俺が厨房で昼飯の仕込みをしている最中、カズシさんがやってきた。――珍しいことに1人でだ。
きょろきょろと辺りを見回して誰かを捜しているようだったが、まだ昼には早かったから、食堂には誰もいなかった。するとカズシさんはカウンター越しに
「おーいテンカワ。ハルナちゃんはどこだ?」
「ハンガーで機体の整備をしてますよ。あいつがどうかしたんですか?」
「ん? ああ、大したことじゃないんだが……、まあいいか。
いやな、輜重本部の方から人が来てるんだよ。こないだ出した予算要求書、人数が実質中隊規模の割には食料費が過大だってクレームをつけてきやがった。……ったく、吝嗇臭い話さ(笑)」
「食料費が過大……。あ、ひょっとしてハルナのせいですか?(汗)」
「ん? まあ、そういうことだ。……論より証拠。口でどうこういうより、実際に目で確かめさせた方が早いと思ってな。担当の奴にここまで来てもらった」
「……すいません、妹のために迷惑をかけて」
俺が頭を下げると、カズシさんは軽く手を振って、
「気にすんなって。食事の量なんて人それぞれなんだから。第一、彼女が食う分以上の働きをしていることは、みんなよーく知ってるしな(笑)。
ま、そういうわけだからハルナちゃんを食堂に寄越すように言っといてくれ。……少々早いが、彼女だけランチ・タイムだ」
『再び・時の流れに』 〜また勝手に作者公認(笑)外伝〜
大食美神伝説 フードファイターハルナ2
〜降臨編〜
By 李章正
「――いやあ、凄いもんですなぁ。予めお話を伺ってはいましたが、実際にこの目で見てもまだ信じられない気がするくらいですよ。
あんな可愛い女の子があれだけ沢山の食事をぺろりと平らげてしまうとは。世の中は広いもんですなあ。いやいや、感服しました(笑)」
「……では、予算要求についてはあの通りでよろしいですね?」
「勿論結構ですとも。数字にきちんとした裏付けがあるわけですからな。細かいことを言ってすみませんでしたが、これも仕事なもので。お気を悪くしないでください」
輜重本部から実地検分にやって来たという中年太りの将校は、首をふるふる振りつつ、しきりに驚愕の言葉を連発しながら帰っていった。
――あの後、俺はカズシさんの指示通りに妹を食堂に呼び寄せ、彼の目の前で、ちょっと早い昼食を摂らせたのだ。「お客さん」の来意を告げると、ハルナは
「ふーん、そうなの。じゃ、今日はちょっと頑張って食べなきゃね。いつもの食事量が、別に無理しているわけでもなんでもないって、しっかり認識してもらえるように(笑)」
とのたまうと、その言葉どおりに、いつもより10人前余分の食事を平らげて見せたのである。……その結果、あいつの座っていたテーブルには、カレーライス、ラーメン、チャーハン、スパゲティの皿や丼が、分かりやすいように丁度10個ずつ、空になって積み上げられることになったのだった。
にも関わらず、ハルナは別段苦しげに腹を撫でるでもなく、けろりとした顔をしている。我が妹ながら、つくづく底の知れない奴だ。……色々な意味で。
その後、輜重の将校を送り出して食堂に戻ってきた隊長は、一渡りテーブルの上の光景を眺めて、
「ご苦労さんだったなハルナ君。軍隊も所詮は予算で動く組織だから、カネを握っている部門に弱い点では御多分に漏れなくてね。……ま、これでもう、上も何も言ってこなくなるだろう」
とハルナを労った。
「へへっ、どういたしまして。こんな仕事だったら、いつでもOKですよ(笑)」
そう言ってけらけらと笑いながら、ハルナは格納庫に戻っていった。その後ろ姿を見送りながら、カズシさんがふと思い出したように
「それにしても彼女、ナデシコでも同じような食いっぷりだったんだろ? ……あっちでは、今回と同じような問題は起きなかったのか?」
と、俺の脇腹をつついて言った。
「うーん、特にクレームがついたことがあるとは聞いてないですけどね。……整備班で勝手に変なものをこしらえて、プロ……会計の人に怒られたってことは、時々あったみたいですけど」
「ふうん。だが、ナデシコだってネルガルが金を出してるからこそ動いてるんだろう? 民間でやってる分、赤字を出さないための監査とかきついんじゃないのか、普通?」
と、まだ納得のいかない顔をしている。
(ま、そのネルガルの会長に秘書さん、更には大株主までが揃い踏みで乗り込んでますからね、ナデシコには(笑)。……そうである限り、金を出さなくなるってことは、まず有り得ないですよ)
俺は心中そう思ったが、無論口に出すことはなく
「ははは、ナデシコには会計やコンピュータのプロが乗ってますからね。その辺は、多分大丈夫なんでしょう(笑)」
そう軽く笑って、その場を誤魔化したのだった。
◆ ◆
――それから2日後のこと。
お昼時、俺はいつものように厨房で皆の食事作りに精を出していた。ハルナは既に自分の食事を済ませ ――こいつの食事時間をみんなと同じにしたのでは、他の注文が滞って仕方がないから、特別に許可をもらって少しずらしてあるのだ――、今はウエイトレス代わりとしてテーブルの間を飛び回っている。
俺の目の前のカウンターには隊長とカズシさん、それにクラウドの3人が座り、それぞれ味噌ラーメン、塩ラーメン、醤油ラーメンを啜っていた。そこにレイナちゃんがやってきて、俺に向かってミートスパゲティを注文する。
その後、彼女にしては珍しくちょっと深刻な顔をして、
「ねえオオサキ隊長。隊長の目から見て、うちの隊がとりあえず暇になるのって、いつ頃だと思います?」
「ん? 変わった質問だな。……そうだな、西欧方面軍の再建には1年や2年じゃ済まないだろうが、今みたいな遊撃戦力としての活動は、とにかく最寄りのチューリップを潰し尽くすまででいいとも言えるからな。
……ま、4〜5ヶ月あれば余裕。大急ぎに急げば1〜2ヶ月ってとこか。でも、なんでそんなこと聞くんだい?」
「いえ、ちょっと興味があったもんだから……。じゃあ、例えばハルナ1人が、2、3日前線を抜けても大丈夫になるとしたら?」
「あたしがどうしたって?」
そう言って2人の間にひょいっと顔を出したのは言うまでもない、ハルナだ。
「げっ、聞いてたのハルナ?」
「機械いじりは天才でも、そういう所はやっぱり歳相応だなレイナちゃん(笑)。自分の手札を見せずに、相手の手札だけを覗こうと思うんなら、もうちょっと質問の仕方を考えないといけないぜ。
……で、なんでそんなことを訊ねたんだい? 詳しく聞かせてもらえないかな?」
オオサキ隊長に問い詰められると、レイナちゃんは「……あたしが喋ったって言わないでくださいよ」と念を押しながら、渋々語り始めた。彼女の話では、ナデシコに乗り組んでいる姉から先日届いたメールで、上記のような質問をそれとなくするように依頼されたのだという。
更に言えば、俺やハルナにはそのことを悟られないよう、極力注意しろと釘を刺されたとのことだった。
「……一体、どういうことかな?」
「普通に考えれば、この前うちに起こった問題が、ナデシコにも持ち上がっているということでしょう」
カズシさんが首を捻ると、それまで黙って話を聞いていたクラウドが口を開いた。
「ナデシコの食料費にクレームがついたため、できればハルナさんに戻ってもらって、内容の証明をしてほしい。でも、そんな余裕がこちらにあるかどうか分らないし、下手に本当のことを伝えて、ハルナさん達に焦りを与えたくない。
……だからそれとなく、こっちの状況を聞いてきた。そんなところだと思います」
「なるほど……、そう考えれば筋が通るな」
「それじゃ、華麗なる女スパイの任務は失敗ってわけだ。なにしろ、本人にばれてしまったんだもんなあ(笑)」
「もう! それを言わないでくださいよ〜!」
頷くカズシさんの横で、オオサキ隊長がレイナちゃんをからかった。唇を尖らせるレイナちゃんを見て笑いながら、ふと隊長は真面目な表情になると、
「……しかし、ここからナデシコへとなると、とんぼ返りの強行軍でも丸1日はかかる。休憩時間も考えれば、最低2日は戦線離脱を覚悟せねばならないか」
そう唸って、腕組みをした。
「そう、現時点ではそれは苦しいです……。せめて2ヵ月後なら、なんとかなるかもしれないんですが」
クラウドの声に、それまでにこやかだったみんなの表情が一斉に暗くなる。話が深刻になりそうだったので、俺は敢えて明るい声を出し、その雰囲気を吹き払った。
「まあ、ここでそんなこと言っても始まらないじゃないですか。第一、ナデシコから本当に帰還要請が来たわけじゃなし。……取り越し苦労かもしれないのに、今ここで悩んだって始まりませんよ」
「それもそうだな。……さて、じゃさっさと昼飯を片付けて、午後の仕事にかかるか」
「あっ、あたし昼御飯まだだった。ミートスパ急いでねアキトさん」
「了解」
軽く返事を返しながら、俺は視界の隅で、ハルナが先ほどから一言も発しないまま何か考え込んでいることに気づいていた。
◆ ◆
それから何週間か過ぎた。その間にも毎日のように南北の戦場を駆け巡り、何度となく中程度の規模の敵を相手に掃討戦を行っていた俺は、実のところ輜重の監査のことなどすっかり忘れていた。その頃から、何故か戦いのペースが今まで以上に上がったせいもある。
しかし、敵が西欧近辺の残存戦力を糾合して挑んできた、それまでになく大規模な戦いに完勝した結果、かなり長い間平穏が続くことがほぼ確実になり、俺達も西欧も漸く一息つけることになった。
――その次の日、ハルナがこんなことを言い出した。
「ねーねーお兄ちゃん。こんな催しがあるらしいんだけど、参加しちゃ駄目かな?」
そう言って俺の前にハルナが差し出した物、それには
「〜木星蜥蜴掃滅記念〜
西欧地区大食競技会 特別参加招待状」
とあった。……一体何だ、これは?
「今度、西欧の戦況が劇的に好転したことを受けて、祝勝会が開かれることになったでしょ? それに付随するイベントとしてアイドルのコンサートとかと一緒に、大食い大会が催されるんだって。
それに、特別参加しませんかってお誘いが来たんだよ」
「そうなのか……。でも、なんでおまえにこんな招待状が届くんだ? ひょっとして、応募でもしてたのか?」
「まっさかー(笑)。多分、この前来た輜重の将校さん辺りの推薦じゃないのかな? 一応、祝勝会って言うからには軍も1枚噛んでるわけだし」
それならわかるが……、しかし大食い大会となれば、経費だって馬鹿にならないはずだぞ? 或いは参加者には、食い物がギャラ代わりになるってことなのかもしれんが、賞金だって別に要るわけだし……。しみったれの軍が、よくそんな予算を出したもんだな?
「うーん。それについてはなんか、ある人が匿名で資金を出したらしいよ。必要経費は勿論だけど、それとは別に優勝賞金も。
賞金、結構いい額みたいだよ。といっても半分は、予め戦災孤児育英基金に寄付されるそうだけどね。
どっちにしても、軍の懐は傷まないってことみたい(笑)」
なるほど、それならわかる。……分からないのは、そんな催しに出たがるハルナの気持ちだ。
こいつ、そんなに目立ちたがりな性格だったか? それとも……。
「賞金がほしいのか?」
「ううん、そうじゃないけど。結構面白そうじゃない(笑)。それに、他にもあたしみたいな大食いの人がどんだけいるのか、興味もあるし」
そう言われた俺は招待状を裏返して、競技会が行われる日時と場所を調べてみた。……幸い、会場は駐屯地のすぐ近くにある街だ。車で30分も走れば行ける。
これなら、基地への奇襲攻撃でも受けない限り大丈夫だろう。そんな真似のできるような敵戦力は、既に潰し尽くしてあるしな。
「まあ、おまえが行きたいと言うんなら俺は別に反対しない。……だが、一応隊長にも一言断っておかないとな」
「あ、それならもうお願いしといた。2つ返事でOKだったよ。『是非とも行って来たまえ、誰にとっても好都合だ』って言ってたくらい(笑)」
ほう、そうなのか……。でも、好都合ってどういう意味なんだろうな?
「……よし、これでこっちはOK。後はナデシコにこっそりメールを出しとくだけね。ルリちゃん辺りが、早まったことしてなけりゃいいんだけど」
〜その頃のナデシコ〜
「艦長! 前方のチューリップから新たな重力波を感知しましたっ! ……無人兵器、来ます!」
「了解! エステバリス隊、敵の出端を叩いてください。……8時方向、弾幕が薄いですよっ!」
「思兼、ミサイル発射!」
『OK、ルリ』
思兼が対空ミサイルを撃ち出し、ナデシコの懐に飛び込もうとしていたバッタを一度に数機打ち砕きました。同時にリョーコさんたちのエステが、チューリップから出てくる無人兵器群を土竜叩きのように撃ち落としていきます。ヤマダさんがまたうっかり突出して余計な被弾をしていますが、それ以外は概ね優勢を保っているようです。
不利を覚ったか、チューリップは突如バッタを吐き出すのをやめ、逆に残存の無人兵器群を回収して後退を始めました。一旦ナデシコから距離を取った後、形勢を立て直すつもりなのでしょう。しかし、それをみすみす見逃す私たちではありません。
「よーしっ! ルリちゃん、グラビティ・ブラスト発射準備! ディストーション・フィールドの出力は下げてもいいわ。
ミナトさん、2時方向に前進、距離1000! 敵の斜め前につけてください! メグミちゃん、射界に味方が残らないよう連絡! ルリちゃん、発射準備はどう!?」
「後10秒で発射可能です」
「ナデシコは12秒で射撃位置につくわ!」
「エステ隊、ヤマダ機以外は既に安全圏に退避! ヤマダ機も13秒後には退避できます!」
私に続いて、ミナトさんとメグミさんが報告を行いました。それを聞いてユリカさんは1つ頷き、
「ルリちゃん、ヤマダさんが安全圏に待避と同時に主砲斉射」
「了解。 ……? ! 重力波感知! チューリップが活動を再開しました!」
「なんですって!? ……射撃位置につき次第、グラビティ・ブラスト発射! ……射えっ!」
ナデシコの主砲が吐き出した暗黒の竜は、目の前に群がる無人兵器群を次々と舐め取りつつ目標へ突進していきます。そして狙いを過たずチューリップを護衛艦隊ごと噛み裂き、文字どおり粉砕してしまいました。
ヤマダさんの回避がぎりぎりみたいでしたが……、しっかりバーストモードで切り抜けていますね。大丈夫そうです。
あなたが死んだら、悲しむのはアキトさんです。余計な心配をさせないでください。
――そして、その日の戦いは漸く幕を閉じました。
アキトさんとハルナさんが、連合軍への徴用という形で西欧へ行ってしまってからも、私たちはがむしゃらに戦い続け、戦果を挙げ続けていました。……2人の帰ってくる場所を、なんとしても守り抜くために。
最初のうちこそ、アキトさん達を欠いた戦いに慣れてないため些か手こずりましたが、2人の抜けた穴をみんなが少しずつ埋めることで、切り抜ける術を覚えました。具体的には、ナデシコの援護下とにかくエステでバッタやジョロを叩きに叩き、敵が戦力を再編しようと退くのに乗じて戦艦やチューリップに肉薄、至近から主砲をぶち込むという戦法です。
確度は高いですが、その分危険率も相当なもの。みんなが言わば120%の力を出して戦うことで、どうにか勝利し続けています。
……でも、正直言って今のままではきついです。みんな、ぎりぎり一杯まで能力を引き出して戦っていますが、こんなテンション、際限なく持つわけがありません。クルーの練度も上がってきてはいますけど、もう少し余裕を持った戦い方をするようにしない限り、いつまでもこの調子で持ち堪えていくことなど、できる筈もないのは判り切っています。
「――実際、こうもきわどい状況が続くと、不死身の体があればなって、真剣に思うぜ(笑)」
「ああんっ、何寝言言ってやがるヤマダ! まだ殴られ足りねえのかっ!? 人をあれだけ心配させといてっ(怒)」
「ちょ、ちょっとリョーコ(汗)」
更に、問題はそれだけではありません。先月監査部に指摘された、食料費の横領疑惑……。日々の戦いにかまけ、つい忘れがちになっていることですが、タイムリミットはこうしている間にも、刻一刻近づきつつあるのです。
アカツキさんやエリナさんが、裏でいろいろ動いてくれたみたいなのですが……、何分会計監査部は経営陣から完全に独立しているため、問題を根本から無くするまでには至らないようです。なにしろ相手は、完璧に正論で押してくるんですから。いくらエリナさんが遣り手でも、横槍の入れようがないのでしょう。
……なんでも2世紀ばかり昔、多くの大企業において監査が経営から独立してなかったばかりに、重大な経済危機を惹き起こしてしまったという苦い歴史的経験から、そういう体制になっているそうですが。理には適っていますけど、今回のような場合には不都合千万です!
同様に、ムネタケ提督にも打つ手はないようです。ネルガルと連合軍では組織が違うとはいえ、なんといってもカブラギさんは軍からの出向者なのですから、軍の人脈を通じてなんとか彼女を説得してもらえないものかと期待したんですけど。……結論を先に言えば、駄目でした。
――いかにハルナさんの魔法が冴えていようと、過去まで変えることなどできる筈がありません。「変身前の」提督が培っていたような人脈では、カブラギさんに影響力を行使するどころか、逆効果になってしまうのは明らかだったのです。
かといって、直接アプローチしてもらうわけにもいきません。今そんなことをすれば、今度は圧力云々の批判が噴き出すのは間違いないのですから。
「――こんなところで、過去に復讐されることになるなんてね。辛いわね」
「後悔っていうスパイスがなければ、人生って料理の味はきっとボケたものになるでしょうよ……。なあに、最悪でも横領で死刑になるわけじゃなし。なんとでもなりますって。
ほら、これでも食べて元気出してくださいよ、提督」
「ごめんなさい……。あべこべね、当事者に元気づけられるなんて。これじゃ指揮官失格だわ」
――かつてエリナさんも提督も、「汚れ仕事は自分たちの役目」と私に言ってくれました。しかし状況がこうなった以上、最早座視してはいられません。ホシノ・ルリ、これから泥をかぶります。
最初に考えたのは、カブラギさんの弱みを握ること……。けれど調査してみると、彼女は他人に厳しいだけあって、自分にはそれ以上に厳しい人であることが分かりました。あの若さでネルガルに出向しているのも、軍にいた時分あまりの廉直さに周囲から煙たがられ、体よく厄介払いされたということらしいです。
……ということは当然、利をもって釣ることもできないということ。他の人には効いても、彼女には無理です。逆効果になるのは分かり切っています。
――となれば、残る手段は1つしかありません。そう、カブラギさんを冤罪に陥れるのです。彼女を今の部署から外し、ホウメイさんやプロスさんの濡れ衣を晴らす時間を稼ぐために。……矛盾していることは百も承知です。
実は、そのためのでっち上げの罪状や偽の証拠書類の数々も、既に作成を済ませました。後は、これらをその筋にこっそりリークするだけという段階です。
――こんなことをしたら、私は決して許されることはないでしょう。本来なら尊敬すべき相手を、正にその美点故に貶めて、自らの目的を遂げようとするわけですから。
目的のためには手段を選ばないとは正にこのことです。前の歴史で火星の後継者たちがやらかしたことと、何ら変わるところはありません。……それを実行したなら、誰よりも、私が私自身を許すことができないと思います。
でも、それがアキトさんを護るためであるならば、私は躊躇いません! ……例え、それ故に地獄に堕ちることになろうとも。
――決して後悔しない。そう決めたのですから、あの日。
(発動編に続く)
(中書き)
ども、李章正です。
相変わらず、題名の割にあれな内容になっております。
外伝を書く以上、本編の設定に忠実に進めるのが李の主義なんですが、そうするとどうしてもゴールドアームさんの筆力に引きずられちゃうんですよねえ(苦笑)。……ですから、ルリちゃんが怖いのも、つまりはゴールドアームさんのせいなのです(責任転嫁)。
では次回、発動編でお遭いしましょう。……次は、いよいよフードファイトだっ!
代理人の感想
みなさんお待ちかねぇ!
って、それはガンダムファイト。
ともかく、ゴールドアームさんの本編では既に「フードファイター」なる存在が一般化してること。
ゆくゆくはオリンピック正式種目として採用、いや国家間の争いをフードファイトで解決する事になるかもっ!
四年に一度のフードファイトに全世界の国々が代表を出しあい、
最後に食いのこったファイターの国がそれから四年の全人類を支配するっ!
国家の威信をかけて胃袋の限界に挑戦する大食らい達!
「胃袋と胃袋のぶつかりあい」フードファイト!
「所詮食う事でしか己を伝えられぬ不器用な存在」フードファイター!
「俺の胃腸が光って唸る! 飯はまだかと轟き叫ぶ!」
・・・・・・なんかなぁ(爆)。