かつて未来と呼ばれる過去の中で彼はナデシコと呼ばれる戦艦に乗っていた。                     
 けっして楽しいことばかりではなかったが、彼にとってそこはかけがえのない場所であった。
  
 そして戦うことを終えた後、彼は自分の夢を家族と一緒に叶えようとした。    
 
 しかし、その夢は叶うことなく家族は引き裂かれていった。

 そして彼は復讐のために闇の王子に姿を変える。
 
 復讐が終わった後に居場所を感じることが出来ず、愛しい者から逃げていたとき
 
 奇跡は起こった。
 
 彼の精神は過去へ逆行し、また一握りの者も彼と共に跳んだ。

 そして彼は未来で起きた惨劇を繰り返さぬために、彼は戦い抜いた。
 
 新たな仲間との出会いと別れ。新たな敵との出会い。

 そうして、ようやく終わろうとしていたときにそれは起きた。
 
 世界を変えた代償だったのか、彼は別世界に跳ばされてしまった。
 
 彼の名はテンカワ=アキト、漆黒の戦神と呼ばれた者である・・・・・・・


  融合せし世界の中で

 第四話 甘くないDesert(デザート)
 


「それぞれの人生での主役は皆さん自身です!生まれついての脇役などいないのです」
                      〜とある戯曲の一場面より〜

「「〜「「嘘付けや〜〜〜〜〜っ!!!!私たちには名前もないぞ!!!!」」〜」」
                      〜名もないクルー一同魂の叫び〜




 はい、冒頭からお見苦しいものをお見せしてしまいました、すみません。


 さて、前回はアキトのあまりにもの戦いぶりに艦内のクルーの大半から畏怖されると
 言うところで終わりました・・・・・それでは続きはどうなっていくのでしょうか・・・・・

 かつて彼の住んでいた世界にて【漆黒の戦神】の通り名を持つ程、その戦闘力は
 人として異形なものであった。
 しかし彼とて最初からこうだったわけではない・・・・・守るべきものがあったからこそ
 強くなったのだ。だが、その事を守られている人達は知らない・・・・・・・・

 只その強さを盲信するか怯えるか、この二つである。
 そしてそれは今彼がいるこの世界にも浸透していくことになる・・・・・・・




〜格納庫ドレッド横スペースにて〜

「異常だ・・・・アキトの戦闘力はあまりにも異常すぎる・・・・・・」

 戦闘が終わったにもかかわらず格納庫にいるメイアが呟いた。
 いや、メイアだけではない。ディータを除いたパイロットクルーが全員集結している。

「確かに・・・・戦艦クラスを一撃で倒しちゃうなんて・・・・・・」

 一人が自分の思ったことを口に出す、それが引き金になって次々に自分の本心をさらけだす。

 怖かった、何もできなかった、そして信じられるのかと・・・・・・・
 そこで再びメイアが口を開く。                                                               
「更に問題なのは・・・・ディータだ・・・・全員が認識できたと思うが先の戦いでのディータは
 異常だった。」(ペークシスのせいではない、それが証拠に私とジュラは普通だ)

 その言葉にほぼ全員がうなずく。ほんの二日前のディータとは全然違うのだ。
 自分達の知っているディータは天然ボケで周りの空気が読めなく、一種のトラブルメーカーで
 ドレッドに乗らせて出撃させたら必ず何処かでへまをすると言った認識であったのだ。



 しかし、先の戦いでの彼女はそれとは全く違った・・・・・・



 正確な射撃、的確な回避運動、限界速度ぎりぎりの高スピード戦闘、そして連携。
 どれも一朝一夕でつくモノではない。ましてや実戦中に。

 それに技術面だけの問題ではない、精神面でもある。
 彼女には戦闘に対する怯えがなかった。

 今までの彼女なら敵にロック・オンされるたびに半泣きで周りに助けを求めていた。
 だが、先の戦闘ではどうであったか?ロック・オンされようが前方よりミサイル、レーザーが
 掃射されようが余裕混じりにアキトと通信していた。


 そう、絶対的な自信を持っていたのである。こんな奴らには負けないという。


 あまりもの同僚の変貌ぶりに全員が沈黙しているのをみて耐えきれなくなったのか
 ジュラが声を張り上げた。


「もう!!そんなこと別にどうだって良いじゃない!!
 アキトが強いのは別に構わないし、ディータが突然凄くなったところでディータ自身は
 変わってないんだから。
 さっきジュラは着艦したときにディータを見たけどアキトと一緒に笑ってガスコガールズや
 イベントクルーと一緒にいたわよ。それで構わないじゃない。」

 ジュラの本心であった。彼女としては自分が目立てなかったのは悔しいがそれ以外は
 別にどうだって良いのだ・・・・それに彼女には美点がある。



「ジュラ!!楽観視するのは問題だ、これは構わないですむ問題ではないのだぞ!!」

「リーダー、ジュラは昨日も言ったけどアキトはもうジュラのお気に入りなの、それにディータ
 だって一応ジュラの友達よ、友達を疑うなんてエレガントでは無い真似はしたくないわ・・・」
 
「!!」

 ジュラの美点、それは友達を疑ったりしないことである。典型的なお嬢様タイプでわがままに
 見える彼女でも友達づきあいは人一倍しっかりしているのである。

「それじゃジュラ、シャワー浴びてくるわ。それじゃ・・・・・・・・・」

「待て、ジュラ!!話はまだ終わって・・・・・・」

「リーダー、悪いけど私も抜けさせてもらうわ。ジュラ様の言う通りよ、私だって友達を
 疑うなんて真似したくないわ。それに・・・・アキトも。」

 そう言ってバーネットが集団から抜け、ジュラの後を付いていく。

「な、バーネット。おまえまで・・・・」

「それじゃあね。」

シュィィィィィィィィン シュッ



 残った他のクルーもジュラ達に同調するモノがあったのか互いに顔を見合わせている。

 そうした気まずい状況のなかに一人の乱入者が現れた。いや、調停者と言うべきか。 



「おやおや付き合いづらいが仲間思いのいいリーダーだとあんたのことを思ってたけど
 これからは認識を変えなきゃいけないかねぇ、メイア?」

「ッ!!何時からそこに・・・・いや、そんなことより今の発言は
 どういう意味でしょうかガスコーニュさん。」

 レジクルー店長のガスコーニュであった。

「分かんないのかい?そのまんまの意味さ、今のあんたは良いリーダーじゃないって事さ。」

「ですからそれの意味を聞いているのですが・・・・何故私が・・・・・」

「さて、そいつは今から話してあげるからさ。とりあえず人払いさ。
 あんたらも戦い終わったんだから格納庫なんかにいるんじゃないよ。」

 そう言って手振りまで付けてメイア以外のパイロットクルーを出ていかせる。
 出ていくときのクルーの顔には安堵感が漂っていたのを記載しておこう。



「人払いが住んだようなので再び聞かせてもらいます。何故私が良いリーダーではないのですか、
 私は只クルー全体のことを考えて・・・・・・・」

「皆を巻き込んで陰口をしていたと、そいつは確かに大層御立派なリーダーかもしれないねぇ。」

 メイアが先を言う前にガスコーニュが嘲り混じりのあくまで事実を続ける。

「な・・・私は陰口など、それに巻き込んでなど・・・・・・」

「していないって言いたいのかい?戦闘が終わって当事者を除いて【異常】だの【変】だの
 十分に陰口さ、そんな事も分からないのかい?自称有能なリーダーさん?」

「私は・・・・・・・」

「あたしが言いたかったことはとりあえずここまでにしとくよ、そんじゃ時間取らせたね。」

 ガスコーニュはそう言い残すと出ていった、そしてメイアだけが残された・・・・・・





 そして今現在艦内で起こっている波紋の張本人達はと言うト・・・・・・・




〜イベントクルー企画立案スペースにて(笑)〜

「ねぇねぇアキトさん!!今度はディータとお揃いのにしようよ!!!」

「何言ってるの!!治療だって出来るのよ!!女神官にしないと!!!」
「賢者!」「僧侶!!」「ナース!!!」「チャイナ!!!!」「巫女服よ〜〜〜〜!!!」

 で、その材料にされてるアキトはどうしているかというト・・・・・・・・・・


「せめてズボン姿だったらいいなぁぁ〜〜〜〜〜〜」(しみじみ)


 何か既に達観している。まぁ某同盟のお仕置きに比べればいいのだろう。
 それから数分後、満場一致で服が選び出された、その服とは!!!!
 
 全体的に赤い法衣を思わせるような服であるが、
 
 ・首元が金色になっている
 
 ・胸元から腹部にかけて十字上に開いていて特に胸元が強調されている、

 ・スカート部分がミニになっている
 
 などとても法衣としては使えない服である。尚、他に付けるモノもある。
 
 更に十字架のイヤリング、首には変声期内蔵のチョーカー、腰の部分にはポーチ。
 栗色で長髪のウィッグ、などなど。

 分かる人には分かると思いますが後藤○二氏初監督作品キャラの通称【口紅】の服装です。

 その服を突きつけられたアキトはと言うと・・・・・・・・

ダッ タタタタタタタタ

「あっ、逃げたわよ!!みんな追いかけて!!!!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

「何としてでも「未○の記憶」を歌わせるのよ、ヒスイちゃんは「FU○URE」を歌うことを約束して
 くれたわ!!!Letsコスプレよ!!!!」

「「「「「「「「えい、えい、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」」

 数十分後、ヴァンガード格納庫内部にてアキトが発見されたという。
 そんな馬鹿馬鹿しくも平和なことをして過ごしているとパルフェから呼び出しがかかった。




〜パルフェのアトリエ(核爆)にて〜

「あ、アキトさん、ごめんね急に呼び出し・・・・って、えらくまた
 扇情的な格好になっちゃってまぁ。」

「ふっ言わないで・・・・とりあえず呼び出してくれてありがとう、本当に感謝するよ・・・」

 そう言うアキトの格好は完璧に【口紅】のそれであった。
  横にはしっかりと【電子のお嬢様人形】の格好をしたヒスイが立っている。
(同じ後藤○二キャラだからこそ出来る芸当)
 そして周りにはカメラらしきモノを持ったイベントクルーが多数(笑)

 横にいるクルーは意識的に排除することにしてパルフェに聞く。

「で、それで用件の方は何かな?俺に関係することだとは思うけど・・・・・」

「ええ、その事なんだけどアキトさん、これ、見てくれる?」

 そう言って何かに被っているシーツを広げる、そこにあったモノは・・・・・



「へぇ、さっき回収したキューブタイプの頭脳部分か・・・・流石お頭推薦の優秀な
エンジニアだ、作業が早いね」



 頭部のキューブ部分のコアだけ取ったキューブタイプであった。

「ありがと、それでこれなんだけど、どうしても中にあるデータが引き出せないのよ。
 さっきドクターに見てもらったんだけど分からないって言ってたし、だからこういうのに
 詳しそうなアキトさん呼んだんだけど・・・どう、分かりそう?」

 そう言われたアキトがしゃがんでコアの周りの部分を見る。

「へぇ・・・・これはなかなかの技術だ・・・・完全自立回路とまでは行かないけど、此処にある
 部分は脳の役目をしているみたいだ・・・一応は単体でも考えられるように出来てるのか。」 

ドタッ、バタッ

「ね、ねぇアキトさん・・・・・」

「フムフム。何、パルフェちゃん?」

ドサドササササッ 

「その言いづらいことなんだけど・・・・」

「へー、此処がこうなって。うん、何?周りで何か倒れてるみたいだけど。」

「えと・・・・・・・」

「はっ・・・こ、これは・・・・これが敵の中枢部か、よし、ナノマシンアクセスで・・・」

パァァァァァァァッ

 そうして敵に関する情報を集める。そして敵の目的が・・・・・・・・




「その格好でしゃがんでたら・・・・・パンツ、もろに見えてるよ・・・・・・」


「えっ!!」




 そう言われて気付く。スリットが結構入っているのでしゃがんだら簡単に見えるのだ。
 よく見ると周りでイベントクルーが至福の表情で悶絶している。

「萌えよ・・・・萌えこそ世界を救うのよ・・・・・ガクッ・・・・・」

 そう言って夢の世界に旅立ったのはイベントクルー班長である。
 只、一人ディータだけはこれでもかって位に撮影しているが・・・・・・・

「アキトさ〜〜ん!!ねぇポーズとってよ、ね、記念に一枚。」

「そんなの・・・・・・記念にしたくないんだけど・・・・・・・・って、ハッ!!!」

 アキトはそのとき気付いてしまった・・・・・自分の身体の異常に・・・・・・
 それは本来あってはならない異常である、まさに自然の摂理に逆らうことであるからだ。
 しかし、それすらも人間はすることが出来るのだ、そして人間以外も・・・・・

 恐怖に体を震わせながらアキトは問題の部分を自分で触診してみる。
 そして服の上から自分の胸に触れる。


ムニュッ ムニュムニュウ



「何で俺に胸があるんだぁ〜〜〜〜〜!!」

 アキトの心の叫び(ややソプラノ声)の通り、胸部にはしっかりと形の良い胸が付いていた。
 パットではない・・・・その証拠に服の中から直に触れることが出来る。
 更にパットがいつの間にか外に出ていた。今現在確実にDカップ以上はある。

 念のために自分の頬をつねってみる。

ムニ 「あイタッ」

 夢じゃないこと確定、そして恐る恐る自分の下腹部にも手を伸ばしてみる。

 数瞬後・・・・・・

 そこには何もなかった・・・・いや、一応あるモノはあったんだが問題のそれがなかった。

 ドサッ、バタバタ

 また誰かが倒れた音がしたので振り向いてみる、するとそこにはディータ、パルフェが鼻血を
 出しかけながら倒れていた。

「ア・・・・アキトさん・・・ポーズとってとは言ったけど・・・刺激的すぎだよ・・・・」
「グハッ・・・だ、駄目だってそんな扇情的すぎる格好は・・・ブシュウ(鼻血)」

 そう言って二人とも至福の表情で悶絶。

 そう言われてアキトも気付く、今アキトがしている格好は両膝を女の子座りで
 両脚と胸元を開いて、両手をそこの下着の中に忍び込ませている格好なのだ(爆)
 此処は女性だけの星メジェールの艦、目の前で絶世の美(少)女がここまで扇情的な格好を
 してたら普通倒れるか襲うだろう。

 アキトもそれに気付いて赤くなりながら服装を整える。
 すると横から声がかかった。

「アキト、いきなり叫んだりしたら脳の血管に悪いよ」

 ヒスイであった・・・・・しかし脳の血管とは・・・・ヲイ・・・・・

「叫びたくもなるわ!!いきなり自分が女性になってれば!!!」

「うん、大成功♪」(ニコ)

 その時アキトは合点がいった。一瞬で人の体内組織を本人にも気付かれないように
 変えられるのは誰かと言うことが。

「もしかして・・・・・ヒスイがやったノ・・・・これ?」

「うん、そうだよ。アキトの中のナノマシンは既に細胞と同化してるから体の体内組織を
 変えることだって自由自在なんだよ♪もちろんお肌の方もよりきめ細やかに、太股とか
 そう言った部分はより女性らしくしておいたから♪」(にこにこ)

「・・・・・ちなみに聞いて置くけど・・・・どうしてこんな事を・・・・・・?」

「ご都合主義万歳♪」(にこにこにこ)

「本気?」

「嘘。本当は・・・・」

 ヒスイが続きを言う前に艦内放送がかかった

「ヴァンガードパイロットの・・・って一人しかいないから別に良いか、こほん、
 アキトは至急ブリッジの方に来て下さい、お頭が重大な用件があるそうです。
 一分一秒を争うとまでも仰有られてます。
 繰り返します。アキトは・・・・・・・」

 この放送を聞いたアキトはと言うと、

「あっと、お頭が俺を呼んでいるようだからとりあえずまた後で、ちゃんと後で
 しっかりと聞かせてね、そして何よりも戻して(切実)」

 そうヒスイに言い残して足早に行ってしまった。

タッタッッタッタッタッタ ドォォォォォォン(途中昴気使ったために衝撃波発生)

 そして去っていくアキトを見てヒスイは悲しそうな顔をして、

「・・本当は・・・・要望があったから・・・・」

 と呟いた。(笑)
  
 ・・・・・まぁ、次回辺りで戻すから大丈夫であろう・・・・・・・・



 そんなことは露とも知らずアキトは文字通り爆走していた、脇目も振らず周りの喧噪も
 気にせずただ一心にブリッジに向かっていた。

「きゃ〜〜〜アキトさんよね!!絶対あの娘アキトさんよね!?」
「いや〜〜〜ん、アキトさん、すっごく可愛い〜〜〜〜っ!!」
「萌えよ・・・・果てしない萌えよ〜〜〜〜!!」

 訂正・・・・・聞こえているのだが敢えて聞かないようにしているみたいだ(笑)

 そして更に加速していく

 キィィィィィィィィィィィィン ドガッ

 ん?・・・・・・ドガッ?何の音だ?

「げふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 どうやらトイレからの帰りのバートを轢いたらしい、でもまぁ気にせず行ってみよう
(ちなみに男専用のトイレが出来た。但しアキトさんはい・っ・し・ょ(はあと)だそうだ{笑})
 で・・・・その呼び出したブリッジの方はと言うト・・・・



 アキトを呼び出す数分前



〜艦内展望公園内新設ブリッジにて〜

「お頭・・・・・・この星は・・・・・・」

 ブザムがメインモニターに広がる風景を見ながら苦々しげに言う。

「・・・ああ・・・・・死んじまってるようだね・・・・・」

 マグノも沈痛な表情でモニターを見ながら答える。 

 
 モニターに広がるそこは地球からの植民者達が移っていった星である。
 いや・・・使い古された表現であるが、『あった』と表現すべきであろう。
 風景は見渡す限り一面の砂漠、所々に砂嵐が吹き荒れ、乾ききった大地を覆っている。
 マグノの言葉通り死んでいて生を全く感じさせない。

 この星を見つけたのは只の偶然であった。たまたま新設ブリッジのデータベースに
 植民星リストがあり、たまたま近くにあった。それだけだったのだ。
 そして物資の補給が出来ないかと考え、周回軌道に入り、文明の発達度を調査するために
 地表をモニターに映した。 

 当初マグノは砂漠という特殊環境の中で暮らす文明がそこに発達していると思って
 水と引き替えにでも商談をしてみようと考えていた。
 しかしモニターを見ていくとそれが出来ないことが分かった。
 砂漠に映る砂以外のモノ・・・それは文明の証・・・
 しかしその証は既に何者かによって破壊されていた。
 そして今テンホウが惑星に何かしらの情報がないかモニター越しに調査している。

「・・・・ありました・・・・・惑星の中枢部らしき場所残された植民者のデータベースを
 ダウンロードすることが出来ました。」

 どうやら発見するのが万に一つと言われていた情報が見つかったようである。
 しかしテンホウも報告を受けたマグノにも喜びの色はない。


「そうかい・・・・それでこの惑星に関する情報は何があったんだい・・・」
 
 沈痛な表情のままマグノがテンホウに問う。

「はい、結果を報告します・・・・この惑星は・・・・数時間前に機能を停止したようです。」

「数時間前・・・・あたし達とあの敵が戦ってるときだね・・・関係があるのかね・・」 

 テンホウの報告を聞いてマグノが司令官の顔つきになって自分達との関連性を探る。

「お頭、それは考えすぎでは・・・あの敵は正体も目的も不明です。そう一方的に関連づけるのは
 どうかと思いますが・・・・すみません、ですぎた口でした。」

「いや、そんなことはないさBCの言うとおりだね。このところ訳の分からないことが連続で
 起こってたからねぇ。
 あたしとしたことがネガティブなことを考えちまったよ。 ポジティブにいかないとね、
 この惑星は内乱で互いに最終兵器でもつかっちまって滅んじまったんだろう。」



 滅んだ本人達にとっては全然ポジティブではないことを言うマグノ
 あんた、元尼僧だろ。罰あたんないのか(汗)



 しかしそのポジティブ(ひねくれともいふ)も次のテンホウの報告によって消えた。

「こ・・・これは・・・せ、赤血球採取値・・・・白血球採取値・・・・・・・・・
 お頭・・・・どうやらこの惑星は・・・・【刈り取り】と名乗る謎の集団によって
 血液を全て採取されて・・・・滅んだ・・・よう・・・です・・・」

 震えながら報告するテンホウの声はブリッジ全員の背中を冷やした。

「どういうことだ・・・血液採取・・・・まさか人間の臓器を刈り取って回っている集団が
 いると言うことか・・・・一体、何故・・・・・・」

 顔を強張らせながらもブザムが未知の敵に対する情報をまとめる。

「どうしますかお頭?この星の周回軌道から出た方が良いと私は思うのですが・・・・・・」

 エズラが尤もなことをマグノに進言する。
 アマローネ、ベルヴェデールそれにセルティックも同じ事を目で訴えている。
 このような悲惨な現場付近からは早く離れたいのだ。

 しかしマグノはそれを了承しなかった、この臓器の「刈り取り」という行為はこの惑星だけに
 限らないと直感で思ったからである。
 ・・・・自分達にも関わってくるモノだと・・・・
 そしてマグノは尤も安全牌な行動にうつることにした。

「ここは一つ・・・・アキトを呼ぶよ・・こういう状況に尤も長けてそうだからね・・
 ベル、艦内放送をかけな。」



 そして今アキトが来るのを待っているのである。
 しかし待つという程の時間ではなかった。



「あ・・・・お頭、アキトさんのパスポートキーが反応しています。どうやらこの信号パターンに
 よるとブリッジのロックを解いて欲しいと言うことです。」

 そうテンホウが報告する。それを聞いたブザムはと言うと、
 
(ム・・・・まだ四分とかかっていないが・・・・近くにいたのか?)

 と不思議に思いつつもロックを開けるようにテンホウに指示する。

「了解です・・・ロック解除、テンカワ=アキトブリッジ・in許可。扉開きます。」

シュイィィィィィィィィィン

 そして開いたドアの先には・・・・・・・・



「お頭・・・・お呼ばれにより参上いたしました・・・・その・・(モジモジ)・・・用件は
 何でしょうか・・・・・・」(照)

 ある意味変わり果てたアキトがそこにいた(笑)



ピシィッ(※)


            




             本日2回目の時が止まった。






「テンカワ=アキト、私の知っているアキトさん、タラークだけど不思議と好感が持てて
 料理が上手くて・・・・朝ご飯美味しかった・・・・そう言えばお昼ご飯食べてない・・」

「「「アキト、テンカワ=アキト、私とたいして年が違わないはずなのに不思議と貫禄があって
   頼りに出来るアキト」」」

 エトセトラエトセトラ、流石に今回のはテンホウちゃんにもこたえたようだ。
 何かゆっく〜〜〜〜〜〜りと壊れていってる。
 ※ブリッジクルーはアキトの女装が初目撃のために抗体が出来ていなかった。


 そして数十分後、アキトの決死の説明によって何とか皆元に戻ることが出来た。


「・・・・で、それでやっぱりペークシスのおかげで突然メジェールになってしまったト・・・
 ・・・しかし・・・・可愛いねぇ・・・・本気で・・・・」

「お頭・・・・・言わないで下さい・・・・・・」(泣)

 アキトのことを本気で誉めるマグノとそれを否定しようとするアキト。

「別にかまわんのではないか?それに可愛いと言うよりも・・・・・・・」
「ええ、綺麗の方に属しますよ♪」
「(こくこく)」

「あぁ!!副長にエズラさん、それにテンホウちゃんまでぇ〜」(泣)

 弁護の余地0のようだ。(爆)
 ちなみにアマローネ、ベルヴェデール、セルティックの三人娘の方はと言うト・・・

「(ひそひそ)アキト、本当に綺麗ね、これは本格的に狙うべきかしら」
「(ひそひそ)私より胸大きい〜〜」(女だけど漢泣き)
「(ひそひそ)ほらほら泣かない泣かない、でも、あの胸本物かしら・・・・確かめてみない?」

 思い立ったら即実行、それは現代社会では失われつつモノである。
 だが、恐らくはかなりの未来のここでは普及しているらしい、だって・・・・

「セルティ、ベル、しっかり押さえててよ、卯腐(うふ)・・・・いくわよ(わきわき)」
「よ〜し、いっけぇ〜〜〜〜〜!!」
「次私の番だからね〜〜〜〜〜〜!!」

 ここまで積極的に出来る娘達がいるんですもの(笑)

「ちょっ、ちょっとアマローネちゃん、ストップ!ストップ!ジャストアモーメント!」

 アキトの制止も空しくアマローネの手が伸び・・・・・・・・

ツンツン、ムニュウ、ムニュウムニュウ、

 アキトの立派な胸をもみし抱いていた。かな〜〜り念を押して至福の表情で(爆)

「はうっ、ちょ、ちょっとそんなに強く揉まないで・・・・・・・・」(喘ぎ)

 揉まれてるアキトなんか既に出している声が女性そのものだぞ(核爆)
 まぁとりあえずこの事でアキトの胸はマジモノだと言うことがブリッジ内で確立された。






「・・・・・と言うわけでこの惑星からはこのような結果が出た。アキト、おまえとしては
 これをどう思う?参考を聞かせて欲しいのだが。」

 かなり話の流れをはしょったけどとりあえず本題にはいることは成功した。
 ブザムがアキトに問う。(ちなみにアキトは着替えてウィッグも取った。)

「ええ、ちょうどその事について俺からも報告することがあります。先程艦内の研究所の方にて
 先の戦闘で捕獲したキューブタイプの分析を俺達はしていました。」

「ほう、それで結果の方はどうだったんだ?」
(やはり一人称は俺より僕にしたほうが・・・)ヲイ
 
「はい、敵の中枢部から読みとれたことを報告します。
 あの敵はこの惑星を襲った【刈り取り】と同一であるものと考えられます。
 ちなみにキューブタイプからの情報によるとその【刈り取り】の目的は人間の特出して進化した
 臓器、並びに肌、血液など全ての身体器官を文字通り刈り取ることにあります。」

 その報告は自分で言ってても気分の良いモノではなかった。生きている人間の臓器を
 無理矢理奪うのである。人としての憤りを禁じ得ない。
 そしてアキトはこの現状に対してどう向かうかというト・・・・・・・・・

「それで、この現状からの俺の意見は・・・・・・・・・」

「やはり、この宙域を離れるか?」



「いいえ、この惑星への降下、並びにこの惑星の調査を推薦します。」



「「「「「「「ええ!?」」」」」」」

 真っ向勝負に決めたようだ。



「待って下さい・・・・アキトさんどうしてですか!?危険なだけですよ!?」

 セルティックが止めにはいる、しかしアキトはそれを断った。

「危険・・・・か。セルティちゃん、今話したことを思いだして欲しい。
【刈り取り】部隊は人間の特出している身体部分を集めてるって言ったよね。
 それだったら俺達だって狙われる要素は十分に有るんだよ・・・・・・・」

「どういうことだい・・・・あたし達にも何処か特出している部分があるって訳かい?」

「お頭・・・・・男と女の決定的な違いは何だと思います。」

 
 アキトの言葉を聞いたマグノとブザム、そしてテンホウの顔色が変わる。
 他の四人はまだ気付いていない。
 しかし彼女らが気が付く前にマグノが答えを言う。


「まさか・・・生殖器だってのかい!?」


「はい、男と女が別々で育てられている環境、この事は少なからず生殖器の機能などに
 関わることです。その可能性が無いとは断じて言い切れません。」



「それだったら尚更!!」



 再びセルティックが言う・・・・・しかし・・・・・

「尚更行かなければならない。地表に降りればモニター越しでは分析しきれないことが確認できる
 可能性があるからね。未知の敵に狙われているんだ、現にもう二度襲われている。
 今は何よりも敵の情報が必要なんだ、多少危険を冒してもね。」

 そう言い伏せられてしまった。アキトの言っていることは正しいのである。
 仮に此処を見なかったことにしても敵は事実として存在するのだ。


「アキト・・・・あたしはあんたを信頼してるからね・・・・・・・」

 こうしてマグノからの許可が下りた。但し流石に一人だけでは不都合が多いので
 ドレッドのチームから何人か連れていくことが条件であったが。




 それから数分後、

〜ドレッドチームブリーフィングルームにて〜 

「今の説明の通り、砂漠の惑星・・コードネーム【デザーツ】への降下が決まったんだけど
 お頭から何人かを連れていくことが条件になっているんだ。
 それで申し訳ないんだけど、誰かヴァンガードで一緒に来てくれないかな?」

 アキトがドレッドクルーを全員召集させて事のいきさつを話した。
 すると・・・・・まぁ、当然のことだが・・・・・・・

「ハーイ!!それじゃあディータ、立候補しま〜す!!!」

 ディータが真っ先に飛びついた。他のクルーはと言うと、

「どうする?」「やっぱり危ないわよね」「アキトさんは強いけど・・・・・・・」
「ところでアキトさん綺麗よね」「あ、あたし写真取ったわよ」「幾ら?」 etc

 アキトに対する畏怖と未知の敵への恐怖によってやはり乗り気ではないようだ。
 (多少そんなのは因果の彼方にすっ飛ばした方も存在していますけど)
 ・・・・・・・・・一部の例外を除いてだが・・・・・・・・・・・

「ヴァンガードか、うん、アキトとお揃いか。ジュラも行くわよ♪」
(ひょっとしてジュラよりスタイル良い!?狙い所ね!!)

「私も行く、ヴァンガードの操縦は初心者だけどアキトが教えてくれるんだったら
 何とかなりそうだし。」
(女性になったんだったら何の問題もなく好きになっても良いのよね)ヲイ



 アキトに対して何ら負の感情を持っていないジュラとバーネットが立候補した。
 ・・・・・と言うか百合が吹き荒れそうな心が全快だが(汗)

 そして・・・・・・・


「ディータはともかく・・・・ジュラにバーネット、私のチームのメンバーが行くのだ・・
 ・・私も行かせてもらう・・・・」
(私はリーダーだ、チームは私が統率しなければならない、そう、私が・・・・)

 メイアが立候補した。
 しかしその心の中は自分に責任を押しつけ、それによって自分を束縛しているといった感じだが。

(・・・私はリーダーであってそれ以外は何も要らない・・・・大事なものなど
 持ち合わせてない、そんなものがあるから皆弱くなると言うことを知っている。
 私は弱くなど無い・・・・そう、弱くなど・・・・・・・・・・)

 おっと、どうやら自分の負の感情が暴発してきたかな、さて、どうなるやら・・・・・
 それもさておきまだミーティング(?)は続いています。

「そう言えばアキトさん、質問〜〜〜〜〜!!」

「何かな、ディータちゃん?」

「上陸っていつするんですか?ヴァンガードの操縦訓練だってあるし・・・・・」

「ああ、その事だったら明日の予定になっている・・・・・お頭としても謎の敵のことが
 気にかかるんだろう・・・・せいぜいで2〜3日しか周回軌道上に止まることが許して
 もらえなかった。そう長くは降りられない・・・だから少しでも早く行動する・・・」

「「明日!?」」

 流石にこの言葉はジュラとバーネットを驚愕させた。
 自分達は完全に初心者である、それなのに対して練習時間がとれないのである。
 驚愕するなという方が無理であろう。


 しかし無理を通してしまう人間も少なからずいるものである。


「分っかりました〜〜!!ディータッ、頑張っちゃいま〜〜〜す!!!!」

 ディータが底抜けに脳天気で明るい声を出して応じる。
 それを見て思わずジュラとバーネットがディータに詰め寄る。

「ちょっと、ディータ・・・・あんたの頭にはさぞかし綺麗な花が
 咲いてるんでしょうねぇ・・・・全く・・・・・・
 ドレッドじゃなくてヴァンガード使うのよ・・ヴァ・ン・ガ・−・ド!!」

「ジュラ様の言う通りよディータ・・・
 挙げ句舞台は砂漠ときている、私たちにとって未知の領域なのよ。
 それを考慮した上でそう言ったことは言いなさいよ・・・・本当にこの娘は・・・」

 しかしディータは再び何処か抜けたような声で二人に返す。

「大丈夫だよ♪それにしっかり考えてから言ったんだし♪」

 こう返されては流石に誰だって怒る、親切心を全く理解してないように取れるのだ。


「「ちょっと、ディータ!!あんたいい加減に・・・・・・」」


 しかし二人が完全に怒鳴る前にディータが声のトーンを少し落として
 二人だけに聞こえるように呟いた。


「そんなすぐに怒っているようじゃあっという間に人心掌握されちゃうよ♪
 まぁ・・・・ディータが言えた事じゃないけどね・・・・
 それに二人とも、もう一回言うけどしっかり考えてから言ってるんだよ。
 ヴァンガードシステムのIFS化、砂漠の地面によるバランス差、 
 その他起こり得る障害のプログラミング、準備はぬかりないよ・・・・」


「えっ!?」
「ディータ・・・・あんた・・・・」


 あまりものディータの態度の豹変に驚き一歩下がる。
 そしてディータが声のトーンをいつものものに戻して笑顔を見せながら言う。
 
「ね、だから今はそんなことはどうだって良いからまずはヴァンガードに乗ろうよ。
 このまま何もしなかったらそれこそ無駄な時間だよ。ね、早く慣れちゃお?」

 再びの豹変に戸惑い、まどつきながらも何とか声を返す。

「「え、ええ・・・・・」」

「よ〜〜し、そうと決まったらLets格納庫!!さ、アキトさんも早く早く!!」

 そう言って二人の手とアキトの手を取る。そしてメイアにも声をかける。

「ほら、リーダーも早く行こう、時間がもったいないよ。」

 だが・・・・・

「私は後で行く。所詮は男が作ったヴァンガードだ。
 大して複雑な機構でも無かろう、私は教えなどは要らない。
 それとディータ、お前は既に私のチームのメンバーでも何でもない。
 従って私をリーダーと呼ぶな、志気に関わる。」


 あまりにも突き放した言い方であった、そしてメイアは逆方向に出ていってしまった。
 辺りには冷たい空気が漂う・・・・・はずであったのだが・・・・・


「えへへ、そっかもうディータはもうリーダー・・ッとそう言っちゃ駄目なンだっけ、
 メイアのチームじゃなかったんだっけ、忘れてた忘れてた。」

 いましがたあったことが全然答えてないようなディータの声が響いた。
 その声には悲壮感と言ったものは微塵も感じられない。

「ちょ・・・・ちょっとディータ・・・・」

 バーネットがディータに声をかけようとする、しかし、

「さぁ、リー・・・メイアは行かないって言ってるんだし、私たちだけでも練習しておかないとね、 気を取り直していってみよ〜〜〜」

 そうディータが強引に押し切って結局格納庫まで引っ張られる形になった。

(ディータちゃん・・・・・・無理はしないでね・・・・・・)

 アキトがディータだけにリンクをつなげて話をする。
 幾ら精神の超越をしても親しい人が周りから去っていくのは辛いのである。
 ディータもリンクでは多少悲しそうに返してきた。

(うん・・・大丈夫だよ・・・・これが今までアキトさんのしてきた事なんだし・・・)





〜???〜

 砂嵐の吹き荒れる嵐の中、四機のヴァンガードが小隊の如く一糸乱れることなく歩いている。
 その内の三機は標準的な九十九式と呼ばれるタイプだが一機は違っていた。
 漆黒のボディ、機動性の高さが一目で見てとれるブースター、それでいて屈強な装甲
 アキト専用のヴァンガードである。
 ちなみに他の九十九式のパイロットはディータ、ジュラ、バーネットである。


「うわっと、ねぇアキト、どんどん砂嵐が強くなってきてるんだけど〜〜〜」

 朱色の九十九式パイロットのジュラが通信をしてくる。

「確かに・・・・・・このままでは視界が完全にふさがれるわ・・・・・」

 紫色の九十九式パイロットのバーネットも同様に通信を入れてくる。
 やはり幾ら砂地をバランサーによって平静に歩けても視界が奪われると問題は別のようだ。

「ジュラ、バーネットちゃん、砂漠とは本来このようなものだから仕方がないと思って。
 それに視界が奪われてもレーダーは局地専用だから使える。
 そう言ったもので対応していって、使い方はさっき教えたよね。」

 そう言って通信を返す、アキトとしてはこれでもなかなか上出来な方だと思っている。
 バランサーがあるとはいえ、風速が高く、視界がきかない中で一糸乱れず進めるのである。
 パイロットの技量には何の問題もないと言えよう。
 とりあえず、最初の難関はクリアである。次の課題は・・・・・・・・・


「うぇぇぇぇ、モニターとレーダーマップ一緒に見るの私苦手〜〜〜〜〜〜」
「あ、成る程(ポン!)そのためのレーダーなのね、それさえ分かれば・・・・」


 バーネットが子犬のようにだれながら泣き言を言うがジュラとしては得意分野らしい、
 それに気付くと鼻歌混じりでやってのけてしまう。
 
「ジュラ〜〜、バーネット〜〜大丈夫〜〜?」

 ディータから二人に通信が入る。彼女も心配に思ったようだ。
 ちなみに彼女の九十九式の色はやはり蒼である。


「もっちろん、ジュラは何だって出来ちゃうのよ!!(料理以外は)」
「私も何とか大丈夫、ありがと(あぅぅ、やっぱり私って器用貧乏だ)」

 何とか二人とも軽口を叩けるぐらいに落ち着いたらしい、少し心に余裕が生まれてきたらしく
 そのまま話をする。

「しっかし、ディータ、あなた凄くなってるわよねぇ・・・・・・」
「本当、今までとは全然違うもの」

「えぇぇ、そんなこと・・・・・二人とも散開して、早く!!」


「「へ?」」


 突然ディータの雰囲気が変わって狼狽する二人、しかしディータは焦っている。

「このままでは間に合わない、二人とも衝撃に備えて!!」

 そう言い終わるが早いかディータの九十九式が背中に装着されている盾型武器ポッドから
 梱状の武器を掴むと機体を低くしてジュラ機とバーネット機の足を払った。

ダァンッ

 そうすると流石にバランサーがあっても意味をなさない、その結果砂漠の大地に沈むことになる。

ズサァァァァァァァァッ

 衝撃で顔をうったジュラがディータに抗議しようとする、次の瞬間!!


ブブブブブブブブシュシュシュシュシュッシュシュシュィィィィィィィィィン


 ほんの一瞬前まで自分のコクピットがあった位置に何か達が通り過ぎていった。
 一瞬であったために何かはすぐには分からなかった、しかし数瞬おいてそれが分かった。

 体の色は砂漠の砂と同じ色をしているのだが
 センサーアイとおぼしき部分は不気味に輝いている。
 頭、胸、腹に分かれているなど昆虫めいたところがあり、
 足もそれ相応の数を持っている。

 そう、それはいわゆる・・・・・・・・

「ジュラ、バーネット!!早く立ち上がって、このままじゃ【バッタ】にやられるよ!!」


 今ディータが言ったとおりアキトの世界でその存在がある兵器【バッタ】である。
 但し砂漠仕様になっている【サバクワタリバッタ】である。

 元になった虫を紹介しておこう。
 サバクワタリバッタとは本来地球のアフリカに生息するバッタである。
 砂漠にも稀に大雨が降ることがあって、そのときに植物が一斉に芽を出す。
 それと同時にこのバッタが大発生する。
 餌が不足するとこのバッタ達は一説によると百億匹とも言われるほどの大集団を作り、
 サハラ砂漠をわたり、西アフリカから地中海沿岸まで移動すると言われている。 

 木連のプラントで造られたこの「サバクワタリバッタ」もアフリカ地方に送り込まれ
 アフリカ地方を制圧し、西欧へも渡ったという実績が残っている。
 
 西欧にいた頃アキトもこのタイプとは戦ったことがある。

 一匹一匹は大したこと無いのであるが集団になると実力を増す厄介な相手である。
 そのために初戦はMoon Night全体の三分の一が行動不能になると言った事態とまでなった。

 そして今その強敵がホームグラウンドの砂漠の地に数百匹いるのである。
 迅速に対処しなければ被害は時間毎に増えるばかりである。
 しかし、それが出来る人間は極めて少ない、ましてや初戦ともなれば・・・・・・



「きゃぁぁぁ!嫌、嫌、何これ、何これ〜〜」
「ジュ、ジュラ様、武器を振り回さないで下さい!!同士討ちになります!!」

 
 アキトが定める第二の課題、それは戦闘である。
 幾ら動けたところで戦えなければ意味がないのである。

 
 やはり初めてあう未知の敵というモノは恐ろしく見えるモノである。
 ジュラが必死になって梱型を振り回す、しかしそれはバッタにはかすりもせず
 バーネット機や自機の被害を増やすばかりになっている。
 そして無駄に労力ばかりを消費しているト・・・・・・
 
「ジュラ様!!敵機接近中、何これ?速いし大きい、場所特定・・・真下!?」

ズサァァァァァァァァァァァァァァァァ

 バーネットが敵機の位置を特定したがそれも遅かった。
 突如、ジュラ、バーネット機の足下の砂が沈んだ。
 そして中から出てきた新しい敵・・・・増援部隊

「クッ、バッタの次は一体なんだって・・・・言う・・・ノ・・・・」

 バーネットが声を失う、穴の底に異様な姿があったからである。


「まさか・・・・・【アリジゴク】だっていうの・・・・・・」



 ジュラの言うとおり穴の底には【アリジゴク】としか表現できないモノがいた。
 但し問題はその大きさである。150〜160Mはあろうかとにかく巨大なのである。

 この【アリジゴク】の元になった昆虫も説明しておこう。
 アリジゴクとはウスバカゲロウ科のウスバカゲロウの幼虫であることはよく知られている。
 乾いた細かい砂のある場所に好んで巣を作る、その巣はすり鉢状の穴であり
 一度落ちたらはい上がれない小動物(ダンゴムシ、クモ等)を補食する。
 名前の由来はアリが一番落ちるからと言われている。

 これを兵器化した木連は主にこの【アリジゴク】を地中潜伏用の移動要塞として戦線に投入した。
 砂漠に大量に投入され原油などの採掘施設を破壊したとの報告もある。
【バッタ(サバクワタリ)】や【サソリ】と呼ばれる兵器を大量に中に格納している上に
 一匹見つけるとそばにもう2〜3匹はいると言われるほど集団で移動するので厄介なのである。
 唯一救いなのはこのアリジゴクも元々はチューリップから出てくるのであるが
 出てくる際にその巨体故にアリジゴクが数匹程度しか出てこれず、チューリップ自体もその際に 
 使用不可能になるために、数自体は少ないことと潰しがきくことである。 

 これもまたアキトが西欧にいた頃戦ったことのある相手である。
 地中移動速度と最高潜度が恐ろしく高いので攻撃を当てるのが難しく
 わざと補食されるようにして戦うのがセオリーになるまで手こずった相手である。
 


 そして今さしずめジュラ機とバーネット機が食べられるアリと言うことになるのだろう。
 穴の底から顔を出して食べる機会を狙っている。

「嫌よ・・・こんなのに食べられるなんて嫌よ!!」

 そう言ってバーネットが必死にもがくが砂は崩れるばかりでかえって下に行ってしまう。
 そして・・・・・・・・・・

 ガシッ!!

 ジュラ、バーネットの両機ともアリジゴクに捕まってしまう。
 アリジゴクは口部分を大きく開いて噛み砕こうとしている。
 その大きく開かれた口を見てジュラが閃く。

「バーネット!!あの口部分に攻撃できないかしら?あそこの開閉部分さえ壊せば少なくとも
 噛み砕かれるってのはなくなるわよ!!」
「分かりましたジュラ様!!よし、それじゃあこれで・・・・・・・・・」

 そう言って両機とも青龍刀型の武器を口部分に投げようとする!!
 なかなか良い着眼点である。


 但し、それを実行しようとして駄目だったエステバリスライダーは後を絶たない・・・・・・・
 何故なら・・・・・・・・・・

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥ

 投げようとした矢先に突然アリジゴクが九十九式に何か液体を吐き出した。
 そしてその液体は見る見るうちに九十九式の関節部分に染み込んでいく。
 構わず青龍刀型を投げようとする、しかし、

「そ・・・・そんな・・・・・腕が・・・嘘・・・何で・・・」
「クッ、動いて、動いて!!一体何が・・・・・・」

 九十九式の腕が動かなく、ぎしぎしと関節部分が悲鳴を上げるばかりである。
 


 そう、今アリジゴクが吐き出した液体のせいである。この液体にはナノマシンが大量に
 含まれていて関節部分の見えない継ぎ目に入り込み、そこから関節部分を破壊するという特性を
 持っている。
 これによってエステバリスもやられるのであった。
 ちなみに余り知られていないことだが元々のアリジゴクにも
  唾液の中に住んでいる細菌が作る毒がある。

 結果として動けなくなった両機をアリジゴクはそのドリルの付いた禍々しい口に入れ・・・・

バキィッ バキバキバキバキ ガガガガガガガガガガガガガ

 完全に原型の残ることが無くなるまで噛み砕いた。
 同時にジュラとバーネットのモニターの中央に煌めく文字が浮かび、表示される。



『擬斗 終了』



 まぁ、簡単に言えばゲーム・オーバーである。
 途中から気付いていた方が殆どだと思うが今までのはシミュレーションだったのである。
 だからアキトの世界にしかいないはずの敵が存在していたのである。


「う・・・ううう、ジュラが子供の頃亡くなったはずのお婆ちゃんが川の向こうで手を
 招いていたのが見えたような気がしたわ・・・・・・」

「私は・・・・綺麗なお花畑の向こうに亡くなったはずの両親が見えたような気がします・・
 ・・・・」

 かなり危ないことを口にしながらシミュレーション装置から出てくる二人。
 アキトが最初にこの装置を見たときに

「全然リアルじゃないな・・・・よし、敵もバリエーション増やして、と。」

 てな事を言いながらIFS使いながら弄くったためにかなりリアルになってしまって、
 衝撃など五感に訴えるモノだけではなく[機体の痛み]まで出来るようになったのである。




  ・・・・・・・・・はっきり言って洒落になってねぇ(笑)・・・・・・・・・・・




「あ〜〜、気もち悪ぅ〜〜、バーネット、かなり危なかったわね・・・・・・」

 何か既に半死人になっているジュラがバーネットに言う。
 半死人状態とはいうがコクピットがやられる前に全てのリンクを切ったために外傷などは
 一切負ってなく、ただ単に揺らされたことによる衝撃酔いである。 

 バーネットもそうなっているはずなのだが彼女はジュラの言葉が聞こえていないのか
 ただ一心にモニターを見ている。

「・・・バーネット、聞こえてないの?・・何見てるんだろ?」

 ジュラもバーネットの行動が気になって同じくモニターを覗く、そして彼女も同じ様になった。





「ディータちゃん、聞こえるか!?たった今ジュラ、バーネット両機の反応が消えた、
 どうやらアリジゴクにやられたらしい。そちらの現状を報告してくれ!!」

 襲いかかるバッタの大群を二桁単位で切り捨てながらアキトがディータに通信を入れる。
 ちなみに砂地の上を特殊ブースターによってホバリングしながら動いている。

 
「こちらディータです、現状ではは何とか一人でも持ちこたえることが出来ます。
 だけどさっき二人をやったアリジゴクがディータに狙いを変えてきました
 後三十秒後に真下まで到達しますのでそれはお願いします。」

「分かった、アリジゴクは俺が片づける」

 ディータはアキトとは違って動くという行為をしていない。
 下手に動くとジュラ、バーネットと同じ轍を踏むと分かっているからだ。
 では攻撃はどうするかというかと言えば長刀状のモノを使うのである
 長刀ならば周辺に敵が現れようが一掃することが出来る。

 それに・・・・・・・・

「まわり込んできた、同時に攻撃するつもりか・・・・・よ〜し!!
 見よう見まね【木連式長刀術奥義 鶯閃靭】いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ビュッ ビュッ ギギギギギギギギンッ
             ドドドドドドドドドドドドドド〜ンッ

 実際にやったことが無くてもイメージさえ出来ればアキトの記憶の中で見た木連式長刀術が
 使えるので動かなくても全然問題ないのである。
 まぁ、それでもあくまでイメージだけなので本家本元に比べると鈍るが・・・・・・・
 強いモノは強いのである。


 アキトの方も・・・・・・・・

「よし、目標を捉えた!!これで何とかなるはずだ、【木連式鞭術裏奥義 土竜縛!!】」

 そう言って砂漠内に100M以上伸ばしたDFSを潜らせる。

【木連式鞭術裏奥義 土竜縛】・・・・・この奥義について説明しよう。

 この技は本来土の中に潜む土竜を勢い付けて高質化した鞭を土の中に潜り込ませ捕縛するという
 恐るべき奥義である。

 何故このような恐るべき奥義が世に出るのを忍ぶ裏奥義となっているのか?

 
 理由は簡単である、土竜とは即ちモグラの事である。(まぢ)


 本来地に住むと言われている竜を捕まえる技であったのに・・・・・・・・
 必死に鞭を振るってモグラを捕まえる鞭の師匠とその弟子・・・・ダサイわ・・・・

 そんな素晴らしき理由(爆)によって封印されていた裏奥義が今此処に蘇る。
 ・・・・・・・・但し今度はアリジゴクだけどな(核爆)・・・・・・・・・

 

 砂の中を突き進んでいたアリジゴクにいきなりエネルギー体の鞭が巻き付く。
 巻き付かれた部分はどんどん消滅していっている。
 そして一気に締め上げる!!

ズシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ   
          ドゥォォォォォォォォォォォォォォン!!

 すると胴体部分が一気に輪切りとなってアリジゴクが沈黙し、爆破炎上する。
 それは大爆発となって一気に周りにいたバッタ、そして出現しようとしていたサソリを巻き込む。
 

「うっわ〜〜、アキトさんの分はもう片づいちゃったんだ♪
 それじゃあ後はディータの分!!よぉぉぉし、頑張るぞ〜〜!!!!」

 そう言ってディータが更に長刀を振るう。
 この後五分もかからぬ内に戦闘は終わったのは言うまでもない。




プシュゥゥゥゥゥゥゥゥ

「ふぅぅぅぅ、やっぱり戦いは動けないと辛い物があるね。何とかならないの、アキトさん?」

「それは難しいよ、幾ら九十九式が局地戦仕様でもブースター自体は砂嵐の中では
 使えないからね。」


 無茶苦茶スペシャリスト的なことを言いながらシミュレーション装置から出てくる
 アキトとディータ、それでいて緊張感は0と言っても過言は無いほどに無い。
 そんな二人を見て只呆然とするジュラ、バーネット。
 しかし驚きがここで飽和してしまったようだ、二人に詰め寄っていく。

「ちょっと!ねぇ今のは一体何なの、ジュラにも教えて、あの黒いレーザーサーベルとかの使い方、 ジュラもあれさえ使えたら!!」

「それは私にも教えて欲しい、それにアキトとディータが付けてるその
 なんやらフィードなんやらシステム・・・・とにかくそれも教えて!!」

 自分の無力さがどうやら怒りへと昇華してしまっているらしい、何か理不尽にも取れるような
 発言までしている。
 まぁ二人の気持ちは分からないでもないが・・・・・・・・
 自分達がゲームオーバーであっちはゲームクリアーなのだ、怒りたくもなる。
 それが分かるのかアキトの態度はなだめるようなものであった。


「それじゃあまずジュラのから答えさせてもらうけど、今のて言うのは俺がやった技について
 だよね?」

「そうよ、それにディータのも。あんなエレガントな技、ジュラだって使いたい!!」

 モグラ縛りがエレガントかどうかはさておいて・・・・・・・
 ディータが割り込んでジュラに言う。

「あれを使うのはジュラには無理だと思うよ。」

「何でよ!?」

「あれ・・・・【鶯閃靭】や【土竜爆】はある武術の中でも奥義クラスの技なの、
 とてもじゃないけどジュラやバーネットはさっきの戦闘から見ても出来ないと思うよ♪」

 笑顔で言ってのけるディータ、やはり人の闇を全て知った人間は強くなっている。



「そんなことやってみなくちゃ・・・!!」
「そうよ!それだったら何でディータが!!」


「それが分かるんだよ二人とも。まずディータちゃんは二人と違ってIFSを付けてる、
 とりあえずそれが原因の一つだよ。」

 反発しようとした二人だったがアキトによって押さえられる、しかし押さえられると
 また別の反発が生まれるモノである。

「「それだったら私たちにもIFS を付けてよ!!」」

 しかし押さえる側は色々と押さえる手札を持っているモノである。

「それは出来ると思う、だけどIFS を付けたらむしろ二人とも弱くなると思うよ。
 イメージ・フィード・バックシステム、この名前が指す通り考えたことを
 機体に伝達するシステムのことだけどそれは二人には合わないと思うし」

「「どうして!?」」

「ああ、ディータちゃんの場合はドレッドの操縦も初心者だったし操縦桿を握っての操作が
 苦手な感じだったからすぐに慣れることが出来た。
 でも二人はずいぶんと前からドレッドを操縦してきた、だから今からこれを取り付けても
 無意味に終わると思うよ。上陸明日だし。」

「今回のはこのままで良いから次からドレッドの戦闘の時に・・・・・・」

「原因その二、ディータちゃんには天性の素質がある。イメージングが得意なんだ、
 だから初めてでもあれほどの動きが出来た。
 それに一つの事を何時までも追い続けられるような集中力も必要だ、
 それをするにはもう少し早いと思うよ。」

 つまり簡単に言えば人並みはずれた集中力と一度見たらすぐに覚えられて
 鮮明に思い出せるような記憶力そして柔軟性の三つが必要なわけである。
 これを揃えている人間はまず殆どいない、いたらすぐにエステバリスライダーになると良い。
 二つ名を貰えるぐらいの勇者になれるのは確実だから。

 それがようやく分かったのかそれ以上は言ってこなかった。
 ただ少し悔しそうな顔をした後、再びシミュレーターに戻っていった。
 それを見たアキトは少し思う。

(ちょっと言い過ぎたかな・・・・・まぁ実際ディータちゃんは更に俺の記憶の全てを
 知っているって言う点も有るんだけど・・・・・・・)



 実際ジュラとバーネットはと言うト・・・・・・・・・・・

「こうなったら意地でもIFS 使うより上手くなってやるんだから!!絶対に!!やるわよ、
 バーネット!!!!」

「任せて下さい、お供いたしますジュラ様!!そして何時かは一泡吹かせてあげましょう!!!」

 うむうむ程良い叱咤になって練習に活が入ったようである、まこと良いことである。

「でも・・・・ジュラ様・・・・レベル・・・・幾つから始めます?」

「とりあえずは1からよ、基本でしょ!!」

 何時になったら一泡吹かせられるやら・・・・・・・・・・・・
 


                   間



 ・・・・・とまぁいつの間にか気付けば既に夕食の時間帯になっていた。

 ジュラとバーネットはあの後の練習でとりあえずはレベル28まで上がることに成功した。
 最高の上限が50だと考えると上出来だと言えるであろう。
 その二人はと言うと流石に疲れたらしい、夕食は自室にある食材で何とかすると言って
 とっとと部屋に切り上げていった。
 ディータはと言うと調理クルーの手伝いに言っている、バーネットがいないときはディータが
 調理クルーのヘルプをしているのである。(調理クルーに威厳はないのか)

 で、我らが主人公のアキト君はと言うと・・・・・・・・


〜第一艦橋渡り部廊下にて〜

「ヒスイ〜〜〜、何処だヒスイ〜〜〜〜、頼むから戻して〜〜(泣)」

 漢を取り戻すために鋭意捜索中であった(笑)
 いや〜何かの例えじゃなくて本当に文字通りなのがアキトらしい。

「全く何処行ったんだヒスイ、お頭に聞いても知らないって言ってるし・・・・ヒスイの
 行きそうな所はと言うと・・・・・・」

 何かまだあってから一日強しかたっていないのに数年一緒にいる兄妹みたいな口振りである。
 まぁ実際ヒスイとは本当に心の底から分かり合っている仲なのである。
 こういっては失礼だがナデシコクルーの大半よりよっぽど分かり合えている。

 そうしてヒスイを探していると曲がり角に小さい影を見つけた。
 大体ヒスイぐらいの大きさである、ヒスイかと思い近づいて声をかけてみる。

「そこにいるのはヒスイかい?」

 しかし返ってきた声はヒスイのモノではなかった。

「あ・・・・アキトさん、・・こんばんわ・・此処におられたのですね・・・・・・」

 テンホウであった。但し髪はお風呂上がりなのか下ろしている。
 こうしてみてみるとヒスイとはよく似ている。
 しかし双子と言うほどではない、そう、例えるならルリとラピスのような・・・・・

「やあ、テンホウちゃんだったのか、こんばんわ。しかし此処におられたって?」

「はい・・・調理室の方を覗いてもおられなかったようなので、それでです。」

「えっ!?ひょっとしてテンホウちゃん俺を捜していたの!?」

「(コクコク)」

 アキトが少し驚く、自分を捜すような理由が思いつかないからである。
 するとテンホウの方から答えを言ってきた。

「あの・・・その・・・・昨日のじゃんけんで二番目に勝ったのが私だったので・・・
 ・・その・・・今日アキトさんが泊まる部屋は・・・・・・(///)」

 成る程ようやく理解する、テンホウは自分の部屋に招くためにアキトを捜していたのである。
 ああ、成る程と手を打ちながら、わざわざごめんとテンホウの頭を優しく撫でる。

ポムッ ナデナデナデナデナデナデナデ・・・・・・・・・・
            ひゅううううううう ボムッ ボムッ

 あ〜、その、そろそろやめといた方がいいぞ。テンちゃん花火が上がる、上がる
 しばらくそうしていた後、もう少し続くかと思ったこれは一つの音で中断した。

クゥーーーッ キュルキュルキュル

「あ!(///)」

 テンちゃんのお腹が鳴ったのである(萌)

「あの・・・・テンホウちゃん・・・・ひょっとして夕ご飯食べずに俺を捜してくれてたの?」

 アキトが料理人としての罪悪感と確認の意味を込めて念のため聞いてみる。
 しかし、テンホウは赤くなりながら横に小さく首を振る。

「(フルフル)」

「え、それじゃあもしかして・・・お昼ご飯から食べてないの!?」

「(コクコク)」

「ひょっとして【デザーツ】の調査のせいで昼食を抜いてでも調べてたの!?」

 これはアキトがいた世界で一回目のホシノ=ルリに当てはまることであった。
 彼女はまさに機械的に仕事をし、自分の体調管理が出来ていなかったのだ。
 まさかこの娘までそういった事に!?と思って聞いてみる。
 しかし違っていた。

「・・・いえ・・・お昼時に調理室には行ってみたのですが・・・・その・・
 ・・アキトさんがいませんでしたから・・・・・」

 それを聞いてアキトは雷に打たれた思いであった。
 つまりこの娘は朝食の時に自分の料理を気に入ってくれて昼食も自分が作った料理を食べに
 来てくれようとした、だがその自分はシミュレーション施設に篭もりきりであったために作れず
 結局彼女はお腹を空かせたままと言うことになっているのだ。
 その事に気づいて深く反省する、身体の表現で!!

ダキッ ギュウウ

「ごめんね・・・テンホウちゃん・・・・本当にごめんね・・・・」

 テンホウを胸に抱きしめながらテンホウに謝るアキト、だがやっている本人は気付いて
 いるだろうか?今の自分は女性の体になっていてDカップはあることが(爆)
 抱きしめられているテンちゃんはと言うと・・・・・・・・


「あ、あの、その(///) 」

 突然抱きしめられて驚いているもののアキトから漂う甘い香り、豊満な胸から伝わる
 柔らかい感触とその暖かさ、そして何よりアキトにしてもらっていると言うことで
 既に幸せ絶好調、意識は妄想の世界さ!!(核爆)


 それを影から見ている小さな人影がいた。その人影は少し逡巡して悲しそうにした後、
 何かを決意した瞳をしてその場から文字通り消えた。
 言うまでもないがヒスイである、何を決意したのか?

 ・・・・・それはアキトに関係しながら関係の無い事とだけ記載しておこう・・・・・・





 〜しばらくした後の廊下にて〜

「えっと、本当にごめんね。いきなり抱きついちゃったりなんかして・・・・」

「いえ・・・女性同士なんですから構うことありません・・・・(/// )」

「本当は男なのに(泣)」

 アキトとテンホウが歩いていた、やはり調理室に行っても自分を怖がっているクルーが
 いるだろうということでテンホウの自室で作ることになったのだ。
 とりあえず食材は取ってきたので今から部屋へ向かっているのである。

 そんなこんなで文字数の都合もあってテンホウの部屋に着いた。


「ここが私の部屋になります・・・・どうぞ・・・・・」

「それではおじゃまします。」

シュィィィィィィィィィィィン

 毎度お馴染みの軽快な音と共にドアが開く、そこに映っていた光景は・・・・・

 装飾品が一切施されていないシンプルな部屋・・・・・・では無くて、
 何処か少女らしさが感じられる部屋であった。
 
 淡いピンクで統一された壁面、この時代ではレトロチックでレアな木材で出来た家具
 机の上には布で作られている青リンゴの置物、その横には小鳥のモビールがある。 
 そしてベッドの上には大きなクマから小さなクマまでの人形が飾られている。
 どれも人としての温かみ、そして落ち着きを与えるモノばかりである。

 こうした素晴らしくインテリアの行き届いた部屋をアキトが見惚れているとテンホウが
 声をかけてきた。

「あの・・・・やっぱり変だったでしょうか・・・・エズラさんにインテリアを教えてもらって
 自分なりにやってみたんですが・・・・・・」

「い・・・いやいや全然変じゃないよ。ほら、ただ昨日ディータちゃんの部屋に行ったおかげで
 女の子の部屋に大して少し偏見が出来ていたみたいで。」
 
 心配げにアキトに問うテンホウへ必死になって手当たりの良いことを言うアキト。
 まぁ、只の思いつきではなくて本音が八割方入っているのだが
 ちなみに残りの二割はテンホウとルリが多少被っていたために少し意外であったのである。

「そうですか・・・・・良かった・・・・しかしディータさんの部屋とは・・・・その・・
 ・・お疲れさまでした・・・・」」

 後者の方には気付かずに前者の方だけを素直に受け取ったテンホウ。
 しかし・・・・お疲れさまとは・・・・一体何が起きたんだ・・・・・・
 気になったアキトが聞いてみる。

「あのさ、テンホウちゃん・・・・【お疲れさまでした】って一体・・・・」(汗)

 何があったんだいと続けようとしたのだがテンホウの周りの空気がテツヤを思い出すときのチハヤ レベルになっているのに気付いてすぐさまやめた。
 ・・・・・・よっぽど嫌なことがあったんだろう・・・・・・・
 そう結論づけることにしておいた。




〜テンホウの回想 〜

「さ〜ここがディータの部屋だよ!遠慮せずに入ってね〜〜」
「あらあらディータちゃんったら。」

「あ、ありがとうございます・・・・・・(何?何なのこの部屋は??)」


 何故こうなったのかを回想の中で回想する(爆)テンホウ。
 テンホウがマグノ海賊団に入った頃周りには話せる人が余りいなかった。
 そうして一人で時間を過ごしていると同じブリッジクルーで先輩のエズラが声をかけてきた。


「こんにちはテンホウちゃん、一人で何をしているの?」

 不思議と温かい人であった、周りの何もかも許せそうなその笑顔、身にまとう
 聖母様のような雰囲気。
 そんなエズラの人柄のおかげもあってかテンホウも口を開いていた。


「・・・・・ふぅ〜ん、そっか。入ったばっかりだからあんまり話せる人がいなかったんだ。」

「(こくこく)」

「よし、だったらテンちゃんとお友達になれそうな娘を紹介してあげる♪
 その娘もついこの間入ったばっかり何だけど私のお友達なの。
 私としても二人がお友達になってくれればいいと思うし♪
 それにお友達は多い方がいいよね。」

 その言葉はテンホウにとって初めてのモノであった。
 彼女は自分が何時何処で生まれたか分からずにいたのだ、そして誰からかすらも・・・・
 記憶を幾ら呼び起こしてみても浮かぶのは物心着いてからのことばかりのことである。
 それは彼女が先天的に持つ能力【コネクト】を持ってしても分からなかった。
 メイアに偶然見つけてもらって拾われるまで彼女の周りに人はいなかった。

 周りにあったモノは全て機械、それは壊れかけていてテンホウがいないと動かない。
 しかしながらテンホウはそれらがなければ生きていくことが出来ない。
 いわば【共存者】もしくは【運命共同体】とでも言おうべきであろうか。

 しかしながら今エズラは自分を友達として認めてくれたのである。
 その喜びは一塩であった、心が熱くなり礼を言おうとしたところで・・・・・・

「あ〜〜〜〜〜〜!!エズラこんな所にいたんだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 爆音によって遮られた。言うまでもない、ディータの声である。
 その爆音は一瞬テンホウの魂を人工重力から解き放ったほどである。


「あらあらディータちゃん、一体どうしたのそんな大声で?」

「うん!やっとディータのお部屋の荷物整理が出来たの!!だからエズラにも見てもらいたいの!! ・・・・ってあれ、そこにいる娘どうしたの?」

「(キーン キーン)」

 ようやくディータが耳を押さえているテンホウに気付く、しかしながら自分の責任だとは
 気付いていないようだ。


 しかし、こんな爆音に耐えれらるエズラさんって一体(汗)


「ええ、この娘はテンホウ・ミホソラちゃん、それで今ちょうどディータちゃんの
 話をしていたところなの。」

「へぇ〜、テンホウちゃんか・・・・ねぇ、テンちゃんって呼んで良い?」

 それを聞いたテンホウが少し青ざめる、まさかこの超音波系化学兵器の人が
 そのお友達になれそうな人だというのに気付いたからである。

 そんなテンホウの戸惑いをよそに勝手に話は進んでいく。


「・・・で、それだったらテンホウちゃんもご招待しちゃいま〜す!!」

「ええ、そうさせてもらいましょう、テンホウちゃんも一緒にディータちゃんのお部屋に
 行きましょう。」



 そして回想の冒頭へと戻り、その後起こったことは既にテンホウの記憶にはない。
 って言うか既に思い出したくないために意識的に排除したのであるが・・・・・・・・(笑) 
 
 それ以来テンホウはディータの部屋の前を通りたがらなくなっている。


〜回想終了〜




「色々あったんです・・・・そう、色々ト・・・・・・・・」

 かな〜り重たい口調でテンホウが言う、その後辛すぎる何かがあったのであろう。
 
(ディータさん・・・・・あの人はどうしても苦手・・・・・・・)

 ディータ本人にかい!!(笑)

 


 まぁ、そんなのはともかく料理に移ることにしておいた、流石にこれ以上お腹の空かせて
 おくわけにもいかない。

「さて・・・・それじゃあテンホウちゃん、キッチンスペースの方を貸してもらうよ。
 えっと確かメニューの方はグラタンにロールキャベツに・・・・って主食が無かったね。」
 
「ご飯は炊いてありますし、必要有れば即席の主食が冷凍庫にありますけど・・・・」

「いや、即席はどうも嫌いなんだ。ご飯が有るんだったら・・・・うん、グラタンを
 ドリアにしよう、それだったら十分なものになるし。」

 
 ・・・・・・・何か既に、料理人って言うか主婦の会話である(爆)・・・・・・・・


 トトトトトトトトトトンッ 

 アキトが包丁を振るう軽快な音が響き、辺りにはドリアのホワイトソースの甘い香りがする。

 トンッ ギュ トトンッ

 その隣ではテンホウがドリアに入れるブロッコリーとアスパラガスの下ごしらえをしている。
 漫画番だと料理下手だったが今回はエズラが一緒と言うことでそう言ったことも出来る。

ジャッジャッジャッ

 そしてドリアの中に入れるピラフの方もどうやら完成するみたいである。
 テンホウが深皿を持ってきてアキトが中に入れていく。
 ピラフの上にできあがったホワイトソースを贅沢にかけて・・・・・・・

「よし、完成だよテンホウちゃん!それじゃあ机の方に運んで置いてくれるかな、熱いから
 気を付けてね。」

「はい、分かりました。」

 テンホウが出来たドリアを机の上に運ぶ、その間にアキトはロールキャベツを皿に移し替えて
 同じく机の上に持っていく。

 これにて何処に出しても立派な夕食の出来上がりである。



【本日のミホソラ家(部屋?)の夕食】

・ テンカワオリジナルドリア

・ ロールキャベツ

・ (追加で)ポタージュスープ

・ 葡萄ジュース(笑)


 不足がちなビタミンもドリアの中にブロッコリー、アスパラガス、そのほか緑黄色野菜を
 入れることでカバー。更にボリュームとしてもロールキャベツがあることで大満足。 
 スープの方は程良い暖まり具合によって食卓を和ませます。
 そして葡萄ジュース(笑)年代物を用意することによって少し大人の気分(核爆)



「それでは・・・・・・」

「「いただきます。」」

 
 こうして既に何処の世界に言っても共通のかけ声と共に少し遅れた夕食が始まる。
 その時間はわずかであっても互いに至福の時間である。

 アキトとしては料理人として食べる人が喜んでくれている表情が見られるから。 
 テンホウとしては・・・・・・言わなくても分かるであろう、無粋な真似はしたくない。

(ふふっテンホウちゃん、あんなに美味しそうに食べてくれて。可愛いなぁ)

(アキトさん・・・・ディータさんには負けない・・・・・・・・)

 
 うんうん、素晴らしく良い光景だ。食卓を挟んで想う少女の想い。
 只・・・・惜しいのはどう見たって今は姉妹にしか見えないことだ(爆笑)





 そうしてこのように平和な時を過ごしているところも有れば、
                  必ずそうで無いところもあるものである。




〜九十九式蛮型シミュレーションルームにて〜



「これがヴァンガードのシミュレーションか。起動方法は・・・・・・・」

 メイアであった。彼女はブリーフィングルームで言った手前、誰も居なくなるまで
 待っていたのであった。
 
 暗がりの中起動用レバーを捜す、そして目的の出っ張りがあったので引っ張ってみる。

ガキン ウィィィィィィィィィィィン  プシュゥゥゥゥゥゥ


 するとシミュレーションポッドの一つが自動で開く、ちなみに本来ならば全てのポッドに電源が
 付いて起動するだけなのだが、なにぶん初心者のメイアは知らない。
 こんな物なのだろうと思いポッドの中に入る。すると意外な声が聞こえてきた。
 

『やっぱりここに来たんだね、メイアちゃん・・・・・・・・』


「なっ!?アキトだと!?」


 突然アキトの声が聞こえてきて驚いて辺りを見渡す、しかしアキトの姿はない。
 そしてよくよく聞くとポッドの中から聞こえてくることに気付いた。

 して、その内容とは・・・・・・・

『一応このメッセージはメイアちゃんだけに当てるモノだと言うことを念のために言っておくよ。
 恐らく今メイアちゃんはマニュアルを読んだが実際に動かした方が早いと思ってここに来ている
 と思うけど・・・・・』

 図星である。マニュアルを読んでみたが男文字で書かれていたので実戦で慣らすことにしたのだ。
 そんなことまで読まれていることを侮辱と思いながら続きを聞く。

『実際この機体は歩くだけならば簡単なんだ、だけど動かすと言うことになると話は別で戦いとも
 なると難易度が増す、それに目標上陸ポイントの【デザーツ】は砂漠の星、難易度は最高である
 と言っても過言ではない。
 だからまずはこのシミュレーターに操縦用ナビを・・・・・・・・・・・』


 そうメッセージが言うと思うとポッド内の画面が変わった。
 何処かの倉庫の中のような風景に移り変わる。

『それではまずこの障害物の無い倉庫内をまずは歩いて。動かし方は・・・・』

 メイアは苛立っていた。これはただの侮辱に思えたのである。
 自分は教えは要らないと言った。それなのに今このようなことを!!
 お節介どころではない。


「ふざけるなっ!!


 辛抱堪らずメイアがポッド内で叫ぶ、すると変化が起こった。
 突然目の前のモニターがフラッシュバックして照明だけ残して消えたのである。
 
 狼狽えるメイアを尻目に更に変化が起こる。




『(ピー)音声パスワード認識:メイア・ギスボーン 本人のモノと確認
 システムチェック完了 これよりマスターを天河=明人様より移行します。』




 モニターが復活したと思うとやけに事務的な声が流れてきた。
 その声は更に続ける。モニターにはその声の表示がされている。 



『マスター=メイア、これより特別プログラム【創造の詔命】を起動します。
 そのためにはエスコートナビ【伊耶那美命】が必要となります。
 このプログラムにはまだそのナビが組み込まれていません・・・・・・・・

        組み込みますか? Y / N  ?           』       


 そしてパネルのYの部分とNの部分が点滅し始める。タッチパネルのようだ。



「これを押せと・・・・いうのか?」

 
 本来ならばそれは別にNを押しても良かったのである。しかしそのときは何故かYを押して
 しまった。


ピッ


『マスター=メイア本人の指紋とデータベースと一致。確認完了。
 それではこれよりエスコートナビ【伊耶那美命】を組み込みます。
(キィィィィィィィン)      完了しました。
 並びにこれより特別プログラム【創造の詔命】を起動します。それでは御武運を。』

 そう言って事務的な口調の声はいなくなった、不吉な台詞を残して。
 そして代わりに・・・・・・・・・・・・・・・


『初めまして、マスター=メイア。私がこれよりマスターのナビをさせていただく
【伊耶那美命】です。どうかよろしくお願いします。』


 更に事務的な口調の訳の分からないナビが現れた(駄目ジャン)
 流石にメイアもこれには参った、こう来るとは思っていなかったのである。
 とりあえず話しかけてみる。


「イ・・・・イザナミノミコトと言ったか?」

『はい、その通りです、マスター=メイア。何なりとお申し付け下さい。』

「その事務的な口調はどうにかならないのか?ナビをされるにしてもやりづらいと
 思うのだが・・・・・・」

『申し訳有りません、そのような配慮はプログラミングされておりませんでした。
 マスター=メイア、どのようにすればよいでしょうか、ご命令下さい。』

「・・・まずはそのマスターというのをやめてもらおう、それとせめてまだまともな応対が
 出来るようにプログラミングされていないのか?」


 
 すると再びモニターが光り、また何かを読み込む音が聞こえてきた。
 そして数瞬後再び彼女が口を開いた。


『分かりましたメイアさん。このようなモノでしょうか、貴女の性格と同じ応対が出来るように
 システムを変えたのですが。』

「私と同じだと・・・・?」

『ええ、即ち貴女の性格が私になるわけです。つまりは子供が親を見て育つのと同じ事であって
 とりあえず今は貴女が目上の方に使う口調を使っています。』


 確かに口調に人間くささが出てきた。だがしかし自分と同じというのは流石に気味が悪い。
 他のは無いか尋ねてみることにした。
 

「待て、他のは無いのか・・・・私と同じというのは見ても聞いても気分の良いモノではない。」

『そうですか。私としては最善を尽くしたつもりなのですが・・・・・・・・・・
 それでは別バージョンに前マスター 須佐之男・・・いえ、天河=明人様が
 私を使われていたときのバージョンがあります。如何でしょうか?』』

「(スサノオ?・・・まあ良い)それにしておけ、流石に今より悪いことはないだろう。」



 多少疑問に思うことがあったが深く考えずにそれに指示するように命令した。
 そして、次に現れたのは・・・・・・・・・・・



「・・・・っ!!!!」

『これでよろしいでしょうかメイア殿。これが我が前主 天河=明人様が使いになられてた
 ときの喋り方です。多少伝法的になりますがお気に召しましたでしょうか?』


 モニター越しにでも惚れ惚れする容姿、瑠璃色の艶やかな髪、全てを魅了するその瞳
 ・・・・・・・・まさにそれは女神としか言いようのない人物であった・・・・・・・

 絶句するメイア、そしてそれを見て悟るモニター状の女神。

『やはりこれも駄目なようですね。仕方がありません、多少勝手ながらやはり先程の方を
 主体とさせてもらいます。』


 そう言って再び先程のモノに戻る。
 メイアが何かを言おうとしたがそれより先に伊耶那美命が言う。


『それではメイアさん、本題の方を進ませていただきたいのですが
 貴女はテンカワ=アキト殿が作られたプログラムに対して反発しました。
 しかしながらそれでは明日行われる上陸作戦において重荷になる可能性が非常に高いです。』


「なっ!!貴様にそのようなことを言われる筋合いなどは・・・・・・」



『有ります。貴女は先程私の新しいマスターとなりました。
 私は貴女に出来る限りのサポートをしなければなりません。
 従ってプログラムマスター【天つ神】による特殊プログラム

【創造の詔命】をこれより発動します。

 警告警告 これより行われるプログラムは上達が認められるまでの棄権は認められておりません
 警告警告 特殊疑似体感装置【兎神】を使用いたします。
      この疑似体感装置により機体のダメージは全て搭乗者へと伝わります。

 尚、疑似医療装置として【大穴牟遅神】を使用します。 

 最後に私自身よりの警告です。このプログラムにはテンカワ=アキト殿は関与していませんので
 下手な甘えは抱かないようにして下さい。以上です、それではサポートに移ります。』


「待て!!アキトが関与していないとはどういうことだ!?それならば何故!?」

 
 しかしそんなメイアの声は既に受け入れられていなかった。

『これよりこの機体のスペックを説明いたします・・と言っても実戦で覚える事に・・・』


 彼女にとって長い長い夜が始まる・・・・・・・・・・


               第五話へ続く          



 
 後書きという名の謝罪兼次回予告。

 すみません、再び宇宙からの意志が
【甘い罠】と【What a Wonderful World】を一緒に書け
 と言ってきたために内容を急遽変更することになってしまいました。

 イタ・・・イタタタタ物を投げないで下さい!!ディスプレイを揺らさないで下さい!! 
 ウイルスメールを急遽作成しないで下さい、送らないで〜〜〜〜


 いや〜本当のことを言うとメイアが蛮型に乗ってダウンするというシーンを作るためには
 どうしてもこうしないといけなくて・・・・・・・・はい、全て私の責任です。

 挙げ句そうするためにはオリジナルの木連兵器は考えなくてはいけないわ、
 自分で勝手に【木連式長刀術】やら「木連式鞭術」を作るなど好き放題やってしまいました。 

 他にも【伊耶那美命】や【天つ神】など色々と波紋を生みそうなキャラクターまで
 作ってしまいました。
 このキャラクターは一体何者なのか、どうしてヴァンドレッドの世界に登場するのか、と言った
 ことは次回辺りではっきりさせたいと思います。

 さて、こんな訳の分からない物を応援してくれる
 住井様、外川様、カイン様、タルスメフィー様、ナイツ様、逆獏様
 信様、ぺどろ様、zerosan様、1トン様、、kcc様
 oono様、イチモンジ速人様、Mixture様、「リン」様、森井様
 覇竜王様、礒野様、匿名希望様、そして掲示板にいつも書いて下さるノバ様。

 皆様本当にありがとうございます。これからも応援よろしくお願いいたします。
 まだまだ意見感想は受け付けておりますのでどうかわずかばかりでもお願いいたします。
 もちろん上記以外の方の意見感想もどんどん受け付けております。


 続いていつもいつもご苦労なことに裏ページへの進出をせがんでくる皆様、
 前回アキトを女装させてからこれでもかって程に女性化をせがんできた発信元不明の?様。
『どうせコスプレするんだったらこれで!!!』とわざわざコスプレ内容を送って下さった
 これまた発信元不明の??様。

 今回はなるべくご期待に添えるように頑張ってみたのですが如何だったでしょうか。
 なるべくリクエストに応えると言った手前やってみました。
 まだご不満があるようでしたらまたなるべく控えめに送って下さい、
 出来る限り善処していきたいと思います。


 最後にいつもいつも用件も無しにウイルスメールだけを送ってくる皆様。
 お疲れさまです、私にやめて欲しいというのがひしひしと伝わってきます。
 実際、私はやめる気など毛頭ありませんし、そう言ったメールも防壁によって遮られてます。
 ですから、送る分の時間だけが無駄な物となるだけです。
 別にやめて下さいとは言いませんが他にするべき事はないのですかと言うことを忠告させて
 いただきます。

 それではこの辺で失礼させてもらいます。ピョロ弐式でした♪


PS 2月17日〜18日にメールを出された方へ。                        
 大変申し訳有りませんでした。私の不手際でサーバーとの接続が切れてしまい、メールを
 出すことが出来なくなっていました。
 ぺどろ様に返事を出した後不通になってしまったのでぺどろ様にしか返事が出せなかったことを
 ここに深くお詫びいたします(平身低頭)    
 何とかアドレス欄にネームだけは残っていたので誰が出してくれたのかだけはしっかりと
 受け取りました。

 こんな事がありましたがまた応援の程よろしくお願いいたします。    

 

 

管理人の感想

ピョロ弐式さんからの投稿です。

・・・ま、この男の女難は今更だし(苦笑)

なにより、とうとう女性化するあたり、行き着くところまで行ってしまったな(爆)

ま、コレから先もきっと女性陣におもちゃにされるんだろうなぁ(笑)