機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

 

 殺風景な部屋。

 何も変わっていない。

 場所が変わっただけだ。

 俺は、何も変わっていない。

「どりゃぁ!」

 上から何かが落ちてきた… え?

「のぶぅ!」

 腹部に直撃。激しい激痛で俺の脳は覚醒した。

「こ、今度は上からかよ… 楽花。」

 何時も通りの彼女を見て、俺は日常が全く変わっていない事を認識する。

「だって、床下は飽きた。」

 そ、そういう問題か?

「俺だって人間なんだから少しはいたわれ。」

 俺は、本音を言う。

「もう、5時だよ。いい加減おきなよ…」

「早いだろ!」

 俺はツッコミを入れる。そして、いそいそと布団に潜り込もうとする。

「はいは〜い、照一、今日のノルマは、展望室・ブリッジ・男女トイレ・格納庫・1〜7ブロックまでの廊下・全換気扇で〜す。」

「その後に、シミュレーション訓練に基礎体術訓練、葬式の後始末に夕飯の手伝いだろ…」

最後のは、無論こいつにお願いされての事だが…

「まぁ、それもあるけど… 所で照一、いくらあんたの私物だからってアレは不味いと思うのだけど…」

そう言って、楽花が、部屋の隅を指差す。

「趣味でDVDを大量に持っていたっていいじゃんかよぉ。」

そこには、山の様につまれたDVDカセットがあった。

タイトルを見ると、戦闘妖精○風だとか、エリ○88だとか、ゼロ戦○えゆとか、スリー○ングスだとか、戦略○作戦だとか、HELL○INGだとか、聖戦士ダン○インとか、ベル○ルクだとか、ロボ○ップとか… 全く関連の無い。趣味以外の何者でもない、カセットの山がそこにあった。

「このガン○ムSE○D2ってなに…」

「ん、何を言っているんだ楽花! 最近始まった、21世紀最初のガン○ムの続編ではないか!」

 放送日、2102年3月27日。となっている。

「解るか!」

「ふ、しかし、今更になって出るか… あの続編が…」

 何故出るのかまったく理解できん。せめてもっと早くだせ。

「ああ、俺の魂が崩れていくぅ!」

「勝手に崩れてろ!」

 そんな普通のツッコミを入れるな。しかし、そこに立て掛けてある日本刀の事は何にも言わないのか? まぁ、この艦に来てからの貰い物だし。

 しかし、そんな会話にも終わりが来た。

「我らは太陽の子〜!!」

 鼓膜に響く艦長ミスマル・ユリカさんらしき人の声。

「「………………………………」」

 えーと、そうか! 葬式か、「サツキミドリ2号」の皆さんの…

 個人的なものもやるって言っていたな! しかし、いろんな意味で独特の葬式みたいだな。

「とりあえず、今日のノルマをこなしますか…」

「おー。」

 

 STAGE1 「トイレ清掃」――清掃というか戦闘。

 

「え〜と、まず清掃中の札を掛けてと…」

 俺は、そう言いながら、トイレの入り口の脇の進入禁止用ロープを入り口に引き、清掃中の札を掛ける。

「よっと、重いなぁ。」

 掃除用具運搬用のワゴンから、トイレ清掃用具を取り出す。何故かタワシ1個が5kgもあるが… ちなみに、水切り6kg、洗剤ケース3kg、便器掃除用タワシ6kg、床掃除用タワシ4kg、箒10kg、ちりとり5kg、と言う具合の重さだ。箒を使うと、どうしても腰が痛くなるが… まぁ、これも訓練って言われるんだろうな。

「だれか入ってますかぁ!! 入っていたら掃除するので出てってくださぁい!!」

 女子トイレなので、入る前に追い出しをした。まぁ、当たり前だろう。

 十秒ほど待つ、返事が返ってこない。じゃぁ、誰も居ないと言うことだろう。

 キュゥゥゥン、ギチャ

「なんの音だ?」

 到底、無人のトイレでは鳴らない音が入り口から発せられている(有人でも発せられなさそうだが…)。思わず思ったことを、口に出してしまった。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ

 足音(?)が聞こえた。え?

「誰か居るのか…」

 だったら反応しろ。何のための追い出しだ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチ

 足音(?)が止まった。近い… 

「そこかぁ!」

 俺は、入り口に飛び込み、左拳を突き出させた。人が居て当たったとしても、呼びかけに反応しなかったのだ。ぶん殴られても文句は言えまい。

 ぶん

 俺の左拳は空を切った。視界には誰も居ない。気のせいだったのか…

――ぎぃぃぃぃぃごぉぉぉぉぉみぃぃぃぃごぉぉぉぉぉ――

 何かの鳴き声らしき音が聞こえる。

 背後に気配を感じた。俺は、飛び退く。

 グシャァ

 何かが潰れる音、恐らく俺を狙って放たれた物が、床を潰したのだろう。食らっていたら危なかったな。ってか死ぬて…

「なんだか、知らないが… やってくるなら。」

 俺は、振り向く。予想通りの潰れた床があった。だが原因は居ない。

 ――――どこだ。

 ッバ

 上!

「そこか! 狼牙、撃・砕・拳!

 俺は、渾身の力を込めた右拳を上に向かって突き出した。手応えが返ってくる… 異様に硬い。

「いっっっっでぇ!」

 俺は、拳を痛めた。動きが止まる。

――ぎゅういぃぃぃぃん――

 相手は、殆どダメージは無い様だ。まずい、こっちは隙だらけだぞ。

「大丈夫か! 犬河! 電源スイッチOFF!」

――ぎゅぅぅぅぅぅぅぅん……――

 突如出現した、何者かによって俺は助かった。

「うむぅ、暴走してしまったか… 俺の「リリーちゃん4号」… やはり、エネルギーがまずかったのか…」

「う、ウリバタケさん。」

 そう! そこに現れた何者かとは、ウリバタケ・セイヤであった。

「この、どこかで見た様なメタルな人形はなんなんです。」

 俺は、襲ってきた「リリーちゃん4号」を見て言った。

「ん? まぁ、その… なんというか… 趣味だ! 気にするな!」

 無理矢理開き直ってるよ…

「ふふふ、一部始終を見させて貰いましたよ。セイヤどの!」

 何時の間に入り口の前に居たんです。プロスさん。

「な! プロス! 貴様! 何時からそこにぃ!」

「ふ、気配を消すカンはまだ衰えていないようですな。」

 ウリバタケさんと、プロスさんがにらみ合う。

「とにかく、無断開発は、給料から引いて置きますからね。ちゃんと、契約書に書いて置きましたから。」

「のぉぉぉぉ!」

 どっかの小隊の年中シャウトしている男の様な声を出すと、白目を剥いて、ウリバタケさんは倒れた。

「ああ、犬河さん。仕事に戻ってください、この方は責任持って“処理”しておくので。」

「そうして下さい。」

 俺は肯定すると、改めて床の修復用のセメントをワゴンから取り出した。

 

STAGE2 「展望室にて清掃…」――ってか、戦争状態

 

「ああ、ようやく全部のトイレの掃除が終わった。」

 俺は、ヘトヘトで展望室に着いた。

 しかし、この何処を掃除しろと…

「窓でも拭いてるか…」

 俺は、そう言うと、綺麗な雑巾をワゴンから取り出した。

 水道から水を出すと、雑巾を浸す。気温は調節されているから冷たくは無いが、気持ち良い程でも無い。

「おっと、脚立、脚立。」

 俺は、ワゴンから脚立を出すと、壁に密着させて立てた。

一段、   二段と俺は登っていく。そして、最上段に立った。

そこから、窓を拭く。

 きゅっ、きゅっ、きゅっ

 力を入れて拭いても、余り汚れは落ちなかった。

「窓のクリーナーが必要だな…」

「おう、これか? 犬河。」

 突如掛けられた声に、俺は脚立から落ちそうになる。

「お仕事熱心で羨ましいねぇ。」

「居たんですか! リョーコさん、イズミさん、ヒカルさん。」

 現れた三人の女性に、俺は抗議する。

「居るんなら解り易く居て下さい。」

「それじゃぁ、ビックリしないでしょ?」

「させないで下さい! イズミさん。」

 至極当たり前の台詞を俺は吐く。

「まぁ、洗剤取ってやったんだから、礼くらい言いやがれ。」

「はぁ、有り難うございます… って! これ、漂白剤じゃないですか!」

「ん? なんでぇ違うのか?」

 いや、リョーコさん、普通窓拭き用のクリーナーと漂白剤を間違えますか。入れ物がまず漂白剤は、紙パックですよ。窓拭き用の奴は、大抵霧吹きでしょ。

「いやぁ、お掃除って言うとさぁ、ボケをかまして見たくなるものだよ。」

 ヒカルさんの言うことが真実かどうか本人に俺は聞く。

「わざとですか?」

「……………」

 返事が無い。ただの屍のようだ。

「しかし、霧吹きって言うと…」

「中に水を入れてやりたくなるものよ。」

「そうそう。」

 なにやら、いきなり三人の女性の目の色が変わった。

「空の奴ある…」

 あ、あるには有るけど… やばそうな予感が…

 俺の顔の色で有る事が解ってしまったらしい。

「「「ふふふふふふふ、頂戴。」」」

「はい… ワゴンの中の三段目の段ボール箱に… (冷や汗)」

 気迫に押されて、俺は空の霧吹きの在り処を教えてしまった。

 俊足で、三人の女性は移動し、速攻で水道を占領する。

 そして、水を霧吹きに入れると。

「「「撃て〜」」」

「わ〜! 濡れるぬれるぅ!」

 俺に集中砲水を浴びせたのであった。

 結局、展望室は水浸しの惨状となったのである。

 

「クリーナーで反撃する事はないじゃん。」

「五月蝿い。とにかく拭け。」

「逆に散らかるものよ、掃除とは。」

「そうだぜ。」

「違いますって。」

「遊びが過ぎたね、流石に。」

「まぁ、それは認めらぁ。」

「あ、まずい。漏電してる。」

 

 STAGE3 「格納庫清掃」――なんで、俺がそこまでせにゃならん。

 

「ちわ〜、整備員の皆さんコンニチワー、いっつも、エステバリスをぶっ壊して帰ってくる犬河照一で〜す。」

 整備員の皆さんの冷たい視線が俺に集中する。

 しかし、次の瞬間、その冷たい視線は、哀れみの視線に変わった。

「お〜、お前も苦労しているらしいなぁ。」

 一人の同年代程の整備員にそう言われた。

 ふ、展望室で窓掃除の時にふざけていたら、電気が漏電して「100V直撃」。

「そりゃぁ、顔に火傷もするさ…」

 そういって、俺は雑巾をバケツに入れて絞る。

 絞り終わった雑巾を床に付けて、その上から手を乗せる。

「おう、レースやるか。」

 一人の年配の整備員がそう言って来た。

「端から端までですか? いいですよ。」

 俺は、そう言って肯定する。

「ふ、若造にゃ負けんぞ。」

「俺だって、中年にゃ負けませんよ。」

 痛いことを言い合う。

 中年の整備員の人が、雑巾を絞り終わると俺はスタンバイした。

 端まで、40mってとこか。

 俺は、足に力を込める。

「よ〜し、いくぞ。」

 その声と共に、整備員の皆さん全員がハモる。

「「「「「「「「「「5、4、3、2、1」」」」」」」」」

 どうやら、賭けているらしいな、財布の中身を見ている人が居る。

「「「「「「「「「「GO!!!!!!!」」」」」」」」」」

 その声と共に俺はダッシュした。

 スタート直後、俺の前に、中年の整備員が躍り出る。

 くそ、出遅れたか。

 と、思うや否や見る間に差は開いていく。

 あの野郎、しっかり雑巾を絞ってねぇな。

 後に引かれる水の量で解った。それであんな速度が出るのだ。

 まだまだぁ、俺の雑用で鍛えた足腰はこんなもんじゃねぇ。

 俺は、力を込めて速度を上げる。

 だが、差が開かなくなっただけだ。

 くそぉ、このままじゃ負けちまう。

 別に何も俺は賭けて居ないが、負けるのは悔しい。遊びでも。

 うぉぉぉぉぉぉぉ。

 気合を入れ、ラストスパートに備える。

 今ようやく25mを過ぎた所だ、スパートには早い。

 どりゃぁぁぁぁ。

 しかし、俺はスパートした。

 差が、見る間に縮まっていく。

 抜いた。

 しかし、相手も速度を上げる。

 まだまだぁ。

 俺は、更に速度を上げた。

 端の壁が目の前の事にも気づかずに。

 ごつぉぉぉぉん

「!!!!!!」

「―――――!」

 二人そろって、見事に頭を壁に接触させていた。

「い、今のは。」

「微妙だったぞ!」

「判定は、カメラの手に委ねられた。」

 そんな、整備員さん達の会話があったとかなんとか…

「ふ、やるじゃないか。」

「あなたこそ…」

 俺は、勝負をした整備員さんと頭を抑えながら語り合っていた。

 

「ところで、お前はしょっちゅうエステぶっ壊してくるから、ちゃんと整備員の苦労も知ってもらわないとなぁ。」

「げ。」

「雑用という名前を使って言う。床の掃除はいいから、エステバリスの脚部のシリンダーのゴミ取りを頼む。」

「ひげぇ!」

「これも、整備員の苦労を若いもんに知ってもらうためだ。」

「都合のいいときだけ、中年ぶらないでください!」

 

 STAGE4 「換気口の掃除中の悪夢」――なんじゃ、そりゃぁ?

 

「せ、せまい。」

 俺は、油まみれの姿(油圧シリンダーもついでに磨いてしまったため)で、換気扇の中、通風口を掃除していた。

 無論、頭を上げられないから、腹這い状態で雑巾を持っての掃除である。

「くそぉ、今、ようやっと2、3mか…」

 ここの掃除を始めてから15分、長くなりそうだ。

「なんで、こんなに… せまいん… だ。」

 俺は、どうにか、体を前に出し続ける。

「くそぉ、整備より… こっちが… 大変だぞ。」

 俺は、独り言を言う。

 バキ

 え?

「のわぁぁぁぁぁ!」

 通風口の床を捉える筈だった手が金網をぶち破り、出来た穴から外へ出て宙を泳いだ。バランスを崩し、体も穴から中空に身を躍らせる。

 ドダン

 落ちた先は、廊下。

 しかし、俺は、異常な程に不幸で有った。

「葬式料理だぁ〜、退いた退いたぁ!」

 そういって、物凄い速度で俺の方に、走ってくるワゴン。(押しているのは楽花)落ちた所からの距離にして、2m。

 無論、ブレーキも避けることも出来ないだろう。

 そして、俺は、見事にワゴンにぶち当たる。

「なぐはぁ!!!」

 やっぱり、星となった。

 

「ねぇ、何か引かなかった?」

「そうかなぁ。」

「じゃ、気のせいか…」

 

 STAGE5 「廊下の雑巾がけ」――命がけ…

 

「はー、はー、はー」

 まぁ、なんとか、ここまで来たな俺。

「よし、始めるか。」

 俺は、格納庫でやったように、雑巾を湿らせ。床に置く。

 そして、それを手で押すようにして、走り出した。

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 体力は、限界。肉体のダメージも限界。

「さぁて、飲み物でも買って…」

 目の前に、ジュースを買いに来た。ガイ&ジュン。俺ピンチ!

「さぁ、けろぉぉぉぉぉ!」

 俺の、大声にガイとジュンが反応して止まった。

 俺は、その隙を縫って衝突を回避。

「む!」

 そして、100m程先に自動販売機で食べ物を買っているホシノ・ルリちゃん。またまた、ピンチだ。

 ぶつかったら死ぬて、俺。いろんな意味で…

 障害物が、移動を始めた。買い終わったのだろう。

 まずい、衝突コースに入っている。

「だぁりゃぁ!」

 俺は、跳躍した。人間では、とても飛べそうに無い2mと言う高さを記録した。

 ああ、天井が近い。

 そして、着地失敗。

「うごろべらぁ!」

 しかし、回避は成功。

「と、止まっちまった。もう動けねぇ…」

 事実、俺の体力は限界であった。

 そして、俺は失神した。

 

「おーい、犬河さーん。大丈夫ですかぁ。」

「大分飛んだぞ、今の…」

「人間業じゃありませんよ。」

「馬鹿ばっか。」

 

 STAGE6 「ブリッジ清掃」――復活! しかし、変な事態が…

 

「え〜、我々は〜、断固ネルガルに講義する!!!!」

 な、なんだ? 何が起こっているんだ?

 俺は、少しだが疲労が回復し、今日のノルマ分の掃除を終わらせるために次の予定地のブリッジへと足を運んだのだが…

 少々、大変な事態になっているようである。

「な、何が起こっているんです。」

 俺は、傍にいたゴートさんに事態を聞く。

「整備員たちの反乱だそうだ。」

 そう言う返事が返ってきた。

「は、反乱?」

 俺は、そう言う反応をした。

「ちょっと、皆さん! どうして、反乱なんかするんです!」

 艦長がそう言う。まぁ、理由があるから皆さん反乱しているんだろうし… 理由知らなきゃ、解決のしようが無いからな、反乱ってのは…

「さぁ! これを見てみろ! 艦長!」

 つい先程、“処理”されたはずのウリバタケさんが叫ぶ。

 そして、突き出された紙を艦長が読む。

「え〜、なんですか? これ… 契約書?」

「そうだ! 契約書だ!」

 見りゃ解りますって。

「これの何処を見ろと?」

 まぁ、一杯あるからな。

「それの、一番小さい文字の所だ!」

 そう言われて、艦長が目を走らせる。

「なになに、異性間の交際は禁止いたしませんが、艦内の風紀維持のため手を繋ぐ以上の交際は禁止いたします。これ、ですか?」

「そうだ! それだ! 宇宙には、幾千万の星がある。無論恋もだ! それなのに、男女交際は手を繋ぐまでだと! ここは保育園か! これなら、家のやかましい女房のほうがまだましだぁ!!!!!!!!!!!!!! ふごぉ!」

 そう叫んだ、ウリバタケさんにこの場にいる女性全員(ルリちゃんを除く)が回し蹴りをかます。

「はいは〜い。五月蝿いから、ちょっと静かにね〜」

 ハルカさんが言う。しかし、ウリバタケさんが泡を吹いているが… まぁ、これくらいしないと黙らなそうだし…

「そうですよ、契約書に書いてあることはサインをした以上守って貰わないと…」

 おお、プロスさん出没。

「ぬぉぉぉ! こんな細かい所まで誰が読むってんだ!」

 ウリバタケさんが、立ち上がって叫ぶ(目が白いけど)。しかしプロスさんが続ける。

「いいですか? 男女間の交際は、確かに禁止いたしませんよ。ですけどエスカレートして、子供とか出来ちゃったらどうする気です? お金がかかりますよねぇ、無論、場所も… そんなことに私たちが動ける訳無いでしょう? 「ナデシコ」は、保育園じゃありませんので。」

 こりゃ、言い返せんわ。ウリバタケさんは、何か言いたそうな顔をしているけど…

 

 茶の間にて…(フクベ提督)

 

 湯飲みを傾け、私は中の茶を飲み干す。

 そして、少し咳払いをすると独り言を言った。

「ふむ、そろそろ火星か…」


 そして、視点はブリッジの犬河へ戻る。

 

ドガガァァァァ

 激しい衝撃が、艦内を揺さぶった。

「な、なに?」

 艦長が、声をだす。

 確かに、状況が解らないから確認するのが先だろう。

「木星蜥蜴の攻撃です。でも… 今までより、本格的に仕掛けてきています。迎撃が必要。」

 ルリちゃんがそう言う。

「ええと、皆さん。 反乱の事ですが、いろいろ不満があるのは解ります。でも、今は目の前の脅威を取り除く事から始めましょう。それに、もう誰も死んで欲しくない。もう、葬式はいや! どうせなら、葬式より結婚式やりたーい!」

 まて、艦長。時間を無駄遣いするな。そういう雑言を、後回しにしろ。

「と、言うわけで… 総員戦闘配置!!」

 そう言われて、俺は速刻パイロットスーツに着替え格納庫へ向かった。

 

「おう、犬河! お前が最後だ。」

 先に来ていたウリバタケさんの一言で、皆が先に出た事が解った。

 俺は、まず、アサルトピットに飛び込んでから返事をする。

「じゃぁ、行きます!」

「おお、行って来い!」

 そう言われた後に、ハッチが閉まっていく。そして、無線からアナウンスが流れた。

『エステバリス発進します。付近の乗組員は直ちに退避してください。』

『エステバリス、カタパルト接続… 進路クリアー、射出軸線上に障害物なし。』

『カタパルト、異常なし。』

『発進まで、秒読み開始。5・4・3・2…』

『射出!』

「エステバリス03、犬河照一! 出ます!」

 

機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

第4話

END

第5話へ続く

 

 

 

 

代理人の感想

まー、今回はまったり話なんでどうなりと。

 

 

>何故今ごろになって・・・せめてもっと速く出せ

 

出すな。少なくとも私の生きている間はっ!