ラーメン屋奮戦記(ゲキガンガー登場)
by poti
今日は大漁です。
何が大漁かと言うと、戦っている相手、木星とかげさんの数と種類です。
今までは無人兵器であるバッタやジョロが多かったんですが、なんと今回はアニメのゲキガンガーそっくりな機体が出てきました。
ちなみに、途中拾ったパイロット四人のうち、熱狂的な『ゲキガンガー3』ファンであるヤマダ・ジロウさんは大張り切りです。
「うおおおおお!すっげ、本物みたいだぜ!!」
ひとりやる気満々です。
それに引き換え、
「うげ。今回はやる気がなくなるぜ。」
「うっわ〜。すっごいね〜。」
「・・・・・・・・・・・・。」←特に駄洒落が思いつかないらしい。
スバル・リョーコさん、アマノ・ヒカルさん、マキ・イズミさんは意気消沈です。
それでも有象無象をかたし、後はゲキガンガーだけとなりましたが、その動きはどう見ても人間が乗っているみたいに滑らかで、状況判断も自分で行っているとしか思えません。
最初はやる気のなかった女性三人組みも、真剣な顔になってきます。
おまけに相手は瞬間移動するんです。
さきほどまでいた位置を狙っても、攻撃は全てなにもない空間を通り過ぎるだけです。
「・・・ボソン・ジャンプですか。」
「どうします、ミスター?」
「捕獲してもらえれば、そのノウハウを活かせるんですが。」
都合のいい相談をプロスさんとゴートさんは始めます。
でも、ボソン・ジャンプってなんでしょう?
あの瞬間移動みたいな現象のことでしょうか?
エステバリス隊も連携して倒そうとしますが、攻撃が当たらなければ意味がありません。
「だー!もー!いいか、俺があいつに張りついて攻撃する!!」
頭にきたのか、ヤマダさんは宣言し、彼の機体がゲキガンガーの背中に張り付きました。
相手は驚いたように背中に手を回しますが、届きません。
そして。
ふわん!
再び姿を消し、現れたときには、ヤマダさんの健康状態を示すマーカーが、レッド、つまり死亡したことを表すように点滅します。
・・・どういうこと?攻撃されていないのに。
通常の人間ではあの現象に耐えられないんでしょうか?
『おい!どういうことだ!ヤマダの奴が死亡したって、ウインドウ出てるぞ!!』
「みなさん、敵に接触しないでください!危険です!」
艦長が命令しますが、
『じゃ、どうすりゃいいんだよ!?』
敵の攻撃をかわしながらリョーコさんが叫びます。
相手のゲキガンガーは大きさがエステの3倍以上はあり、通常の攻撃はすべて瞬間移動、ボソン・ジャンプでよけられています。
しかも機動兵器なのに、ミサイルから小型のグラビティ・ブラストまで装備しています。
攻撃するどころか、再び近寄るのは危険です。
艦長は親指の爪を噛んでいましたが、隣のカグヤさんがわたしを見ます。
「オペレーター。敵の行動パターンを分析してちょうだい。」
「分析範囲が広すぎます。」
「・・・・そうね、ナデシコに多大な被害を及ぼすことを前提に相手が動くと仮定して分析して。」
「了解。」
「いいの、カグヤちゃん?エステの行動を入れなくて?」
「ええ。相手が新兵器を用意してきたということは、本気でこのナデシコをつぶそうと考えたからでしょう?」
「なるほど。」
ブリッジの隅では、副官としての立場を奪われたジュンさんがいじけているのを、すっかり好々爺と化したフクベ提督が肩を叩いて慰めています。
わたしはオモイカネと分析結果をまとめ、
「3分後、エンジンルームにミサイル攻撃をしてくるはずです。」
「リョーコさん!!」
「任せとけ!!」
リョーコさんはゲキガンガーの背中に弾を打ち込みます。
それをよけようと相手は移動し、ちょうどエンジンルーム前に出現しました。
「もらい!!」
シリアスモードなイズミさんがライフルで狙い撃ちします。
じじ・・・ばしゅん!
背中に動力を積んでいたんでしょうか?
その大きな巨体が傾げ、煙を噴出し、一切の行動を停止しました。
戦闘は終了しましたが、ナデシコが宇宙に出て初めての戦死者を出してしまい、誰も喜びの声をあげようとはしません。
ブリッジ・クルーはポーカー・フェイスを装っていますが、かなりの精神的ダメージを負ったことぐらい、少女であるわたしにもわかるくらいです。
「・・・ヤマダ機の回収、お願いします。」
艦長は厳しい顔つきで命じました。
回収されたヤマダさんの機体には、彼は乗っていませんでした。
あのボソン・ジャンプのせいで、おかしなところに放り出されたのでしょうか?
プロスさんとゴートさんは何か知っているようですが、なにも説明してくれません。
大人の都合というやつですか。
わたしはやけに疲れた気がして、コンソールに突っ伏しました。
格納庫では倒したゲキガンガーを中に運び込み、調査をしています。
班長であるウリバタケさんが興奮のあまり、目を真っ赤に充血させていて恐いです。
ナデシコは、戦艦、戦う船なんですよね。
わたしは気づかないフリをしていたことを、思い知った気がしました。
「・・・困りますよ、プロスさん。」
わたしの目の前には、いつもの人懐こいコックではなく、軍人としてのテンカワさんがいました。
木連の機体を回収したことについて話したいと、コミュニケから呼び出しをもらい、こうして誰も使っていない小会議室で密談中です。
わたしは笑みを顔に貼り付けて、
「そちらの利益は阻害していませんよ。
第一、正規の軍人であるオニキリマル大佐もブリッジでゲキガンガーの回収を承諾してくれましたし。」
「彼女は軍人である前に明日香インダストリーの次期後継者だ。
下手をすれば、せっかく独り占めしたはずの古代火星人の知識を奪われかねないんじゃないか?」
「・・・・・・・・・。」
彼の言葉に、わたしはコミュニケでゴートさんに連絡をとります。
『どうしました、ミスター?』
ウインドウに、ゴートさんの四角い顔が映ります。
向こうもこちらの状況を察したのか、すぐに誰もいない部屋を探し、そこに入ります。
「オニキリマル大佐は今どちらですか?」
『格納庫でゲキガンガーの解体に立ち会っています。』
「・・・わたしはミスマル艦長にその仕事を言いつけたはずですが?」
『・・・テンカワを捜索すると、ブリッジから逃走中です。』
はあ。あのひとには困ったものですなあ。
「そうですか。
で?本来の副長であるアオイさんはどちらに?」
『・・・慢性胃炎で医務室で治療中です。胃潰瘍の疑いもあるそうです。』
・・・主従ともに行動が読めませんね。
「ゲキガンガーの解体についてのレポートは、オニキリマル大佐にではなく、直接わたしにください。
いいですね?」
ぷつん。
「ネルガル前会長の経営方針、今だ変わらず、ですか?」
コミュニケを切ると、テンカワさんはやや呆れたように言います。
おそらく、世代交代した現会長であるアカツキ・ナガレさんのことを皮肉ったんでしょうが、
「わたしはしがない中間管理職でしかありませんよ。」
サラリーマンであることを、最終的な逃げ道にするしかないとは我ながら情けないですが・・・。
ふう。
彼は息を吐くと、
「ま、そういうことにしておきましょうか。」
いつものにこやかな笑みを残し、彼は部屋を出ました。
あとがき
かなりテレビ版の話をはしょってます、てへ(爆)
代理人の感想
ヤマダ死す!
ま、そのうちキャプテン・ガ○ァメントとでも名を変えて復活してくるでしょうからそれは置いておいて(笑)。
さすがにナデシコ艦内では「ラーメン屋」も表だった行動は出来ませんか。
と、いうより暗躍する必要が無いのかもしれませんけれど、
ちょっぴりそのことが残念だったり(笑)。