英雄無き世界にて…
(過去編)
〜〜血に飢えし狂犬〜〜
「ついたぞ…」
俺は、ビニールのシートに包まっていた体を起こす。
「しかし、よく見ればお前血だらけじゃないか…」
俺は、自分の姿を見る…
血が靴から襟まで飛び散っておりどす黒く変色している。
着込んでいた服は、3年前から一度も洗っていない迷彩色のジャケットとズボンだ。
もとは、もっと大きくサイズが合わなかったのだが、裂いたり、俺自身の身長が伸びたりしたせいで、今は丁度よくなっている。
「別に良いですよこれで…」
「ばぁろい、戦争中ならいざ知らずここは、日本だぞ。」
そう、平和な国だ。
「そんなもん着てて怪しまれん訳無いだろ…」
「じゃあ、どうしろと?」
そう言うと、船長は頭を掻き始めた。
「あーったく! 餓鬼用の服なんて買う気にもならんし… ん? そう言えば、紺色のコートがあったな… それを上から着て行け。」
俺は、紺色のコートを探す。ハエが止まっているそれを見つけた。
俺は、容赦なく腕を通す。
「有難うございました。」
「おう! またのご利用を… って待て待て!」
俺は、出て行こうとしたら呼び止められた。
「M-16は隠せねぇだろ… 置いてけ。」
俺は、肩に背負ったM-16を見る。フレームがボロボロで、銃口は殆ど焼きついている。いつ暴発しても可笑しくは無い。それは、ホルスター内のベレッタM92Fにも言えることだが…
「……… 100ドルで、CZ75とブローニングを一丁ずつ弾丸1000発ずつセットで売ってやる…」
「いやまた、お世話になります。」
俺は、100ドルを支払った。
日本では使うことは無いだろうが、なにか使うかもしれないと言う胸騒ぎがする。
俺は、M-16とボロボロのベレッタM92Fを渡し、新しい銃をホルスターに叩き込んだ。
「では、失礼します。」
「またのご利用をお待ちしております… “狂犬様”。」
俺は、苦笑を漏らすと夜の街へと足を踏み出した。
「まずは、身を隠せるところだな… なんせ、こんな所まで来たとは言え色々と恨みを買っちまう事をして来たんだし…」
俺は、鹿児島と呼ばれる場所に居た。
なんでも、その場所にアジトがあるという理由でだ。しかしヤクが来てない時に出発したからヤクザの親分にこっ酷い目に遇ってるだろうな… 船長。
どん
通行人にぶつかった。
別に大したことじゃない… 俺は、そのまま通り過ぎようとした。
「おいガキ! お前、今、俺にぶつかっただろ!」
呼び止められ、俺は振り向く。
「おめぇが、きたねぇ格好してるから服に汚れがついちまったじゃねぇか。 あ、どうしてくれんだ?」
「よくヤラレ役のヤクザが言う台詞だな。」
「なんだとてめぇ!」
俺は、コートの胸倉を掴まれる。
「完全にヤラレ役だな… あんまりそこいら中に喧嘩は吹っかけるもんじゃないだろ。勝つにせよ負けるにせよ痛いんだし…」
「くのやろがぁ!」
通行人のチンピラが俺に拳を突き立ててきた。
「見境無く喧嘩… だから、若いモンは自制心の欠片も無いって言われるんだ。それにそれがカッコイイとでも? まぁ、俺も人のことは言えないな。」
ばきぃ
俺は、なんの抵抗もせずに拳を受ける。
「こういう時には…」
「あ、どうするよ?」
「逃げる。」
「ハウ!」
俺は、チンピラの“ナニ”を蹴り付けた。
そして、自由になると走り出す。
「あ〜ばよ〜!」
「こ、この。」
そして、俺は、何処とも知らずに走っていった…
そして、3年が過ぎる…
「う〜ん。」
私は、目を覚ました。
ひどく懐かしい夢を見ていた気がする。
「義母さん? 義父さん?」
どちらとも違う。一人の少年であった。
誰だっけ?
私は少し考える。
「う〜ん。」
だめだ、思い出せない。
「あっ。」
時計を見た。時刻は既に8時である。
「やっば〜、遅刻!」
私は、パジャマを5分で着替えると、焼いても居ない食パンを齧って玄関を出る。
ダァン
「おわ!」
「うわ!」
ドアの前に居た人とぶつかった。
「あ、すいません! 急いでいたモンですから!」
「い、いや…」
ぶつかったのは、同じ制服を着た男性である。さほど急いでいないところを見ると、別の学校の生徒なのだろう。中学生で同じ制服と言っても学生服なので、同じ学校とは限らない。この辺りの中学校の数は多いのだ。
「気をつけてくれ…」
「はい! ではこれにて。」
そう言って、私は男性から離れた。
これが、9年ぶりの再会であることにも気が付かず…
学校へは遅刻ギリギリでついた。
「楽花〜、あんたいっつもギリギリで来るなぁ、もちっと余裕をもって登校しろよな〜」
「あはははは。」
「こらぁ! そこ! 今日は、学年朝会だよ! はやく体育館へいけ!」
教室に響く追い出し係の声。
みんな、ゾロゾロと体育館へ出て行く。
無論私も…
「所でさ、そろそろ2学期も終わりだね、進学先も決めておかないと…」
「来年は受験地獄だもんね〜」
「期末終わっても安心出来ないからつらい。」
「全くだよ。」
「…………」
私は、体育館へと向かう廊下で、妙な感覚が沸き起こっているのを自覚していた。
朝でドアの前でぶつかった人… どこかで逢ったような…
「楽花… おい、楽花ぁ。」
っは
友人の呼び声で、飛んでいた意識が戻る。
「え、は! なに?」
「飯井川ぁ〜、そっちは、職員玄関。」
何時も通り慣れている筈の廊下を間違えていた。
「あ、ありがと。」
「らしくないよ〜、ボーとしちゃって。」
「まあまあ、寄ってきた男一人殴れば元に戻るでしょ。」
「どういうこと…」
「気にせずにどうぞ〜。」
そんな感じの会話が流れる。
そして、体育館への扉を潜り抜けた。
朝会が始まる。まともに全部の内容を聞いたことなんて無い。
うざったらしい健康観察や意味も無く全員で朝のあいさつ。
正直早く終わって欲しい。
「では、最後に転校生を紹介しよう…」
学年主任のその言葉に、一瞬で全員の注目が正面のステージ上の机に集まる。
私は、大して興味も無かった。朝出くわした人について考えていた…
どこかで逢ったよね… たしか、い… い
「“犬河照一”です。皆さんこれからどうぞよろしくお願いします。」
ああ、そうそう犬が…
「って、ナニィィィィィィイ!」
っは!
全校生徒の視線が私に集中する。
「え〜、あの〜、飯井川楽花さん。お静かに願います。」
「す、すいません。」
「え〜、今学期より急にですが、ここへ来ることになった犬河くんですが、クラスは2−3になる予定です。」
わ、私と同じクラス〜
そんな訳で、人生最悪の朝会は終わったのであった。
「って、ナニィィィィィィイ!」
誰だこの五月蝿いのは…
俺は、突如響いた声にジェラシーを感じた。
「え〜、あの〜、飯井川楽花さん。お静かに願います。」
飯井川 楽… 花。
楽カ… ラクカ…
「す、すいません。」
楽花… て… まさ… か…
≪また逢おう。≫
≪ああ、また。≫
「え〜、今学期より急にですが、ここへ来ることになった犬河くんですが、クラスは2−3になる予定です。」
学年主任の声など俺の頭には響いていない。
あの… あいつ… なの… か。
「オイ、オイ。」
「え?」
「降壇。」
あ、すっかり忘れてた。
俺は、ステージから降りる。
「教室への道は分かるね。」
「あ、はい。」
俺は、そう返事をする。
「じゃぁ、行きたまえ。」
俺は、教室へと向かって歩いていく。
懐に忍ばせたブローニングが中学生には物騒すぎる重みを秘めさせていた…
一時間目の授業が終わった。
「え〜、犬河さん。でしたっけ〜。」
やっぱり来たか…
「はい、そうですよ。飯井川さん。」
ダン
俺の机を叩かれる。
「ザケンナ… 照一。」
うう…
やっぱりあの楽花だ。
「WHY WHY WHY?」
「確かに… 犬河照一… あんたに違いは無い。」
「ソウデスカ。」
「ますます確信を深めた。」
「ヤメテクダサイ。」
「決定。」
「キャンセルカノウデスカ?」
「不可能。」
ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご
う、後ろに立っているのは何だ!
「オンドリャァァァァ!」
「久し振りなナグハァ!」
キラリィン
「……… いい奴が転校してきたな…」
「俺もそう思う。」
「いつもの楽花に戻った戻った♪」
「転校早々子愁傷様、犬河君。」
「い、痛い…」
「ホォォォォォォォォォォォォォォォウ、まだ息があるか…」
「何て攻撃力だ… やっぱし“本命”は違うな…」
「ラストクエスチョ〜ン 本命とはどういう意味かしらぁ〜」
「殴りの本命。」
「ボクシングで賭けでもしていたの?」
「ああ、ボクシングでダイゴ… って何いわせんだ!」
「9年… ぶりだよね…」
うお! いきなり雰囲気が…
「そんなもんだろ。」
俺は、そう言う。
ガバッ
「いいい!」
いきなり抱きつかれる。待て待て。進行が早すぎる。
「さぁ〜てと。」
「は! し、しまった! 俺のインに入るためにわざと感動的な雰囲気をぉぉぉおぉ!」
ゴスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
腹を思いっきり殴られる。
「9年も手紙もよこさないでなにしてたんだコンチキショー!」
「がはぁ!」
戦争してました。
「孤児院に連絡先くらい残しとけー!」
「げへぇ!」
んな暇なかったつーの。
「なんで朝逢った時に名前教えなかったんだ糞ー!」
「ノガシャァ!」
お前が急いでたんだろ!
「あ〜、ラブコメはそんな所にしておけ〜 見てるこっちが恥ずかしいから。」
は、そうだった! ここは教室内。って、いろんな意味でまずいじゃねぇか!
「転校初日から散々だな、犬河君。」
「いやぁ、どもども。」
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
お、授業開始のチャイムだ。
まあ、ここを抜け出せても次が有るんだろうけどさ…
そして、昼休み…
引っ張りまわされて、結局楽花と一緒にいる俺。
「なんだよ… 何か用か?」
「まあ、いろいろと…」
そりゃ、有るんだろうけどさ…
「へー、転校生。行き成りイチャイチャか〜ぁ♪ うらやましいねぇ、俺にも回せよ。」
オイオイ、先客がいるじゃねぇか。10人ほど。
ここは屋上である。無論、雰囲気も出るが、不良の溜り場でもある。
「ったく、比較的荒れていない学校ってんで、ここにしたんだけどなぁ。」
「そなの?」
「てめぇ、何言ってんだ!」
ボス級らしい男が、そう言う。
むしむし〜
「大体なんでお前に引っ張りまわされるんだ。」
「自分の胸に聞きなさ〜い。」
「てめぇらぁ!」
そういって、気の短い男は、俺に殴りかかる。
バキィ
俺は、見事に頬に直撃を受けた。
「いきなりイタズラですか… 礼儀と言うものをわきまえて下さいよ、セ・ン・パ・イ。」
俺は、全く動じない。
「そりゃあ、食らいなれてるからね…」
「面の皮はかてぇみてぇだな。」
喧嘩を吹っかけているとしか思えない言動だ。
買うか…
「この色男さんよぉ! 殴られたことはホントはねぇんだろ〜 かかって来いやぁ!」
ぶたれた事は何度あるか… 銃で撃たれたこと… 追撃砲の雨嵐を潜り抜けたこと…
「かかって行って良いのか?」
「おうよ!」
「んじゃまぁ、楽花は… まあ、お前の凶暴さなら下がる必要は無いと思うけど下がってて…」
「ひどいねぇ。」
そういったが、楽花は、やっぱり後ろへと下がった。
「へへへ、良かったなかっこ悪いところ見られなく… げぇ!」
俺の拳が、奴の顔面に叩き込まれる。
「先手必勝。1撃必殺。」
そのままそいつは倒れこんだ。
「て、てめぇ。」
「なんだよ、一発こいつ殴ったろ… 一発に一発を持って返して何が悪い?」
余りが、殺気だって棒を掴み俺に殴りかかる。
「やる気無し。」
俺は、そっぽを向いて逃げ出した…
「待てェェェ!」
「そう言われて待つやついるかぁ!」
「居ないね、照一。逃げ道こっちだよ〜」
「おう!」
そんでまた話は飛んで放課後…
下校中
「しかも、同じマンションなんてさ〜」
そりゃあ、同じだから朝会ったんだろうが…
「はあ、なんでまたこんなに… ッハ」
突如楽花が、口を押さえた。
何言おうとしたんだよ…
!!
正面にいたヘルメットを被った人影を見て、俺の足が止まる。
「どしたの?」
「馴染みに2人も会うとは… 今日はどういう日だ…」
「………」
正面の人物は何も答えない…
その代りに右腕を上げた。
!!
右腕の形状が変わって行く… 人ではないそれになってゆく…
「ラァァァァスゥゥゥゥトォォォォォ! 会いたかったぜぇ!」
「ほう、IFSたあちっと違うその腕は何だ? A○MSか? 反物質砲でも入ってんのか? お前も逃げてきたのか? “シックス”。」
「そんな感じだぜぇぇ! あははははははぁ!」
ダメだ… イッてやがる。
「な、なに? なんなの…」
「楽花!」
「え?」
「逃げてろ!」
俺は、楽花を突き飛ばす。凄いものを見た気がするが無視。
俺は、懐からブローニングを引き抜く。抜かなければ死ぬことは本能が告げていた…
「下校中に襲ってくるとは… もちっと考えて襲ってきて欲しかったぜ!」
「くくく、ラァァァァァスゥゥゥゥトォォォォ! お前だけが、何故まだそんな姿のままでいるんだぁ!」
「そりゃあ、人間だからさ。ほっといて欲しいなぁ。」
まぁ、そう言う訳にもいかんだろう。
「ちょ、ちょっと。付いて行けないんだけど私。」
楽花が疑問を言うが構っている暇は無い。
「貴様だけ23型を投与される前に逃げたんだ… 覚悟は出来てるよなぁ! ラストォォォォォォ!」
「そうでもないぜ!」
ガァン
ブローニングの引き金を引く。
弾丸は、“シックス”の脇腹を抉り取った。
「はははぁ! 寿命は短くなったが力は強くなったぞお!」
その傷は、瞬く間に修復されていく…
シックスは、ヘルメットを脱ぎ捨てた。
「な!」
「きゃ!」
その顔を見て、俺と楽花は気分が悪くなるのを感じた。
「23型ナノマシン… それによっての突然変異… だが、俺の場合はそれが加速度的に進行してな、体細胞の70%がチアノーゼを起こしちまった… 顔も皮膚が剥げ落ちまった… 醜いだろ… 死んだ細胞の塊が俺さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「俺が、逃げたからか…」
俺は、言った。
「俺が逃げたから、お前らの実験が過激になったのか…」
“シックス”は、答えに詰まっているようだ。
「違うだろぉ!」
そう、俺は逃げた。だが、逃げなかったら俺もこんな風にされていただろう。だが、他人は逃げていたら、今の俺と同じで地獄を見てもこうにはならなかったであっただろう。少なくとも人の姿で死ぬことが出来ていただろう。
「恨まれるのは筋違いだぜ! 会えたらヤツラにもいっとけぇ!」
俺は、ブローニングの引き金を引きまくる。次々と排出口から薬莢が漏れる。
弾丸は、“シックス”の肉を引き千切りズタズタにし、血を引き摺り貫通する。
だが、傷は瞬く間に癒える。
「殺せねぇ…」
俺は、そう漏らす。
「ふ、ムダだムダだ。もう俺の細胞は殆ど死んでいると言っただろう。銃程度で死ねるかぁ!」
十三金かよ…
「逃げるぞ!」
俺は、必殺のコマンドを選択した。
「え!」
「腰を抜かしてる暇があったら走れ! 逃げるぞ!」
「らすとぉ! 逃げられるとおもっているのかぁ!」
俺は、傍のマンホールの蓋を持ち上げる。
「くらえ!」
それを振りかぶって“シックス”の頭に叩き付けた。
ボガジャァ
頭蓋骨が陥没する音と手応え…
「だけど、心臓撃っても死なないもんな… このくらいで死んでくれるわけねぇか…」
俺は、後ろを向いて逃げ出した。
「はいはい! ちゃんと逃げる!」
「何何何! あれは何ぃ! 大体あんたなんで銃なんて物騒なもの持ってるの! ラストってなに! 説明してよ!」
この状況でもちゃんと理性を保っている所が、凄いな。楽花。
「後で後で♪」
「ちゃんと後で説明してよね!」
「へーい。」
そうは、言ったものも、アイツをどうやって殺す…
銃も効かない… 頭蓋骨を割っても復活してくるだろう。
それに逃げると言っても何処へ…
「あ、車が来た… 端によっ… てぇぇぇぇぇぇぇ!」
楽花の怒鳴り声。
そしてブレーキ音。
「馬鹿野郎! 死にてぇのか!」
俺は、道のど真ん中に立ち往生したのだ。
そりゃぁ、ドライバーさん怒りますな。
「すいません!」
俺は、そう言って、窓を開けて怒鳴ったドライバーにブローニングのグリップを叩き付ける。
気絶した。
「よっしゃ、足が出来た。乗れ〜」
「しょ… 照一… これっていけない事でしょ…」
「ん? いろんな意味でそうだけど… ま、非常時だし…」
俺と楽花は、どうこう言いあっても結局は盗難車に乗った。
「運転できるの…」
「散々やったよ… 無免許だけど…」
俺は、車をスタートさせる。
「ラァァストォォォ!」
「もう復活していたのかよ… ったく。」
俺は、正面から迫る“シックス”に車を時速60kmでぶつからせた。
衝撃が座席中に木霊する。
「どうだ! これでも死なねぇか!」
死なないんだろうな〜
「ん?」
いきなり目の前に奇妙な球体が出現した。
「なんだこ…」
いきなり、その球体から針状の物が出る。
「伏せろ!」
俺は、楽花にそう言った。
BAAAAAAAN!
ガガガガガガァァァァアァァ!
球体が爆発し針状の物が、車内中に突き刺さった。
何発か、俺の体にも当たった。
「いってぇなぁ、炸裂弾か…」
「違うぞ… これは、俺の“肉片”だ。」
やっぱりまだ生きてやがったか…
「言っただろ… 俺の体は、23型ナノマシンによって、突然変異を起こしていると… 体中の細胞を、変えられるのさ… まあ、どういう物かは個体差が在るがな… 俺の場合は、細胞を分裂させ爆発させること。そしてもう一つ、一定の部分だけを刃物にすることだ…」
「ロバート・パトリックかよ!」
「いったぁ、手に刺さったぁ、って、照一! 形が有る分ちょっと違うでしょ!」
「似てる奴も居るんだろうがな…」
俺は、言いつつアクセルペダルを思いっきり踏み込む。
「くそったれぇ! バッテリーが弱ってやがる! ちゃんと充電しとけぇ!」
そして、基本の電柱正面衝突。
ガガァン!!
グシャリ!
「ど… どうだぁ…」
ジュジュジュゥゥゥゥゥ…
まだ修復すんのかよ…
俺は、車をバックさせる。
「さぁてと… 逃げますか!」
「どこへ…」
「どこかへ…」
俺は、車を無理矢理反転させると一気に逃げ出した。
英雄無き世界にて…
第十一話 上
END
第十一話 中(過去編)へ続く…