かつて未来と呼ばれる過去の中で彼はナデシコと呼ばれる戦艦に乗っていた。
 けっして楽しいことばかりではなかったが、彼にとってそこはかけがえのない場所であった。

 そして戦うことを終えた後、彼は自分の夢を家族と一緒に叶えようとした。 
 
 しかし、その夢は叶うことなく家族は引き裂かれていった。

 そして彼は復讐のために闇の王子に姿を変える。
 
 復讐が終わった後に居場所を感じることが出来ず、愛しい者から逃げていたとき
 
 奇跡は起こった。
 
 彼の精神は過去へ逆行し、また一握りの者も彼と共に跳んだ。

 そして彼は未来で起きた惨劇を繰り返さぬために、彼は戦い抜いた。
 
 新たな仲間との出会いと別れ。新たな敵との出会い。

 そうして、ようやく終わろうとしていたときにそれは起きた。
 
 世界を変えた代償だったのか、彼は別世界に跳ばされてしまった。
 
 彼の名はテンカワ=アキト、漆黒の戦神と呼ばれた者である・・・・・・・


 融合せし世界の中で

 第二・五話 そして馬鹿だけが途方に暮れた。



 戦いすぎて日が暮れて(ヲイ、宇宙空間だろ)山のお寺の鐘(何処だっつ〜の)が鳴る。

 つい数時間前まで展開されていた壮絶な戦闘が嘘のように、宇宙空間は静寂を取り戻していた。
 すでにそこにはその静寂を生み出したクリスタルの巨人の姿はなかった。
 しかし、戦闘があったことの証拠として周辺にはピロシキ型の残骸やキューブ型の残骸、
 そして機能を停止したキューブ型が漂っている・・・・・・・・
 

 しかし、そこに傷を負いながらも漂っている融合戦艦はパッと見、外からは宇宙と同じく
 静寂に溶け込んでいるのだが、なにぶん宇宙である。内の音は聞こえない!!

 で・・・・・・・・・・・その融合戦艦の内はと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・

 「反対!!」「お頭!一体どうしちゃったんですか!?」「病原菌と一緒なんですよ!」

 「お頭がなんと言おうと私たちは決して認めません!!ねぇみんな!?」


 「「「「エイ、エイ、オォォォォォォォォッッ!!!!」」」」


 ・・・・・・・・・・その、何というか修羅場だった・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 何故こんな事が起きたかというとそれは戦闘が終わった直後からの話となる・・・・・・





 何とか自力で合体を解除したアキトがディータと共にメイアとジュラに通信をしていた。

 「しかしさっきの相手は一体何の目的で俺達を襲ってきたんだろう・・・・」

 「まぁ、でも勝てたから良いじゃありませんか!ああ〜ん、でもアキトさんとディータの合体
  ディータも見たかった。気絶してたから見れなかったし〜〜〜〜!!
  あ、そうだ!ブリッジでエズラかテンちゃんが記録してるかも(ポン)」

 「ディ・・・・ディータちゃん・・・・合体という言い方はちょっと(汗)」

 「え〜〜〜どうして合体じゃだめなんですか?(無邪気)」

 「そこまでにしておけ。しかしたしかに敵も謎が多かったがこちらにも謎が残ったな・・・・
  ヴァンガードとドレッドの融合・・・・さしずめヴァンドレッドと言うところか・・・・」
  (ヒスイなら何かを知っているかもしれんな、後で話を聞いておくか) 
  
 
 と言った感じに先程の戦闘の話をまだ着艦前なのだがしていた。ちなみに今こそこうして
 普通に話をしているのだが、通信をつなげた最初の頃はすごかった。

 ディータが泣きながら通信をしてきて、メイアが照れ隠しにやや怒った口調で畳みかけ、
 ジュラが自分も合体したかったと言った感じであった。
 (マグノとブザムは珍しく微笑みながらその様子を見ていた)

 で、ようやくまともな話にこじりつけたかと思っていたらジュラが爆弾発言をした。

 「でもさ、ディータのドレッドが合体できたって事はジュラのも合体できる可能性が
  あるのよね?」

 その一言によって再び話は混沌の渦と化した・・・・・・・・・・

 やれ「アキトさんはディータとだけ合体するの!!」だの「このジュラ様の美しい合体を
 見せてあげるからおとなしくしてなさい!!」「嫌!!」「何ですって!」・・と言った感じに

 そこでメイアが口を挟んだ。

「待て、二人とも今回ディータとアキトが合体したときに二人の意識はなかった・・・
 即ち仮に合体できたとしてもそう言った事態がこの後も起こると言った危険をもった
 可能性がある。とりあえずはその水掛け論は終いにしておけ・・・・・・・・」

「はぁ〜〜〜い・・・・」「仕方ないわね・・・・・・・」

(メイアちゃんナーイス!!^o^/)アキト君顔文字使ってまで安堵しなくても・・・・ 

(チェッつまらないねぇ数十年ぶりに男と女の修羅場が見られると思ったのにさ)ヲイをい


 さすがリーダー、しっかりとした根拠のある意見で周りを黙らした。
 だがこの意見には続きがあったりしちゃった(笑)

「ドレッドチームのリーダーとして隊のメンバーがみすみす危険を冒すのは看過できない・・・・
 従ってまずリーダーの私がアキト機との合体が出来るかと言った実験をしてから・・・・・・・」

                「「だめぇ!!」」

 いやぁまともな意見だったんですけどねぇ、多少自分の本心が出てても(笑)

 結局この討論はアキトがまずは着艦してそれからにしようよと妥協するまで
 続くことになった・・・・・・・・・

 で、それが終わったら今度は先程の戦闘中からメイア機とジュラ機がしていた出撃口を
 ふさいでいるペークシス・プラグマの除去作業に移った。
 しかしこの作業は手足のないドレッドにこそ困難なモノ人型をしているヴァンガードにとっては
 取るに足らぬ問題であった。

 ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ!!

 DFSを使って次々に奥へと進んでいくアキト機を見てメイアとジュラがひどく脱力感に
 襲われたのはまた別の話。(密かにドレッドにもアームを着けようと言った案まで出た)

 「よし、後はこの膜状に広がっているのさえ斬れば終わるよ。もしかしたら格納庫に整備クルー
  の人がいるかもしれないから、マグノ艦長すみませんが呼びかけておいてくれますか?」

 アキトが人がいたら危ないと言うことで艦の中でもっとも偉いマグノに勧告を出してもらおうと
 通信をマグノのいるメイア機につなげたら・・・・・・・・・

 「うわっ!!寒ッ、寒ッ、寒いぼが出ちまったよ、かいっかいかいっかい」

 「お頭大丈夫ですか!?(汗)」

 何か理解を超えた返事が返ってきた(笑)
 アキトが自分が何かしたのかなと思い悩んでいるとようやく落ち着いたマグノから通信が来た。

「兄ちゃん。良いかい、あたしゃ艦長だのと言った何か格式張った呼ばれ方をされると体が
 拒否反応おこしちまうんだ、お頭で良いよ。」

 あぁなるほど(ポン)そう言えば思い出してみれば艦長って呼ばれてなかったっけ
 しっかしこれでもかって程に艦長が似合うのに・・・・・ユリカが悪すぎただけか・・・・

「分かりましたお頭。で、勧告の件の方は・・・・・・・・」

「心配いらないよ、ガスコーニュ達にはさっきの内に勧告を送ってる。ま、ガスコーニュは一応、
 念のために残ってるっていってたけどね。あのこのことだ、大丈夫だろう。しかし全く・・・・
 レジクルーの店長だからってそこまでしなくてもねぇ(苦笑)」

 どうやら大丈夫のようである。残っている人もお頭のお墨付きと言った感じなので問題は
 無さそうである。

 しかしアキトの心の中には新しい疑問が生まれた。
 レジクルー?店長?いったい何なのであろうか?格納庫にいるのは整備クルーだと思っていたの
 だが・・・・・・まぁ文化が違うと言うことで名称が違うのだろう。

 自分の心中の疑問にとりあえず自己解決しておいてとりあえず目の前の事を片づけることにして
 おくことにしたようだ。ヴァンガードを通じてDFSを振りかぶり・・・・・・・

 パリィィィィィィィィィィィィィン!!

 そして全員が格納庫に降り立ったとき一人の女性が歩み寄ってきた。

「やれやれ・・・・レジクルーと機関クルー総出でどうにもならなかったモンをあっという間に、
 全くタラークの技術ってのも馬鹿には出来ませんねぇ。」

「いきなりかい、あんたって奴はさ・・・・・・少しは心配しただのそう言った言葉が出てこないの かい・・・・・・・」

「お頭の周りにはメイアもいるし、BCもいる。心配することなんざありませんよ。それにお頭が
 亡くなった時の用意は調ってませんよ、イベントクルーが徹夜します。」

「へいへい、心配してくれてありがとさんよ。」

 どうやらこの人が先程お頭が言っていたガスコーニュという人物らしい。女性の割には大柄な体
できっぷもいい。細い長楊枝をくわえて堂々と立っているその様は女将さんと言ったフレーズが
よく似合いそうだ。

 アキトがそう考えていると突然そのガスコーニュさんがこちらを向きながらお頭と話していた。

「おや、この男がさっき聞いたアキトって言うヴァンガードのアタッカーかい。ふぅ〜ん・・・・
 確かに今まで見てきた男とは一味も二味も違う・・・お頭、もし良かったら力仕事が必要なときが あったら頼んで良いですかね」

 どうやら認めてくれたようである。とりあえずこちらからも話してみることにしてみた。

「初めまして。もうお頭より紹介がすんでいると思いますがテンカワ=アキトです。
 お頭のおかげでこの艦のクルーにしてもらうことになりました。
 色々と迷惑をかけることがあると思いますがどうかよろしくお願いします(ニコ)」

 
 それを見てガスコーニュの反応はと言うと、

 「よし、良い挨拶に最高の笑顔。あんた最高のレジクルーになれるよ!!どうだい、力仕事以外
  でもレジにきなよ、みっちり育ててあげるよ。」

 バシバシと背中を叩きながら笑顔を向けてきた。どうやら気に入られたようだ。
 その後ヒスイも紹介され、こちらも程良く気に入られたようだ。

 で、ヒスイが解放された後アキトはリンクを通じてヒスイに聞きたかったことを聞いてみた。

(ヒスイ、戦いが終わってから俺が着けていたマント、バイザー、プロテクターが無くなっているん だけど知らないかい。それとどうやらDFSとフェザーもないようなんだけど・・・・)

 すると、予想もしていなかった返事が返ってきた。

(ううん、無くなってないよ。だってアキトの中にあるから・・・・・・・)

(は!?ちょっと待って、体の中って一体!?身体の内部に!?)

 さすがに焦るアキト(そりゃ体の中に色々埋め込まれたと思えば仕方ないだろう)

 しかし全くもって冷静に答えるヒスイ

(正確にはアキトの中にあるナノマシン。アキトのナノマシンとコンタクトを取ってみたら私と
 相性が良かったから結合してナノマシンを変形・物質化できるようにしたの・・・・・・・・
 だからアキトが想うとそれに答えて反応するよ。)


(・・・・・・・・・・・・・・・・・)さすがに絶句している。

 つまりアキトの中のナノマシンにペークシスが結合して自分自身で闇の王子様三点セット+DFS
 並びにフェザーを出すことが出来るようになったらしい。


(あ、それからナノマシンを使った治療もできるよ。ナノマシンは自己増殖するから無限に使える
 から、それとディータ達もボソンジャンプって言うのが・・・・・・)


 ふとディータがアキトの方を見るとそこにはまるであちらの世界に旅立ったようなアキトが
 そこにあった。
 何があったのかとりあえず聞いてみることにした。

「どうしたのアキトさん。ディータ達の艦初めてだから緊張してるの?」(心配)

 するとアキトも何とかショックから立ち直ることにしたらしい。返事を返してきた。

「いや、ちょっと自分って本当に人間かどうかって考えててね・・・・・・・・」(やや放心中)

「ふぅぅぅぅぅぅん、何か難しいことを考えてるんだねぇ・・・・・・・」

 やはり、ディータはディータである。何処かピントのずれた言葉を返した。


 するとメイアも声をかけてきた。

「そう言えばアキト、あのマントやバイザーはどうしたんだ。腰に着けていた袋まで無くなって
 いるようだが・・・・・・・・・」

 そう言われるとアキトも見せるしかない。自分でも確認の意味も込めてヒスイに言われたように
 想ってみた。すると・・・・・・・・

              パァァァァァァァァァァ

 ・・・・・・・いや、まぁ見ててびっくりやってる本人はもっとびっくり・・・・・・・

 アキトの全身から青白い光が現れたと想ったら全身にまとわりつき闇の王子様三点セットを
 かたどったと想うと光が物質化し、そして青白く光っていたのが落ち着き始め徐々に闇に呑
 まれるように黒く染まっていった。

 そして光が完全におさまったとき、そこには雰囲気を一変させた闇の王子が立っていた。

「お・・・・おやおや、最近の男ってのは着替えいらずかい?便利なことで。」

 ガスコーニュさん、あんた強いわ。ディータやジュラなんか放心しているのに・・・・・・・

「で、これも男の技術かい?いや、違う・・・こりゃあり得ないことだね・・・・・・
 少なくともあたしが見てきた生体学ってのにはあり得なかった。一体どう言った理屈なんだい?」

 ガスコーニュさん、あんた優秀だわ。横で日頃冷静なブザムが壁に突っ伏してるよ・・・・・

 アキトもそれは自分自身の事ながら聞きたかった・・・・・生体学ではあり得ないか〜〜〜〜〜
 そりゃ確かに遺跡最下層にも素でおりても平気だし、昴気使えばエステバリス落とせるしな〜〜
 でも、その程度だったら北斗だって出来たし、皆もたいして驚いてなかったしな〜〜

 は、まさか、イネスさん(アイちゃん)の作った薬が!!(違います)

 とどめに今はまさに歩く人型決戦兵器か〜〜俺、本当に人間なんだろうか(しみじみ)

 まぁ、今はそんなこと考えていても仕方がないので答えを返すことにした・・・・・・

 「はい・・・実は俺はとそこにいる三人はペークシス・プラグマに取り込まれました・・・・・
  ディータちゃんやメイアちゃん、それからジュラは特に何もなかったようですが俺だけは何故か  今見せたような特異体質になってしまったようです。」

 全くもって嘘偽りのない答えを返した。するとさすがのガスコーニュも肩を震わして押し黙った。

              そして次の瞬間・・・・・・・・

   「まさか、メイアを“ちゃん”付けで呼ぶ奴がこの世にいたとは!!!!」








             はい、前回に引き続いてフリーズ。




            「「「「「「はっ!!!!」」」」」



       さすがに2回目だという事もあって戻ってくるのが早かったようだ。


    まぁ、その後のメイアの行動は前回と一緒だったので今回は省く・・・・・
 
 その後、アキトが俺について何か思わないんですか?といった疑問を聞いてみると、

「別に、あたし達の技術では分からないってだけでそれ以外は他の人間と変わらないんだろ。
 なら気にすることはないさ。あたしとしてもあんたとしても、だろ?」

 と言った実にきっぷのいい返事が返ってきた。それを聞いてアキトは自分の料理の師を思わず
 思い出した。

(この人はホウメイさんと一緒の感じがする、まるでお袋さんのような・・・)

 こうしてガスコーニュとの挨拶も完全に終わったところで一同はブリッジに行くことにした。
 現在の状態の確認のためと何よりお頭は艦における最重要人物である。しっかりブリッジに
 送り届けねばならない。(本人曰く、年寄り扱いするんじゃないよ!だそうである。)
  
 こうして、いざブリッジへと行こうとしたらガスコーニュより横槍を刺された。

「ああ、そうそう言い忘れてましたけどお頭、ブリッジの方なんですがさすがにさっきの戦闘で
 通信系が完全にお釈迦になっちまいました。幸いエズラ達には怪我一つありませんでしたが、
 ブリッジの方は使えなくなっちまったんで今のところだいたいのクルーは展望公園の方に集合
 してますよ。」

 ってな訳で急遽行き先変更、いざ展望公園!!と言うことになった。


 そうして展望公園に行くため何故かディータを筆頭に進むことになった。その道すがら・・・・

「しかしガスコーニュさんはアキトを受け入れてくれましたが他のクルーは受け入れてくれるで
 しょうか副長・・・・・・」

「いや・・・それは難しいと思う。アキト自身は私たちメジェールに対して友好的だが・・・・・
 この艦にはタラークとの戦争によって戦争孤児になったという過去を持つクルーも数多くいる・
 やはりそう言った嫌悪感は捨てられないだろう・・・・・・・」

「やはリ・・・そうですか・・・・私もあった当初は敵対心を抱いていましたから・・・・・」

 と言ったこれからについての深刻な問題をメイアとブザムが話し合っていた。

 その内容からこれからアキトが受けいられる可能性の低さが分かる・・・・・・・・・

 すると横合いからジュラとマグノが声をかけてきた。

「まぁまぁ今考えても仕方が無いじゃない。ジュラはもうアキトのこと気に入ったんだから周りが
 何を言おうが絶対にこの艦から降ろさせたりはしないわよ。」

「ジュラの言うとおりさ、あたしがこの艦のお頭さ。周りが何を言おうが絶対に降ろさせるような
 まねはしないよ。それにメイア、あんたが見込んだ男だろうが。周りが何か言おうが放っておけ
 ばいい。そのうち分かるもんなんだからさ、だろうBC?」


 それを聞いてブザムとメイアは何処か胸の内のもやめいたモノが晴れていく気がした。
 そうだ、誰が何と言おうが自分達は認めている。その真実に変わりはないのだ。

 そして、そうですねとメイアが返事を返そうとしたときディータの底抜けに明るい声が響いた。

「お頭〜〜、展望室に尽きましたよ〜〜!!それじゃ早速開けましょう!!」

 この娘にメイア達の話が聞こえていたかは定かではない・・・・・・・・・・・
 もしかしたら聞こえていていたけれども意味が分かっていなかったのかもしれない・・・・
 いや、この娘は基本的に人を疑うと言うことを知らない娘である。
 だからであろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そうでもなければ普通警戒心0で扉を開けないであろう(駄目ジャン)

「ちょっとお待ち!!少し順序ってもんが・・・・・・・・」

 シュィィィィィィィィィン

 マグノが止めようとするが時すでに遅し、扉は景気良く開いてしまった・・・・・・・

 そして次の瞬間!!

ザッザザザザ・・・・・ジャキッ ガチャガチャン チャッ

 まぁ、此処は一応海賊船なのである。例え女性のみで構成されていようが皆様なかなかの
 修羅場ってモノを経験している。
 大昔の昼ドラにあるような女子更衣室に潜む痴漢を発見して逃げまどう女子高生みたいな反応は
 しない。

 レジクルー辺りから男が一緒にいるというたれ込みがあったのか、もしくは先の戦闘でブリッジ
 クルーから男が一緒に戦っているという情報があったのかは確認のしようはないのだが・・・・

 普通ドアが開いてから二秒も経たない内に完全包囲が出来るモノなのだろうか(汗)

 しかもアキトがいることを認識した時間も含めてだ、恐ろしい早さである・・・・・(恐怖)

「そこのタラーク、現在位置から動くな。もし一歩でも動けば撃つ、これは脅しではない。お頭、
 副長、リーダー、ジュラ様、ディータ、今の内に男から離れて下さい。」

 そうリーダー格の少女が言うと周りを取り囲んでいたクルーの何人かが安否を気遣いながら5人
 をアキトの周りから引き離す。全員なかなかの手際の良さである。

 ン!?・・・・・・5人!?ヒスイは?

 そしてアキトに対して更に銃口を向ける。よく見るとリーダー格の少女のもっている銃は他の
 クルーが構えているリングレーザーガンとは違い今時レトロな火薬式の銃である。
 
彼女の名前はバーネット・オランジェロ。
 何か色々すぎる色の髪を持つヴァンドレッド女性キャラの中で(笑)ガスコーニュに次いで黒髪
 の少女である。年は18歳で服装は何というか変則的なレオタードと言うところか・・・・・・
 レオタードに首元と肩口を隠せる部分を着けて濃紫と灰のストライプにしてやや胸元を強調し、
 ついでに言うならば膝まであるソックス(ストッキング?)がまた何とも言えずに魅力的である。
 後、腰にホルスターを着けている。
 顔は文句なしの美人というかどちらかというと可愛い系に分類される。
 漫画版の方が圧倒的にいいという意見があったので・・・・・・・・・・

 はい、話がそれそうなので戻します。

 それを見て真っ先に口を開いたのはジュラだった。

「ちょっとバーネット!?何やってんの!?すぐにやめなさい!!」

 しかし返ってきたのはそれを否定する返事であった。 

「申し訳ありませんが例えジュラ様のおおしつけであってもそれは出来ません。男は悪魔なのです。
 先程の戦いで私たちと共に戦ったのも私たちから警戒心を無くすための罠かもしれません。」

 それを聞いたジュラが勢い込んで返す前にディータが口を挟んだ。

「非道いよバーネット!!アキトさんはそんなことのために戦ったんじゃないよ。それにアキト
 さんが一緒に戦ってくれなかったらみんなやられてたかもしれないんだよ!!」」

 しかしバーネットはそう言った反発を予測していたのか努めて冷静に返した。 

「それ自体が罠かもしれないと言っているのディータ、この男がさっきのキューブやピロシキの
 仲間である可能性だってあるのよ。」

 アキトがそんな人間ではないと言うことが分かっているディータが「そんな事無い」と言う前に
 バーネットの後ろにいたテンホウが呟いた。

「・・・・でも・・・どっから見ても悪魔にしか見えない・・・・・・・・・」(ぼそ)




            奇妙な沈黙が全体に降りた。




 そう、アキトは先程闇の王子様モードに入ってから戻っていなかったのである。
 黒いバイザー、黒いマント、マントの間から見える瑪瑙色がかったプロテクター・・・・・・ 
 後、トドメの本人は気付いていないかもしれないが全身からの威圧感。
 ・・・・普段のアキトを知っている人ではなければ寒気がすることこの上ない・・・・

 まぁ知らない人から見たら悪魔にしか見えんわなぁ(死神ともいふ)

 で、とりあえずディータとしては・・・・・・・・・・

「ふぇぇぇぇんお頭からも何とか言ってくださ〜〜〜〜いぃぃぃぃ。」

 自分より発言力のある人に後を託した(ヲイ)

 託された(一方的に)マグノはと言うト・・・・・・・・

「テンホウ、あんたはまだ人生経験がまだ十分じゃないから外見以上の観察が出来ないだけなのさ
 まぁあんたにも直に分かるときが来るさ。決して悪魔なんかじゃないってことがさ・・・・・・」

 やはり人生経験がこういう時モノを言うのであろう。人間を表面だけではなく内面を判断できる
 ようになれと言うことを容易く言ってのけた。

「・・・・・?・・・・?・・・・」

 それを聞いたテンホウは意味が分かりかねているようだがマグノは満足そうに頷いていた。

 するとバーネットが勢いごんで話に割り込んできた。

「お頭!!今はそんなことを言っている場合ではありません。今現在の問題は此処にいる捕虜を
 どうするかです!!」

 一パイロットの身分であるバーネットがお頭であるマグノに対して此処まで高圧的な態度をとる
 のは珍しいことである・・・・と言うか初めてである。

 しかし、捕虜扱いって何時のまに・・・・・・一応クルーとして認められたんだが(汗)

 彼女としてもお頭も副長もいなくチームリーダーのメイアまでいない状況の中で対男用の
 リーダーとして祭り上げられて後に引けなくなったのだろう・・・・・・

 色々と出来るためにリーダーに祭り上げられる。器用貧乏の典型的な例だ。

 そう言った状況のために只でさえ男に敵対心のあるバーネットの言葉にも力が入る。

「我々は海賊です。正規にも属さずタラークを狩り、時には同じメジェールをも狩りました。
 それなのに今現在此処にタラークがいる状況はあってはいけない状況です!!
 薄汚い男など百害あって一利無しです!!
 謎の敵との戦いなど私たちだけで十分です!!男など必要ありません!!!
 男などと言うモノは相容れない存在なのです!!」


 そう言ったことをマグノに対して言い続けさすがにマグノが叱りつけようとしたときに
 今まで一言も話していなかったアキトが口を開いた。

「・・・・・・・どうして君達は男をそこまでに憎めるんだい?」

 アキトがいきなり言葉を発したことに驚きつつもバーネットは銃口を向けアキトに怒鳴った。

「勝手に喋るな!!貴様に発言権というモノは存在していない!!」

 本来、発言権と言ったモノはマグノが決めることなのだろうがバーネットは頭に血が上ってそんな ことに気づきもしていない。何というかすごい剣幕である。(それでも可愛いのだが・・・)
 しかしアキトはそれでも話し続ける。

 ちなみに平行世界の方ではヒビキが似たようなことを言ったときには冷静になったのだが
 まだ、興奮冷めやらぬと言った感じだ。何が彼女にあったのやら・・・・・・・・・・


「ある資料にはタラークという星とメジェールという星が出来たのは今より百年すら経っていない
 と書かれていた。つまり植民で出来た星なんだろうと推察される。そしてお互いが植民してから
 数年は交流があったと言うこともかかれていた。しかしある日突然全面戦争が起きた。しかも互  いにクローン技術で人口が増え、長年戦争に耐えうる準備が出来てからだ。
 あまりにもタイミングの良すぎる話だとは思わないかい?」

「貴様!!いい加減にしろ!!」

「つまり、男と女の上層部がどんな思惑があるのか知らないが意図的に仕組まれた戦争なんだよ。」

 アキトの言っていることは正しい。アキトはイカズチの旧艦区の資料室にいたときに
 植民船時代の日記を読んだのであった。

 そして知ったのだ。タラークとメジェールが長年行ってきた戦争の裏というモノを・・・・・



 開けてびっくりパンドラの箱。開いてみると蜥蜴戦争よりも非道い裏がそこにあった。



 蜥蜴戦争でもあったことだが戦争というモノは必ず利潤を求める上層部によって行われ、下は
 それを公開されず表向きだけは良いプロパガンダによって戦場に向かわされるのだ・・・・・


 しかも今回の場合はお互いが承諾してそれでいて男と女に敵対心を覚えさせる以外のことは
 見つからない。全くもって目的が不明なのである・・・いや、それが目的なのかもしれない。

 第一世代であるマグノは圧倒されていた。どう見繕っても第三世代にしか見えない青年が真実を
 語っているのである、無理もない。自分はそれに反発した身であるが・・・・そして、

 「そんなこの場逃れの戯れ言を!!」

 バーネットが異を唱えたときに、後方から重く、何処か震えた声が聞こえた。

「本当のことさ・・・・第一世代の上層部の方が互いに合意の上に始めた馬鹿げた戦争さ・・・・」

 この艦で唯一、歴史の真実を知っている第一世代のマグノであった・・・・・・・・・
 そのことを聞いたクルーが揺れる、お頭の言葉なのだ。信用するなという方が無理である。

 マグノは言葉を続ける。

「あたしはそのときまだあんたらみたいに若かったから話し合いには参加できなかった・・・・・
 けど、だいたいの内容は分かっていたさ、思惑以外はね・・・・・・
 男と女が今まで一緒だったのに地球のためとか言ってドンパチ始めちまいやがったのさ・・・・
 あたしはそれが嫌で尼僧の道に入ったけどさ・・・・」

 初めて明かされるお頭の過去。そしてその大きすぎる理由。


 それを聞いてもバーネットはまだ強情な決意と言っていいモノを胸に秘めていた。

「それがどうした!私たちは今戦っている!!今この艦では奇跡的に死傷者は出ていない、だけど
 何時出るか分からない。だから私たちは男と戦っている。昔のことなど関係ない・・・・・・」

   
 アキトは何処かでこのような会話を聞いたような錯覚に陥りつつ言葉を返した。

「これは第一世代の一握りが星間をも挟んで作り上げたシステムだ。君達はそう言った誤った情報
 に踊らされているだけにすぎない。だから・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 と言葉を続けようとしたところでバーネットが口を挟んだ。

「だから・・・・何だって言うの!!
 何も貴様は分かってない・・・・上層部の決めた戦争?私たちが仕組まれている?
 戦って散っていったのは誰?グランパやグランマ達?・・・・・・・
 違う!!
 散っていったのは第二世代、そして我々第三世代よ!!私たちの大切な人たちよ!!!
 私の両親も貴様ら男に殺されたわ・・・・・お館様が管理されていたコロニーごと!!!!
 それでも昔の戦争だというの!?
 私たちの大切な人たちが殺されていても関係ないというの!?」


 その言葉を聞いたときにジュラが俯いたのを見た者は誰もいなかった。
 そしてアキトはこの状況が過去にもあったような気がして言葉を返さなかった。

 そしてバーネットがアキトがかつて言った言葉を再び紡いだ。

「何が正しいのかなんてのは私には分からない・・・・
 でももう私たちは巻き込まれてしまっている・・・・・
 だったらこれはもう【私たちの戦争】なのよ!!!!!!」

 その叫びを聞いた時アキトは思いだした。この子は以前の自分と同じ事を言っていると。
 かつて最初の時代の時、自分が九十九と戦っているときメグミに対していった言葉

【これはもう俺達の戦争なんだよ!!】

 そのときの自分は月面食堂の女将さんを失った憎しみのまま行動していた・・・・・・・
 その結果はどうだったであろうか、結局メグミを悲しませて後には後悔しか残らなかった。

 そして今、この子は同じ過ちを繰り返そうとしている。
 憎しみというモノをさらなる憎しみでつぶそうとしているのだ・・・・・・・

 そして、その憎しみが分かってしまったアキトは、

「アキトさん・・・・・・・泣いているの?」

「え・・・・・泣く?」

 ディータに言われて自分の頬に手を当てた。そこには久しぶりの涙の感触があった。
 自分でも意外だった・・・・
 しかし涙を拭おうとせずバーネットに再び話しかけた。

 さすがにバーネットも涙を見て動揺する。しかしもう戻れぬ所まで来てしまっているのだ。
 お頭とまで対立してしまったのである。
 此処まで来たら徹底的に行くところまで行くしかない。

「確かにもう君達は戦争というモノをしている、それは事実だ・・・・・・
 だけど、君が憎しみをもっている限り戦争は終わらない、いや、終わることが出来ない。
 君の住んでいたところを襲った奴と君は変わらない
 ただ掲げるプロパガンダは違っていてもそれは只の復讐なんだ・・・・・
 やられたからやりかえす・・・・君はそれを正当化しようとしているだけなんだ!!
       
 それを聞いたバーネットは考えるという行動より怒りの方が勝った。
 自分のしてきたこと、人生の全てが否定されたように聞こえたからである。

「男に一体何が分かるって言うのよ。なったこともないくせして!!」

 そのときバーネットは反射的に安全装置を外していた引き金を引いてしまった。

 ダンッ!!

「馬鹿ッ!!」「アキトさん!!」「何て事を!!」「バーネット!!」

 わずか5Mしか離れていない近距離からの発砲。避けることは出来ない・・・・・・・・

 その場にいた誰もが吹き出る血飛沫と崩れるアキトを予想した・・・・・・・・

 そして引き金を引いてしまったバーネットは周りの悲鳴がまるで遠くから聞こえるように感じた。

 感情的になっていたとはいえ、人を撃ってしまったのだ。只の男だったらまだ問題はなかった
 であろう、しかしアキトは何故かお頭から信頼を受けていた。もうこの艦にはいられない・・
 そして、何よりも自分のために涙を流してくれた人だったのである。
 自分でも意外なことだったが心が揺れた。
 両親が亡くなってからは仲間というモノは出来ても決して自分のためには泣かなかった。
 ジュラを除いて・・・・・・・
 そしてそのジュラもまたアキトのことを気にかけていた。
 もう全てがお終いである。


 そして涙が流れ、深い後悔が心を蝕もうとした次の瞬間、

 
 歓声がわき起こった


 そしてその歓声が耳に入り、バーネットが顔を上げたときその目に映ったモノは、

「ふぅ、まさかディストーションフィールド発生装置まで取り込まれていたとは・・・・・・・・
 そのおかげで助かったんだけど・・・・・・」(汗)

 傷一つ追ってないアキトの姿であった。涙で視界がぼやけているせいかもしれないがアキトの
 周りが少し歪んで見える。

 そしてそのアキトは何事もなかったかのようにバーネットに話しかけてきた。

「バーネットちゃん、だっけ?確かに俺は君達の背景は知らない・・・・・
 だけど君は俺になったこともないくせしてっていったよね?
 なったことなら・・・・・あるさ。
 俺も昔大切に思っていた人が殺された後、敵に対して君と同じ台詞を吐いた。
                 ・
 そのときの俺は自分が皆を守っていると勝手に思いこんでいた。
 でも・・・違った・・・・俺は只、自分の理屈を貫きたかっただけなんだ。
                 ・
                 ・
                 ・
 そして結局守っていたと思っていた人は遠ざかっていってしまった。
 結局憎しみはさらなる憎しみと悲しみしか呼ばないんだ。それを分かって欲しい。」

 その言葉を聞いたときバーネットならず全員の胸に共通するモノがあった・・・・・・

 自分達は生きるために海賊行為をしてきた。これは生きるためには仕方のないことである・・・
 人という物は自分は他人よりも生きる権利があると思っているところがある。
 だが、それは生存本能の一つであるため人間である以上は必要なのだ。
 去れども自分達は敵から物資を略奪したときに何を考えていた?
 当たり前のことだと考えていなかったか。自分達が生きるどうのこうの以前にいい気味だと
 思っていなかったか。

“ 自分達がこういったことをするのはおまえらのせい、自業自得だ”と思っていなかったか。
                

 全員が気付いてしまった。自分の心の中の闇の部分に・・・・・・・・・・・・
 醜く、相手を蹴落としても罪悪感の湧かない自分に・・・・

 そして、全員が自己嫌悪に陥る中、バーネットがアキトに尋ねた。

「だったら私たちはどうしたらいいの!?もう引き返せないのよ!!」

 バーネットのその言葉は全体の意見なのか、それとも自分の状況を表したモノなのか・・・・・

 するとアキトはバイザーを取り、少し悲しそうな微笑みをしながら話した。

「決して同じ過ちを繰り返さないことさ。これは言葉にしたら簡単なことのように思えるけど
 実際には難しい、そうすればいくらでもやり直せるさ。・・・・絶対に・・・・・・・・
 それに気付いた後、俺もやり直すことが出来た。・・・完全にとはいかなかったけどね・・・」
 
 そのときのアキトの脳裏にはメティを始めとする救えなかった人達のことが思い起こされていた。
 時を越え、前回は会わなかったとはいえ守れなかった人々を・・・・・・・

 そしてその言葉を聞きながら、バーネットは初めてアキトの素顔を見てみる。

 バイザーを外して微笑をしているアキトの顔はもう悪魔には見えなかった。
 全てを包み込むようなその微笑み、全ての罪をはなせるようなまなざし・・・・
 そして、見ていてこちらが悲しくなるほどの何処か悲壮感をもったその瞳・・・

 そのときにバーネットは悟った。
 此処にいる人は自分より遥か多くの悲しさを味わってきたこと。
 そしてその全てを乗り越えてきたこと。
 決して口だけではなかったのだ、全て心の底からの本心だったのだと。

 同じくテンホウも理解していた。
 お頭が言っていた「決して悪魔じゃない」ということを・・・・・・
 外見など人を見る上では必要のないことを・・・・・
 そして、外見だけで他人を判断してしまった自分を恥じた。

 そしてそのことはこの場にいるクルー全員に心の底から伝わった。
 あるクルーは無意識に涙を流し、信仰深いクルーは心より懺悔した。
 
 
 その中でも一番バーネットが心を痛めていた。

 自分の方が何も知らなかったのに只自分の意見を正当化していたこともある。
 そう言ったエゴイズムを正しいと思っていた自分を責めている分もある。
 
 しかし彼女がもっとも心を痛めていたことは、

 初めて出会ったというのに自分のために涙を流してくれ、自分を助けようとしてくれた人に
 何をしたのか?
 
 発砲したのである。撃ってしまったのである。

 自分の意志をコントロールできずに感情の赴くままに引き金を引いてしまったのだ。
 幸い、奇跡的にアキトは無事だった(DF発生装置のおかげで)
 しかし撃った事実に変わりはない。

 そのことに心を痛め、バーネットは涙を再び流しアキトに譫言のように謝っていた。

「・・・ック・・ヒック・・ごめんなさい・・ごめんな・・ヒック・・・ごめ・・・私っ・・」

 謝ろうとしても嗚咽の方が出て言葉にならない

 それでも尚、謝ろうとしたとき不意に頭の上に温かく柔らかな感触を感じた。
 顔を上げるとアキトの手のひらが自分の頭の上にのせ、撫でていることが見えた、
 少し戸惑いつつもその感触の良さにゆだねる。
 頭を撫でてもらうというのは何年ぶりのことだろう。
 頬を染めつつも、そのまま嗚咽がおさまるまで撫でてもらっていた。

 ちなみにアキトはこの行為について無意識にやっているのはご愛敬というものであろう。(笑)

 そして完全に嗚咽がおさまった後、再びアキトが口を開いた。

「バーネットちゃん、別に謝ることはないんだよ。俺も君達の過去を考えないで・・・・・・
 そう、古傷をえぐってしまった俺に罪があるんだから・・・・・・・・
 だから俺はそう言った意味では撃たれても仕方のないことをしてしまったんだよ・・・・ 
 謝らなくちゃいけないのは俺の方だよ・・・・・・」
 
「違う!!謝らなくちゃいけないのは・・・・」

 そうして今度は自分が悪かったと責任の被り合いをしていたら、突然陽気な言葉が聞こえた。

「おやおや、ヒスイが慌てて走ってくるから何だと思ったら・・・・またすごいことに・・・・
 皆揃って暗い顔になっちまって・・・・・・
 ほら、スマイル!スマイル!レジクルーにゃいつも言ってるだろう?笑顔を絶やさずに!!
 沈んだ顔じゃ、誰だって笑顔になんないよ。珍しくディータまで。
 アキトもさっき誉めたのを取り消しちまうよ、バーネットもほら笑って。」

 ガスコーニュであった。実はヒスイは今まで扉が開かれる直前にこのような事態が起こることを
 あらかじめ予測していて、伝える間が無さそうだったのでもっとも適当な手段、
 そう言ったことを収められそうな人物、そう、ガスコーニュに連絡しに言ったのだ。

 そしてガスコーニュは原因でありそうなアキトとバーネットに話しかけた。

「アキト、どうしてこうなっちまったんだい?バイザーは外したみたいだけど・・・・
 バーネットも珍しく目の下腫らしちゃってさ。まさかアキトあんたこの娘に!!」

 その言葉を聞いてアキトとバーネットがうろたえた。あらぬ誤解である(近いが)
 慌てて訂正にかかる。

「誤解です!!俺はバーネットちゃんには何にもしていません!!」

「そうですガスコさん、私の方がアキトに!!」

 その言葉を聞いてガスコーニュが満足そうに笑いながら話す。

「ほらほら、そんな冗談に本気にならなくてもいいさ。
 息ピッタリに会わしてそんなに焦ってさぁ
 それにしても
“アキト”に“バーネットちゃん”かい、何だいもう仲良くなったんじゃないかい。
 バーネット、あんたは男に対して人一倍敵対心が強いから一番心配していたんだけど・・・・
 そんな心配は無用だったみたいだねぇ
 それと、何回言ったら分かるんだいガスコじゃないよ、ガスコーニュ!!」

 その言葉を聞いてバーネットは気付いた。
 アキトと何の違和感もなく一緒にガスコーニュに対して喋っていたことを・・・・
 そしてもうアキトに対して敵対心なんて微塵も残っていないことを・・・・・・・ 
 何よりいつの間にか「アキト」と呼んでいたことを・・・・・・・・・・・・・・
 ガスコと言うことはいつものことなので強制排除(笑)


 そしてその事実に頬を染めていると、再びガスコーニュがアキトに声をかけた。

「そういやアキト、あんた自己紹介は終わったのかい?駄目だよしっかり自分のことを伝えるとき
 は自己紹介しないと。」 
 
 その言葉にアキトは気付いた。そう言えば自己紹介をしていなかったのである。
 ・・・・・て、言うか出来る状況ではなかった。
 マグノの方を見るとやりな、と目で伝えてきたので、本日何回目かの自己紹介をすることにした。

「はい、確かにその通りですね。それでは自己紹介をさせてもらいます。
 名乗り遅れましたがこの度お頭にクルーとして迎えてもらった
 テンカワ=アキトです。
 呼ばれ方はアキトの方が呼ばれ慣れていますが好きに呼んでくれて構いません。
 もうすでに皆には迷惑をかけてしまいましたが
 これからもまた迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします」(ニコ)

 【アキトスマイル】・・・それは女性限定で効力を発言させる究極の必殺技である。
 本人は無意識でやっているのだがくらった相手はことごとくアキトにおちる・・・

 今までの話の内でもうアキトに対する敵対心はとうの昔に失せていた・・・・・・
 そんな状態でアキトスマイルが直撃すればどうなるか?
 しかも今まで争っていたために無意識にバーネットにスマイルが集中した場合には!?

(あ・・・何?・・心臓の鼓動が早くなっていく・・まともにアキトの顔が見られない
 どう・・して・なの・・・・・ア・・キト・・・・・・){真っ赤}

 素晴らしく効果絶大である!!
 すでに瞳が潤んで、心臓の鼓動は速まり、首筋まで真っ赤である。
 このまま湯気が出てもおかしくはない(笑)

 他のクルーは後ろで顔が見えなかった者や、瞳が潤んでいて見えなかった者が多かったので
 被害はバーネットのみだったようだ。

(テンカワ・・・アキト・・・・なんだろう、この笑顔をもっと見ていたい・・どうして・・・)

 もとい、いるところにはいるようだった。テンホウちゃんが一歩目を踏みだしております。 
 このままでいくと、たぶんだがまだ密かにいるだろう・・・・・
 私はなるべく全員ハーレムは作りたくないんだが・・・・
 
 そうしてアキトの自己紹介のおかげでしばらくあっちの世界に行きかけたバーネットだったけど
 ガスコーニュの次の一言で現世に戻らされた。

「良し、なかなか言い自己紹介だったよアキト。そんじゃぁ続いてバーネット、あんたもやんな!」

「えぇ!!私もですか!?」(驚)

「当然さ、あんたもやっとかないと不公平だろ。代・表・サ・ン」(含み笑い)

 ガスコーニュの勝ちである。彼女はバーネットが皆に乗せられてリーダーになったことを
 見抜いていたのであった。だから代表者が自己紹介をしろと言っているのである。
 てなわけでバーネットの自己紹介が始まった。

「それでしたら・・・・・・コホン(真っ赤)
 私の名前はバーネット・オランジェロ。
 艦の中での役割はアタッカー、ドレッドのパイロットをしているの。
 えっと、趣味は銃のコレクションで、中でも火薬式の銃を集めていてその中でも・・・
 ってこんな事はどうでも良くて・・・・えとえと(アセアセ)
 私も今みたいに迷惑をかけるかもしれないけど・・・・・・・・・
 これからよろしくね、アキト(真っ赤)」

「ああ、こちらこそよろしくねバーネットちゃん!!」(アキトスマイル一点集中)

 ヒュ〜〜〜〜ゥゥゥゥ・・・・・・・ボムッ
 バーネット花火が打ち上げられたがアキトは気付いていない(気付けよ)

 ガスコーニュは気付いているのだがあくまで放っておいて全体に声を張り上げる。

「さぁ〜て、代表のバーネットの自己紹介もすんだ!あんま時間はとれないけど他にもアキトに
 自己紹介したいって娘はいるかい?一応まだ紹介する娘はいるんだから控えめにね。」

 その声を聞いて我先にクルーが詰め寄ってくる中で、艦のクルーの中で最も意外なクルーが
 アキトのマントの端をつかんできた。

 アキトが振り向いてみてみるとそこには先程自分の姿を悪魔と言った少女がいた。
 そして儚く消えそうな声でアキトに話してきた。

「あの、初めまして・・・・さっきは悪魔って言ってごめんなさい・・・・」(赤)

 恥ずかしがりながらも勇気を振り絞って話しかけてくる姿にアキトは心うたれた。
 この世界は良い世界かもしれない・・・・・・・・・
 アキトはふとそんなことを考えた。
 完璧に性格が変わって独占欲の強くなった電子の妖精sはいない。
 いつまでもガキの性格で自分を王子に当てはめようとしてくる暴走ぷっつん艦長もいない
 微笑みながら青紫色の注射を片手に迫ってくるドクターもいない
 その他いきなり同盟をくんで婚姻届持ちながら迫ってくる人達もいない。

    ・・・・・・・・・・・・平和だなぁ・・・・・・・・・・・・・・


 そう言った回想に浸りかけたときテンホウが不安そうに声をかけてきた。

「あの・・・どうしたの?・・・・」(不安)

 その声で我に返りテンホウに謝罪の意味も込めて話しかける。

「あぁ、ちょっと考えることがあってね。ごめんね・・・・え〜と・・・・」

「テンホウ・ミホソラです・・・ブリッジではサブオペレーターと分析をしています・・・・
 これからよろしくお願いします・・・・アキト・・・さん」(///)

「うんありがとう、こちらこそよろしくねテンホウちゃん・・・でいいかな?
 多分俺はヴァンガードで出撃することになりそうだから、
 そのときはサポートをお願いするね。」(再びアキトスマイル一点集中)

「・・・・・・・(コク///)・・・・・・・」(真っ赤)

 アキトスマイルは不滅である・・・・整備班の班長が言った言葉である・・・・

 ウリバタケさん、あんたは間違っていなかった。

 テンホウちゃんも落ちる一歩手前さ!!
 まぁ漫画版でもヒビキに好意を持っていたみたいだが無理はないが・・・・・

 一番やりそうになかったテンホウがしたことでかえって踏み出しにくくなったのかそれ以上に
 自己紹介しに来るクルーはいなかった。
 その状況をしっかりと見て取った後、再びガスコーニュが声をあげた。

「はいはい、アキトの紹介が終わったところで続いてお頭からの新しいクルーの発表にうつるよ、
 そんじゃあお頭、さっさと紹介してあげましょうよ。
 もう待ちくたびれちまってるって感じですよ。」

「おやおや、ごめんねぇ、今までいろいろあって待ちくたびれちゃったかい?」

「ううん、もう皆が笑っているからそんなことはどうだっていいの・・・・・・
 ・・・・・・・・それに、もう一つの可能性が見えたから。」

     そのときようやく他のクルーもヒスイの存在に気付いた

     ・・・・・・・・・・・そして・・・・・・・・・・・


「「「「「「きゃ〜〜〜、可ぁ愛ぃいぃぃ〜〜〜〜〜〜っ」」」」」」」(はあと)

「ね、ね、ガスコさん!!この娘誰なんですか!?」「妹にした〜〜い」「萌えるわぁぁ〜」

 いやぁ、さすがに女性しかいない星メジェールの住人達・・可愛いモノに目がない・・

「はいはい、皆落ち着きな。今あたしが紹介するからさ・・・・・・
 この子の名前はヒスイ、ちょっとした過去をもってるけどそれは追求しないで欲しい
 見ての通りメジェールさ、だけどアキトによく懐いていてアキトの妹分だと考えてくれてくれ。
 まだ働く部署は決めてないけど皆仲良くして欲しい。
 特にテンホウとパイは年が近い分何かと教えてやってくれないかい。以上!」

 その言葉が終わると同時に・・・・・・・

「これからよろしくね!ヒスイちゃん」「うわ〜近くで見るともっと可愛い〜〜」etc・・・・・

 と言ったまるでお姫様でも見るような好奇の視線が降って湧いた。

「え・・・・えっと・・アキト!?・・・・・」(困惑)

初めて大勢の人が話しかけてきたので思わず慌ててアキトを呼ぶヒスイ。
 しかしアキトの方も今がチャンスとばかりの自己紹介の山にあって身動きがとれなくなっている。

 大団円の中でディータだけが不思議な感覚を覚えていた・・・・先程のアキトの言葉・・・・
 それを自分は知っていたような気がするのだ・・・・言葉ではなく、そう心から・・

 こうして、紆余曲折が有ったがアキトは無事クルーとして認められた。めでたしめでたし。



 え・・・最初の修羅場は何処に行ったんだって?それはこれからですよ・・・・・・



 一段落がすんで皆が幸せ気分になっているときに突然ブザムに通信が入った。

「すみません、副長。こちら保安クルーですがよろしいでしょうか?」

「ム・・・何か問題があったのか?」

 ブザムが聞き返す、ようやく一段落すんだ所である。また一騒ぎ有るのはごめんだと
 考えたからである。
 するとあまりにもあまりな返事が返ってきた。

「はい・・・実は男のことなのですが・・・・」

「何?アキトのことについてはもう艦長もクルーと認めたし、我々も認めた。文句は受け付け
 ないぞ。」

「いえ、そちらのアキトという人については我々にもチャンネルがつながっていましたから
 先程の話を聞き、我々も文句無しで認めています。」

「フム・・・それでは問題はないように思えるのだが・・何かあるのか?」

「有るもどうも大有りです。副長は覚えてらっしゃらないのですか?アキト以外にもこの艦には
 男が乗っているのですよ!」

 それを聞いてブザムはようやく思いだした・・・そう言えば機関部の方と保安部の方で一人ずつ
 男が発見されていたことを・・・・・・・
 それでも一応威厳を保ちつつ尋ねてみる。

「いや、すまない、こちらのことで手一杯になっていてな。それでその男達が何か問題行動を
 起こしたのか?」

「いえ、それが機関部の方で発見した男には敵対心が感じられず、更に機関クルーの怪我の手当を
 していたなど、好意的な態度があり機関クルーのパルフェが先程のそちらでの話を聞いて、
 完全に敵対心が消えたようで『絶対この人もクルーにしてみせるわ!!』
 と宣言してその男と共にそちらに今現在向かっています。」

「何も問題のないと思うが・・・好意的で更に医療の知識を持っているのならばありがたい。
 さすがにパイウェイだけでは限度があったからな。」

「はい・・・・確かにそっちの方は私どももむしろ微笑ましく見ていられます。ですが・・・・・
 もう一人の方は・・・・・・・もう耐え切れません・・・・・・・」

 日頃何が起きても冷静に物事を対処している保安クルーが耐えきれないと行っている。
 しかも信じがたい事だがうっすらと涙までにじんでいる。
 何事かと思いブザムがやや緊張して尋ねてみる。

「一体何が起きているのだ?その男はどんな奴なのだ、必要ならば化学兵器を用意できるが・・・」

「化学兵器以前にもうこの艦から捨てちゃって下さい!!泣くわ、喚くわ、暴れるわ
 全員でリンチしても保安クルー奥義【瞬○殺】を喰らわしても生きているんです!!」(涙目)

 そのことを聞いたブザムはさすがに絶句した

 ・・・どんな奴やねん・・・マジで思った・・・

 更に保安クルーはブザムに訴える。

「それに、泣いても意味がないと思ったのか・・今度は私たちにおべっかを使ってくるんですよ!!
 信じられます!?ないた烏がもう笑ったどころの騒ぎじゃありませんよ!!
 しっかも下心見え見えで取り入れられたいと思っているのか・・・
 思いだしただけで背筋に寒気が走りますよ!!
 もう耐え切れません!!どうか殺人許可を!!!」(途中目が据わってきている)

 殺人許可を求められてもブザムとしては困る。折角、大団円となっているのに
 そんな後味の悪いことなどこの艦内で起こして欲しくない・・・・・

 そしてブザムの取った決断とは!!

「・・・・と言うわけで今からこの仮ブリッジにその問題の男が来ることになった。
 今話したとおりの男のようなのでそんな男を見たくないクルーは各々の持ち場に戻って欲しい
 以上だ。」

 とりあえずこの仮ブリッジにもってくることにした。とりあえずお頭にその男を見せてから
 対処にうつることにしたらしい。

 それを聞いたクルーの皆様はと言うト・・・・・・・・・

「ええぇ〜保安クルーでも持て余すような奴なんて存在するの!?」

「でも実際存在するから此処にくるんじゃないの、見てみたいと思う?」

「究極の怖いモノ見たさよねぇ」

 おおむね興味はあるようだ・・・バートをモニターで知っているブリッジクルー以外はだが。

 そのブリッジクルーのアマローネが口を開いた、とって〜も嫌そうに。

「皆やめておいた方がいいわよ・・・私たちはモニターで見たことがあるけど・・・・
 アキトの話聞いていても思わずレーザー構えちゃうわよ・・まぢで・・・」

 更にベルヴェデールが同じくとって〜も嫌そうに

「えぇ・・・アキト見た後にあれはきついと思うわ・・・差が有りすぎるどころか絶対に好感が
 持てないと思うから・・・・・」

 と続き、最後にセルティックが半泣きで訴えた。

「嫌だよ、此処にあれがやってくるなんて・・・私、嫌でもお仕事場が臨時で此処だから
 動けないよ〜〜嫌だよ〜〜誰か変わって〜〜〜〜」(途中本泣き)

 さすがにその見たことのある者の説得力の有りすぎる話を聞いて思わず全員が数歩後ずさる
 それでも一人が無理に笑顔をつくって言った。

「で・・でもさ、ほら人間一回しか見てないのにその人全体を決めつけるのはやめておいた方が
 いいじゃん、皆さっきのでそれは理解したでしょ。
 しかも一回も私たちは見ていないんだしさ・・・・・・」

 そのときいつもは笑顔のエズラが珍しく神妙な顔で呟いた・・・・・

「やめておいた方がいいと思うわよ・・・少なくとも私はそれでアキトさんに出会うまで男に
 対する嫌悪感が強まっていたから・・・・・・・・・・・・・」


 その呟きは言葉の通り決して大きな声ではなかった。
 しかし決して有無を言わせないような強い何かが込められていた・・・・・・
 全員が固まる・・・そして・・・・・

「見ていないんだったら・・・・見ますか?・・・通信回線オン・・クルー検索・・たしか・・・
 保安クルーの・・・・・」

 テンホウが通信回線を開き保安クルーの発信を頼りにその問題となっているバートを映し出す。

 そしてそこに映っていた問題のバートはと言うト・・・・

「いやぁ実は私男の中でも屈指の策略化でして、将来は参謀長とまで言われた身でありまして、
 此処で私がこの艦に乗ったのも何かのご縁!!私のこの頭脳を持ちまして必ずやお役に立って
 見せましょう!!」

「えぇい!!五月蠅ぁいわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」(怒)

 ドバキィィッ(某シティハンター相棒風に)

 体をくねらして揉み手をしながらいかにも営業用な笑顔を張り付けて誰にでも見破れるほらを
 ふいて当然の如く殴られていた(ハンマーで)

「あいたたた、いやぁさすがに素晴らしい強さです。さすが保安を司る・・・・・」
 
 しかしすぐに復活して更に自分をアピールしようとする。
 保安クルーももう嫌と言った感じである(心の中では号泣)

 そんな光景を見た皆様はと言うト・・・・・・

「そうだ!私ペークシスの以上の調査をしないと!!」「あ、あたしも」「待ってよ〜〜」

 そのほかそれぞれの理由を付けてブリッジクルー他数名を除いて決死の形相で脱兎(笑)

    ・・・・・・・・・・・百聞は一見にしかず・・・・・・・・・・・

       ・・・・その言葉を生み出した人は偉いと思う・・・・
      
   ・・・・・世の中にはそれが当てはまる事柄という者が存在するのだから・・・・・

  見るとさっき人を一回見ただけで判断するのはどうかと言っていたクルーも逃げている。


 そんな皆が逃げていく光景を見ながらアマローネ、ベルヴェデール、そしてセルティックは
 天使のような悪魔の微笑みと共にそっと静かに深く呟くのだった。

「「「ふっ甘いわね・・・・今あいつがいた場所は中央部の廊下・・・
        ・・・そして今あいつはこっちに向かってくる・・・
       ・・・・そして展望公園から中央部までは一直線・・・・
          ・・・・せいぜい派手に衝突しなさい・・・・
   ・・・私たちの苦しみを味わうのね・・・うふふふふふふふふうふふふふふ」」」

   言葉にこそ出してないもののエズラやテンホウも表情が物語っている。

    ・・・・・・・・その不吉な予言から数分後、モニターにて・・・・・・・・・

「いやぁぁぁ、何でこの通路にいるのよぉぉ!?」「止まって止まって押さないでぇぇぇぇ!!」

   と言った素晴らしく阿鼻叫喚な出来事(笑)が起きたのは言うまでもない。
     ちなみに全員踏みつけるといった行動でその危機を回避した。(100名以上が)

        それから更に数分後・・・・問題の奴が到着した

「此処が仮設のブリッジだ・・・さっさと入れ!!」

 ゲシィッ    ズサササササササササッ

「それでは私はこれにて失礼させてもらいます」(良かった〜やっと終わったよ〜)

 こうして一人の保安クルーの不幸は立ち去った・・・しかし次に苦しむのはブリッジクルーの
 番であった・・・・・
 何かもうすでに諦めモードになっている人もいる・・・・・

「あぁぁぁ・・・とうとう来てしまったのね」(落胆)「私何でブリッジクルーなんだろう・・・」

「・・・(もそもそ)・・・」(対男用着ぐるみ装着中)「さて・・と、ガスマスクは・・・と」

「・・・・展望公園全体の換気システム異常なし・・念のため殺菌システムは・・・・・」

 脱力しているアマローネとベルヴェデールを尻目にセルティック、エズラ、テンホウは
 すでに用意は万端と言った感じである・・・・用意がまだ出来たブリッジクルーは・・・・・

 ついつい残ってしまった人々はと言うト・・・・・・・・・

「あれも・・・・アキトさんと一緒の宇宙人なの?」「あれをアキトと一緒にするな・・・・」

「ねぇバーネット・・この間見せてくれた対化学兵器用のガスマスク無い?何か一分一秒たりとも
 同じ空気吸いたくないんだけど・・・・・・」

「申し訳有りませんジュラ様・・さすがにこのような自体は予測していませんでした・・・
 空気清浄システムの方は正常に働いているのでそれで何とか・・・・」

「あ〜あっと。こんなに間抜け面の男が士官候補になるようじゃぁタラークも長くないねぇ・・」

「(何かを含みつつ)親の七光りかもしれませんよ、お頭。」

「まぁ多分BCの言うとおりでしょう、少なくともあんなのは前線で何の役にも立ちませんから」

「初めて・・・見た・・・どんな希望も持てない人間を・・・・・・」

「どんな希望もないって・・・」(汗)

 ちなみに上からディータ、メイア、ジュラ、バーネット、マグノ、ブザム、ガスコーニュ、
 ヒスイ、そしてアキトと言った順番である。

 そして何だかな〜と言った雰囲気を醸し出しつつバートの処理方法を決めることになった。 

 まず一番最初に出た意見は・・・・・

「保安クルーでも対処しきれないって言う男なんだったらいっそのこと後腐れの無いように死刑に
 するのが一番だと思います」「あ、それ賛成〜」「うん、それが一番よねえ〜」

 と言った素晴らしく最終手段的な意見だった。

 さすがにそれはいきなりすぎると言う意見によりとりあえずは保留となった。

 しかしそれに続く意見は無く、いっそのこともう死刑にするかという動きになっていった。

 それを聞いて困るのはバートである。先程ここに来たドゥエロは見事この艦のクルーとして
 迎えられたという。それなのに自分だけ死刑というのはおかしくないか?

 そう思い、何とか自分を助けてくれそうな人間を捜す。すると女の中に一人の男を見つけた。

(よっしゃ〜〜ラッキ〜〜!!多分この男もクルーとして迎え入れられたんだな。だったらこの
 僕の気持ちが分かってくれて手助けしてくれるかも!!)

 そう思うが早いかバートはその男にアプローチをかけることにした。

「申し訳有りませんがそこにおられる黒衣のよく似合うお方、
 私バート・ガルサスという者で士官候補生の中でも特に優秀な成績を誇っていた者です。
 此処で巡り会えたのも何かのご縁、同じイカズチに乗っていた者同士ではありませんか?
 私もクルーにしてもらえないかそこにおられるメジェールの方々に呼びかけてはくれませんで
 しょうか?是非とも私の能力を役立てたいのです。」

 まぁ、喋る喋るほらまで吹きながらよく喋る。だけどやっぱり・・・・・・・・

「貴様をアキトと一緒にするな!!」「勝手にしゃべんないでよ!!」

 当然こうなるわなぁ・・・ま、だけどそろそろ救いの手でも差し伸べるか・・・・・

「まぁまぁバーネットちゃんもジュラも落ち着いて・・・それで俺にどうして欲しいって?」

 救いの手が入ったことで更に饒舌になりだすバート。

「あぁ、ありがとうございます。まるで貴方は天使のようです、こんな私の言葉を聞いていただけ
 るとは・・・・」

 聞いているだけで背中が痒くなるような台詞を吐いた後バートがちょっとした地雷を踏んだ。

「私に許されるのでしたら是非ともその神々しいお顔を見せていただけないでしょうか。」

 その言葉を聞いたアキトは別に構わないがという感じでバイザーを取った・・・・・・・

 しかしアキトは気付くべきであった・・・自分がイカズチで何をしたかと言うことを・・・

 バイザーを取ったアキトの顔を覗き込んだバートの顔がどんどん青ざめ、そして・・・・

「ぎぃゃぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!しゅ・・しゅ・・・を・・殺した・・あの!!!」
      
 その台詞と共に気絶。

 それはそうであろう・・・後に生き残ったクルーの口コミにより【タラークの悪魔】として
 タラークの歴史教科書に載るような人物を見てしまったのだから・・・

 しかしそんな背景を知らない人々の反応は至って冷たかった・・・・

「何でアキトの素顔見て気絶するわけ?」「タラークの美的感覚ってずれてるとか。」
「しっかしこんなとこで気絶されてもねぇ・・・どうするものか・・・」

 あれ、救いの手だったはずなのにおかしいなぁ(確信犯)

 そんなことをしていたらいきなりそれは起きた!!

 ヴワァァァァァァァァァァァァァッアアアア!!

「ふぇ、地震!?」「ディータ、宇宙に地震というモノは存在しないぞ・・・・・」

 轟音と共に室内が揺れた・・いや違う、艦全体が揺れている・・・艦が突然動き始めたのである。

 室内の揺れ自体はすぐに収まったものの艦は依然として動いている・・・と言うかどんどん加速
 していっている・・・まるで何処かへ向かうように・・・・
 そんな状況にマグノが艦内制御担当のテンホウに声をかける。

「テンホウ、こりゃ一体何事だい?何処かで誰かが艦を動かしているのかい!?」

「いえ・・・違います・・艦内植物園周辺から高いペークシスの反応が見られます・・・
 そこでの生体反応はありません・・・ですが確実にそこから艦を動かしていると思われます・・」

「何だってことだい・・・これもペークシスの異変だって言うのかい」

 それを聞いたアキトはそのペークシス自身・・・ヒスイにリンクを繋ぎ話しかけた。

(ヒスイ、一体何が起こっているんだい?)

(多分自動保護システムの方が自動修復を求めているんだと思う・・・・そっか忘れてた・・・
 私が出てしまったら誰かが手動で動かさなきゃいけないんだ・・・)


(手動!?この艦にそんなことが出来る人はいるのかいヒスイ。)

(うん・・・いるけど・・女の人では駄目・・・男の人じゃないと動かせないようになってる・・)
            
(どうして?)

(アキトはさっき体感したと思うけど・・・私と融合したモノ同士は必ずリンクする、五感をも・・
 即ち動かそうとしたらこの艦の痛みに耐えれるような人が必要なの・・・・)


 確かに女性にはきついであろう・・・今現在艦は、隕石にぶつかりながら進んでいる
 多少は緩和されるであろうがやはり厳しいモノがある・・・・・・

 そんなことを思っていたらヒスイがちょっとしたアイディアを出してきた。

(ねぇねぇアキト・・・そこにあるそれ使えるんじゃない・・殺しても死ななそうだし・・・・)
     
(あ・・・成る程・・・まぁ、死ぬよかましだろう・・お頭にその旨報告してみるか。)

 て、な訳でそのことをうまく重要な部分を上手く隠しつつ報告してみた。

「・・・・即ち、憶測にしかすぎないのですがペークシスの影響によってこの艦は従来の舵システム ではなくなり、艦と直接リンクするようなシステムになったと思われます。
 この憶測に裏付けをさせてもらうならば
 
・俺のヴァンガードやディータちゃん達のドレッドはペークシスに取り込まれたために今現在あげた システムになっている。

・そしてこの艦も内部は完全にとは言えないがペークシスに取り込まれた。

・即ちこの艦も同じシステムになっている可能性が高い。

 と言った三段論法がたてられます。俺からは以上です。」

 それを聞いたマグノは顔をしかめつつもアキトに尋ねた。

「全くあたしの艦も難儀なシステムになっちまったもンだ・・で、それで何とか従来からの
 操舵手でそれはつとまるのかい?」

「確か、さっき自己紹介を受けた上では今まではセルティックちゃんやエズラさんがつとめていた
 ようですが、これからは操舵補佐・・・サブエンジンによっての軌道修正に回ってもらった方が
 いいと思われます。
 先程もあげましたが艦と完全にリンクすると言うことは痛覚をもリンクすることになります    そこまでの負担を耐えるのは相当の苦痛になると思われます・・・」

「フム・・・・・男が必要になるのかい・・・操舵手として・・・・・・」

 マグノがそう呟いた次の瞬間、いきなりバートが起き出し喋り始めた

「ふふ・・・どうやら私めの力が必要なようですねぇ・・・・・・・・」

 そうバートが言うが早いかアキトは5M程横に飛び退いた、また気絶されちゃ困る・・・・

「確かに我々は敵同士だ。憎まれるのは当然でしょう。しかし、この状況ではそれより生き延びる
 ことを優先すべきです。いえね、何を隠そう、この僕は操舵士でして・・・・・・」

 ハァ〜〜手前ェ以外は敵同士じゃないんだよ今現在は・・・と内心思いつつもとりあえずは
 喋らしておく。
 するとバートはその沈黙を肯定と受け取ったようで更に饒舌になっていく・・・・
 全員が浅知恵に完全に気付いているのだが(笑)

「ま、つまり、一言で言うならば、ここは一つ休戦という形を取っ手ですね・・・・・・
 互いを補い合うというか、共に手を取り合い一致団結して危機を乗り越えるのが懸命かと・・・」

 一言じゃないうえにおまえとは手を取り合いたくないわ〜と叫びたくなるのを必死にこらえる
 全員であった・・・・・
 っていうかこいつ話半分も聞いちゃいねぇだろ・・・

「ま・・・そうするしか無さそうだし・・・別に構わないが・・・・・・」

 バートを睨み付けながらマグノが肯定の返事を出した。すると調子に乗ったバートはマグノに
 近づき右手を差し出し握手を求めた。

「ははは、ご英断感謝しますよ。では和解の印に・・・・・・・・・」

 ジャキッ ズギュゥゥゥゥンズギュゥゥゥゥゥン

「ひえぇっ!!」

 差しだした右手っつ〜か全身にかけて撃たれかけたバートの表情から余裕が一瞬にして消える。
 威嚇するようにマグノは腰を抜かしているバートの前にマグノが立ち、これでもかって言うほど
 にドスを利かした声で告げる。

「調子に乗るんじゃないよ。あんたと馴れ合う気はないんだ。あくまでも捕虜以下として扱うから
 ね、分かったかい!?次にンな事やったら今度こそバーネットがあんたを撃ち抜くよ」

 さすがのマグノも握手は嫌のようである。

「・・・・・・・はは・・・・・・・ごもっともで・・・・・・・・」

 その後マグノとブザム、そしてドレッドチームリーダーのメイアによってバートは艦内植物園に
 連れていかれ、そこで地獄を見せさせられることになったのだが書きたくないのでそこはとばさ
 せてもらいます。

 そしてその三人+捕虜一匹が植物園に行っている間ブリッジクルーはかなりすさまじい状況に
 陥っていた。

 元々のブリッジが呑み込まれたから艦内植物園に新しく発見されたブリッジに移る・・・
 それは別に構わない、アロマテラピー効果もあるだろうし。

 元々操舵手だったのが副操舵手となる・・・それも一向に構わない
 睡眠時間が増えるだろうし。

 ただ・・・問題なのはその新しく操舵手になる奴であった・・・・男である・・・・・
 もしもそれがアキトだったら心の底から歓迎しただろう・・・しかし彼ではない・・・・
 新しくなる奴は自分が生涯に一回も好感を覚え無さそうなバートなのである。
 
 ブリッジクルー全員が想像する。自分達の職場にいきなりバートが入ってきてバート菌を振りまい ていくのが・・・・・
 嫌である・・恐怖である・・・何があってもやめて欲しい・・・・

 やめてもらう・・いや、やめさせるには一体どうすればいいか?結論は一つである。 

「「「我々は捕虜以下の待遇のモノがブリッジで働くのを断固阻止します!!」」」

 マグノは戻ってきたときに我が目を疑った・・・ストライキが起きていたからである。

「あんな奴の力なんて必要有りません!!」「私あんなのと一緒に働くのは嫌です〜〜」

「お頭、今ならまだ・・・・」「このままで行くと・・仕事の放棄も・・・考えています」

 いやぁこれだったわけですよ、冒頭の修羅場は・・・・あ、物を投げないで!!

 その後ストライキは数時間続いた・・・まさに鬼気迫っていた。
 しかしその後マグノによる伝家の宝刀、お頭権限の発動とブザムによる艦内全クルー(ブリッジ
 以外)への呼びかけ「ブリッジが駄目だったら他に回す」という素晴らしき演説によって艦内全
 クルー(ブリッジ以外)からの多くの賛同を集め、ストライキは鎮圧された。

 まぁ譲歩として緊急時以外はオートにしておくと言うことが決められたが。

 そんなことをしている間にどうやら艦の自動修復も終わったようである。すっかり形状を変え
(詳細はVHSかDVDでお確かめ下さい)もう完璧なようである。

 そして航路も決まったようである。どうにかして自分達の星へ帰ると言ったえらくアバウトな物
 だったが(汗)

 そんなこんなでこの世界でのとても長い一日は終わりを告げようとしていた。
 本当に書いている身としてはえら〜く長かったが(ヲイをい)
 しかし時間は絶えず流れる・・・そう、また次の時は訪れるのである。

       さて、次はどんな活躍を見せてくれるのであろうか。

  そしてアキトの介入は何処までこの世界を変えていくのか。それはまだ分からない。

  だがしかし一部だけなら次はどういったことがおこるかが分かるので覗いてみよう。
Part1
「アキトさんはディータの部屋で一緒に寝るの!!」「何言ってるのジュラの部屋で一緒に!!」
「ジュラの部屋物多くてそんなスペース無いじゃない!!」「宇宙人だらけよりましよ!!」
「いや・・・俺は空いている部屋で良いんだけど・・・・・・」
「アキト、一応しばらくの間あまりしたくないのだが保護観察が必要なのだ、分かって欲しい・・・
 しかし・・・その・・・何だ・・・私の部屋で・・・・・」(後半真っ赤)
「あの、えっとアキト・・私もアキトだったら・・でもジュラ様が・・・・・」(板挟み状態) 

Part2
「「「「きゃ〜〜〜〜アキトさんスカート似合うわ〜〜このカチューシャも着けましょう」」」」

「今更だけど、仕事をするときにコスチュームまで変えなきゃいけないの!?」

「「「「当然です!!ねぇ口紅誰かもってきて、アイラインも引かなきゃ!!」」」」

「「男って胸無いのねぇ・・逞しくて素敵かも・・でもとりあえずパットもってきて!!」

           「わぁぁぁ脱がさないでぇ〜〜〜」

          をい・・・・・次は一体何が起こるねん


            さてさて続いてみましょう。

             多分今度こそ3話に続く。



 後書き  すみません・・・かなり更新が遅れました(平身低頭)
      再びインフルエンザにかかってしまいました・・・・今度はB型ノ・・・・
      その事+今回90%近くをオリジナルにした物だからネタが・・・・・・・
      前回よりも更に理解不能だぞ下手くそが!!と言うところが多いでしょう。
      その辺はご割愛を(再び平身低頭)
      悔やんでも仕方がないので話の方に移ります・・・・・・・

      今回の話でバーネットもヒロインになることが確定しました。
      私の話では設定の方で両親のことなど過去のことなどはオリジナルとさせて
      もらいます。(実際漫画版でどうしてジュラに対して敬語だったのか分から
      なかったので)
        
      どうしてバーネットを漫画版の設定にした上ヒロインクラスにしたかというと
      私が個人的に好きなこともあげられるのですが皆様からの感想・意見によって
      バーネットも出して欲しいという意見が届いたからでもあります。
      即ち私は皆様の要望は出来るだけ叶えます!!
      ですので感想や意見はどんどん送って下さると話が作りやすいのでありがたいです。
      今までに出して下さった方もそうでない方もお願いいたします。
      それでは!!

 追伸   ヒビキは絶対に出しませんのでそのつもりでお願いいたします。此処まで来たらもう
      出しようがありませんし、そうなったらディータとの関係などが複雑になり話が成り
      立たなくなるので出しません!!ご割愛の程を!!  

 追伸の追伸 ヴァンドレッド・バーネットってありですかねぇ。それとアキトの部屋はどうしま
       しょうかねぇ・・・これがいい!!と言った物があったなら送って下さい。



管理人の感想
ピョロ弐式さんからの投稿です。
いや、ヴァンドレッドは全然知らないんですけどね、世界観だけで(苦笑)
でもまぁ、女性と男性が分かれて戦ってるのは知ってますよ
そんな世界に、アレを放り込むんですからねぇ・・・
っていうか、この世界の男性が全員アレだと誤解されたら(汗)
ますます、戦争が終わらないかもねぇ・・・