんはサディーヤの所に行ってくれ」

屈強そうな男が教会に入ってきた

(あの人は・・・たしかバルデスさん・・・今、ここカルスで最強の男・・・)

「要約するとこうだ。

 アッシュは赤熱病の後遺症で失明し、苦しんでいる妹を治すためにこの町に来たそうだが、

 ・・・その妹の容態が急に悪化したらしい。」

「なんとかならないの?」

シャルンがバルデスに聞く

「今サディーヤがその薬を作っている。

 だが、その材料が幾つか足りないらしい。

 俺はアッシュを連れて今からその材料の一つを探しに行く。

 足りない材料は後一つ・・・それを探してやってほしい。」

「それは命令か?」

隅で壁に寄り掛かって立っていた長身の魔法使い・・・ディアスが呟くように話しかけた

 

「いや。

 足りない材料はアスラ・ファエルに向かう羨道の支流にある。

 そこの財宝はたかが知れてるし、面倒な仕掛けもある。

 少なくとも一ヶ月はこのためだけに時間を費やすことになるだろう。

 強制はしない。

 この中には、出来るだけ早く用を済ませて故郷に戻らなきゃならない奴もいるだろうからな。

 自分でよく考えて判断してくれ」

 

「・・・北アスロイトからこの町まで手紙が届くには、どんなに少なく見積もっても2ヶ月はかかりますよね

 ということは、その手紙は2ヶ月前に書かれたということ。

 その子はもうとっくに死んでるかもしれませんよ?

 それに、たとえ今すぐ薬を送ったとしても、往復だけで4ヶ月も経つんです、それまでその子がもつという保証は?

 〔ゴン!〕

 あいたッ・・・」

オルフェウスに無言でつっこむシャルン

 

「確かにお前の言う通りだ。俺達のやることは無駄に終わるかもしれん」

 

「ならやめましょうよ、ね」

 〔ゴッ!〕

オルフェウスの軽口にまた鈍い音が響く

 

「・・・サディーヤが言うには、手紙に書かれている症状なら半年くらいはもつこともあるそうだ。

 とは言っても、もちろん安心はできない。相手はまだ幼い子供だからな。

 なるべく早く薬を送りたい、手伝ってもいいと思う奴はここに残っていてくれ。」

それだけ言うと足早に教会を出て行った

 

 

「仲間が困っているんだ、みんなで助けてあげよう!」

「アーサー、どうして君が仕切るんですか?

 ひょっとして、僕は貴族だからみんなの上に立つべきだ・・・

 なぁんて思ってるんですか?」

「オルフェウス・・・でも、誰かがみんなをまとめないと・・・」

「大きなお世話ですよ。それに、お互い知り合ってまだ日も浅いんです、名前と顔さえ一致しない間柄で、

 仲間意識に訴えかけてただで働かそうなんて虫がよすぎませんか?

 まあ、男のために働くこと自体ぼくには解せないのですが・・・」

「知り合ってからの時間なんて関係ないじゃないか!困ってる人がいるんだ、助けるのが・・・」

その時教会の出口に向かう影があった

「行くのか?・・・レイアだったよな」

「誰が死のうと私には関係ない」

それに続く影

「ディアスもか?」

「他人の生死などに興味は無い。」

それだけ言うと教会から出て行った

 

「あ〜あ、行っちゃった・・・」

ジェシカの気の抜けた声が静かになった教会に響いた

 

「なんて冷たい人達だ!呼び止めてくる!!」

「ほっとけよアーサー。

 あれ?オルフェウス、お前は出て行かねえのか?」

「出て行きませんよ。

 口では冷たいことを言いながら、実は誰より心配している、それがこのぼくなんです」

「・・・だとよ

 で、みんなはどうする?」

いつのまにか仕切っているパスカ

「あたしは大丈夫。

 この町に来た目的も半分は終わっちゃったから。

 いくらでも手伝えるよ。でも・・・

 でも、だからってみんなに強制は出来ないよね。

 みんなそれぞれこの町に来た目的は違うんだから。

 お金を貯めて早く故郷に戻らなきゃいけない人に一ヶ月は長いもの」

シャルンのセリフにみんながうなずく

「ぼくもバルデスさんを手伝う。困っている人を助けるのは騎士の使命だ!」

「その子の話聞いていなかったの?それも強制っていうのよ。

 呆れるくらい単純な騎士サマね」

アーサーの宣言に呆れながら呟くイヴ

「・・・オレの村って話になんねえほど貧乏でさ、村中がオレの帰りを待ってるから

 正直言って一ヶ月も金を稼げないのは辛いけど・・・

 誰かが困ってるのを知ってて助けない訳にはいかねえもんな。手伝うぜ!

 もしあいつの妹が助かったらあいつに何かおごってもらうよ」

・・・とパスカ

「あたしのお母さんが小さな孤児院をやっててそのためのお金を貯めにこの町に来たんだけど、

 1ヶ月くらい全然平気、手伝えるよ。それにみんなで仲良くしたいもん」

・・・とサラ

「神に仕える身です。困っている人がいれば助けなければ。

 遺跡に潜るのは怖いですかど・・・でも頑張ります」

奥に座っていた小柄な少年・・・ルカが決心する

「この町に来た理由は言えませんが、無為に時間を過ごしていた身・・・私もお手伝いします」

身分の高そうな女性・・・エレアノールが

「偽善者面は好きじゃないけど、特にすることも断る理由もないし

 ま、退屈しなくてすむならお手伝いするわ。約束はしないけど」

・・・とイヴ

「・・・そうね、みんなに付き合うわ。

 フィールドワークと思えば無駄じゃないから」

・・・とノエル

「あたしも手伝うよ。お宝があたしを待ってるけど、人助けも大事だもんね」

・・・とジェシカ

 

「お前はどうする?ウェルド」

「たしかあんたがこの町に来た理由ってお金とアザレの石なんだよね」

パスカとジェシカが聞いてくる

「ああ、そうだよ」

「ふ〜ん・・・お金はともかくとして、アザレの石・・・ね不老不死になってどうしようってんの?ま、いいけど」

「で?どうすんだ」

「ま、手伝うよ・・・しかし11人かぁ、後一人で丁度三人組で4組できるのになぁ」

 

「なら俺が手伝おう・・・」

奥に繋がる廊下から黒いマントをつけた男が現れた

「・・・助けてもらった礼だ、そのかわり色々と教えてもらうぞ・・・」

 

 

 

 

 

あとがき

ようやくアキトが動くね〜

しかしウェルド(女で始めるとフィリアなんだけどね)って無口だからね・・・

さてここでゲームの紹介を・・・

 

Story

後世の歴史家から「黄昏の時代」と呼ばれる・・・

 

って長くなるから止めるけど、要約するとこう

 

時の二大国の国境で大地震が起き、そこで不思議な石が見つかった

その力は怪我や病気を治し不老不死にする・・・まさに伝説に伝わる【アザレの石】そのものだった

 

両国はすぐに発掘を命じた

そして姿を現したのが伝説の太陽帝国の首都【アスラ・ファエル】だった

そこからの発掘品は両国に富を与えつづけた

 

そして魔物が地上へと這い出してきた

軍も壊滅し、遺跡の周囲に分厚い城壁を建造した

 

数年後

遺跡を囲む城壁の中に小さな町が出来ていた

魔物が俳諧する遺跡へ挑む冒険者の町【カルス・バスティード】が・・・

通称【カルスの棺桶】

 

そしてまた、何かに導かれるこのごとく、若者達が伝説の都市へ向かう・・・

 

それぞれの思惑を胸に秘めて・・・

 

と、こんなトコですかね〜

 

次回のあとがきからはキャラ紹介をしたいと思いますんで、

 

DAY:アキトが全然、出て来ないねえ。

    次回には出番が増えるだろうけど、あんましキャラクターを一話の中に出しすぎると訳が解らなくなるぞ。

    気をつけてなぁ〜〜。

 

 

 

管理人の感想

日光さんからの投稿です。

最後の最後に、アキト登場ですね。

右も左も分からない世界で、どんな活躍をしてくれるのでしょうか?

 

・・・それ以前に、どうやって五感を取り戻したんだろう?(汗)