外伝 上官の管理の法

 サツキミドリからここの所忙しい。エステバリス隊員との交流。ウリバタケさんの手伝い。ナデシコに関するレポート。

なぜか知らんが当直・・・。俺はたしかナデシコのレポートを書くだけでいいはずだったのではないか?

 あといい加減服の数も増やさんと・・・・・・。



  モリの日記より




 突然非番の時間にモリ少佐からメッセージがあった。内密の話なので部屋まで来てくれとの簡単なメッセージだった。

「自意識過剰よね・・・」

 ミサはシャワーを浴びながら思ったことを口にしてみる。汗もかいていなかったのだがなんとなくシャワーを浴びておきたかった。

          

「まさか・・・少佐がそういうことを考えてるとは思えないけど・・・」

 シャワー室から出ると洗面台に全裸の自分の姿が映った。鍛えてはあるがすらりとした四肢、年相応に極めの細かい肌。肩まで伸ばした黒髪。

ミナトやユリカと比べると寂しいくらい小さい胸。冗談半分で鏡の自分に流し目を送ってみる。つり上がり気味の黒い瞳は意外に色っぽかった。

「ほんと・・・ばっかみたい」

 手早く下着を着けて綿のゆったりとしたズボンをはく。上着は少し悩んだがこれもゆったりした白いシャツにした。

最後に鏡の前で薄く口紅をして部屋を出る。

「ほんと・・・馬鹿よね・・・」

 そういいながらも意外にミサの足取りは軽かった。


周りの人に不審に思われないように苦労しつつミサはモリの部屋までたどり着いた。軽く深呼吸をして緊張しながら呼びベルを押した。

『どちらさんで』

 普段の声と違うのんびりした声だが確かにモリの声だった。

「タチバナです」

『今あけた。入ってくれ』

 いきなり普段の口調に戻ったので多少面食らったがミサは言われるままにモリの部屋に入った。あまり個性の無い無機質や空間が視界に移った。

「非番のときにすまないな、少尉」

 出迎えたモリは多忙なのか第3種軍装のネクタイを緩めたままの格好だった。

「いえ・・・。それより少佐殿、自分に御用とは?」

 進められるままにいすに座る。多少心臓が大きく鳴ってる。

「あぁ・・・実はな」

 赤茶の瞳がミサの服装を値踏みするように見る。まさか、という考えがミサの脳裏をよぎった。

「・・・・・・月の宇宙港の近辺で服屋ってどこにあるかわかるか?」

「はい?」

 上官に対してかなり失礼な言い方だがそれしかいえなかった。

「いや・・・実はだな」

 適当に刈り込んだ茶色の髪をかきながらモリは立ち上がった。大きい、175ぐらいあるかもしれない。

「説明するよりはみてもらう方が早いな」

 そういって本棚で仕切られた―――元がワンルームだから自分で仕切ったのだろう―――ベットルームに歩き出した。

 先ほどの空間と違い生活臭漂う空間だった。いろいろな物が転がってる床、枕もとにある4つの目覚まし、壁に押しピンで貼られた写真。モリと同世代の青年達が銃を掲げていた。

           

「もともと長期航海を予定していなくてね。・・・見てのとおりだ」

 モリがクローゼットを開けるとそこには第1種軍装、第2種軍装、第3種略装、野戦服、寝巻きが入っていた。

「見てのとおり普段着がない。そこで購入しようと思うのだが・・・生憎月に行ったことがなくてね。探す時間もないし・・・」

 モリはばつが悪そうに笑った。普段の堅苦しい表情とは正反対の無邪気な、子供っぽい笑みだった。

「それで・・・私を呼び出したと・・・」

「うん・・・・少尉?」

 さすがにモリも気がついたのだろう、ミサが怒っているのを。

「だったらあんな意味深なメッセージ送らないでくださいよ!変な誤解するじゃないですか!!」

「誤解って・・・。いや、別にそういう意味で書いたんじゃないぞ・・・!」>

 ようやくモリは自分のメッセージがどういう意味を持つか理解したようだ。

「もう良いです!・・・それで、着るものないから略装で生活してると・・・!」

「非常手段だよ・・・」

 頭ひとつ分小さいミサに怒られてしゅんとするモリ。もしそこに第3者が居たら間違いなく大笑いする情景だった。

「だったらせめてちゃんと着こなしてください。あぁ!ネクタイ変に緩めてるから変に皺よってる!」

「少尉・・・苦しいです」

 ミサにネクタイをきつく締められてもがくモリ。すでに立場が逆転している。

「それに襟口のボタンも全部留める。子供じゃないんだからきちっと着なさい!!」

「いや・・・さすがに部屋の中でこの格好はつらいし・・・」

「だったら私服に着替えれば良いでしょ!」

 ・・・無いから相談してるんです。とモリは口にしたかったが言えばさらに泥沼になるのが予想できたから何も言わなかった。

それからモリは半日ほど、やれ短くても髪に櫛を通せとか、やれプレスラインが甘い等とミサに怒られ続け最後には。

「少佐の生活態度が真っ当になるまであたしが管理します。いいですね」

といわれ結局逆らうに逆らえずモリは泣く泣く同意した。

 これ以後モリの私生活はすべてミサの管理下に置かれるとここなった。



 追記:上記はホシノルリの覗き見より発覚した事実である。





あとがき


 もはや何も語らん!

                                             

 敬句 


代理人の個人的感想

・・・・・・・・・・・どーみてもらぶこめ方面なんですが、この話。

くっつけないんじゃなかったの?(爆)