「『セルキラ−』………馬鹿な……。」

最悪の奇病だ……。

400年後の未来さえ、未だに直せない病気の一つに上げられている。

5万人に一人の割合で発生する新しい病気でね。

 徐々に細胞を完全に破壊して行く病気だ。

 活動中の細胞をどんどん破壊しながら、その病原菌は増えて行く。

 遺伝子病であるかどうかも不明だ。」

確かに……遺伝子病でない事は確かだ………。

容易に感染する病気でもない……。

如何してその病気が発生するのかは、400年たっても殆ど分かっていないと言って良い。

「ナノマシンで取り除く事はできないのか?」

医者は首を横に振って、

「治療用のナノマシンで、増加を抑える事ができるが………

 一時的な処置でしかない。それを凌駕するかの如くに増加して行く。」

と言い、希望の綱を断ち切った。

「嘘だ………。」

勤めて、冷静に医者は説明しようとしている。

「彼女の場合は……持って3年……最悪の場合は、一年と考えた方がいい。」

「定期的な治療を行なって……という意味か?」

俺の問いに、ゆっくり頷く。

俺は………いつも見ている事しかできないのか………。

いや!!

少なくとも……彼女には………何かすることが出来るはずだ……。

例え……彼女が『死』を免れないとしても………。

「彼女が、気が付いたら………退院させても構わんな?」

「この人が……そう望むならば……私は反対できない。」

そう答えると病室から、出て行った。

静寂が、この部屋を覆う。

ただ違う事といえば、彼女がいる事だ。

椅子に座りながら、彼女を眺める。

夕陽が差し込む窓からの光が、眠っている彼女の顔を照らし出す。

その髪をなでながら、俺は我知らず呟いていた。

「俺は………過去に戻るべきではなかったのだろうか?」

そうすれば………少なくとも……彼女が倒れる事はなかったのだから………。

それを………見る事はなかったのだから………。

「なあ……ロゼリア………そうすれば………。」

「そうすれば……どうだって言うの?」

行き成りロゼリアが口を利いたのをみて、椅子からずり落ちそうに成った。

「!!………何処から……聞いていた?」

「『俺は……過去に戻ってくるべきではなかったのかもしれない。』からよ。」

殆ど最初からじゃないか………。

「それで如何だって言うの?幸せだったとでも?」

そう言ってニッコリと微笑む。

こういう笑みをする時は、答え方によっては、こちらのみが危ない。

「そ……そうは言ってないけど……いや、もしプロポ−ズして断られたら、何ていうか………

 自棄に成りそうだし……ってそうじゃなくて、いや……幸せじゃないとか幸せだとかそう言う事を

 論じている訳でもなくてだな……って何言ってるんだ俺は!!」

適当な答えが見付からず、おろおろしている俺を見て、クスクスと笑い始める。

「貴方が何かは分からないけど、たった一つ、タカトって事は間違いなさそうね。」

………それは間違いないです、はい。

「それでタカト君は、私をどうしたいわけ?」

「ど……如何したいって……別に……あの……ええと………その……。(^_^)

「ん〜〜〜〜?はっきり言ってほしいな……私としては。(笑)」

……よし……ならはっきりと……。

「!!」

行き成りキスを決行した。

少し生暖かい唇の感触伝わる。

目を見開いたまま………そのまま少しフリ−ズ状態になった彼女を見て、

「け…けけけけけけけけけけ……結婚するぞ!!じゃなくて、して下さい!!(´△`;)」

と率直に言って見た。

はっきり言って、無け無しの勇気を総動員して行った台詞が、この言葉だ。

情けなくて、涙が出てくる。

少し唇を開いたまま、固まっているロゼリア…………。

もしも〜〜〜〜〜〜し?

少したってから、ロゼリアの目からは、ぽろぽろと大粒の涙が流れ始めた。

…………………え?

「いや……あの……悪かったよ……泣かせるつもりは……なくてだな……とりあえず……その……

 一応弁解も考えて見たんだけど……聞く?(汗)」

何いってるんだ俺は?

「そうじゃない!!」

そう言って叫ぶ、ロゼリア。

「え?……そうじゃないって……え?」

「そうじゃないよ……。私……でいいの?明日にも死んじゃうかもしれないんだよ!!

 それなのに……わたしでいいの?」

「お前以外に……こんな事言えるか!!」

恥ずかしさ全開で、そっぽを向く俺……。

し……しまらない………。

気恥ずかしさが助けて、何かどんどん言葉が出てくる。

「た……建前も言うぞ……。

 俺は……こんな体だし、元々おまえひっ攫う為にこんな事したわけだし、だから………その……。」

どんどんしりすぼみになっていく。

わあ……すっげえ赤っ恥………。

「本音は?」

わざとらしい明るい声が、痛々しい。

けれど、言葉は真剣だ……。

「俺は……お前が好きだ……。例え病気であっても、其の事には代わりはないんだ。

 俺が好きになったのは、ブロスのように……本当の俺を見てくれたから……って事もあるし……

 ああ……もう考えが纏まらない!!とにかく、お前の時間を俺にくれ!!

 俺にとってお前が最も、大切な人間なんだ!!これは、偽りのない俺の本音だ!!」

「うん……いいよ……私の時間……貴方に上げる………。

 だから、貴方の時間を私に頂戴……いいでしょ?」

俺が求めていた……笑顔が今………ここにある。

「お前が望むだけ……くれてやるよ。」

そう言うと、また唇を重ねた。

その後……俺と彼女は病院を退院し、俺が買っていた高原の家に、二人で過ごした。

とても静かな………夢のような時間だった…………。

 

 

 

 

 

 

カタカタカタ………コンピュ−タのパネルを俺は叩いていた。

自分の家の自室で、今も如何でも良いような書類に追われている。

「ヤレヤレ………飛ばされた場所が……まさか会計課とはねえ。」

あれから、3年と半年が過ぎていた。

俺はあの時言った嘘が、まかり通った事に安堵した。

しかし、失敗した事には代わりがなく、ここに辿りつくまでの間色々な部署に飛ばされてしまった

次第だ。

「ふむ……。まあ給料は出るし……良しとするか。」

お袋と顔を合わせる機会も多くなった。

その代わり、前のような治療は受けさせる事ができなくなったが……。

それども医者に言わせれば、知人がたびたび訪れる事が、薬になっていると言う事だった。

タカトの事は、悔やみはしたが、それほど悩みはしていない。

「少なくとも、生きている事は解ったからな……。」

詳しく聞いていれば良かったか……。

しかし、今は邪魔をしたくはないという気持ちの方が多い。

何か必要になったら、あっちから、訪ねてくるだろう。

それは疑いがない事だと思う。

「何はともあれ……二時間叩きっぱなしだと、きついなあ。」

少し外にでるか……。

そう言って時計を見てみると……11時丁度を指していた。

慣れて来たな……大分……。

この3年の間、色々な検定を受けて、かなりの資格を取っていた。

ここを首になったら、役に立つ物は手当たりしだいって感じだ。

「退屈はしない……な……。」

庭に出てみると、かなりの星が出ていた。

「空の海………か。」

いつか行ってみたいと思う所でもある。

しかしそれより、気になる気配が……………………。

「如何した?にげてき……。」

振り向いて見ると、今にも死にそうな表情をしている、タカトがいた。

「…………何が合った?」

長い沈黙の後…………擦れた声が、俺の耳に響く……。

「死んだ………。」

何だって?

「な……何を言っている……誰が……。」

死んだって?

それには答えず、足元においてある、棺おけのようなものを開ける。

そこには…………。

「冗談が………すぎないか?タカトよお………。」

ウエディングドレスを着たロゼリアが、静かに横たわっていた。

赤い薔薇と、都忘れの花に包まれて……静かに……ただ静かに………。

「あの時……3年の命だって言われて……先週まで……生きていたんだよ……。」

擦れたような声が、聞こえてくる。

「一年前……結婚式を上げたんだ……其の時の衣装だよ……これは……。」

泣いているような声が、静かに聞こえてくる。

「お前にも……見せたかったって言ってた………。

 凄いもんだぜ。こいつが縫ったんだ………この衣装……。」

それでも……涙は流れてはいない。

「不器用なくせに………無理して……。手を傷だらけにして、なかなか血が止まらなかった。」

もう………枯れ果てるまで泣いたと言う事だけは、疑い様はない。

「無理するなって、怒ったら笑ってこういった。『自分で作った衣装でしたいから』ってね。」

掛ける言葉は……見付からない。

「そうさ……。死ぬときまで、笑っていたよ俺に気を使って……そうする事さえ……

 辛かったろうに………。

 『ありがとう』だとさ………それは俺の言葉なのに………言葉なのに………。」

唇の端から、血が伝っていた。

悲しみと、遣りきれなさ………何もできなかった自分への憤りが、垣間見れた。

「死んで逝っちまう………。俺の愛する者は皆!!守る事すらできずに!!」

くぐもった叫びは………俺の気持ちと同じ物だった。

「まま成らないよな…………本当に………。」

そして、力なく崩れ去る。

しかし涙は無い。

人生に疲れた男が一人、棺のそばに座っていた。

ようやく会えた恋人は、既に死の間際。

一瞬の時間しか、触れ合うことのできなかった者達………。

未来から来たタカトは、どんな人生を歩んだのかは解らない。

けれど………大部分の時間が、孤独との闘いだったのは、疑う余地は無いだろう。

暫くして、俺が最初に口を開いた。

如何するのか………聞いてみたかった。

「それでお前は……如何するんだ?」

しばしの沈黙の後、サングラスを外して、

「自殺するとでも思ったか?生憎とそれほど勇気は無いんだ。」

自嘲気味に笑みを浮かべて、立ちあがった。

「ロゼリアを……埋めてやってくれ。俺には………やる事がある。」

ヘテロクロミアの瞳を俺に向けて、そう話す。

「彼女よりも大切な事か?」

「今からやる事は………恐らく、彼女を怒らせる事だからな……。」

「お前……まさか!!」

ネルガルを潰す気か?

そう言おうとした俺の言葉を否定する様に、首を横に振り、

「一人だけ………許すことができない奴がいる……。」

と告げた。

その言葉に、俺はそれが誰だか、理解した。

「銘は……俺に任せてもらおう……。」

「……済まない………。」

「気にするな……何時もの事だ……。」

それは、何年か前に良く俺達の間で交わされた言葉だ。

逆だった時もあるし、このような時もあった。

「また………来る……。」

そう言って……奴は姿を消した。

 

 

 

悲鳴が聞こえる。

独創性の無い悲鳴だ。

まあ、人間危機に陥ると、そんな事を気にする余裕も無いか……。

それにしても参ったねえ。

ここの警備って、たった一人の人間に破壊される程、脆い物だったのかな?

フム…………今度保安会社に聞いてみよう。

『所長!!速くお逃げ下さい!!もう……ぎゃあああああああああああああ!!』

ああ………大変だ。

さてどうやって逃げよう。

取り敢えず……研究資料は、持っていかないとな。

実験体は……まあ、あとで請求すれば良し………と。

おやおや………破壊音が、近づいてきちゃったよ。

それにしても、人間とは思えないな。

捕まえたら、ぜひ解剖してみたいものだ。

おや?

音が消えた?

ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!

何とまあ…………ここの壁、全部なくなちゃった………。

おや?

何処かで見た様な?

「随分と往生際が良いな……ヤマサキ。」

「如何足掻いても、無理ならね。」

確かに見た気がする。

誰だっけ?

「地獄の淵から戻ってきてやった。お前に……苦しみと言う名の…………………慈悲を与えにな。」

慈悲ですか………。

「慈悲というのは、人を助ける事じゃないの?」

ドン!!

あ……あれ?

右手が……。

「風穴を開けてやった。汗を掻いている様だからな……。涼しくなったか?」

そう言えば……かなり温度が高いような…………。

「何か……したのかな?」

「盛大な焚き火をしてやっただけだ。逃げ惑うのに必死になってたぞ?」

お前は逃げなくて良いのか?というように聞こえるが………。

「逃がしてくれるのかな?」

「逃げられるならな…………。」

やっぱりそうか。

ズガッ!!

右手の肘から先が……消えた………。

「い……痛い……んだけど……。」

「悲鳴が聞こえないな?」

つかつかと近づいてくると、無造作に左手を握りつぶした。

「っ〜〜〜〜〜〜〜〜うう〜〜〜〜!!」

じわじわと……殺す気だね……この人は……。

「恨まれる事を…………し……したかな?」

「それすらも忘れたのか?泣けるじゃないか。

 俺はお前に十分貢献してやったのに、その言いぐさとはな……。」

「こ……貢献?」

あ………あ……・なにか……・思い出すような………。

今度は捻りィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!

「ああすまん………。お前があまりにもつれないんで、つい焼きもち焼いてしまったんだ。

 大丈夫か左腕?」

そう言って、首を持つと、床に叩きつけた。

棲ざまじい激痛の所為で、声が出ない。

う〜〜〜〜〜ん………痛みを鈍くする薬を使うべきだったな。

「痛かったか?………仕方が無い。特別にこいつを打ってやる。」

そう言うと、首筋に注射を打ってきた。

途端に、痛みが!!!!!!!!

「感覚が鋭くなるんだ。これで少しの傷でも、ショック死できるぞ。

 最も、俺が心臓を動かしてやるがな。」

「あ……あああああ………あまり……痛い事は……。」

「嫌いじゃないだろ?いつも平然と、人を殺しているじゃないか?」

そうだっけ?

あれ?

実験で人が死ぬ………実験台なら、死ぬ確率が大きいのは当然……だよね?

あれ?

僕は実験台かな?

違うよねえ………。

もはや………意識が完全に混濁し始めているみたい……。

そして薄っすらと思い出す……。

た…………タカ……ト………。

そうだ………テンカワ タカトだ。

 

 

 

 

 

「坊ちゃま!!

旦那様が、お亡くなりになられました……。」

「!!そうか……暫く………一人にしておいてくれ。」

「は………はい……。」

そう言って、自分の部屋に戻った青年は、顔を俯かせた。

泣いている?

いや……笑っているのだ。

それと同時に飽きれていた。

「あらあら……所詮父さんもこれまでか……。

 ま、資料は全部コピ−済みだし、暫くは大人しく、『不幸な青年』を演じて見るのも悪くはな

 い………っと。」

この青年こそ、正史において、新婚のテンカワ夫妻を実験材料にして、『火星の後継者』の一員と

なった研究者、ヤマサキ ヨシオであった。

 

 

 

 

 

「終わったのか?」

「ああ……自分なりのけりは付けた。」

「そうか……。それで如何するのだ……これから………。」

「戻るよ……四百年後に……。」

「そうか……。」

「お前には世話になりっぱなしだな。」

「気にするな……何時もの事だ……。」

「……助けが欲しかったら、いつでもよべ。」

「四百年後にどうやって?」

2ヶ月おきの月命日には、戻ってくる。連絡先も用意してある。ここに連絡しておけ。

俺のほうから連絡をいれる。」

「………分かった……。」

「元気でな………。」

「お前もな………。」

 

 

 

エピロ−グ

ここはナデシコ艦内

今は夜勤以外は、クル−は眠りに入っている。

そんな時間に、一人自動販売機の隣のベンチに腰を掛けている男がいる。

ブロスだ。

何時もはにこにこしている、その顔は鋭い眼光を帯びたものになっている。

「待たせたな……。」

その反対側に、一人の男がいた。

いや………現れた。

「気にしないで下さい。時間通りですから。」

陽気な声ではない、静かな声がブロスの口から流れ出た。

「約束通り、ネルガルとクリムゾンの非公式の研究所を全て潰して来た。」

「ご苦労様です。」

「良かったのか?」

ネルガルの研究所の事を確認する為に聞いた様だ。

「構いませんよ。ネルガルも、もうそろそろ転向期ですからね。」

にべも無く言う。

元々、コンピュ−タにも記載されていない場所だ。

無論、アキト達にすら、気づかれていない研究所であり、見付かったら、ネルガルをあっさり潰す事

間違い無い。(物理的に。)

「マシンチャイルド達は、クレバヤシに頼んでおいた。」

ウリバタケに似ている老人で、同じく違法改造屋だ。

但し今は、ある物を作ってもらっているが……。

「あのご老人ならば問題無いでしょう……

 少なくとも、生物を改造する趣味はおありじゃない様ですから……。」

「十人だ……あの子達を解放してやれ。今回の報酬はそれだ。」

「無論………全力は尽くします。会長も知らない研究所ですからね。快諾してくれるでしょう。」

「それと……クリムゾンが、また動くぞ。」

「連動して?」

「その様だ……。詳しくはこいつに書いてある。見ておけ。」

「世話を掛けますね。」

「構わんさ……。アキトを頼む……。」

「会っていかないので?」

「死人が今更どの面下げて、会いに行けと?」

その言葉に、少しブロスの顔が歪む。

「貴方は唯一の彼の肉親ですよ。喜びこそすれ、迷惑には思わないでしょう。」

しかしボソリといった言葉が、ブロスの説得を断念させた。

「俺が……あいつに会うのが苦痛なんだ。」

また………大切な物を無くすかもしれない。

そんな思いに、まだ囚われている事を知り、顔を歪ませる。

「そう言う事ですか……。」

「そう言う事だ。」

(それに…………光と影は交わらない物なんだぜ……ブロス。)

歴史の表舞台を駆け巡る英雄と、歴史の影で暗躍する男と……。

自ら選んだが故に彼は、自らの存在を隠しつづけるだろう。

光の周りにいる者達の視界からすら………姿を表す事は無い。

「解りました。もう何も言いませんよ……。」

「済まない………。」

「しかし……この密会はばれないのでしょうかねえ。」

その言葉に、黒ずくめの男はニヤリと笑みを浮かべた。

「俺の相棒は、優秀なんでね。子供を寝かす事なんてわけないさ。」

『恐れ入ります。』

そう表示が成される。

「!!」

ブロスは、始めて驚いた。

「プロトタイプ………ですか?」

『そうです……。四〇〇年ぶりですね。ブロス様。』

「………。」

固まったまま、答える事ができなかった。

謎の失踪を遂げた。

ナデシコ0番艦とそれのメインコンピュ−タ『オモイカネ』がまさか彼といるなどと、誰が想像でき

よう。

「では、また。」

『ごきげんよう。』

しかし、その言葉も、ブロスの耳には届いていなかった。

我に返った瞬間、もうそこには、彼等はいなかった。

「逃げられましたか……。」

それしか言う言葉が無かった。

 

 

 

朝食堂にて、ブロスはキッチンの近くの椅子に座っていた。

「あれ?ブロスさん……珍しいですね。こんな時間に来るなんて。」

「どうも……寝不足でして……体にこたえますなあ……。いやはや……。」

アキトはにこにこ笑いながら、注文を聞いて来た。

「何にします?」

A定食を頼みます。」

「ウイ―――――――――――――ッス!!」

そう言って、戻ろうとするところを、

「それにしても、アキトさん……。」

「なんすか?」

「どんな人が、奥さんだったらいいと思います?」

さらりと言ったブロスの口調にさらりと返すアキト。

「そうですね………。気立てがよくて、俺の事を良く理解してくれる人なんかいいっすね。」

言ってから、笑顔のまま硬直するアキト。

その顔は「しまった!!」という顔であった。

そう…………この瞬間、食堂は氷室と化した。

ギン!!

アキトに十五人分の視線が突き刺さる。

誰もが

『私……私!!』

という視線を送りつけていた。

止まっているアキトに追い討ちを掛ける。

A定食……急いでくださいね。」

ぱくぱくと何か言おうとしているアキト。

しかしその視線に耐えられなくなったのか、ぎこちない動作で、体を反転させた。

脂汗を掻きながら、キッチンに入って行くアキト。

視線はまだ、アキトの方へ突き刺さっている。

(ま……憂さ晴らしといいますか……。)

そんな視線など、何処吹く風というような感じで、ブロスはお茶を啜っていた。

 

 

 

光には影が付き従う物

光り輝けば影もまた濃く生える

そして

光が翳れば

影もまた…………

 

 

第一部

 

 

続く

 

 

 

 

さあてと終わったよなあ……。

「終わったな……それでお前は如何するのだ?」

取り敢えず……進めるよ。

「ほう………。しかし、全くって言って良いほど、ナデシコのメンバ−が出てこないな。」

ああ……まあ、お前は影のエ−ジェントの役だから。

「成るほど………アキトが表立って動けないような行動を、裏で遣っているネルガルのエ−ジェントを

 俺に当てはめた訳だ。」

そゆこと。

だって、基本的に善人なアキトでは、クリムゾンに属している諜報員ってだけで殺す事はできんだろ。

「確かに……。」

それに、戦神が手を汚す訳にもいかないじゃないか。

「ナデシコが前線である限り、おいそれとは動けないわな。そいつは………。」

 

まあ………それもあるが………。

「俺が、汚れ役ね。」

ま、本編ではネルガルのエ−ジェントさんがやっている事の代役だな。

「つまり、ブロスの何でも屋か。」

そうとも言う。

君には国の研究所とか、ネルガルの非合法施設とか、クリムゾンの研究施設とかも破壊してもらう

つもりだし……。

「おい………。」

こっちでは、本編では今出てこない北辰がこの時代の君の敵役だ。

「近親憎悪が成り立ちそうだな。」

うん…………そうだね。

「ん?まてよ。如何してもナデシコに潜入する場合は?」

ヤマダ ジロウになってもらおう。

「何だと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

だって、奇人が、奇怪な行動に出たって、クル−は誰も変だとは思わないよ。

「俺が…………あのゲキガンガ−オタクに、変装する?俺が…………。」

そう言う事……。

まあ、諦めてください。

オモイカネもサポ―トしてくれるだろうし………。

「こいつぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……最初からその積もりで………。」

はっはっはっはっはっはっはっはっはっは……さあ、退場したまえ。

君の出番は終わりだ。

「貴様ァァァァァァァァァァァァァ!!」

ズルズル…………。

ふう……ちなみに400年後の世界では、アオイ君が、彼のライバル一号になりそうです。

ほかに、候補がいたら、バンバンどうぞ。

「さて、もうすぐ僕の出番ですか?」

ちょ………ちょっとまあて!!

お前出てくるな!!

「御館様が出て、僕が出ないわけ無いでしょう?」

とにかく、お前の出番は後で!!

「そうですかあ?じゃ、北斗嬢さまを見に行こうっと。」

こいつは………嬢さま呼ばわりかい。

「言ったら、いつも微笑んでくれるんですよ。その後照れたように、僕を叩いてくるんです。」

殺そうとしてるんだよそれは。

「そんな事………解ってますよ。でなければ、僕がこうして生きているわけ無いでしょ。」

えげつない逃げかたしているからな……いつも。

「ええ………。それは酷いなあ。ただ、零夜ちゃんを人質にしているだけですよ。」

それが、えげつないんだろうが。

「彼女にだけは、甘いですからね。嬢様は………。」

とにかく、とっとと消えろ。

お前がここにいると解ったら、俺の命が危ない。

「僕も死にたくありませんからね。それじゃ、皆さんご機嫌よお。」

ふう……北辰もとんでもない奴に懐かれたものだ。

ああ………皆さん………候補いたら本当にどうぞ!!

では、Benさんに後は任せよう。

では、また。

 

 

管理人の感想

 

 

ランさんからの投稿第四話です!!

なんだかジュン君(未来)が格好いいね〜

まあ、本編がアレだからかな?(苦笑)

しかし、シリアスでしたね今回の話。

なにより、プロスさんが良い味出してますよ。

何だかお母さんが病気みたいですけどね。

でも、アキトの影か〜

本編でも考えていたんですけど、そんな人(笑)

でも、流石に影まで書く余裕は無かったんですよね〜

・・・どうしましょうかね?

 

ではランさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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