機動戦艦ナデシコ

The Triple Impact


第一話 炎の中で


西暦2185年、火星、ユートピアコロニー宇宙港…。

『何者か』が仕掛けた爆弾により、その建物は炎に彩られ…。

二人の男女がその体から赤い液体を流しながら倒れ伏していた。

そして、それを見つめる少年が一人。

「おや、テンカワ博士の御子息ですか?いやぁ、申し訳ありませんねぇ。しかし、ご心配には及びません。『天国』というものが万が一あったなら、ほぼ間違いなく御両親と再会できますよ」

眼鏡をかけ、スーツを着た男はそう言うと、優しく…そう、本当にやさしく微笑みながら、少年にその銃口を向けた。

一方の少年は、目の前の事態が理解できず…いや、理解することを認めようとせず、ただ呆然としていた。

「では、お会いしたばかりで申し訳ありませんが、さようなら」

ガァン!

「おや…」

彼は一撃で少年を『眠らせる』つもりだった。しかし、その照準はわずかに…彼にとっては大きく外れ、少年の腹部を撃ちぬいた。

「やれやれ…。あなたが殺気を飛ばしたせいで彼が痛い思いをしなくてはならなくなったではないですか…。ああ、可哀想に。あの傷口の位置では死ねませんよ。」

スーツの男はそう言って明後日の方向を向く。その方向には編み笠をかぶり、灰色のマントを羽織った男が七人ほど佇んでいた。

「…先客か」

中央に立つ男はそう言うと、懐から脇差を抜き、構え…、

「滅」

そう呟き、常人には認知不能なスピードで眼鏡の男に向かう。

「チィッ!」

ヒュッ! ガァン! ヒュッ! ガァン!

刃物が空気を切り裂く音と、銃声が炎の中にこだまする。

「まったく…この眼鏡結構お気に入りだったんですよ?」

「ほう…」

見ると、スーツの男の眼鏡は中央から割れ、左腕からは血を流している。

一方のマントの男の編み笠は飛び、右腕からは血を流している。

それを見たマントの男の部下らしき六人が、おのおのの武器を懐から取り出す。あるものは銃、またあるものは上司と同じく脇差を…。

「構わん…。」

マントの男はそう言って部下を制すると、スーツの男に向き直る。

「汝の名は?」

「…プロスペクター。そちらは?」

「…北辰」

そう言ってマントの男…北辰は踵を返し、

「…行くぞ」

「よろしいのですか?」

「我等の任務はテンカワ博士の誘拐。任務の対象が殺されていては致し方あるまい…。」

北辰は部下の疑問に答えると、宇宙港から退散しようとする。しかし…。

「がぁ…。ぐ…おぉ…」

足元に転がっていた少年から睨みつけられていることに気づく。

北辰はニヤリと厭らしい笑いを浮かべ、少年をその脇に抱える。

「隊長」

「なに、只の気まぐれよ」

北辰はそう言って部下を一瞥すると、今度こそ宇宙港を後にした…。


「…ミスター。よろしかったのですか?」

物陰から様子を伺っていた大男が、プロスペクターと名乗る男に声をかける。

「構いませんよ。それに、あの男を始末するには腕の一本でも犠牲にしなければならんでしょうからな」

プロスペクターは男の顔を見ずにそう言うと、少しの間思案にふける。

(もっとも、それは向こうも同様でしょうが…。しかし、何故テンカワ博士の息子を回収したのでしょうね?彼からボソンジャンプの情報を聞き出せるとも思えませんし…。ふむ、そういえばあの時の…あの男を睨んだときの彼の殺気は中々のものでしたが…。まさか、ね)

「ミスター」

男の呼び声に、ハッと我に返る。

「おお、そうでした。それではゴート君、後片付けは頼みますよ。私は傷の手当てと…新しい眼鏡を用意しなければならないのでね」

「了解しました」

男にそう言うと、プロスペクターもまた宇宙港を後にする。

(ククク、自分の血など、前に見たのはいつでしたかね…)

その顔には、笑みが浮かんでいた。

久しく見なかった、『強敵』の存在を思って…。




あとがき


ラヒミス「はじめまして、ラヒミスと申します。皆様、以後お見知りおきを…」

プロスペクター(以下プロス)「何をかしこまっているんですか、あなたは」

ラヒミス「うっ…。ま、第一印象はよくしとかないと。ちゃんとした言葉遣いができないようでは、一人前の人間とは言えませんよ。」

プロス「で、何故私がここに?」

ラヒミス「この小説では、あとがきに一人キャラを呼んで対談する、という形式をとろうと思いましてね。ちなみに次回は北辰の予定ですよ。」

プロス「ほう。で、記念すべき第一話なわけですが…」

ラヒミス「プロスと北辰の対決っていうのは、前々からやりたいと思ってたことです。アキトが宇宙港で北辰に連れられてっていうのは皐月さんからの借り物ですけど、そこで北辰がプロスと戦うっていうのを見てみたいな、と電波が」

プロス「なるほど。で、タイトルのTripleというのはなんです?」

ラヒミス「ま、その辺はおいおい。今の時点ではこれしか言えませんね。それと、『アキトが北辰につれられて木連へ』というネタの使用許可をくれた皐月さんに、この場を借りてお礼申し上げます」

プロス「ふむ。ま、楽しみは後にとっておくとしましょうか」

ラヒミス「あなたの場合は特に、ね」

プロス「さて、なんのことでしょう?」

ラヒミス「ま、いいです。それではこのような稚拙な文章に付き合っていただいて皆様に感謝の意を込めて…」

プロス「またお会いしましょう。…って、私の次の出番はいつになるんです?」

ラヒミス「さあ?」

 

 

 

代理人の感想

プロスペクターさんって

いつから凄腕エージェントになった

んでしょうねぇ(笑)。

 

策士であるのは間違いないところですが、

別にネルガルSSの親分だとか凄腕だとかは公式には誰も言ってないはずなんですが(笑)。