ラーメン屋奮戦記(彼の気持ち)

 

 

ざく。

ぶしゅ。

面白いように体から血をふきだし、少女は倒れた。

北辰は彼にしては珍しく、ただ、その光景を見ているしかなかった。

「ごめんよ。」

白衣を赤く染め、テンカワアキトは少女を抱きしめた。

 

 

どのくらいの時が過ぎたのだろうか?やがて、テンカワが少女の死体を手放した。

死体はぐちょりと床に倒れた。

 

 

「北辰。地上にでるぞ。」

テンカワは少女の死体をなんの興味もないかのように無視した。

「・・・どうやってだ?」

北辰は素顔のテンカワに会うのは初めてだった。

ちりちり。

首の後ろがやけに痛い。殺意もここまでくれば、凶器になりそうだった。

表情を消したテンカワはそんな北辰を無視するかのように、セキュリティー室に向かった。

 

 

「・・・やっぱりな。」

テンカワの声に北辰がウインドウを見ると、ここにむかって、救援がむかっているらしい。

「クリムゾンのシークレット・サービスがくるみたいだな。武器はあるのか?」

「よいのか?敵である我にそんな心配をして?」

「かまわないさ。奴らの目的は軍の諜報員と木連の密偵の殺害だ。

 俺1人より、あんたがいてくれたほうが、敵の戦力を二分できる。」

冷ややかな顔でテンカワは答えた。

ラーメン屋はこの素顔を隠すための仮面か・・・。

北辰はひさびさに心が高揚するのを感じた。

 

 

「生き残った研究員は捕まえろ。それ以外は必要ない。」

簡潔な命令に武装した男性たちは無言で命令を実行に移し始めた。

 

 

ばん!

勢いよくドアを開け、中に飛び込み銃口を向ける。

「?」

何人かの死体が転がっている。

どうやらここの職員だったようだ。

「研究員を探せ。」

小隊のリーダーが最後に部屋に入った。

ぷしゅ。

「!?」

振り返るとドアが閉じられロックされていた。

無言でカギを破壊しようと銃口を向ける。

きゅうい〜ん。

音ではないが、なにか体に振動を感じた。

どろっ。

「?」

なにか温かいものを感じて耳に手を当てた。

手には赤いものが付着していた。

「血?」

仕事柄見慣れたものがなぜ、自分から流れているのか?

「あ。」

ぐらり。

男達は三半規管を破壊され、床に崩れた。

 

 

すささ。

研究員たちの宿舎を男達は音もなく迅速に移動し、各部屋の捜索を行っていた。

しかし、人形のように無造作に殺された死体しか見つからなかった。

「ちっ。」

短く舌打ちし、それぞれ2人ずつに分かれて細部まで調べることにした。

研究ブロックから連絡はないが、まさかひ弱な学者達にやられたとは考えにくかった。

あとで文句の一つでも言ってやればいい。

 

「豪華なもんだ。」

緩やかなラインの高価そうな花瓶を見つけて皮肉げに手にとった。

ころん。

「?」

なにか入っている?

中は・・・。

ちゅどーん!

花瓶を動かした振動で安全装置がはずれ、なかの手榴弾が破裂し、

花瓶の破片も一緒にあたりに飛び散った。

「く!?」

相棒がずたずたにされるのを目の当たりにしつつ、後ろにいた男は慌てて通路を突っ切ろうとした。

きらん。

「!!」

首のあたりに痛みを感じ、それが、ピアノ線が首を切断する痛みだと最後の意識でわかった。

 

「おい!応答しろ!おい!」

「止めとけ。そこらへん、トラップだらけだ。下手に動くのも焦るのも禁物だ。」

「け、けどよ〜。」

ふわん。

天井から誰かが着地し、身を沈めた。

「!!」

慌てて銃口を向けるが。

ひゅん。

「「うがあああああ。」」

足首を鋭利なメスで裂かれて男達は悶絶した。

「き、きさま?」

白衣の男は無表情に銃のトリガーを引いた。

 

 

「ふん。」

北辰はセキュリティー室からその映像を見ていた。

彼の足元には彼がつくったできたての死体が転がっている。

隊長らしい男から潜水艇の操作キーを手に入れていた。

「そろそろか?」

臨時の相棒を迎えに向かった。

 

 

「テンカワ。こちらだ。」

北辰は制圧した潜水艇の前でテンカワと合流した。

「操縦できるのか?」

意外そうな顔で聞いてくるテンカワに北辰は顔をしかめた。

「失礼な。」

憮然と答えた。

 

 

 

 

あとがき

いやあ、ぽちです〜。

お久しぶりです。

それなのにこんな暗い話を書いてしまうとは・・・・(汗)

 

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

ぽちさんからの投稿第八弾です!!

う〜ん、今まで色々とSSを読んできましたが。

アキトと北辰の共闘なんて、初めてだと思います。

それにしても、黒の王子様全開ですね。

北辰は凄く嬉しそうですけどね(汗)

それにしても、クリムゾンのシークレット・サービス達・・・相手が悪かったですね〜

 

それでは、ぽちさん投稿有難うございました!!

 

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