機動戦艦ナデシコ
英雄無き世界にて…
(過去編)
〜〜血に飢えし狂犬〜〜
ザァァァァァァ
雨だ…
ここ2・3日続いている…
あそこから逃げ出して3年…
たった11歳の俺が…
いま…
何をしている…
半年ほど前…
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。」
俺は、今、どことも知らぬ道を歩いている。
空腹は極限まで…
精神など狂っても可笑しくは無い。
「俺は… このままのたれ死ぬのか…」
嫌だ…
のたれ死ぬために逃げ出してきた訳じゃない。
だが…
車は、とうに捨てた。
食べ物など持っているはずが無い。
俺は、そこらへんに生えていた雑草を鷲掴みにする。
そして、鷲掴んだ雑草を口の中へ…
「あ、ぐぁ、げぇ… ぐおぉ。」
吐き気。
無理矢理飲み込む。
俺は、腹痛を感じた…
出すほどの栄養も残っていないと言うのに…
「あ、あがぁ…」
俺は、茂みの中へ入り用を足す。
「ふぅ、ふうぅぅ。」
穴をくぐってきた壁が、随分遠くに見えるようになっていた。
どれくらい歩いただろう…
どれくらい俺は疲れているのだろう…
俺は、自分を指す名前も殆ど忘れている…
ヒュオウ
風を切る音…
ガォォガァゴォガァン
そして爆音。
なん… だ。
俺は、爆音のした方へ視線を泳がせる…
黒い煙が立ち昇っていた。
俺は、なけなしの体力を振り絞ってそちらへ歩き出した…
木星蜥蜴との戦争が始まるおよそ約10年ほど前…
西暦2185年。
ユーラシア大陸東部にて熾烈なる人類同士の戦争が繰り広げられていた…
内戦…
何時の時代にも革命軍と言うものは存在する。
開戦から一年… 持久戦が続くに連れ純粋な資源の多い政府軍が、革命軍の主要拠点を数々と落としていった。
そのために革命軍は、開戦当初程の勢いを削がれ、今はじりじりと後退する日々が続いていた… 遅かれ早かれ… この戦争は革命軍の負けであろう。
そんな彼らの5人ほどの先行偵察隊の一人が、国境付近で、ある人物を発見したのだ…
「ん? あれは?」
私は、声を上げた隊員の方を見る。
「子供…」
そこには、ボロボロで焼けた木の幹にもたれかかって眠っている子供が居たのだ。
「戦争孤児か?」
「珍しいことでもないか…」
「この子供… なんか首にかけてるぞ。」
そう言って、隊員の一人が眠っている子供に近づき首に掛けていたプレートを見る。
「LAST No23 名前か… 英語みたいだが…」
「“ラスト”? 西洋人みたいな名前だな、どう見てもアジア系なんだが… ハーフか?」
「う…」
子供が動いた…
「起きたか…」
隊員の一人がそう言う。
「一応事情を…」
「ああああああああああ!」
ガスゥ
「な、なにぃ!」
一瞬である。その一瞬の間に隊員の一人の額に尖った木の枝が生えていた…
俺は、体力の限界を感じて、焼け焦げた木の下で休憩をとることにした。
軽く10分程の予定だったのだが、ついウトウトと眠ってしまったらしい。
「う…」
目を覚ます。
目の前に見知らぬ者達がいた…
「起きたか…」
一人の人がそう言う…
!!
俺は、この人達の手に握られている物を見なければこんな事はしなかっただろう。だが俺は見てしまった…
肩に提げられているライフルを… 腰のホルスターに収められた拳銃を…
「一応事情を…」
「ああああああああああ!」
俺は、転がっていた木の枝を掴み取り一人の人のコメカミに突き立てた。
ガスゥ
「な、なにぃ!」
「あ…」
何をした… 俺は… 何をした…
ナニヲシタンダ…
「て、てめぇ! よくも、よくもぉ!」
そう言って、もう一人の人が俺にライフルを向ける。
「う… あ…」
俺は、先にコメカミに枝を突き立てた人が持っていた拳銃をホルスターから反射的に抜いていた… 引き金を引くだけなら9歳弱の子供にも出来る。映画みたいにセイフティがかかって居なかったのは幸運だ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガァン ガァン ガァン
響く3発の銃声…
バサバサバサ
銃声に驚き飛翔して逃げる鳥の羽音…
かっ かっ かっ
そして、鋼の薬莢が地面へと落ちる音…
「あ… か… こ…」
そして、目の前には、腹に3発の9mm弾を打ち込まれた人が居た…
「こ、このがきぃ!」
ダダダダダダダダダダ
ガツッガツッガツッ
「うぐ、ぎぃがぁ。」
後ろの人がガムシャラに撃ったライフルの7,45mm弾は、3発の9mm弾を撃ち込まれた人の背中に吸い込まれた。
肉と内臓を引き千切り、血を引き摺って、7,45mm弾は貫通する。
ぴしゃぁ
真っ赤な返り血が俺の頬に降りかかる。
俺が、撃った人は、結果的に俺の盾になったのである…
「うぉぉぉぁぁぁぁぁ!」
ガァァァァン
「ぐっ、げぇ。」
飛翔した9mm弾は、頚動脈を抉り取った。
鮮血が首筋から宙へと… そして地面を濡らす…
効果音はポッ、ポッ、ポッ、であろう。
「待て、止め…」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ガァン ガァン ガァン ガァン ガァン ガァン ガァンキィン
引き金を俺は引きまくる。7回目で、拳銃はホールドオープンした。
頭、足、手、胴、腹、首、腰、等に当たり9mm弾は、瞬く間に残り3人の人を肉の塊に変える。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
目の前に血と肉のオブジェが完成した… 血溜りが、現在進行形で広がってゆく…
吐き気は沸いてこない…
罪悪感も無い…
それよりもある欲望が俺の中を支配していた…
食欲である
「ああ、あああああ。」
俺は、死体に噛り付いた。
グチャペチャガチャギュチャァ
飢えている… そう、俺は飢えている… 食えるものなら死体でも何でもいい。この欲望を満たしてくれるなら。
血を味噌汁代わりに飲み込む。
久々の水分が喉を潤す。
雑草をサラダの代わりに飲み込む。
さっきは、食えたものではなかったが、今は食える…
そして、メインディッシュだ。
まずは、表面からガツガツと喰っていく。
神経が邪魔だ。
味覚などとおに麻痺している。とにかく飢えを凌げるならば味など何でもいい。
ガッガッガッ
筋肉はあらかた喰い尽した…
内臓は不味そうだ… 残しておこう…
「うう、うううああ。」
俺は、食える所の無くなった死体を放り捨てる。
そして次へ…
次へ次へ次へ次へ…
俺は、この調子で6人の死者全員を平らげた…
俺は、血のついた口をボロボロの服の袖で拭う。
そして、笑った。
「あははは、はははは! ああはははははははは!」
そして、確実にこの時からであろう…
俺の中で人が“エサ”になったのは…
俺は、死体になった人の着ていた血染めのジャケットと迷彩色のズボンを剥ぎ取って着込んだ。
サイズが合わない…
タバコ… 必要ないな…
腕時計… 一応持っておくか…
地図とコンパス… 使い方の分からない物だ…
モルヒネと包帯… 説明書があった。分かるかもしれない… 持って行くとするか…
ライフルと拳銃。M-16とベレッタM92Fだ。絶対必要だ。マガジンの取り替え方くらいは、“トゥエルブ”にならった。なにやってたんだろうなあいつ…
サバイバルナイフか… 持って行くとしよう…
財布? 必要だな…
ん、ヘルメットか… 持ち歩く事にしよう。
それと水筒と野戦糧食か… 口をつけてないみたいだし持っていこう…
俺は、あらかた奪いつくすとその場を立ち去った。
そして、2年間が過ぎた…
「おい、あの噂やっぱし本当らしいぜ…」
チンピラの会話が聞こえる。
逃げたくても逃げられなかった人々が作った疎開地… そこに俺はいた…
「オイオイ、あの、戦場の陸軍兵士が革命軍、政府軍を問わず無差別に殺害し“捕食”している“狂犬”の事か? なんでも、敵味方無差別で犬にでも襲われた感じだからそう言われているんだろ。それは、たんなる酔狂な傭兵が、そう言われているだけじゃねぇのか?」
「いやいや、現実に犬だぜ… なんでも「俺は、全長4mをこす巨大な犬を見た」って言ってる奴も居るんだ…」
どっちも間違えているな…
俺は、そう思うと愛用しているM-16の整備をしていた。
整備の仕方は、親切な元パン屋の主人から教わった。
別に11歳の子供が銃を持っていても誰怪しむ者は居ない。
むしろ持っていない方が正気を疑われる。
“狂犬”と言うのは、幾多の戦場を“エサ”を求めて歩き回っている時についた2つ名だ。
偶然だが、俺の本名に似通っている…
金も大分手に入れた… ヤバイ奴らとのコネも…
「日本… か。」
俺は、もはや殆ど覚えていない故郷を思う…
白紙…
俺は、もはや一緒に遊んだ少女の事も忘れ去っていた…
「“ファス”お前らが居る所は地獄か… ここよりはマシだろうけどな…」
俺は、そう宙に向かって言うと“エサ”を求めて戦場へと向かった…
“狂犬”の戦が始まる…
バガァン
政府軍さん地雷原に捕まってご苦労なこって…
悪いが俺は臆病でね… 英雄でも圧倒的な力を持っている訳でもない…
お零れ頂戴って奴さ…
俺は、双眼鏡を覗き込んでそう思った…
「やはりお前も来ていたか… “狂犬”。」
後頭部に硬いものが押し付けられる。銃ではない… 頭だ。
「盗賊部隊の皆さんどうも… 先客です。」
俺は、そう言って挨拶する。
「盗賊かぁ、いい名前だな…」
「ばぁろい! 盗賊じゃねぇ! 回収屋だ!」
「リサイクル俺達ってか。」
「ああもう、うるせぇぞ!」
「「「へい! 御頭!」」」
「“狂犬”分け前は何時も通り7対3だ。良いな!」
「俺が7?」
「3だ!」
そういって“御頭”は、俺と交渉した。
「たく… 恐ろしいよ… お前みたいな餓鬼が30人もいっぺんに片付けちまったんだから…」
30人… ヒーローにしては少ない数字だが、凡人にしてみれば多い数字だ。
「俺は、“エサ”と弾薬と金が手に入れば良いんですよ…」
「ふん黙れ…」
その後の御頭の言葉は少しこたえた。
「“人食い犬”が…」
そして、俺は戦況を見る…
「さてと… 革命軍が後退を開始した… 政府軍の通り過ぎた後から探しますか…」
「そうだな… 行動開始だ!」
俺は、通り過ぎた後へ向かって走り出した…
「ひゅおう! 余ってる余ってるぜ!」
「弾薬もかなりあるな… よし、持てるだけ持つぞ…」
俺は、縦40cm 横30cm 高さ20cmの箱に弾薬を詰められるだけ詰める。
「死体もあるぞ… 今日は腹いっぱいみたいだな… くわねぇのか?」
御頭が、そう言って俺をからかう…
「出来るだけ新鮮な物を食べたいんですよ。いっそのことあなたを殺して食べましょうか?」
それが、半分本気である事を知っている御頭は、それ以上は、何も言わない。
「金もかなり余ってますぜ!」
「ふん、丁度1000ドルか… ほら。」
そう言って、御頭が、俺に血染めの札束300ドルを投げてよこした。
「どうも…」
「お前には3度ほど借りがある。これで3度で良いよな。」
「3、09です。」
「3だ! この前は3、1 そのまえは3、2だっただろ! 0、1ずつ落としてけ!」
「しかたないなぁ。」
俺は、そう言って借りカウントを3にした。
「ん? やべぇ、他のヤツラがきやがったぜ! 御頭!」
「なんだよ商売敵かよ。キレイなお穣ちゃんはこねぇのか!」
「少なくとも御頭には来ませんよ…」
「おまえにゃくるのか? “狂犬”」
「一直線ですよ… 俺は、多分。」
「多分が余計だな。」
「おらぁ! てめぇらぁ! 俺達の縄張りをあさるんじゃねぇ!」
新鮮な“お肉”が来たみたいだな…
「数は10人ってとこだな。」
俺は、担いでいたM-16を構える。
そして、引き金を引いた。
ガガガガガガガガガガガガガガ
フルオート射撃だ。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。現に2・3人吹き飛んだ。
「……… 貸しは4だな。」
「そう言う事で、とっとと退散してください。」
そして、御頭たちは退散して行った。
「さぁてぇとぉ、ランチタイムと行きますかぁ!」
俺の顔には狂喜が浮かんでいた…
たまには生で齧り殺すのも良いかもしれない…
俺は、ベレッタM92Fを構えて撃つ。
9mm弾が、敵の足を砕いた。
「ギャァァァァ!」
「おいおい一発でダウンかよ。もうちょっと頑張ってくれないと喰いがいが無いぜ。」
「ぬおぉぉぉ!」
手に持ったMP5を乱射してくる。
サブマシンガンを片手でそんなに揺らしながら撃って当たる訳ねぇだろ。
「距離感がねぇのか? 100m以上離れているときは両手で撃つだろ… 普通。」
そうすれば、一発くらい当たっていたかもしれない。明後日の方向に飛んでいく弾が多い… 無駄すぎる…
「5人目、あんがとさん。」
俺は、一発で一人を撃ち倒す。
「なんだ! あのガキは!」
「タダの餓鬼さ。」
俺は、何発も撃ち続ける。
反動にも慣れてきている。
9mm弾は、的確にヤツラの肉を引き千切り血を引き摺り内臓をズタズタにして飛翔する。悲鳴が束になって戦闘後の荒野に響く。
「さ〜てと、いただくとしますか…」
10人全員撃ち倒した俺は、再起不能な奴らに向かって歩く。
「か、金なら… やる… ほら、持ってけ…」
砕けた腕で懸命に財布を投げる商売敵。
「金? それは、もうノルマ達成。貰っていくけど本当に欲しいものじゃない… それの他に欲しいものをくれ…」
「な、なんだ… それは…」
「てめぇの、肉だ…」
俺は、そう言った。躊躇いも無く…
「に、肉だと…」
「そうだ、血を付けてくれればなお良い。」
「お、お前は…」
「“狂犬”だ。」
俺は、狂喜を漏らした。そして、首筋に噛み付く。
そして噛み千切る。
ぶち ぶちぶちぃ
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
良い音だ。
でも煩いな… 味も良くない。
人間の感覚が残っているな…
生肉はマズイと…
「やっぱ、殺すわ。」
ガァン
カッ
銃声と薬莢が落ちる音…
静かになった。
俺は、何時も通りに喰い千切り、飲み込み、噛み付く…
味など分からない。だが、これくらいしか食い物が無いのだ。
軍が全部持ってっちまったから…
皆は無理して我慢するが…
「ご馳走様… と、次だ。」
「ひっ、お、お前は何なんだ!」
「ん? 人間さ… なんだよ、別に人食うことは死人や人外だけに与えられた特権ってわけじゃねぇだろ… こうして生きている人間だって、美味しく人間を喰っている奴も居るんだからな… だいたい、喰うことはこの世の生命体の全てに“平等”に与えられた権利だ。それを人に対して使って何が悪い… それに人類社会では、人の“捕食”も“人殺し”で終わるよ。戦争中の“人殺し”なんて日常茶飯事だろ… 何がいけないんだ? WHAT YOU?」
大きな声で言った気は無いのだが、異常なほどに良く聞こえたらしい。
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
「煩いから静かにしろ。」
ガァン
カッ
またまた黙らせた。
「先に全員黙らせとくか…」
「ひぃぃぃ。」
「うおひぁ。」
「だから黙れって…」
ガァン ガァン ガァン ガァン ガァン ガァン ガァン ガァン
バ バ バ バ バ バ バ バ
カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ
血と内臓と脳が四散する。
奇妙な匂いが俺の嗅覚を刺激した。
「ひゅう、殺れば出来るじゃん。」
そして、俺は食い漁ろうとする。
だが…
「飽きたな… 喰うのも…」
流石に毎日食ってると食力が低下する。
「今日は、一人ってことにしとくか…」
俺は、雑草を掴み取り口の中に入れる。
シャリ シャリ
「たまにゃ“野菜”も喰わんとな。」
「満足か…」
「YES、御頭。」
そう言って、俺は立ち上がる。
「ノルマ達成。日本へ帰りますよ… 俺。」
「人を喰うなよ…」
「どうだか…」
俺は、“麻薬密輸”船の船長と契約をしていた…
2000ドルで、日本へ連れてってやると…
そして、俺は一年でそれだけ稼いだ。
もう一年と半年は、向こうへ行ったときの生活費を稼いだのだ。
「目標、300000ドル達成。さてと、契約をしたからにゃ連れてってもらわんとな…」
俺は、港の方向へ向いて歩き出す。
「何で、御頭もついて来るんです?」
「貸しカウントは、4だろ、返さんとな… 援助してやるよ。金をな…」
「いりませんけどね…」
「好意は受け取っておけ。」
「貸し返しでしょ。」
「どっちでも良いよ…」
そして、塩の香りのする方向へと歩いていく…
待っているのは安らぎか… それともさらなる地獄なのか…
そして、俺はこの時11歳であった…
「ホントに用意するとは…」
「有言実行。連れてってくれるんですよね。」
「ああ、確かにお荷物として連れてってやるよ。」
「麻薬と一緒?」
「アタボウだ。」
「ジャンキーになっちまうよ…」
「袋を開ければな…」
俺は、契約した船長相手にからかい合いを演じていた。
「アバヨ“狂犬”貸しは今度だな…」
「その内返してもらいますよ、御頭。」
「で、どれくらいで出航できる?」
「肝心のヤクがきたらだヤクが…」
その時…
爆音が轟いた…
ガゴンガァギガァァァン
爆風… 俺は、尻餅をつく。
「な、なんだ!」
「やべぇ、軍だ… 見つかったか!」
「くそぉ! 逃げるぞ乗れ!」
「お荷物も乗れ!」
「ああ…」
俺と、5人ほどの乗組員は、密輸船に乗り込む。
!!
俺は、ある人物が足りないことに気付いた。
「御頭! 早く乗れ!」
「おう、“狂犬”悪いが俺達にゃそんな豪華な船に乗るだけの金がねぇよ…」
御頭と、盗賊隊の面々がそう言う。
「殿勤めて、貸しは返すぜ… さっさと行け!」
そう言った直後、船は陸から離れた…
「馬鹿が、貸しはまだ3残ってるぞ! 死に逃げんなてめぇらぁ!」
見る間に陸は遠く離れていく…
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ドォォォォォン
グワァァァァァァン
ガァァァァァァァン
銃声と砲撃音。砲撃音は追撃砲だろう…
絶叫。次々と、体に穴を開けて倒れていく盗賊隊。
そして…
「殿は勤めた… マジでアバヨ… “狂犬” いや…」
その時…
確かに俺の耳にその名前は届いた…
御頭が言った。
俺の本名を…
「犬河… 照… 一…」
「逃げんなよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
違法の船の向かうは故郷。
死を越え裏切りを越え…
俺は、6年振りに故郷の地を踏むために水の上の板に立っている。
故郷に辿り着くまで、2日。
ただ… 何をすることも無く過ごすのであった…
機動戦艦ナデシコ
英雄無き世界にて…
第10話
END
第11話(過去編)へ続く…
代理人の感想
なんつーか・・・・世界が違うなー。
なんだったかな、このノリどっかで見たような気がするけど思い出せないんですよねー。