機動戦艦ナデシコ
英雄無き世界にて…
俺は、目を覚ました。
近くに見知った人達がいる。
俺は、その人達に話しかけた。
「すいません、皆さん。此処は、天国ですか? 地獄ですか? それとも後世世界ですか?」
返答は…
「犬河君。人に散々心配をかけといてそのオチは無いんじゃないのかなぁ。」(全員)
「は、はぁ、すいません…」
何故そこで謝る… 俺。そして、皆の手に握られている物を見てしまった。
「って、何で皆さん日本刀を! 何で皆さん日本刀を構えているんです!?」
そう、皆の手に握られているのは、間違いなく日本刀だ。御用提灯まである。しかも服装をよくみたら全員、晴着だ。
「まぁ、それは置いておきまして… この契約証にサインをお願いします…」
「はぁ、置いては置けませんが… て、ゆ〜か あなた誰です?」
「ああ、顔を合わせるのは初めてでしたな犬河どの…」
どの?
「拙者は、プロスペクターと言う者である。ささ、この契約証に血判をおねがいする。」
く、口調が、いきなり変わった。プロスペクター? ああ、あの人か。一度通信で話をしたっけ? 血判? いや、それよりも… 手渡された筆記用具って…
「てか、なんで毛筆なんですか!? 答えてください皆さん!?」
「いやぁ、目覚めはやっぱり故郷の風習がいいかと…」
「思いっきり日本観を間違ってますよ!? てか、日本人ちゃんといるでしょ!? 間違ってること教えてあげなきゃ!?」
そして、改めて部屋(おそらく医務室であろうか)を見渡す…
「それに、なんで、全部障子張りなんですか!?」
「気に障った?」
「張るの苦労したんだけど…」
「はい…」
「いや、そういう意味じゃ無くてですねぇ!」
だめだ、俺にはついていけない。しかし、目覚めがいきなりこれか! これなのか!
しかも、見知らぬ女性… いや、ひょっとしたら、通信で喋ったことはあるかもしれないが、取りあえず名前を知らない三人の女性の半泣き顔と向かい合う羽目になっている。
悪意が無い分。始末に終えない… しかし、日本刀はやばい。うわ、こっち向けないで。
「ははは、気にするな! これは、皆がお前のためを思ってやったことだぞ!」
「あんたら、絶対、楽しんでやってるでしょ、ウリバタケさん&ガイ&ジュンくん!!」
「ははは、確かにそうだが、皆が真面目にお前を心配したのは事実だぞ。」(ウリバタケ)
「そうそう、助かると解ってから準備したんだもんなぁ。」(ヤマダ)
「しかし、よくあの爆発で無傷でしたねぇ。」(ジュン)
「え、無傷?」(照一)
よく考えてみたら、どこも痛くない… ミサイルの直撃を受けたのに?
「まぁ、アサルトピットも無傷だったしなぁ。」(ウリバタケ)
「いくら、ディストーションフィールドを張ったからって、破片を食らわないとはなぁ。」(ヤマダ)
「強運ですねぇ、犬河さん。衝撃での気絶だけなんて、しかも一日で意識が戻るとはねぇ。」(ジュン)
「ははぁ、そうみたいで…」(照一)
「まぁ、取りあえず契約証にサインを…」
プロスさんが、話に入り込む…
「ああ、はい。すいません。」
念のために契約証を確りと読む。気になる一文を見つけたが、俺は苦笑いをしてそれを了承する。無論、筆記用具は毛筆だ。
「えっと、照一… 犬河… と。」
「はい、これで、あなたは、正式な「ナデシコ」のクルーとなりました。」
ぱちぱちぱちぱちぱちぱち
どこからともなく拍手が流れる。
「はい、それでは、自己紹介とでも行きましょうか?」
ちゃらちゃちゃ〜ちゃらららららら〜ら
どこからともなくそれっぽいBGMが流れる。 しかしこれ何のBGMだ?
そして、医務室なのに床がせり上がる。何故に?
そして、中学校の体育館のステージ程の高さで止まった。そしてその上に現れた物とは。
『はいは〜い、エントリーNo1! 僕らの艦長ミスマル・ユリカで〜す!』
感想、この狭さでマイクはきついぞ…
『エントリーNo2、オペレーターのホシノ・ルリです。』
感想、ホシノ・ルリ? ああ、この子が?
『はーい、エントリーNo3、通信士のメグミ・レイナードで〜す。』
感想、どっかで聞いた名前だな…
『エントリーNo4〜 元社長秘書現在は、操舵士のハルカ・ミナトで〜す。』
感想、こんなのばっかかよ…
『エントリーNo5、料理長のホウメイです。こちらは、連れの通称ホウメイガールズです。』
『『『よろしくーーーーーー。』』』
感想、まぁ、付き合う分にはこれでいいと?
『おら〜エントリーNo6−! これ以降は、野郎どもの紹介だ〜』
『へい〜〜〜〜〜〜〜〜』
感想、いやそんな泣きながら言わなくてもウリバタケ・セイヤさん… と、その連れ…
『おら〜、俺の名前は〜
『ヤマダ・ジロウです。』
感想、マイクをひったくってルリちゃんが言った。おい、ガイ? 心配するな、俺だけはそう呼んでやるから… いや、泣くなって!
『ゴート・ホーリだ。(呆れ顔で)/フクベ・ジンだ(今はつとーじょー)。』
感想、スッゴイ普通だ。しかし、いつからかエントリーNoが、無くなったな…
『え〜と、アオイ・ジュンです。今回から副長兼パイロットになりました。』
感想、へぇ〜、そうなんだ。
『え〜、コホン、プロスペクターです。プロスで構いませんよ。』
感想、おいおい。それだけかい。
「はい、犬河さん。」
そういって、マイクを手渡された。
「え、俺も?」
「はい。」
『えっと、今回から、正式に「ナデシコ」のクルーとなった、パイロット兼雑用の犬河照一です。(パイロットの枠が一杯で、こうなったらしい)』
「では、最後と行きますか。」
プロスさんがそう言う。俺が、最後じゃなかったのか?
『え〜、彼が、本日付で、「ナデシコ」を去ることになる。ムネタケ・サダアキどのです。』
そこには、両手、両足をしばられ、猿轡を噛ませられた、男の人が居た。他にも何人か、縛られてもがいている。
「あの〜、これらは、いったい?」
俺は、一応聞く。
『ああ、気にしなくていいですよ。』
いや、気になるって。
ごうん。
『うむ、着いたみたいですな。』
着いたって、何が? 機械音が、したけど…
『コックですよ。』
「はぁ?」
コックって? コック?
『え〜と、「ナデシコ」の出航、予定では、実際の出航の次の日となってたんですよ。』
「はぁ…」
『それで、搬入し忘れた資材と足りない人員、と言ってもパイロットは、別なルートで入る予定なんですが… その、え〜と、とにかく! 搬入し忘れた資材とホウメイさんお墨付きのコックが来るんです! と言っても資材の方は、あまり期待できませんが… もう現場がぼろぼろで…』
「“来た”の間違いじゃないですか?」
『ええい、あなたは、そんな細かいことを気にする性質だったんですか?』
面白いからだよ… 流石に口には出せないな。
『とにかく、皆さん急いで格納庫に行くように。』
「は〜い。」(俺を除いた全員)
「あの、それって、俺も行くんですか?」
『ええ、当たり前でしょう。』
俺、病み上がりなのに…
『ああ、これに着替えて下さいね。』
と言われて、プロスさんに晴着を渡された。
『貴方の着替えの速度は、ギネスもびっくりだそうですからねぇ… な! 早!』
「ふ、俺を甘く見ないで貰いたい!」
『た、確かにギネスもびっくりですねぇ、測定不能ですよ。』
「どうでもいいですけど、そろそろマイク置いてもいいんじゃないですかぁ。」
『いえ、私は、司会ですから。』
そうだったのか?
『あ、後これを…』
と、手渡されたのは、日本刀であった。
「全身全霊および全力で遠慮します!!」
とか言いつつ受け取ってしまった俺であった。
「下に〜、下に〜。」
大名行列か? これは、まあ、確かに全員晴着だ、そう見えなくは無い。
しかし、何故俺が、籠に乗らされているんだ?
医務室を出たら、いきなり全員がかりで籠に押し込められて、こんな形で格納庫へ行く羽目になっちまった。
まぁ、楽だからいいんだけどね。
「無礼者! 頭を下げい! 犬河照一どののお通りで有るぞ!」
ウリバタケ&ガイ&ジュン、ぜってー、楽しんでやってるだろ…
「犬河の〜、おなぁりぃぃぃ。」
待て、誰か助けてくれ! 誰かこいつらを止めてくれ〜
「到着。」
「ああ、ありがとう、ルリちゃん。やっとこの地獄から抜け出せたよ。」
そういって、籠の簾を開いたルリちゃんの手を握り締める。本人は、よく解ってないようだったが… とにかく俺が助かったのは、事実だ。
『はぁい、それでは、ムネタケ・サダアキどののお別れ会と〜 新メンバーの介入会をこれよりしたいと思います。』
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
おお、盛り上がってますなぁ。
『では、まずは、ムネタケ・サダアキとその一味の宇宙追… もとい、お別れ会をしようと思います。と、言っても一瞬ですみます。』
「ちょっと、これは、何の真似よ! このまま、ポットを打ち出したら宇宙の塵になっちゃうじゃない!」
「そこ、しっかり猿轡を噛ませろ。」
「すいません。思ったより元気がいいもんで。」
『あ〜あ〜、心配はご無用です。10日程したら、月に着くようにしてありますので…』
いや、十分心配なんだが… まぁ、いいか。 殺す気は無さそうだし。
「あんた達! 覚えときなさ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
ムネタケの反乱…
完結!かな?
(この世界では)
そう言う叫び声と共に、ポットは、どこと知らぬ宇宙へ飛び出していった。
『はい〜、続きましては〜、新しいメンバーの介入式を行います。それでは… 入場をお願いします!』
じゃがじゃじゃ〜んじゃんじゃがじゃじゃーじゃんじゃがじゃじゃーがじゃがじゃがー
またまた、それっぽいBGMが、流れる。誰がやってんだ?
「え?」
そこから、出てきたのは知った顔だった。
楽花…?
『さささ、マイクをドウゾ。』
そういって、プロスさんが、マイクをすすめる。
その人物は、マイクを受け取ると、マイク越しでも聞き取りにくく暗い声を発した。
『飯井川楽花です。よろしくお願いします…』
場のテンションが一気に下がる。辺りが暗い雰囲気になる。
いつものあいつらしくない。いったいどうしたんだ?
「お〜い、楽花ぁ〜どうしたんだ〜。悪いもんでも食ったのか〜」
俺は、そういって手を振る。楽花と目が合った。その瞬間。
「おわ!」
目の前に楽花は、居た。い、何時の間に。
そして、楽花は、俺の体を触る。(と言っても上半身だけだが)
「あ〜あの〜」
と、声を出そうとした瞬間。
「い〜ぬ〜が〜わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
胸倉をつかまれる。そして、前後に振られる。物凄いスピードで…
「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
き、気持ち悪。
10回、20回、30回、40回と、そのくらいで止んだ。そしてとどめに…
「この… 馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
光速を超えた鉄拳が俺の顔面に飛来する。 直撃!!
「うごろぺらぁぁぁ。」
そして、俺は星になった。(アンパ○マ○的表現で)
「いやはや、あいつも苦労してるねぇ。」
「まぁ、苦労症だと思いますけど…」
「ちょうどいい暇つぶしが出来たな。」
「見ていて、飽きそうにないからな。」
「あくまで、見ている分ですけど…」
「やって見たくは無いわな。」
「あいつが無傷だった理由が解った気がするぜ。」
「あれを毎日食らってちゃぁねぇ。」
「あ、遊ばないで下さい。」
「うぉ! 生きてる!」
「ほ〜、イテテテテぇ〜。いきなりぶつこたぁねぇだろ。」
俺は、兼職である(と言っても、こっちが本職なのかもしれない)雑用(廊下の雑巾がけ)をしながら楽花に講義した。
「ああ、もう! 私に話もせずにこんな所に居たお前が悪い!!」
ああ、怒ってる。
「しかたねぇだろ、話をする暇がなかったんだから… 俺だってお前が来たら驚いたよ。」
しかし、コックと言った。こいつ料理が出来るのか? パターンではこういう性格の女の料理は不味いと決まっているんだが…
「私の場合は、ホウメイさんに誘われて… 授業免除してもらえるって(出席カードの違法発行)言うから、なんとなく…」
ああ、いかにもこいつらしい。
「それより、なんであんた晴着なの?」
「ん、この戦艦の制服だ。」
「嘘…」
「うそだ…」
バキ!
先程の物よりは弱いが、強烈な鉄拳! しかし、俺は耐えた!
「ふ、ここにきて二度も死線をくぐり抜けたのだ!? その程度の攻撃が効くか!」
「く… こうも短期間で何故これ程まで強く…」
ふ、見て来た物が違うんだ。(意味不明)
「さ〜て、仲のいい彼女とラブコメするのはいいがもう一つの方の職の方の練習するぞ!」
「おう! そうするかガイ! いや、泣くなって… 後、彼女じゃねぇ。」
「ははは、仲が良いこってよ〜。」
「あ、ウリバタケさん? 何用です?」
俺は、いきなり登場したウリバタケさんに用を聞く。
「ん、お前を殴りに来たんだが… その役目は、もう先にやられっちまったからな… そう言う訳で、お前さん用のシミュレーターが出来た事だけを伝えに来たんだよ。」
楽花は、殴りに来たと言う意味がよく解っていないようだったが、俺には解った。
いくらガイを助けるためだといってもあんな無茶をしでかしたんだもんな…
「ねぇ、照一? シミュレーターって?」
楽花が、質問する。
「ん? コンピューターの中で練習することだとでも覚えれ「そーじゃない。」
え、じゃなんだ?
「何で、あんたにそんなものが必要かって事。」
「ああ、そいつはパイロットだよ。兼職だけどな…」
俺では無くガイが言った。
「ま、戦艦の中じゃ一人でも戦力に出来る奴は使うものさ。」
「でも、照一はIFSをマニュアル操作が出来るんならIFSなんて必要ないだろ。」
俺は、目を見張った。だがこの人達の言っている事の意味は解る。それに、本当にそういう事なのだろう。俺は…
「貴方達だけ悪役になる必要はありませんよ…」
「照一…」
「楽花… ごめん。でも、自分で考えて自分で決めたことなんだ。最後まで行くよ… ああ、心配はしなくて良いから。それに心配されるほうが気持ち悪い…」
最後の言葉で、場の雰囲気が一気に変わった。 ま、まず(汗)
「この… 馬鹿、照一ぃぃぃぃ!!」
再び鉄拳が目前に迫る。バックステップして避ける! 間に合わない! 直撃!!
「のぐがるぺばらぁ。」
再度俺は、星になった。
「途中までなら格好よかったのになぁ。」
「そういう奴も居て良いんじゃないですか?」
「まぁ、確かに見ていて飽きないわなぁ。」
それから、1時間後…
『よし! そうだ! 武器の換装のタイミングは!』
ふう、イミディエットナイフだけとは言え、武器をなんとか換装出来るコツを掴んだみたいだな。俺。腕部のマニュピレーターの操作は、慣れてきたみたいだ。
『しかし、まだまだ遅い! オートでは、0,5秒で換装されるぞ! なのにお前は、1秒もかかっているじゃねぇか! 単純な、反応速度だけなら、どの機体より上なんだぞ! その機体は!!』
理由は、簡単だ。普通のエステバリスは、操作をしたら、コンピューターを通して機体のマニュピレーターに伝えられる。ようするに人が、脳からの指令を脊髄をとうして筋肉に伝えるのと同じ動作だ。
しかし、俺の機体は、直接操作した反応が、マニュピレーターに伝えられる。
人で言う反射と同じ動作だ。ようするに脊髄が直接筋肉に指令を伝える。
しかし、脳の膨大な情報を脊髄が処理するのはかなり大変だ。
あれから1時間、楽花は、不貞腐れて何処かへ行ってしまったが、俺はシュミュレーターで、ガイとウリバタケさんにみっちりとしごかれていた。
『よし、次は地上での基本動作「歩く」だ。シンプル故にマニュアルじゃ難しいぞ。覚悟は出来ているな。犬河…』
「はい!」
俺は、威勢良く返事をした。そうだ… あのとき俺にもっと上手くエステを使えていれば、皆に心配かけずに済んだ。もっと強くならないと… でも、後戻り出来るくらいまでだな…
俺は、自分で後戻り出来るくらいまでと思った理由を自分で見つけられないで居た。
『まず、膝のレバーを…』
「おや、どうした? 楽花? そんなに不貞腐れて?」
私は、厨房でむくれて座り込んでいた。ホウメイさんが、話しかけてきた事になんとか気付けた。
「しかし、登場はお前らしくなかったねぇ。いつもなら、元気良く登場する所なのに…」
「あいつ…」
「ん、何?」
「はぁ… あいつの部屋が、引き払われているのを見て、私ホントに泣いたのに…」
そう、私は、「ナデシコ」に来る時にあいつの部屋に別れの挨拶をするために寄ったのだ。
昨日は、休んでいても、必ずそこに居ると思っていた。
学校にも退学届けが出ていた。(まだ、サインしてないときに)
私は、本気で泣いた。何が悲しかったのかは解らないが、確かにその時、私は泣いていた。
「でも、ここに来たとたんあいつに会って… それで今はパイロットか…」
「それで、あんたは、その“あいつ”の事をどうおもっているんだい?」
いきなりの質問に私は慌てた。
「なななななななななななななななななぁぁぁぁぁににににぃぃぃいぃ。」
自分でも何言ってるのか解らなかった。思考が、上手く成立しなくて…
「か〜わいい〜」
しかし、ホウメイさんには何故か伝わったようである。
「だったら、出来る事をしてあげたら?」
「え?」
「あんたの得意な事は?」
「ええと。」
「いつも道理にやればいいんだよ。それにあんたが言う“あいつ”もそんなに特別なものは望んでいないものさ…」
「へ?」
私には良く理解できない。
「ま、あとは自分で考えること。それと…」
「なんですか?」
「あんたが言う“あいつ”は、すぐ無理するよ。いつも傍で見張ってなきゃすぐ突っ走っていく性格だからね。しっかりと、傍にいてあげたら?」
「ぜぇ〜ぜぇ〜。」
「よし、犬河。今日のところはこんなもんで勘弁してやる。」
俺は、床に大の字(服装は、晴着)になって突っ伏している。
「は、はい、ありがとうございます…」
俺は、精も根も尽き果てた声を出した。
くそ、結局15歩しか歩けなかった。(いや、それでもすごいって)
俺は、ドアが閉まる音を確認すると、筋肉痛に苦しむ体を無理矢理起き上がらせようとした。しかし、直ぐに元に戻る。
く、くそ! 立てねぇ。
すると、何処からか足音が聞こえた。
ちゃ、チャンス! た、助けを!
だが、喉からは、まともに声が出ない。
足音は、むなしく通り過ぎていく。
ぐ、ぐぞ… も、もうだめか…
その時。
プシュー
ドアが開いた。そこにたっていたのは…
楽花…
「ふ〜、見るも無残な姿で倒れているわねぇ。」
そういいながら、まともに動けない俺の横河に回りこむ楽花。
「ほれ。」
そういって手渡されたのは、カップに入った野菜ジュースだった。
「それと、コミュニケ。艦長さんが、渡して下さいだって。」
いや、まともに動けんぞ… 俺。
どうやって飲めと? そして取れと? 呻くだけで精一杯だぞ。
「むむ、やっぱり動けないか。持ってきておいてよかった。」
そういって取り出したのは、チェーン店の飲み物についていそうな、ストローの入る穴の開いた蓋と、ストローだった。
楽花は、野菜ジュースの入ったカップに蓋を被せると、ストローを入れた。
そして、ストローを強引に俺の口に捻じ込む。
「さあ、後はがんばって飲みなさい。」
まぁ、飲めない事はないか…
チュゥゥゥゥウゥゥゥ
半場一気飲みに近い速度で野菜ジュースを飲み干す。
あ、うまい。この野菜ジュース。
そして、少し咳払いをすると、なんとか俺は喋れるようになった。
「あ、ありがと… 楽花。」
「へーへー。どういたしまして…」
いつもの気の無い返事だ。でも心なしか楽花が、笑っている様に見える。俺の気のせいか?
「所で、この野菜ジュースだけど誰が作ったんだ?」
こんなにうまい野菜ジュースを作れるとは… 会ってみたいものだ。その人に…
「ほう、気になる? 気になるの?」
口調が怪しい… まさか!?
「ふふふ、どうだ!? 私のお手製スペシャル野菜ジュースの味は!?」
一気に迫られる。ま、不味い逃げるわけには… いかないよなぁ。
「おいしいです。(汗)」
俺は、置かれたコミュニケを手に巻きながら言った。しかし、体は倒れたままだ。(よし、何とかだが、体は動くぞ)
「昨日も無理したんだって?」
俺は、その言葉を聞いて黙った。
「ちょっと位休みなよ、強くなりたくっても無理はいけないよ…」
「そうかな?」
俺は、そう言った。
「そうだよ! だって、無理したら何にもなら無いじゃない。」
「でも、無理しなきゃ追いつけないんだ。皆には…」
「だったら少しは、他人を頼ってよ!」
楽花が、俺の胸に顔を埋める。そのまま、楽花は、泣き始めた… ちょっと恥ずかしいかな?
「あんた何時もそうだよ。自分を棚に上げて、他人ばっかり見てる。子供の頃から…」
ああ、あのことを言っているのか。
そう、何時も俺が、苛められていた男の子が、年上の男の人にストレス発散のための暴力を受けていたという事件が昔あった。
俺は、自分を何時も苛めていた男の子だという事も忘れて、年上の男の人相手に殴りかかったのだ。無論、俺は、ぼこぼこにされたが…
それに、男の子の態度が変わることは無かった。
「行方不明の事件の後でも… あんた何も変わってないじゃない。」
行方不明の事件と言う言葉で、俺の顔が引きつる。
いや、変わったよ。あの後に…
そういう言葉を俺は、飲み込む。
「ちょっとは… 他人を頼りなさいよ…」
そう言って、楽花は、静かに寝息をたて始めた。俺は、楽花の後ろ頭に手をやり。
「気にすんなよ… 自分の命を秤にかける気は無い。」
俺は、聞こえて居ない事を解りつつそう言った。
そのために、入り口の隙間からの声は聞こえなかった。
「おぉぉ。」
「いけ、いっちまぇぇ!」
「こ、これは覗きじゃないんですか?」
「五月蝿い!幸せと言う物は、皆で分け合うものなんだ。」
「そうそう、これは、見ておかないと損だ!」
後日、ルリちゃんの策謀によりオモイカネに録画されていた映像を俺は見た。
無論、凄まじいまでの鉄拳と日本刀の2段攻撃にあえなくノックアウトさせたが…
機動戦艦ナデシコ
英雄無き世界にて…
第2話サブストーリー
END
第三話へつづく…
代理人の感想
んーむ、ちょいとズレてるかなー。
読んでて感動したり笑ったりできないと言うか。
いまいち他人に読ませるための工夫が足らないと感じました。