この物語の始まりは………『漆黒の戦神』の時代より、20年もの昔………ありふれた事故より始まる……。
誰もが良く耳にするであろう、交通事故が……この物語の始まりであった。
何かが聞こえる……・。
今の俺は……自分の体をまともに動かす事も出来ない。
ほんの5分前は、彼女に如何プロポ−ズするか考えながら、運転していたのに………。
突然だった……。
カ−ブを曲がろうとした瞬間………突然制御が利かなくなった車は、ガ−ドレ−ルを突き破って転落していった。
それほどスピ−ドを上げていなかったのが……幸いしたのだろう………。
俺は死ぬ事は無かった………。
だが、体を動かす事は出来そうに無かったが………。
意識もハッキリしていない……。
だが嫌にハっきり聞こえる……。
「どうやら運悪く、生きているみたいだぜ………こいつ……。」
嘲る様でもなく、淡々とした声が聞こえてくる。
「あっそう………それじゃ、研究所に運ぼうか……。」
「しかし何でこんな面倒な事……・。」
「命令だ……仕方が無いだろう……。」
「この車は如何する……。」
「持ってきた死体と一緒に、燃やした方が良いだろう……但し……メ−タ−は細工しておけ。上の方も、もうそろそろ終わるようだ……。」
「はいよ。」
命令?
細工?
一体なんの事だ?
ただ一つ分かった事は……どの道……彼女には会えそうも無いと言う事だ……。
全く自分のやわな体には、愛想が尽きる……。
「良しこいつを運ぶぞ……・。」
「途中で死んじまったらどうする?」
「如何もしないさ……。どうせ死体も消えるんだ……むしろ途中で死んじまったほうが、こいつにとっては、よい事かもしれねえぜ……。」
「同感……。」
どっちにしろ俺には、未来はなさそうだ……。
御免……ロゼリア……婚約指輪……渡せそうに無いよ………。
そんな事を考えながら……・俺は意識を失った。
そして、物語は『漆黒の戦神』の時代より………400年後の時代に移る。
宇宙の大航海時代真っ只中、海賊や不法航海者などが跋扈する時代。
戦神の名は、宇宙に伝説となりて、全ての人に知れ渡っていた……。
あらゆる星系に……あらゆる宇宙の民に……。
機動戦艦ナデシコ
『時の流れに〜アナザ−スト−リ−〜』
〜不死者〜
第一話虚ろな目をした男
ドオオオオオオオオン!!
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥウン!!
破壊されて行く音が聞こえる。
最も、艦内であるが故に聞こえるのだが……。
ちなみにこの船は、正式に登録されていない船である………。
全く………不自由な時代になったものだ。
船で、宇宙を航海するのにも、許可証が必要だとは……。
まあ、この船を攻撃しているのは、軍ではない事を、予め言っておこう。
え?
誰かだと?
こういう船を攻撃するのは、何も軍だけではない。
海賊だ。
私はマスタ−とは違って、人のものをぶん取る不貞の輩どもの事だ。
我々は不法航海者ではあるが、決して自分の利益の為だけに、訳も無くぶん取ったりはしない。
じゃあ、なにか?
訳があれば、やるのか?
そう言われると、強く反論は出来ない。
なんせ、メンテナンスや、改造そして食料には金が必要であるからして……。
はっ!!
いかんいかん。
離しが逸れてしまいましたね。
今我々は、攻撃を受けています。
それを聞いているのは、この船に置ける唯一の人間であらせられる、私のマスタ−と私だけだ。
今マスタ−は何処にいるかというと、ある人型機動兵器のアサルトピットの中におられる。
その中で、マスタ−は時を待っている。
そうこの“ルシファ−”が起動する時を………。
その前に沈んだとしたら?
そしたら、それまででしょうな……。
まあ私もマスタ−も、運が無かったって事で、死ぬだけでしょう。
気にしない気にしない………。
『デ−タ転送率………50%……60%』
そう表示されていくモニタ−を見ながら、パネルをトントン叩いて見る。
まあ、結構膨大な量だと、改めて認識した。
「旧式のくせに、メモリ−だけは、新型と引けをとらんとは……これで、融通が利けば、完璧なんだがなあ……。」
ふとそうもらして、苦笑した。
それに反論するかの様に文字が表示される。
『それは心外な……何時も私は、タカト様の命令を、最優先しているではありませんか……それなのに融通が利かないとは……心外です!!』
………鏡を見て、もう一度言って見ろといいたい……。
「では、聞くが………この前、アルファ星系に行った時、お前なんで、週刊誌を注文したんだ。俺の名前で……俺に許可無く……。」
まあ、実際は本ではなく、メモリ−チップなのだが……。
『分かっていませんね……。』
さも頭の悪い子供だ、と言わんばかりの文字で返す想兼。
『世情に疎くなっては困る……というこの親心がお解りに成らないとは……私は悲しゅう御座います。』
「あんなもん、嘘八百が殆どのゴシップ誌じゃないか。あんなもん信じたら、世間様の良い笑い者だぞ。……それとだ…(ドオオオオオオオオオン!!)この前はこの前で、俺が受けた依頼全部キャンセルしやがるし……。……で、あとどのぐらいもつ……この船。」
『もってあと……十分でしょうか?……僭越ながらあの依頼は、恐らくご主人様の受けた依頼ではないかと思われまして………無一文の状態でデ−ト……何て幾ら規格外のお方でも、そんな非常識な事をなさる筈が無いと思いまして……、私が見込んだお方が、そんなご自分の首を締めるような行動をなさらないと思いましたから、間違いを訂正した次第です。』
強調したい部分だけ、大きい文字にしやがって…………この野郎…………。
………確かにあの時は無一文だったさ………。
間違いなくな……。
しかし消した依頼の中には………。
「まともな依頼も入っていた筈だよな………。」
『それはご安心を………身になりそうなものだけを厳選し、ご主人様の予定表に入れておきましたので………ああ、ちなみにほかの依頼は、仲介料としてお金を頂きましたので……。』
「その話も初耳だな………で金は?」
そこで『はあ』とわざとらしく溜息をつき、まるで「頭の悪い餓鬼だ。」といわんばかりの声でこう言いやがった。
『“ルシファ−”………予定より早く出来ましたね……。』
ほお……そうかいそうかい……そう来るかい。
「つまりお前は、主人である俺に黙って、依頼をキャンセルした挙句に、勝手に俺の名前を使って、依頼を売り飛ばした……・と言う事か…。」
本当にお前……俺のプログラムした電子頭脳か?
なんか遣ってる事…………あくどいぞ。
『親は子に似ると申しますが……プログラムは誰に似るのでしょう?』
「少なくとも、俺には似ていないな………。」
『その見解は………間違いなく、間違ってますな………。自分の非も認める事も出来ないとは……私は悲しゅう御座います………ちなみに…・現在95%です。』
前の方と後の方………なんか脈絡が無いぞ………。
「まあ……いいさ………水に流してやるよ。」
さほど怒っている訳じゃないしな………。
まあ、こんな馬鹿話をしてりゃ、くさくさした気分も、多少は軽く………成るのだろうか?
俺がいった言葉に、こいつは真面目な声でこう返した。
『ありがたきお言葉……これからもまた、いっしょう精進致します。』
………頼むから………これ以上余計な事しないでくれ………まじ疲れる……。
「…………それと………俺はもう……テンカワ タカトじゃない……。奴は………この船でもうすぐ死ぬ……・。」
俺の言葉に、モニタ−は一旦沈黙し………暫くしてまた表示された。
『しかし私にとって、貴方様はタカト様であり、それ以外の何者でも御座いませんが?』
だから、頭が硬いってんだよ。
「フォトビア=ラトウ………今は、それ以外の呼び方は許さん。」
何もできずに逃げて来た、人間はもはや必要無い……。
過去を変える術を手に入れた今………これから消える男に、この名は不必要だ。
俺の決意を汲み取ってくれたのかは解らないが、
『了承』
とだけ表示された。
まあ最もこの名も、この船と心中しちまったら、無意味なものだが……。
まあ………それでも構わんか………。
そんな事を考えていると、
『デ−タ転送完了』
と表示された。
『申し訳ありません………予定より早すぎましたか?』
「別に……早く起動できるに越した事は無いさ……。じゃあ………始めようか……。」
『了承』
笑みを浮かべて見る………。
人に言わせると、虚ろな笑いと良く言われるが……。
それでも俺には、もはやこんな笑い方しか出来ない。
長い……長すぎた孤独………。
それが俺の心に、大きすぎる空洞を空けていた。
「君がいれば………変わっていたかもしれないね………。」
だから久し振りだ………。
心の底から楽しいなんて思えるのは…………。
会いに行くよ………そして変えて見せる………。
「“ルシファ−”起動………」
『起動します…………相粒子エンジン始動………11のリミッタ−は?』
「解除はするな。操縦は全てこちらに回せ。武器系統のチェック。」
『ルシファ−ズ・フェザ−、ウィング形態で6枚共に異常なし。ギガ・スラッシャ−ライフル2丁異常なし。歪曲砲異常なし、グラビティ・ブレ−ド2本異常なし……操縦は全てマニュアルに………マスタ−準備全て良しです。』
「………行こう………まずはこいつのテストだ……。」
『了解』
「次元断層フィ−ルド展開。」
『展開完了』
「行こうか……・。」
堕天使の名を冠したエステバリスは、沈み行く船の中から産声を上げた。
船を出た我々が見たのは、この船を囲んでいる、十数隻の戦艦であった。
一世代前の戦艦のようだが………。
「例の如く、中身はバリバリに改造してそうだな。」
いかにもうんざりだ、といわんばかりの声が響く。
『どうやら彼等は、近頃頭角をあらわし始めた、『ラッツ』一家の様ですな。』
そうといっても、彼等は、ここの宙域のものではないと記されているが…………。
おやまあ………ベ−タ星系からの進出者ですか。
それにこれはかなりあくどい事遣ってますなあ。
殆ど皆殺しですか?
………まあ其の他に出て来る出てくる。
ざっと、大まかな事を、説明した。
「何故解る?」
『あの船をクラッキングしました。』
「………また人に黙ってそう言う事を……。」
うんざりした表情でそう返してきましたが…………驚いてはいませんね。
さすがです。
『宜しければ、私が掌握しますが?』
「………いい。」
人の善意は受け取るものです………ご主人様。
「マシンチャイルドがいたら如何する………それにお前が掌握したら、こいつのテストにならんだろうが……。」
後の言葉には納得致しますが………。
『私がご主人様を裏切るとでも?』
「その可能性は無きにしもあらず………。」
即答でそのような冷たいお言葉………。
反論しようとした所、ご主人様の言葉に遮られた。
「敵が来る………。始めるぞ!!」
『了承』
まあ………仕方がありませんな……・。
『しかし……後で、ジックリ聞かせて頂きますぞ……。』
敵の人型起動兵器を、検索なされていた、ご主人様が感心した様に私に話し掛けて来た。
「量産型『ブラックサレナ改』60機?良く金があるものだ………。こっちは明日の食料費にもヒイヒイ言っているのに……。」
本来のブラックサレナのボゾンジャンプ機能を排除、そして、あらゆる能力をマイナ−ダウンさせた機体である。しかしそれでも、この機体は、軍の一般兵士を振りまわす代物だ。
これが登場した時、
「ようやく時代が、『漆黒の戦神』に追いついたか?」
揶揄するように笑っておられたのを思い出した。
しかし私の記憶によれば、これはエリ−ト部隊の、標準仕様機の機体だったような気が…………。
それよりも気になる事が…………
『しかし彼等は何故、この星系に?』
「こっちでは、あまり名が知られてないからな。仕事がしやすいんだろ……。」
おお、そういえば、こっちでは、全く名が知れてませんな。
しかしベ−タ星系でも、彼等の被害は余り出ていない。
アンダ−ネットで調べみれば、何かわかるかもしれないが…………。
深く推察していたが………、
「どうやら軍とパイプがあるらしいな……あるいは………………。」
という、ご主人様のその言葉で我に返る。
成るほど………密約か。
つまり飼い犬になる代わりに、小規模の海賊行為を黙認してもらい、軍で不用になった、武器の横流しをしてもらう。
どうやら、飼い犬の類らしいのだが…………そうならば、ご主人様の最も嫌いな種類の海賊だ。
もう一度検索して見た所確かに、ご主人様と同じ様な情報を、手にいれる事が出来た。
では。もうちょっと検索して見ますか。
『いかがなさいますか?』
聞かなくても良く分かっていたが、念の為聞いてみた。
この様な殊勝さが、秘書には大事なのだ。
「消す。」
短く………しかしきっぱり答えた場合、ご主人様の機嫌が少し悪い証拠だ。
「単なる海賊ならば、適当に遊ぶつもりだったが、ブラックサレナ……か。飼い犬に餌を与え過ぎだよな…………。バランス崩すって事わかんねえかな?まあ問答無用にあっちも遣ってくれた事だし………無線は無視な。きても繋げるなよ………。」
『降伏を求めて来た場合は?』
「知らん………。」
まあ最も、私も彼等にいい印象を持ってはいない。
いきなり、砲撃してくれた礼はたっぷりせねば……。
攻撃が集中し始める。
普通の機体ならば、もうとっくにお釈迦になっているほどの、集中砲火だ。
いや、どんな強固なディスト−ション・フィ−ルドすらも、この砲火ならばたやすく破れるだろう。
『フィ−ルドの許容値は、超えてませんね。』
「この5倍は耐えられそうだな。」
『十倍でもいけます。』
「そろそろ動くか………このとろい攻撃では、眠くなる。」
『私も些か、退屈してました。』
ご主人様が操縦しているこの機体………彼等にはどう移ったのだろうか?
「悪夢だ………たった一機に………艦隊が全滅寸前だとお!!」
あの黒い翼を持った青い機体………。
俺達がさっき沈めた、青い船の中から出て来た、機体は、今俺達の蹂躪せんとしているかの様に、次々と俺の部下達を静め始めていた。
部下が乗っている、ブラックサレナはあの機体から見たら、そこに立っている人形とさほど変わりは無いだろう……。
最初出て来た時は、あっちの方がされるがままの人形の様でだったのに……………。
括弧つけた自殺志願者か?
ヒ−ロ−気取りの馬鹿か?
そんな事を思っていた。
其の時には、あれをどう生け捕りにするか、と言う事に頭がいっていた。
いやもしかして、あの中身も何かに使えるかもしれない………。
あの船は、何処にも登録されていなかった。
しかしもしかしたら、どこぞの会社の実験船かもしれない。
もしかしてあの機体も?
ならば、あの機体を軍に売れば…………高く買ってくれるかも?
いやいや………あれを調べて、ライバル会社にでも売ろうか?
だけどよお………。
だけど気づくべきだったんだよ………あの機体が………あの攻撃の中で、全く傷ついていない事に!!
そして動いた瞬間、ありとあらゆる攻撃が、かすりもしなくなった………。
逆に聞こえてくるのは、部下の悲鳴めいた声のみになっていた。
「艦長!!サレナ1号機から8号機まで応答ありません。」
「艦長!!戦艦『ウインド・ミル』5・6・7・10・11番艦撃沈しました!!」
「サレナ18号機・21号機同士討ちで撃墜!!」
「50号機から60号機全滅です!!」
まだ………10分もたってねえよ………。
「て……・てててててててててて撤退だ!!全艦……全速で撤退!!」
「りょ…………了解!!」
そう言っている間にも、どんどん命が消えて行く。
ドオオオオオオオオオオオン!!
ドォン!!
ボオオオオオオオオン!!
次々と起きていく爆発。
二つのブレ−ドを持った機体が、それを動かすたびに、命を刈り取って行く。
その爆発音が、俺にこう告げているみたいだった。
《次はお前だ!!》
と………。
「あ………悪魔だ………。」
誰かが呟いた……。
「俺達は…………悪魔を怒らせちまった………。」
もはや、サレナは八機、俺の戦艦は、2隻を残すのみとなっていた。
撤退する暇すら無しかよ。
コミュニケから、こえが聞こえる。
『嫌だああああああああああ!!俺はもう嫌だあああああああああ!!死にたくない……誰か………誰か助けて………』
その声が途絶えたと同時に、目の前のサレナが、消えた。
『ヒィィィィィィィィィィィィ!!』
『お頭あ………おらあ………抜けさせてもらうぜぇ……。』
そいつ等の機体も逃げる間もなく、行動不能にさせられていた。
機体性能がまるで違う…………。
信じられなかった。
軍御用達のブラックサレナが、あっという間にごみ屑になったことも、俺の戦艦が、あっさり沈んだことも………。
そこいらの軍の艦隊とも、渡り合っていた筈なのに…………。
この時代…………多くの海賊が互いに凌ぎを削って生きている。
頭が良ければ、軍に多少目こぼししてもらうように、パイプを造る。
俺は少なくとも、そうやって生きてきた。
そしてもう一つ、大事なものがある。
実戦デ−タだ。
海賊同士の争い。
貨物船や旅客船の護衛船や、星間警察との戦い等で得たデ−タを軍の開発部に渡す事だ。
それを渡す事によって、俺達は、古くなった機体と試作機を、横流ししてもらっていたのに………。
「降伏………する………通信を………。」
俺は力なくうなだれた。
如何すりゃいいんだ、この場合?
自信も何も砕けちまった。
こんな化け物………襲うんじゃなかった。
ほかの部下達は、恐怖で声が出せない様だ。
うなだれているもの。
蒼ざめた表情のまま………画面に魅入っているもの。
切れちまった者………。
訳のわからない声を上げているもの。
様々だ。
泣いている者もいる。
だが、次の通信の画面表示を見た時…………。
俺にはもう………死以外に選択肢が無い事を知った。
『知らん』
どっちにしろ………俺達を生かす気は無かったらしい…………。
そんなの………ねえだろお!!
『聞こえるか!!おい!!頼む!!助けてくれ!!お願いだ!!何でも話すから、たすけっ!!!』
何かが聞こえる。
雑音だろうか?
『命乞いをしておりますが?』
「あいつら………いきなり襲ってくれたよな?」
『はい……。』
「非礼を非礼で返してもいいと思うか?」
『相手によります。』
「こいつらは?」
『当てはまる者と思われます。』
「そんじゃ、後腐れが無いように、殺そうか?」
『それが宜しいと思われます。』
恐らくこいつの事だ………。
この会話を、向こうに流している事だろう。
悪知恵が働くよなあ………。
本当に誰に似たんだろう?
さて彼等はどう選択するだろう?
大まかに2パタ−ンかな?
狂った様に攻撃を仕掛けてくるか。
はたまた、何がなんでも逃げ様とするか。
自分だけ、という選択もありだ。
俺としては前者を選んで欲しい。
後腐れが無い、と言う事は良い事だ。
後々つけられる心配が無い。
ん?
おやまあ………突っ込んで来たよ。
戦艦のスピ−ドと重量というのは、馬鹿になんない物だ。
さて、………自分の反応テストといくか。
敵艦のフィ−ルドに振れる瞬間まで待って………。
「どうだ!!」
ぎりぎり避けられたみたいだ。
『マスタ−………敵艦と反対側に逃走している。小型艦があります。』
ほうほう………どっちかが囮か。
『いかがなさいますか?』
「変更なし………殲滅……。」
『了承』
小型艦をまず追うか。
「リミッタ−3まで解除。」
『了解』
さて、荒馬振りを見せてくれ………“ルシファ−”。
アクセルを踏んだ瞬間、一瞬シ−トへと押しつぶされる感じがした。
「理論上は10で、光速に近づける筈だが………かなり無茶な物を造ったな………俺も………。」
『後二秒で接触』
「………じゃ………。」
ソ−ドを横になぎ払う。
耳を劈くような爆発音が、聞こえる。
「次………。」
『我々の右手の方面に………。』
「ついでだ………ギガ・スラッシャ−のテストも行なう。」
『準備はすでに出来てます。あの小型艦を壊した後、40%の出力で、発射できます。』
「………お前は優秀だよ…………。」
嫌味なほどな。
おれが、これの試験を行なう事を、予測していたのだろう。
やがて、もう一つの小型艇に追いついて、斬り割いた後、
二隻の戦艦のほうを振りかえる。
距離………15キロ
「スラッシャ−・ライフル………ダブルファイア。」
その呟きと同時に、トリガ−を引いた。
エネルギ−波が、二丁のライフルより放出される。
それが、二隻の戦艦を貫いたと同時に、ぱあっとその地点が明るくなった。
「ぎりぎりの距離だったかな?」
『小型相転移砲のような物ですからね。威力は、大きいと思いますが、連射するならば、25%に押さえたほうが宜しいですな。』
「戦闘時間20分………。」
準備運動にはなったか………。
『しかし量産型とはいえ、ブラックサレナをよくあんなに購入できましたな。』
「軍の兵器は、企業から買っている。そして軍と企業が欲しいのは?」
『実戦デ−タ。』
軍はその機体が設計図通りのスペックを誇るかを知りたくて…………そして企業は、次の機体への情報収集のために…………。
そしてもしそれを、デ−タとしてそのサレナに入力できれば…………。
「そうだな。海賊さんは、ハンタ−や護衛船としょっちゅう揉めるから、デ−タを集めるには最適と………。」
『もしかして、ハンタ−などにも………。』
「その通り………虚しい事だけど、図式を変えれば、企業同士の代理戦争って訳。」
『しかしもし、デ−タを送らずにとんずら、もしくは、脅迫したら?』
「まあ聞けよ。極端な話一世代前の量産型ブラックサレナは、今や金さえ払えば、一般人でも手に入れられる。それにそれを作っているのは何処だ?」
『ネルガルでしょうな。』
「テンカワ財閥ネルガルグル−プを、敵に回したいとお前は思うか?」
『いえ。』
成るほど…………そんな事する人間は、よほどの自信家か無謀ものだ。
「それにあちらさんも、狂犬は御免だろうさ。餌で釣れる奴等のほうが操りやすかろ?」
一々聞くな、といいたげに、答えるご主人様。
まあ確かに………盗んだデ−タと同じ答えでしたな。
貴方がどんな考えを持っているか知りたかった………・何て言ったら、パネルに水をこぼされそうだ。
「さて本番か。タイムゲ−トシステム展開。」
けだるそうな声がその空間に響き渡る。
別に面倒とかそう言う訳ではない。
いつのまにか、これが普通の話し方になってしまっただけだ。
『了承………ゲ−トを開きます。』
「その中に突入の後、ボゾンジャンプを開始する。」
『了解………。』
「さあ………帰ろうか………400年ぶりのわが故郷に…………。」
『ええ………我々の、古き故郷に…………。』
なんの感慨も浮かばないのは何故だろう?
きっと心が老いているからだろうな。
始めは………気が狂いそうだった。
こいつが、話し相手になれるまで………孤独だった。
気が狂いそうに成った事も何度かあった。
実際くるっていたかもしれない。
そして人型の人種が住んでいる星を見付けた時、俺は狂った様に笑っていた。
喜びの方が大きかったのだろう………。
あまり良く覚えていないが………。
色々な星に行き、色々な事を学び、苦汁や悲しみを味わった。
もっとも辛かったのは………別れ……。
たった一人………誰もが俺を老いて死んでいく。
目の前で…………友になった人が死んだとき、俺にもう一度、愛する事を教えてくれた人達が死んだとき………どれだけ無力感と絶望を味わったことか………。
そして誰からも忘れ去られて行く恐怖…………。
それから介抱される手段を………俺は見つけた………。
………もしかするとそれは………今までの全ての人生を、否定する事になるかもしれないが…………。
それでも俺は…………止まれない。
「目がさめたかね?タカト君。」
「オ……・ウオ……ウ………・ア。」
(ここは………なんだ………こえが出せない。)
「体も動かせんだろう?じつは君には、新型ナノマシンを常人の10倍注入してある。気分はどうかね?」
「ウ……・ウ……・ウ………。」
(良いわけないだろう………うう………頭が痛い………。)
「君は四日ほど眠っていたのだよ。その間君には、色々手伝ってもらった。と言っても、ナノマシン実験体をしてだがね。君ならわかるだろ?ドクタ−テンカワ。あの新型だよ………。肉体強化だけでなく、性格にも影響が出てしまうのが欠点だよ。最も君の専門とは違うが………それでも聞いた事ぐらいはあるよね。」
(き………貴様………。)
「そう睨まないでくれ。わが社も、たぶん君を失う事は痛手だと思うよ。しかしそれよりも、クリムゾンと対等な合併の話は、魅力的なんだそうだ。」
(俺は………聞いてはいない………。)
「花嫁と花婿、っと言えば解るよね?そうわが社の令嬢ロゼリア様と、クリムゾンの血縁者………さぞ大きな会社になるだろうねえ………。」
(おれが…………それほど邪魔か…………。)
「それから君の研究は、ほかの人間が、継ぐことになったから、エステバリスの基礎理論は君が完璧にしてくれたし、あのプログラムも、骨組はしっかり出来てるそうじゃないか。後は君の方針に従って行けば、完璧な物になるだろうね。おっと……失敬失敬、完成した頃には君は、亜空間の塵になってるのか。いやあ………残念残念………。」
(性格が歪んでいるのは相変わらずか………。)
「何故君が、亜空間の塵に成るのかだって?ボゾンジャンプの実験台さ。生体反応を遮断できる箱に君を入れる。後はそれを、ジャンプさせるだけで、はいあの世行きって訳さ。
なんせ君の兄上の説明によると普通の人間では、耐えられないって話じゃないか。でも偉大なる君達兄弟に敬意を表して、君にあるものを打ってあげよう。これはね。ナノマシン除去用に作られた物なんだけど………欠点があるんだ。ナノマシンを除去した後、今度は人の細胞も破壊し始めてしまう。せめて自分の兄上に、遺言を残して差し上げなよ。最も、これが効き始めるのは、実験が終わると同時だけどね。」
人畜無害な笑みは、どす黒い感情の表れの様に感じられた。
始めからこいつとはそりが合わなかった。
最も分野が違うから、すぐに会う事もなくなったが……。
「それじゃ、天才君、さようなら。」
そこで俺の意識も再びなくなった。
第一話完
どうも皆さん始めまして。
ランと申します。
一応4話で一部完と成ります。
お気づきの様に、ナデシコのキャラ全く出てません。
いやこれから出すんですけどね。
Benさんの話を基本としてますんで…・。
え?
まだ終わってない?
勝手に未来つくんな?
いやだから、こう言う未来もありかな〜〜〜って…。
いやだって、未来は、人の決断で分岐していくもんでしょ?
あ〜〜〜〜〜〜石投げないで〜〜〜〜〜!!
ついでにキャラ紹介
一応主人公のテンカワ タカト君です。もとい、フォトビア=ラトウ君です。
「………この馬鹿作者の所為で、400年生きる事になった男だ。」
ええと……ごっ立腹なところ申し訳ないんですけど……アキト君とはどういうご関係で?
「血縁者。」
だからもう少し詳しく。
「おじ。」
でも、性格にてませんねえ。
「400年ありゃ人は変わる。っていうより、感情が平坦になってるってところかな?」
平坦にねえ。
「精神が肉体に、ついて来なく成っちまったのさ。まあ、おかげで人を殺しても、罪の意識に苛まれる事はなくなったな。」
………え…………ええと、冒頭で爆発した船……あれは………。
「ナデシコのプロトタイプ。気がついたら乗っていた。」
詳しく………。
「知らん………誰かに聞け。」
だ……誰かにって……誰に?
「質問はないな。それじゃ……帰るわ。」
後一つ………お強いんですよねえ………武術とか………。
「悪いが、正々堂々なんて、俺の趣味じゃないね。武術はある星にいた爺に、何十年か学んだ。あの言い方をすると、地球人のような気がしたが………まあいいさ。面倒だから、後はかってにやってくれ。それじゃ………。」
ちょっと………まだ質問がああああああああ!!
いっちまったよ………。
じゃあとはBenさんやこの駄文を読んでくれる人に任せ様。
では、よろしくです。
管理人の感想
ランさんからの初投稿です!!
ほほぉ〜、400年ですか?
それは中々・・・
しかし、400年後には一応海賊さんでもブラックサレナが操れるんだ。
でも気になるのは、タカト君にナノマシンを注入した人。
・・・まさか、あの方じゃないですよ?
でも、脈絡も無く出てきそうで怖いなあの人なら(爆)
さてさて、過去に跳んだタカト君。
この先どんなストーリーが待ってるのでしょうか?
ではランさん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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