「全く…………少しは考えて壊して欲しいよなあ…………
新型の機体なんだからそんなに修理に使える部品がないんだっつうのに………ブツブツブツブツブツブツブツ」
切れた配線を新しいのに取り替えてその機体の修繕を完了させた一人の整備士が
一息入れる為に機体より離れて行った。
周りを見回してみると、同じような光景が至るところで行なわれている。
「まっ……大破している機体が無いのが救いと言えば………救いかね?」
そう言ってインスタントのコ−ヒ−を注ぐと、それを一口啜る。
何時もどうりの味が口の中に広がって行く。
味自体は大した事無い。
こういう物は誰が淹れたって大して変わるものでもないだろう。
そんな事を考えながら、ふと誰かに向かって何かを言って遣りたくなった。
「もう少し如何にかならなかったもんですかね?」
「はっ?何が?」
隣にいた現同僚がビックリした顔で不思議そうに聞いてくる。
「いや…………何も」
案外世の中って、便利に出来ていないもんだね……
そう思いながらも今度はこんなくそ忙しい状況を作った男の機体の方へ歩いて行った。
(どうせ、傷一つ付いていないだろうけどさ)
そんな事を思いながら………………。
機動戦艦
ナデシコ
〜不死者〜
第3話「汝外道なり」
第一幕其々の夢〜或いは近しき者の未来〜
《テンカワ アキト〜闇の王〜》
「臆病者!!」
!!
誰かが叫んでいる。
「お前は臆病者だ!!幸せだと?彼女が望んでいない?
違う!!お前はただ、恐いだけだろうが!!」
その声に呼応するカの様に、俺の心の何かが、そう、心の中にある何かが激しく掻き立てられる。
まるで自分に向かって言われているかの様な感じがしたからだ。
もしこれが自分の口から出たもので無ければ、逃げ出している事だろう。
そう……この言葉は俺には……結構堪える。
「欲しいと思った事は無いのか!!
何を犠牲にしてでも手に入れようとは思わないのか!!」
これは………まさしく俺の声そのものだ。
何を犠牲にしてでも、俺はユリカが……あの暮らしが欲しかったのだ。
あの掛け替えの無い日々を………。
言い募る俺(のような気がするけど……こんな記憶、俺には無いぞ……)に誰かが言う。
「そう願っても………俺にはそこまでできる勇気が無い………」
遠ざかる足音に向かって俺(じゃないかもしれないけど……俺だろうか?)は追い討ちをかけるようにして叫ぶ。
「俺は諦めない……例え何を敵に廻そうとも………
俺は俺の中に有るべきものであった全てを、
この手に入れて見せる!!必ずな!!」
その男は………そう叫んだ男は………手に入れられたのだろうか?
《アオイ ジュン in アオイ ジュン》
その男は誰なのだろう。
俺と同じ顔をしているそいつは、戦場にいた。
その男の心は、脆い様なのにとても固くて、冷めている様なのにとても激しくて………、
怒っている様に見えて………泣いていた。
「よう心友」
誰かが肩を叩く。
振り向きもせずに、そいつはこう呟いた。
「おまえか」
そいつの心にはその男のデ−タが浮かんでいた。
「そう言う言い草は無いだろう?心友」
ヤマダ 八辺衛(ハチベエ)
アナザ−ネ−ム
ダイゴウジ ガイ
ちなみに「あら、ハチベエじゃない」というと、
「違ああああああああああああう!!
そんな悪しき忌み名で
人をよぶんじゃなあああああい!!
俺は」
ジャン!!
「ダイ」
ジャジャン!!
「ゴウジ」
ジャジャジャン!!
「ガァァァァァイ!!
そのひとだああああああああああ
ああああああああああ!!」
ジャ――――――――――――ン!!
こうなる。(ちなみに効果音はここの人工知能の演出らしい)
「チハヤ………」
この怪音が届く前に耳に耳栓を入れたが効果は殆ど無いみたいな気がした。
顔を顰めながら彼女に向かって口を開く。
「ご……ごめんなさあああああい」
彼女も耳栓を咄嗟に入れたみたいだが、意味が無かった様だ。
頭を振りながら、弱々しい声で誤って来た。
白鳥 チハヤ
白鳥家直系の血を継ぐものの一人の様だ。
兄がクリムゾニアのほうにいる様だが………詳しい事は聞いていない。
「何時もスマネエなヤクシ」
《いえいえ……また一緒に、アニメを見ましょう》
怪音を飛ばした張本人は、けろりとした顔でこの船の人工知能AIに向かって話していた。
周りを見渡すと………
「皆……間に合わなかった様ね」
多くの躯が其々の格好で地に伏せていた。
「な…………なんだ!!て……敵襲か?」
ようやく気が付いたか…。
敵襲じゃないから安心しろよ。
最もこの状態で敵にあったら、洒落にもならんがな。
ピッ!!
ひげ面の男が、いきなり画面に現れた。
『ガイ君』
耳を抑えた格好でうめく様にしてその男は彼に話しかけてきた。
「おう!!どうした艦長」
いつも通り(でもかなり大きいが)に彼は話し掛ける。
『君………元気なのは良い事だが…………』
「あったりめえよ!!このダイゴウジガイ!!
そこん所そこらの、やられ役兵士A一緒にすんなっての!!」
誉められたと思ったのか、気を良くして声のテンションを上げていくガイ。
誉められてないと思うぞ………俺は。
『君の場合………もう超音波兵器の域に達している声がね……』
「この傭兵部隊随一のエステの使い手、
『閃光のガイ』っていやあ、
お・れ・さ・まの事よ!!
だあああああああああああああっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
………間一髪……耳栓をした後耳を塞いで正解だった。
また声のヴォリュ―ムがさっきと同じレベルに………。
『というわけで……被害を受けた人達の治療費は君の報酬から差し引かせてもらうから……』
「はあっはっはっはっは…………は?」
『この頃君の所為で難聴になっている人が多くてね。鼓膜が破けたって人も出てるし…………』
そりゃ………お気の毒に………。
『雑費で捻出するのもあれだし………まあやっぱり本人に責任とって貰うのが一番だと思うし』
でも艦長………こいつ多分自覚無いから……
「何故だ!!俺が一体何をしたと言う!!何か俺が害になる事でもしているとでも言うのかあ!!」
……少しは自覚しろよ…………頼むから……。
そんな言い合い(相手のほうはもう少しであの世に行きそうな顔をしているが)をしている奴ラをみて距離を取りながら器用に肩をすくめる彼女を見て、そいつは、こう思ったみたいだった。
(悪くない)
と…………。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
突如場面は変わり、そいつは機体の中にいた。
そいつが乗っているそれは………
オリジナル・ブラックサレナ!?
そう…………そいつは テンカワ アキト(僕達の天敵にして全宇宙の男の敵の名さ)
が乗っていたものと同じ機体に乗っていた。
だがそいつの操縦は言ってはなんだが…………とても洗練されているとは言いがたかった。
性能に助けられている部分が多いような気がするのは、やはりまぢかであの男の闘い振りを見ているからであろう。
そしてまたそいつも、自分の闘い振りがすばらしいものとは思っていない様だ。
だけど………そいつの気迫は、鬼気迫るものがあった。
何かが掠るたびにまたその性能に助けられるたびにそいつの頭の中に、あるビジョンと文句が浮かんでくる。
漆黒の六枚の翼を持った真っ青な機体………あらゆる攻撃を余裕を持って全て回避していたあの姿……
そしてそいつに向けられた言葉。
『未熟者…………』
「う……ぐ…………」
360°四方から次々と来る敵・ミサイル・ビ―ム砲……めまぐるしく変わっていく周囲の風景……。
切り払い、回避し、ビ―ム砲で応戦し、DFSで切り裂く。
「う………うううう」
『その程度か?』
回避……間に合わない!!
バリバリバリ!!
フィ−ルドが機体をなんとか守った様だ。
「クッ!!」
センサ―が敵の位置を慌しく表示する。
警告音がけたたましく鳴り響く。
さっき撃って来た敵の機体がまたこちらを狙って撃つ。
それを回避。
バチッ!!
フィ―ルドを掠って、後方へ飛んで行く。
「しつこいんだよ………さっきからブンブンと!!」
その声と同時に2丁のライフルを撃ち放つ。
敵の機体を正確に撃ちぬいた。
ライフルの威力はかなり大きく敵を塵に変えた様だ。
その光に掠った敵が、その部分を抉られ弾かれる様にバランスを崩して行く。
ライフルを撃った反動で気を失いそうになったその瞬間。
『誰一人倒せん』
また掠めていく声……。
「ハアハアハア………これでも………ハアハアまだ………」
歯をかみ締め、息を荒くしながらも、そいつはつぶやく。
「俺の中から………お前は消えないと言うのか!!届かないと言うのか!!答えろ!!」
叫びと共に、ペダルを踏み、最大速度まで加速した。
視界が歪んで行く。
シ―トに押しつぶされそうになる。
気が遠くなりかける。
しかし歯を食いしばり、それに耐える。
そして更に激しい戦場に飛びこんでいった。
次々と敵を切り裂いていく。
だがこっちも、無事と言う訳でもない。
この機体でなければ助からない場面が幾つもあった気がする。
その度にそいつは、自噴の表情を浮かべた。
何分か(或いは)何時間か経ったのか、敵が逃走していった。
尚も追い掛けようとした時、
『ジュン!!止めておけ』
声と共に機体が抑えられた。
通信画面にはあの五月蝿い男が写っていた。
「離せ!!今なら奴らを!!」
振りほどきながら叫ぶそいつに静かな声が突き刺さる。
『皆殺しに出来る………と?』
「!!」
『戦争の遣り過ぎでどうかしちまったのか?これ以上の戦闘は無意味だ。こっちも被害が大きい………戻るぞ』
「………しかし……」
『自惚れるなよジュン………チハヤの援護がなけりゃ……その機体がお前の棺桶になってたんだぜ』
「くっ…………」
歯噛みしながら顔を下に向ける。
そうだ………。
はっきり言ってこいつは機体にまだ遊ばれていた。
彼女の援護が、そいつの命を護った場面も少なくなかった。
そして……その事にそいつも気づいている。
『……さ、帰りましょ』
そっけない言葉だったが、彼女の目にはいたわるような感じがあった。
それが彼の自責の念を更に深めていく。
『全く………姉さん気取りかよ』
『いつも吠えているだけの男よりも、護りがいがあるわね』
『あれは燃える漢の魂の声だ!!ほえているわけではな〜〜〜〜〜い!!』
『全くきゃんきゃんきゃんきゃん五月蝿いったらありゃしない。もう少し迷惑って………考えられるわけ無いか馬鹿だモンね』
『熱血と呼べ熱血と!!』
堂々巡りの言い争いも殆どそいつの耳には届いていなかった。
ゆっくりと半開きになった右手を胸の位置まで挙げる。
そしてゆっくりと力を入れて握り拳を作った。
「俺とお前は………一体何が違うと言う………」
その男の問いは……俺の中で繰り返されている問いと全くと同じ物だった。
俺とあの男……何が違うと言うのだろう。
《ホシノ ルリ〜妖精の集い〜》
「こんにちは」
こんにちは。
「私は……テンカワ ヒスイと言います」
!!
付かぬ事をお聞き致しますが………
「はいなんでしょう」
貴方は私の娘とか何らかの関係があるとお見受け致しますが?
「はい……私はあなた―ホシノ ルリ―とテンカワ アキトの子孫です」
………………。
「?」
…………。
「もしも〜〜〜〜〜し?」
…………。
「お〜〜〜〜〜〜い。やっほ〜〜〜〜〜〜〜〜」
勝った………………。
「は?」
勝ったんです………これはつまり私がアキトさんの妻になると言う生き証人、いや証拠なのです!!
「…………」
アキトさん……ヤハリあなたの目は、いつも私だけを見つめていてくれていたのですね。
「(かなり自分勝手な解釈をしていますね)」
もういいです。
許しましょう。
今までのことは、全て水に流してあげます。
「(私にもこの血が流れているのでしょうか?ちょっと不安ですね)」
いつでもいいですから………。
私をあなただけのものにして下さい。
できれば、ブリッジに皆が集まっている時なんかが良いですねえ。
ああ…………浮かぶ様………その他大勢が悔しがる姿が………。
「(余計な事を言う必要はありませんね………夢は夢のままで見させましょう)」
あなたの身体で………私を暖めてください。
でも……アキトさんって奥手ですからね……ああみえて………。
「(それにしても長いですね………たまる前にぜひ実行してください………といっても無駄ですね……この人もおくてですから)」
ならば………私がリ―ドするしかありませんね………はっ!!こうしてはいられません。
いまから勉強しなくては……一人で出来るものは……練習もしたほうが………
「こほん……宜しいですか?」
えっ?
あ………はいはい。
何でしょうか?
「ひいひいひいひいひいひいひい婆様貴方にお頼みしたい事が……」
!!
今なんと?
「ひいひいひいひいひいひいひい婆様ですが?」
お願いですから……ルリと呼んで下さい。(涙)
「なぜですか?」
私まだ……十一です。
おばあちゃんじゃないです。
「では………ルリ婆様というのは?」
駄目です。
「ちょっと可愛くルリルリババ様」
何処が可愛くなっているんですか(怒)!!
「少し渋めにルリお婆と言うのは?」
…………人を年より扱いしないで下さい(疲)。
「解りました……ではルリさん……でいいですか?」
それでいいです。
「ルリさん………ナデシコでこれから怪しい事が立て続けに起きると思いますが、感知しないでくれませんか?」
?
如何言う事です?
「詳しくは言えません……ただ未来に関係する事なのです。もし首を突っ込む事に成ったら……本当は突っ込んで欲しくないのですが………」
なったら?
「プロスさんの指示に従ってください。そうしないと………未来は保証できませんので」
…………如何言う事です?
「最悪の場合………貴方様とアキト様が結ばれなくなりますので……」
!!
「それでも宜しいのでしたら、存分に首を突っ込んでください」
…………解りました…………命に変えても………誰にも邪魔はさせません!!
「有り難う御座います。では二つ情報を………」
え?
「赤い髪の女に気をつけて下さい」
(ピクッ)
何故です?
「混乱を運んでくる人ですから………あ、それと………ネルガルのSSを調べる事はやめたほうが良いです………死にたくなければ……………ですが………」
…………前向きに検討したいと思います。
「では頑張ってください」
ごきげんよう………。
あ!!待ってください。
「何ですか?」
また会えますか?
「ハッキリした事は言えませんが……………用事が出来たならば………その時には……」
残念ですね……もう少し未来の事をお聞きしたかったのですが……………。
「知る事自体未来を変えてしまうかもしれませんので………あまり詳しくは話せませんよ」
…………チッ!!
「(…………やはり少し性格が悪くなっている様に見えますね…………あの子の思いこみの激しさはこの人譲りですね…………私も人のことは言えませんが)では……ごきげんよう」
では………またですね………。
まさかこんな幸先の良い情報が手に入るとは思いませんでしたね。
ふう……ここで壱本空けたい気分です。
しかし未来と言うのは、常に不安定なもの。
何時変わるか解りません。
しかも、アキトさんのものでありながら、何か画策しているSSの動向を調べるなとは…………。
けどもし、動向を調べてもらっている、ラピスのみに何かあったなら………。
またアキトサンが苦しむ事に成りますね……・。
ふむ………では、ハリ−君に一任しましょう。
あの子なら、楽には殺せないでしょうから…………。
全く疲れる事だらけですね…………。
そう言えば……ここは何処なのでしょう?
《北斗〜修羅二人〜》
ポタ…………ポタ…………ポタ…………。
てに伝い滴るは暖かい命のしずく。
我が手に貫かれしは…………。
貫かれしは………。
「愛するものを……自らの手で殺した感想は如何だ?」
何を言っている……。
何を言っている?
殺したのは北辰………貴様だろう……。
だが………この手が穴を穿った身体は…………誰の…………。
「刹那よ…………お前に必要なのは……理解する事だ。今の現実を……」
刹那?
誰の事だ?
そして現実とは………。
上を見上げる。
俺の手に貫かれた人間の顔の部分には、仮面が嵌めてあった。
「その仮面の下にある顔は………誰のものであろうか、察しはつくか?」
その仮面が俺の横を掠めて落ちていった…………。
そこにあった顔は………。
「はあっはっはっはっはっはっはっは…………如何だ?愛しかろう?嬉しかろう?愛しい愛しいお前の母親だ。」
楽しげに語るその男の声が……遠くに聞こえる。
「何故母様が……ここに……」
ありえない現実を直視できない自分がいた。
何かを否定する声が、心をざわめかせる。
そして何かが…………崩れて行く。
「お前を生み、お前を育てた女だ。しかしお前は殺した。自らの手で、ゴミの様にな!!言っておくが我は何かしたわけではない。ただ声を奪い、押しただけだ。主のほうへな」
あの時俺は何をした?
「その女を殺そうとした主は、とても嬉しそうだったぞ。そこで正気に戻ったのは、嬉しい誤算だったがな」
今まで俺は何をしていた?
「さて………まだ死にきれない、その女を楽にして遣れ……」
楽に?
何を言っているのか………理解できない………。
「母様………」
誰か……母様を…………。
「それとも……食すか?何時もの様に」
「?」
食べる?
「狂気の狭間にいて、忘れてしまったか?主がここにいるのは何故だ?何故食料を持っていなかった主が、食べるものも無いこの洞窟から、出てくれたのだ」
そうだ………俺は…………。
「生き残る為に食えるものを食す……当然ではないか………なあ我が後継者よ」
「う…………う…………ああ…………あ」
壊れてしまう……今までの自分が………。
「気にする事ではあるまい………この試験を受けるもの誰もが経験する事よ」
「あ……・ああ……・あああ……あ………」
仕方が無かった………。
いや……これは俺の記憶ではない…………。
これは……北辰に似ているが……こいつは……義眼を嵌めていない。
では………こ………これは……。
意識をしっかりしないと……のみ込まれてしまう………。
(生きたかった………友達に……もう一度会いたかった……)
似ている……俺に似ているが………こいつは誰だ?
零夜に似ている顔が浮かんでは消える。
(サト………母様………)
仕組まれた……………。
サトと言う女とこいつの母親は、意図的に離されたのかもしれない。
そうでなければ………こいつの母親が………ここに来る訳が無い………。
こいつの記憶を見る限り、舞ににている感じの女だから………。
だが……この俺が衝撃を受けるとはな………。
これは……人を狂気に誘う為の訓練だ。
闘いとは違う戦慄を覚えるな…………俺でもこれは……パスしたいものだ……。
そして善悪の判断が出来る年齢ではあるが、まだ完全に自我が確立していない年齢であるこいつには絶えられないものだろう。
耳を塞ごうとする。
だが母親を貫く手は取れない。
手を抜こうとしたその時、こいつの母親が、抱き締めて………掠れた声で囁いた。
「ナカナイデ……セ……ツ……ナ」
そして……沈黙…………。
完全に事切れた……。
「あ…………ああ……あ」
その一言が完全に………こいつの心を貫いた。
そして……現実を受け入れる事の出来ない人格は……壊れた…………。
「ようやく………我の役に立てたわけだ……つくづく使えぬ女だったが……まあ良しとしよう」
北辰に似たその男は、無関心にそう言うとこいつに向かって、
「そのゴミは………始末しておけ」
と吐き捨て……そのまま引き返して行く。
そしてここからこいつの行動は完全に常軌を逸し始めた。
「ゴミ……か……」
こいつの心が……再構築されている?
違う………壊れた欠片が何かを取りこんだ……・その方が正確だ。
そして取りこんだのは……俺の記憶!!
断片的に見た限りの推測ではそうだと思う。
だが………何故……・。
「ゴミ………ゴミ……ならば貴様は動くゴミか………」
箍が外れた笑いが、こいつの口からこもれ出る。
振り向いたその男の、顔には怪訝な表情が見て取れる。
「赤い………紅い……何処までも紅い血に染まった道が、俺の人生と言うのならば……良いだろう………歩みつづけてやろう……その道を……」
その男の目は、驚愕に彩られていた。
そう………こいつの笑みは………それほどの迫力がある。
「俺は壊れつづけていくだろう……狂気と正気の狭間の中で………光を望みながら殺戮と言う闇に身を潜め……その愉悦に浸る自分を憎みつづけながら………この俺を生み出した……この血を……この忌まわしき血の全てが俺から流れ出るまで……」
ゆらりと……動く………一人の修羅………。
「そして教えてやろう……俺が守りたい者を奪った者への報いがいかほどものか……な」
そして………その心が望むままにその女は………殺戮を始めた…………。
俺に似ているその女は…………今は如何しているのだろう?
「…………」
《いかがイタしました?》
「誰かが……俺の過去に干渉した」
《何と…………そんな事の出来る人間が………》
「そして………今の人間に接触した奴がいる……」
《……如何成されます?》
「今はいい……これから、老人訪問をしなければならん………全く……ピ−スランドくんだりまで来てゴミ掃除とは………」
《この研究所で間違い御座いませんので?》
「ああ……そうだ……全く……老人と言う奴は………」
第1幕 完
こんにちは………ランです。
実は暫く(長くて2ヶ月)の間、更新させる事が出来なくなりました。
待たせている皆さんには大変申し訳ありませんが、長い目で見てやってください。
「全くだ」
……アキト………君に言われたくは…………。
「俺は約束はちゃんと守る。お前とは違うな」
約束を守っていたら、私刑は無くなると思うがね。
「…………それはない」
なぜ?
「それは………」
それはあ?
何かな?
「あ!!ガイが、女の人にナンパされてる!!(北東の方を指す)」
何い!!
どこどこ………どこだあ!!
逆なんなんて俺だってされたことないのに!!
「(今の内に帰るか………げっ!!こいつ裾引っ張ってやがる)」
アキトおおおおおおおおおお!!
ナンパは何処だああああああああああああああ!!
「たしか………あの通りを曲がったかなあ?(こいつ……離せ!!)」
よおし!!
そんな良い事俺一人の秘密にしておくのは勿体無い!!
ナデシコの皆に教えてやろう。
「え!!ちょ………ちょちょちょ」
チョウチョ?
「ちょっと待って……実はあれは見間違いで………九十九の方だったよ……う………な?」
………なぜだろう……。
せ……背中が寒い………。
「(パクパクパク)………あ………み………ミナトさん……え?何処言ったか教えろ?でないと、ナンパした女のこと全部ルリちゃん達に報告するって……俺はナンパなんかしてない………え?でも存在自体が女の敵?そんなあ(……………今さら嘘だなんていえん………九十九悪い……泥被ってくれ)」
………それじゃあ皆さん絶対書きますんで、応援宜しく!!
では、また。
管理人の感想
ランさんからの投稿第九話です!!
ジュン君、ここでも大活躍(笑)
一時期のあの扱いは何処にいったのでしょうか?(苦笑)
まあ、そのぶん壊れてますが。
それにしても未来からの干渉が続きますね。
今後、どのような話になるのでしょうか?
ではランさん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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