(ナデひなの20話を元にしたSSです。)
by ぽち
「ん?」
なぜかずきずきと痛む後頭部をさすりながら目を開けると、
にょき♪
きれいな白い腕が俺の体に巻きついていた。
「んな!?」
浴衣がはだけた枝織ちゃんが、よだれをたらして、俺を抱き枕にして寝ていた。
ちょうど俺の胸の上に彼女のかわいらしい顔が乗り、その影から白い胸の双丘が見て取れる。
ん〜、もうちょいで見れるのに。
寝ぼけた頭がばかなことを考えたが、
・・・て、なんで枝織ちゃんが?
「ん〜。なあに?」
もぞもぞ。
俺が起きた気配を察してか、彼女が目をこすりながらこちらを見る。寝乱れた真紅の髪が色っぽい。
うう、お願いだから離れてくれ。これは拷問か?
彼女のいい匂いと、柔らかな体の感触、暖かい体温に理性がぶっとびそうになる。
やばいぞ!こんなところをみんなに見られたら、なにをされるかわからん!!
ばばっ!!
一瞬の隙をついて、彼女から離れる。
が。
むにゅ。
へ?
後ろについた右手を恐る恐る見ると、
「・・・・どこ、触ってんのよ、スケベ!!」
ぐふ!!
隣に寝ていたなるちゃんの胸をつかんでいたため、渾身のアッパー・カットを受ける。
「アー君、どうしてそんな攻撃がよけられないの〜?」
心底不思議そうに枝織ちゃんが言う。
うう。男にはよけることができない、いや、敢えて受けなければならない痛みがあるのさ。
そういえば、布団を二枚並べて敷いてあったんだっけ。
悪気はないとはいえ、胸を触ったことを謝る。
「ごめん、なるちゃん。」
「もう!彼女がいるところでよくそんなことができるわね?」
いや、枝織ちゃんは彼女じゃないんだけど。
言いたいことはたくさんあるが、言ってしまえば俺の居場所がみんなにばれてしまう。
どうしたものかと考えていたが。
ぴくん。
「・・・アー君。」
「・・・わかってる。」
いきなりシリアスモードになった俺たちに、
「え?なに?」
慌てるなるちゃんに人差し指で黙るように合図し、
すらん!!!
開けたふすまの向こうには、予想どおりの人物が、耳にコップを当て、中の様子に聞き耳を立てていた。
寄りかかっていたはずのふすまが開いても、そのままの姿勢を維持している。
・・・このひと、ほんとになんなんだ?
いや、人間なのか?別の生物なのか?
「・・・仲居さん。なんの御用ですか?」
仲居さんは俺の本気の殺意をものともせず、
「ささ。邪魔者は消えますよって、続きをどうぞ。これはお詫びの印どす。」
なんでお詫びの品がユンケルなんだ?
仲居さんは営業スマイルのまま、後ろ歩きで通路に消えた。
ああ、京都が嫌いになっていく(涙)ここは化け物の巣窟か?
時計を見るとすでに朝の10時をまわっている。
困ったな。早めに逃げないと。
相手はあの舞歌さんにナデシコのみんなだ。
枝織ちゃんが京都駅で姿を消した時点で、俺の位置は予測されているはずだ。
いや、四陣によって、より正確な位置を特定されているはず!
問題はなるちゃんをどうするかだった。
「・・・枝織ちゃん。悪いけど北斗に替わってくれない?」
「うん?別にいいけど。」
「ちょっと何いってんのよ、アキト。」
俺の言う意味がわからないなるちゃんの抗議を無視する。
枝織ちゃんがそっと目を伏せ、次に瞳を開けたときには、
「なんの用だ。アキト。」
冷ややかな気配を放つ北斗になっていた。
自分の意志でここまで人格をコントロールできるようになったのか。そのうちひとつの人格に吸収されるかもな。
俺は懐かしい相手と世間話のひとつもしてみたかったが、事態は急を要していた。
「すまないが俺のことは舞歌さんやみんなには言わないで欲しいんだ。ただ、京都は完全包囲されている。
京都駅まで送るから、包囲網の突破を手伝ってくれ。」
「そんなことはたやすいが、こいつはどうする?」
いきなりしゃべりかたも雰囲気も替わった彼女に、なるちゃんはきょとんとしている。
「いっそ、この場に置いていくか?」
「いや、それはまずい。彼女たちのことだから自白の強要や酷い拷問をされかねない。
いっしょに連れて行ったほうが安全だ。」
「ちょっと、なに物騒なこと言っているのよ!!」
「ごめん、なるちゃん!」
つん。
彼女の白いうなじに人差し指を軽く指す。
それだけで、
こてん。
気絶した彼女を布団に寝かせる。
「なるちゃんは俺が背負っていく。」
「好きにしろ。」
北斗は枝織ちゃんの服に手を伸ばし、
しゅるるる。
男の俺の視線を気にもせず、浴衣の帯をとく。
男性として育てられた北斗に女の色気はないが、体は女性のものだ。
白いうなじやすらりと伸びた手足がちらりと見え、
「ちょ、待て、北斗。俺はむこうで着替える!」
わたわたと手を振り、なるべくそっちを見ないようにして、俺は自分のかばんを持って、部屋と外の通路の境、下駄箱がある狭い場所に移った。
「・・・なにを慌てている?」
冷静な声と顔でセミヌードの北斗が部屋を仕切るふすまを開ける。
白い肌に赤い髪が散り、見とれそうになるが、
「う、うわあ、見るなって!!」
俺はちょうど浴衣を脱ぎ、ズボンに足を通した間抜けな姿だった。
急いでズボンをはいてジッパーを閉じる。
「お、お願いだからむこうで着替えてくれ。それと、なるちゃんの着替えも頼む!」
両手を合わせて頭を下げる。
ここの宿帳はブロスに頼んで消去させた。あとは無事、ここから抜け出す必要がある。
浴衣を着たままのなるちゃんを背負っていけば、そこから足取りを割り出されかねない。
男の俺が着替えさせるわけにいかず、曲がりなりにも女性の北斗に頼むしか手はないだろう。
北斗はぽかんとした顔をして、
「女も男もそう変わりないぞ?見るか?」
不思議そうに浴衣を脱ごうとする。
だー、もう!零夜ちゃん、大変だろうな。
北斗のどこかずれた価値観に頭が痛くなってくる。
最近まで暗殺者として育てられてきたのだ。まともな価値観が育つはずもないが。
「どうした?腹痛か?」
「いや。自分の不甲斐なさに涙が出てきた。」
「情けないな。」
ごもっともです。
10分後、着替え終わった北斗を連れ、俺は宿屋を抜け出そうとした。
だが!!
「お客さん。無理心中は勘弁してほしい言いましたけど、宿代払っていただかないと困りますえ?」
あんたいったいどこからわいて出てくるんだ?
俺と北斗は完全に気配を消していたはずだ。
一般人が気づくはずがないのだが。
北斗も怪訝な顔で、
「おい、アキト。これは妖怪か?」
「まあ、それに近い生物だ。」
今更説明するまでもないが、あの仲居さんが、右手に提灯を提げ、左手にはそろばんを持って立ちふさがっていたのだ。
気絶したなるちゃんからお金をもらうわけにもいかず、着の身着のままで来た北斗が財布を持っているはずもなく。
「・・・すんません。領収書には浦島アキトでお願いします。」
三人分を立て替えた。
戦争が終わっても、俺には平穏は訪れないと言うのか!!
悔し涙をこぼしつつ、
「さあ、行くぞ、北斗!情け容赦は無用だ!!」
びし!
背中になるちゃんを背負ったまま、俺は曇り空の彼方を指差した。
あとがき
ども、ぽちです。
お久しぶりです〜。
すみません、イメージを壊しまくりなSSになってしまいました。
なるちゃんの細かい設定とか知らないまま書きましたので、間違いがあるかと思いますが、勘弁してください。
ではでは。
代理人の感想
安心して下さい。私もラブひなはわからないので全く気になりません(爆)。←いや、そゆ問題じゃないと思う