機動戦艦ナデシコ 新たなる旅立ち

 

第一話  始まりの時

 

 

 
 
「アキトさん。とうとう捕まえました!」
 
戦艦ユーチャレスは、『電子の妖精』ことホシノ・ルリ率いるナデシコCに捕らえられていた。
 
ユーチャレスの側部にはアンカーが張られており、とてもじゃないが逃げ出せるじょうたいじゃない。
 
『ゴメン、ルリちゃん。
 俺はもう、そっちの世界には戻れないよ。
 前に言っただろう?
 君の知ってるテンカワ・アキトは死んだって』
 
「・・・それでも、それでも私達には、私にはアキトさんが必要なんです」
 
『・・・ゴメン。ルリちゃん』
 
ユーチャレスの周りが虹色の光で覆われていく。
 
「くっ、ボソンジャンプですか!
 ハーリー君。ディストーションフィールド発生装置に『例』のアンカーを!」
 
「は、はい」
 
ルリの命令に従い、アンカーをフィールドの発生装置に向けて撃つハーリー。
 
そのアンカーは、ユーチャレスのディスートーションフィールドを付きぬけ、ユーチャレスに突き刺さる。
 
『何!?』
 
「そのアンカーは、ウリバタケさん直々に作られたアンカーです。
 ディストーションフィールドを一瞬ですが、無効化させれます」
 
逃げ場がないことを悟ったのか、アキトは降伏の意を表した。
 
『降参だ。今そちらに向か・・・
 おい!ラピス!どうなっている!!』
 
『ダメ・・・。止まらない』
 
「どうしたんですか?アキトさん」
 
『勝手にボソンジャンプを始めた!このままじゃナデシコに乗っている人達が死んでしまうぞ!!』
 
「なっ!? 
 総員、退避!!
 ユーチャレスから離れなさい!!」
 
「だめです!
 間に合いません!!」
 
次の瞬間。二隻の戦艦はあとかたもなく消し去った。
 
 
 
−地球−
 
 
「くっ・・・ここは?」
 
アキトは、エステバリスのコクピットに乗っていた。
 
「何で、俺がここに?」
 
アキトが疑問に思っているとき、思いのよらない人物からの通信が入る。
 
『誰だ!?名を名乗れ』
 
「フクベ提督!?」
 
そう、通信先の人物は、ナデシコA提督のフクベだった。
 
確か、二年前にガンでなくなったはずだが・・・
 
「あの・・・今何年ですか?」
 
『あ、今は2196年だが?
 それより名前を言いなさい』
 
「あ、テンカワ・アキト。コックです!」
 
俺の予想が正しければ、俺は過去に戻ってきてしまった。
 
その証拠に、バイザーがなくても目が見えている。
 
体も貧弱なままだ。
 
おそらく、精神だけがジャンプしてしまったのだろう。
 
『アキト!アキトでしょ!!』
 
「・・・ユリカ」
 
『やっぱり、アキトだ。どししてそんなところに?
 決まってるよね。ユリカたちを助けるためだよね!」
 
「・・・ああ、そうだ」
 
『生きて帰ってきてね!』
 
「・・・ああ!」
 
そうだ。ここで死んでは帰ってきた意味がない。
 
俺は、外に溜まっているバッタに向かって、飛んでいった。
 
「さて、ここは昔の通り逃げに徹するかな」
 
そのとき、後ろから近づいてくる一台のエステを見かけた。
 
ん?ここは俺一人で切り抜けたはずだが・・・
 
もしかして、ガイか?
 
『すみません。遅れました』
 
しかし、コミュニケに映ったのはガイではなく、見慣れない青年だった。
 
「すまんが、誰だったかな?」
 
『何言ってるんですか?
 パイロットのヤマダ・ケイタですよ
 さっき、格納庫であったでしょう?』
 
「ヤマダ・・・?
 もしかして、ヤマダ・ジロウの?」
 
『はい、弟です』
 
これは予想外の展開だ。
 
まさかガイに弟がいたなんて・・・
 
それより、何で弟がこんなところに?
 
『テンカワさん。危ないですよ』
 
「えっ」
 
考えてて注意力を失ってた俺は、バッタの攻撃で左腕を破壊されてしまった。
 
「くっ、やられた!」
 
『そろそろ、ナデシコが来るころです。行きましょう』
 
その後。敵はナデシコの、グラビティーブラストで一掃された。
 
 
−ナデシコブリッジー
 
「お疲れ様です。テンカワさん」
 
エステから降りた俺に、タオルを投げかけるケイタ。
 
「はは、たいしたことないよ。それより凄い腕だね。かすり傷一つもないじゃないか」
 
「いえいえ、テンカワさんには及びませんよ。
 現に、アキトさんは実力の半分以下で戦ってたでしょう?」
 
「買いかぶりすぎだよ」
 
俺とケイタがそんな話をしていると、格納庫からユリカとプロスさん。それにルリちゃんがやって来た。
 
「アッキト〜!!」
 
飛びついてきたユリカを、さっと避ける。
 
「お疲れ様です。アキトさん」
 
「ああ、ありがとう。ルリちゃん」
 
「お疲れ様ですなぁ。テンカワさん。どうです?
 これからもパイロットとして働きませんか?」
 
「何言ってるんですか。俺はコックですよ。パイロットは、あくまで代理です」
 
「そうですか・・・。とりあえずブリッジに行きましょう。自己紹介もまだですし」
 
そういって、プロスさんが倒れてるユリカを背負ってブリッジに向かった。

俺とケイタもその後に続いていこうとした、そのとき
 
「・・・漆黒の王子」
 
「!?」
 
「・・・私です。ナデシコC艦長のホシノ・ルリです」
 
「ルリちゃんなのか・・・?」
 
「・・・はい」
 
そういうとルリちゃんは俺に向かって抱きついてきた。
 
「お、おい。ルリちゃん!」
 
しかし、ルリちゃんは一向に離れようとしない。
 
「ここは、やっぱり過去なのか?」
 
「そのようです。ヤマダさんの弟さんが乗っていたりと、多少誤差がありますが、
 ここは間違いなくナデシコAです」
 
抱きついたままルリがつぶやく。
 
「さっき、ハーリー君から連絡がきました。
 気がついたら研究所にいたそうです。
 ラピスもそこにいます」
 
「そうか・・」
 
抱きついてる俺たちを見ている多数の人影があった。
 
「くっそ〜!!テンカワの奴。もう手を出しやがったか!!」
 
ウリバタケ率いる整備班の方々である。
 
「いいか。俺たちはここに『テンカワ撲滅委員』を結成する!」
 
「「「おう!!!」」」
 
影でそんなことが行われているとは知らずに、アキトはルリちゃんと一緒にブリッジに向かうのであった。

 

 

 

管理人の感想

のほほんさんからの初投稿です。

最初の出会いを端折って、いきなりの戦闘。

そしてガイの弟の登場です。

・・・山田家って何人兄弟なんだろう?(笑)

ハーリーの無事は確認できましたが、ラピスはどうなんでしょうね?