、機動戦艦ナデシコ
英雄無き世界にて…
「な、なんの、これしき。でも、援護位してくれ〜〜〜〜。」
意気揚々と敵陣に突っ込んだはいいが俺は、見事に逃げ回ることしか出来ないで居た。
「チクショー、1機だからって、勇んで俺を袋にしやがって…」
それもそうだ、こちらが1機なのに対し相手は9機(しかもこちらは宇宙用のフレームではない)、それを正面から受けてたっている俺も馬鹿なのだが…
「くそぉ、こんなことなら、格好つけずに1機ずつ各個撃破するべきだったぜ!」
事実それが、正しい戦法なのに、俺は、格好つけて突っ込んでいったのだ。不利なのは目に見えている。いくら、機体の性能差があるといっても、これだけの戦力比では、無意味と化す。よっぽど腕の立つパイロットなら別だが…
だが、俺はそんなSFの主人公の様なACEパイロットではない。負ける時には負けるし、勝つ時には勝つ。それ以上は無い。
「うぉ。」
危ない一撃が、機体を掠めた。それに、一瞬だが俺は気を取られる。
「し、しまった。」
これだけの戦力比の中で、この隙は致命傷であった。敵機が、モニターいっぱいに映し出される。今にも敵機に付いている砲身から火が吹き出そうだ。
「このぉ。」
俺は、機体を斜めにしてその攻撃をやり過ごす。だが、一度リズムを崩こと。つまりは敵に捕まると言う事を意味する。つまりは“死”。
「くそ、くそ、くそ。」
正面に次の敵機が写った。だめだ、避けられない。
「くそぉ〜」
俺は、叫んだ。叫んでどうにかなる物ではないが、叫ばないと気がおかしくなってしまいそうだ。
そのとき、正面の敵機が炎を上げた。
「え。」
砲身からの炎ではない。敵機のスラスターの一部が爆発したのだ。無論、敵のパイロットが、脱出するのが見えた。
そして、通信が入った。
『よぉ、存外苦戦している様じゃないか。ガイ。』
「って、その声は、照一! お前、なんで!」
俺は、次に続く言葉を強引に変えた。
「てめぇ〜“親友”のピンチなのになんでもっと早く出てこねぇ! ヒーロー気取りなのかよ!」
『おーおー。助けられて良くそれだけ吼えられるな。ガイ。やっぱ“親友”てのは、持つもんだ。』
「そうだ、そう言う事だ。お前だけだよ、俺の魂の名前を解ってくれるのは(泣)、所でお前どこにいんだ?」
『お前の後方… えーと、600kmって、とこだな。』
「な、そんなところから届く武器が、有ったのかよ。」
『ああ、そう言う事みたいだな。でもお前は、使わない方がいいぞ。』
「ん、なんでだ?」
『確かにそうですよ、ウリバタケさん。使ってみれば解りましたよ…』
「こらぁ〜 一人で納得すんなぁ〜。」
照一が来てくれた事で、軽口を叩く余裕が生まれた事を、俺も照一もまだ気づいて居なかった。
「しかし、こいつは確かに、“注意”が、必要だな…」
俺は、“ライジングブレード”を見て改めてそう思った。
「撃ったら、見事に吹っ飛ばされたもんなぁ。」
そう、「ナデシコ」の甲板上から、撃ったのだが、スラスターを噴かすのを忘れて、衝撃を相殺しきれずに、見事なほどに「ナデシコ」の外壁に突っ込んでしまった次第である。マニュアル操作で、照準を固定しないと即時狙いがぶれて、到底使えた代物ではない。
「脳天がまだ、クラクラするぜ。」
とりあえず俺は、エステバリスを起すと、また改めて狙いを定める。
「どりゃ。」
どぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉん
強烈な反動、エステバリスのスラスターを全開にして堪える。
『オイ、耳がおかしくなりそうだ。頼むから「ナデシコ」から離れてから使ってくれ…』
「ナデシコ」の甲板上で撃ったので宇宙空間でも音は聞こえる。
「贅沢言わないで下さいよ。此処じゃないと狙いが定まりませんよ。無重力で照準がぶれて… それに、宇宙用フレームじゃ無いでしょこれ…」
『ん、なんだ。気付いてたのか?』
ウリバタケさんの今更な言葉が聞こえる。
「コックピットは…」
『アサルトピットだ。』
「ええい、どっちでもいいでしょ、とにかくなんとかピットは、宇宙用に換装してはいますけど。機体自体は、空戦用でしょ、だってまともに言う事聞きませんよ。出力が強すぎて…」
『まぁ、そこら辺は努力でカバーしろ。仕方ないだろ搬入が間に合わなかったんだから…』
「はい、はい、解りましたって。しかし、当たっても落ちませんね。敵。」
『まぁ、基本的には、射程と貫通力のみに特化した武装だからな。効果自体は薄いよ。』
「苦労して姿勢制御して、それで、敵が落ちないってのは、悲しくありません?」
『まぁ、俺は作る側だからな、使う側の事情なんて知ったことか…』
どぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉん
『お前今、ワザとやったろ… み、耳がぁ。』
「さぁ、どうでしょうねぇ。」
薄く笑い声を浮かべて俺は言った。
『おいおい、援護してくれるのは有難いが、余所見すんなよ! 今の掠るとこだったぞ!』
「へーへー。」
『むぉ、敵機正面! ゲキガンパァァンチ!!!!』
お前こそ余所見すんなよ。
『まぁ、何はともあれ、3機も一気に撃墜してますけど…』
よく聞く声だけど、名前知らないなぁ…
「えっと、君、名前なんつうの?」
『えっ。』
「いや、よく聞く声だからさ、名前くらい解ってないとちょっと、なんというかぁ。」
『ホシノ・ルリです。はい。』
『おぉ、いきなりナンパか、犬河ぁぁぁあ!?』
「なんで、そう言う話になるんです! ウリバタケさん。」
『困りますねぇ、クルー内では、手をつなぐ以上の男女交際は認められて居ないんですけどねぇ。』
「え、っとあなた誰ですか?」
知らない声なので、とりあえず聞く。
『ああ、犬河さんとは、お初にお目に、いや、お耳にかかりますね。私はプロスペクターと言う者です。ああ、プロスで構いませんよ。』
「はぁ、はじめま『おらぁ、犬河ぁ!!後残り6機だぁ!! 気合入れてかかりやがれぇ!! 一機そっちへ行ったぞ!!!』
「そういうのは、先に言いやがれぇ!!!」
確かに言われたとおり、連合軍のマークが付いた敵がこっちに向かっていた。
狙いをつけ、エステバリスの人差し指の関節を稼動させ、“ライジングブレード”のトリガーを引く。同時にスラスターの出力を全て前進用に回す。そして、ペダルを一気に踏みつけた。
どぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉん
立て続けにもう一回トリガーを引く。
どぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉん
さらにもう一回。
どぅぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉん
1発目、敵のマニュピレーターを抉り取った。
2発目、敵機を掠め過ぎて行った。
3発目、出力系にダメージを与えたらしく、炎が上がった。
だが、敵は止まらない。
「まさか…」
『特攻か!!』
『面舵!! 30!! 回避!!』
『だめだ、間に合わん! 犬河!』
「こっちも、今更、射撃の角度変えられませんよ!!」
『回避不能!! 総員、対ショック体制!!!』
艦長の悲痛な指示がでる。
『6・5・4.』
カウントダウンが聞こえる。くそどうにも出来ない。
『3・2、来ます!!!』
ドガァアォアォォォォン
激しく「ナデシコ」の船体が、揺さぶられる。そこから、白い筋が流れ出た。
それは、状況をさらに悪くさせる悪魔のいたずらであった。
『大変です。ミサイルが、勝手に発射されました!!! 爆発のショックでの誤射のようです!!』
『まってよ、今、射線軸上には…』
青い… エステバリスが居る。連絡しようにも… 通じない!?
「くそぉ、ガイィィィィ。」
俺は、緑のエステバリスの出力を全開にしてミサイルを追った。
追いつけ、追いつけ、追いつけ、追いつけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
強烈なGの中で、まともに思考が機能しない中で、俺は、そんな事を考えていた。
あいつが、死ぬ姿なんて、考えたくも無い。死体を見るも見ないも一緒だ。死ぬことには、動かなくなることには、物になることには違いは無い。
そんな、俺の思いが通じたか、エステバリスは、徐々にミサイルとの距離を縮めてきている。だが、遅い。これじゃぁ、遅すぎる。
さっき、計算してみたが…
ミサイルのガイのエステバリスとの接触は、後4分。
俺が、追いつくのは、あと5分。
ガイに通信で連絡を入れようにも、連合軍が、電波妨害(ジャミング)を始めた様で、まともに機能しない。
「くそぉ。」
何か無いのか… あと4分以内にいや、あと3分になったか… それ以内にミサイルに追いつく方法は!!
“ライジングブレード”は、「ナデシコ」の甲板上に放り投げてきたから、これ以上機体は軽く出来ない。どうすれば!?
まてよ、機体を… 機体を“軽く”
そうだ、その手があった。
まずは、“足”だよな。
俺は、脚部マニュピレーター強制排除と言うスイッチを押した。
ばごぉん
そういう、音と共に、足が外れ何処かへ飛んでゆく。
胸部(背部)のスラスターとアサルトピット以外は、全部邪魔だ!!
俺は、それ以外のパーツは、全て強制排除のスイッチを押して除去した。
ばご、ばご、ばば、ばごぉん
そんな音と共に、数々のパーツが外れ、足と同じく何処かへ飛んでゆく。
なんとか、ギリギリ間に合いそうだ。
しかし、ごめんな。エステバリス、戻ったら思いっきり謝るからな!
「あれ、連合軍は、どこ行ったんだ。」
気が付いたら、連合軍は何処かへ消えていた。俺にとって2機目の戦果を挙げた後、何故だか解らないが、連合軍のデルフィニウムは、何処かへ消えてしまった。何故だ?
「そうか、俺、ダイゴウジ・ガイと戦うのは、被害の拡大を促すだけだと解って逃げたか!!」
と、まぁ、そんなうまい話があるわけは無い。確かに過半数を倒したが、相手には、まだ増援を呼ぶなり、戦艦の主砲で、殲滅するなり方法があるはずだ。
「これは、嵐の前の静けさって奴かな…」
一斉攻撃を行うため、もしくは戦艦の主砲攻撃による味方の損害を避けるための一時撤退なら、話は分かる。先ほどからの電波妨害も…
俺は、敵からの攻撃に備えた。そう“敵からの攻撃”に… 味方の方は、殆ど無防備な程に…
来るならきやがれ!!
ゴィィィィン
その時、有らぬ方向から俺の機体に衝撃が襲った。
そして、モニターに写ったのは、緑色のエステバリス… 犬河の機体だ… だが、何で犬河が此処に… しかも、アサルトピットと胴体だけの状態で…
その答えは、数秒後に現れた。
俺の機体に襲い掛かる殺意を含んでいない凶悪な白い筋… いや、俺の機体に襲い掛かるはずだった殺意を含んでいない凶悪な白い筋… その幾本かは、緑色のエステバリスに吸い込まれていった。
そして、爆発。
俺は、その時に我に帰った…
「い、犬河ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「間に合った!!」
俺は、ミサイルを追越し、ガイのエステバリスを発見した。だが、時間はあまり無い。
くそ、こうなったら!!
俺は、意を決して、ガイの青いエステバリスに俺の緑色のエステバリスをぶつけた。
その、反動で、ガイのエステバリスは、ミサイルの射線軸の外へ…
だが、俺の機体は…
振動が襲い掛かり俺の意識はブラックアウトした…
遠くで誰かの呼ぶ声が聞こえたような気がした…
ブリッジが、静寂に包まれます。もう何度も言いませんが、私はホシノ・ルリです。
皆さんの表情が、青く彩られています。これは、「ナデシコ」始まって以来のことです。(と、言ってもこの世界でですが…)
「…………」
誰も何も口を開こうとはしません。不気味なほどの沈黙が、辺りを支配します。
それを、破ったのは、あの人物の叫び声でした。
『い、犬河ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
ジャミングが、解かれたのでしょう、おそらく10秒前の音声が、今更ながらブリッジに響き渡ります。
そしてまた沈黙…
「犬河さんの乗っていたエステバリスの信号を確認してください…」
艦長の前よりもさらに悲痛な指示が、その重い沈黙を、さらに重いもので重くなります。
「了解… 犬河機の生存信号。確認します…
解りきっている結果が待っている… そのはずでした。
「信号は… 発信されています!!」
オペレーターのメグミさん(といっても、犬河さんとは、まだ会っていない)の喜びの声が辺りを支配します。場の雰囲気が一気に軽くなりました!
「犬河照一の生存反応も確認!! まだ生きてますよあの人!!」
なんて、悪運の強い人でしょう! あれでまだ生きてるんですか!?
「通信入れます。ルリちゃん呼び出して!!」
艦長のいくらか弾んだ声が聞こえます。否応もなく私は犬河機に回線を繋ぎました。
「犬河さん、応答してください! 艦長です!」
犬河さん、ユリカさんが、艦長だって事、知ってるんですかねぇ?
「………」
回線が死んでいるのでしょうか? 何の反応もありません…
「メグミちゃん、生存反応はあるのよね…」
艦長が、真剣な目で、問いかけます。
「は、はい! さっきから途絶えずにずっと!」
「じゃぁ、ルリちゃん。ヤマダ機に回線まわして。」
私は、言われた通りに回線を回しました。
「あ、あ〜。ヤマダさん聞こえますか〜。」
『なんだ!?』
ヤマダさんのくぐもった、そして普段とは別な感情で大きくなった声が響きます。
『くそぉ、俺がもっと確りしていれば犬河は…』
「あ〜あの〜。犬河さん、まだ生きてるみたいなんですけど〜。」
『何!? それは、本当か!?』
「そんな、たちの悪い冗談はいいませんよ!? こちらで、生存反応を確認しました!? ですけど本人からの応答がありません! ヤマダさんは、即刻、犬河機を回収! 「ナデシコ」に帰還してください!!!!」
『いやだ、なんて言う筈無いだろう! すぐ帰還するぜ!』
これで、犬河さんが、帰ってきてこの話はハッピーエンド… とは、行かないみたいです。厄介なことにレーダーに敵影が、映ってしまいました。
「艦長! 大変です。木星蜥蜴の大軍の反応が!! レーダーに映りました!? しかも、ヤマダ機の移動ルートと重なります!?」
不味いです、これでは、ヤマダ機は、木星蜥蜴に撃墜されます。
だからといって、やり過ごしてから通ろうとしたら犬河さんが、死んでしまうかも知れません! まさに八方塞がりです! またまたそのときです!(このSSは、その時が多いですね)
『オイ! あいつらの他にもパイロットは居たか?』
と、言う通信が入りました。
「いえ、ヤマダさんだけですけど…」
艦長が、そう答えます。事実です。
『じゃあ、誰が、予備のエステバリスを動かしているんだ!?』
「え!。」(ブリッジ内の全員)
「ちょっと、それどういう事なんですか?」
『ええい、百聞は一見にしかずだ! 映像まわすぞ! しっかり見ろよ。』
そこには、ピンク色のエステバリスが、ラピッドライフルを片手に持ち。カタパルトへ接続しようとしている姿が映っていました。
「ルリちゃん! 回線まわして!」
私は、また言われたとおりに回線をまわします。
「ちょっと、そのエステバリス!! いったい誰が、乗っているの! って… ジュン君。」
そう、そこに写っていたのは、アオイ・ジュンさんに他なりませんでした。
『艦長!! エステバリスの発進許可を願います!』
なんで、こんな暑苦しい人ばっかりなんだろうまったく…
「馬鹿、ばっか…」
2度目ですね… 馬鹿は。
「ちょっと! ジュン君! 何言ってるの! すぐそこから降りなさい!」
艦長が、そう怒鳴ります。
『嫌です。それだけは、聞けません…』
ジュンさんは、断固として譲らない態度です。
『犬河君、彼は、民間人なのにこの艦のクルーの為に戦ってくれた! 借りは返さなきゃならないんですよ!』
「…………」
『僕は、訓練を受けています。大丈夫です。時間稼ぎくらいは出来ますよ…』
『おうおう、格好つけやがって、どうでもいいからさっさと行け。敵は待っちゃくれんぞ。』
「う、ウリバタケさん、煽らないでください!」
ですけど、ジュンさん… もう覚悟、決めちゃってるみたいです… 目の色で解ります。
『よし、そのコースだ… カタパルト接続! Gに気をつけろよ!』
『はい!』
『いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
『エステバリス、アオイ・ジュン… 行きます!!』
そう言って、飛び出して行っちゃいました。
「く、うわぁ。」
まさか、こんなに射出時のGが、強いとは思わなかった…
だが、すぐに僕は、姿勢を建て直し、ヤマダさんに通信を入れる。
「こちら、アオイ・ジュンです! 木星蜥蜴が、出没! ヤマダさんの帰還コースと重なりますので、僕が時間稼ぎをします! どれくらい必要ですか!」
『おう、ジュンか… 最低でも6分は、必要だ! それだけ耐えてくれ!』
ヤマダさん、からの短い返信。だが、それで十分だ!
僕は、大至急戦闘宙域へ、エステバリスを移動させた。
「後… 5分か…」
おそらく、僕が生きた中で一番長い5分になるな…
「たしかに、敵は待っちゃくれませんね! ウリバタケさん!」
バッタやジョロの大軍が、こっちへ向かってくる。
最低でも… 後5分は、耐えて見せるぞ!
僕は、エステバリスの右腕装備のラビッドライフルを発射する。
がががががががが
小気味いい音が連続で弾丸を発射している事を告げる…
一番先頭の、バッタが一機、爆発した。
一つ!!!
その、間隙を縫って、突破しようと試みるジョロ。
「抜けられるわけには… いかないんだよぉ!!!!!」
そのジョロに僕は、ラビッドライフルの火線を集中させる。
ディストーションフィールドを突き破りジョロは、爆発した。
二つ!!!
「く!!」
どうやら、僕は目の敵にされてしまった様だ。突破するのではなく包囲してきた…
だが、これでいい。時間稼ぎには、包囲されるのは絶品だ…
後は、逃げてれば必然的に5分は過ぎる。誰にも抜かせずに…
「ジュン!! もうすぐだ!! 後1分も有ればいい! 死ぬな!」
俺は、通信機に向かって怒鳴りつける。
さっきから、爆発の音しか聞こえなくなった。
時々、絶叫の様なジュンの声が、彼が、生きている事を告げる。
「よし、ここまで来れば、蜥蜴の追撃は振り切れる! ジュン、もういい早く戻れ!」
俺は、思いっきり通信機に怒鳴りつけた。
「くそ。」
5分は経った。ヤマダさんからも、もういいと言う通信が入った。だが、この包囲網を突破するのは、至難の業だ!
「ナデシコ」の方向にラビッドライフルの火線を集中させ強行突破! 地味だが、それしか僕に出来る突破方法は、ない…
「一か八か… 行ってやる!!」
僕は、「ナデシコ」の方向へ向けて。エステバリスのスラスターを全開にした。
木星蜥蜴の包囲線に、正面から突っ込む。
エステバリスの足が爆砕し、腕がもげた…
「大歓迎だ! 機体が軽くなる! アサルトピットとスラスター以外は、どこを狙ってもいいぜ!!」
幸いなことに、アサルトピットと、スラスターには、一発も貰わずに包囲線を抜けることに成功した。何気に運がいいのかな… 僕。
「ナデシコ」のハッチが近づいた。何とか振り切れた…
だが、エステバリスの足がもげているために、着艦等という器用な真似は出来そうに無い。僕は、滑り込むようにエステバリスを「ナデシコ」のハッチに捻り込ませた。
機材を何個か巻き添えにした… 後で、ウリバタケさんに怒られそうだな…
「エステバリス、全機帰還! ハッチ閉め!」
「よし! 皆さん準備して下さい! バリアーを突破します!!」
第3防衛ライン上にある空間歪曲バリアーを突破します。そのための、指示を艦長が忙しなく出しています。
「接触まで、後5・4・3…」
「相転移エンジン… 出力最大!!」
「2・1・接触!」
バチチィィィィィィ
「ナデシコ」全体が震えます。おかしいですね? 計算上では、簡単に突破出来る筈なのですけど…
「どうした! 破れないのか!!」
「おかしいですなぁ、シュミュレーションでは、この方法で突破出来る筈なのですが…」
「どうすんの!? このままじゃ、宇宙軍にも、木星蜥蜴にも追いつかれますよ!」
「まずいぞ! このままでは!」
その時です。行き成りバリア衛星が、爆発しました。
「あれ?」
「爆発? した…」
「オモイカネの分析によると、バリア衛星の爆発は、出力限界で、バリアを発生させ続けたためのオバーヒート…」
私が、分析しました。
「なぁんだ。無理してたんだ。」
「ナデシコ」は、バリアーを突破し宇宙へ出ました。まだまだ続くであろう困難の予感と共に…
機動戦艦ナデシコ
英雄無き世界にて…
第二話下
END
第二話サブストーリーへと続く…
今は、解らない。でも何れ解る時が来る。それが戦乱の時代でも…
代理人の感想
ザッピング(視点の切り替え)をするなら、「これは誰々の視点です」と明記した方がいいですかねー。
それはともかく、サツキミドリによるのに「もう帰るチャンスはない」ってのはなんだかなぁ。
微妙に作為が混じっているのか、それとも犬河を諦めさせるためにわざと伏せてたのか。
後者かなぁ、やっぱ。
追伸
それにしてもビルダーで作ったHTMLは重い・・・・。