〜ココロガシンダヒ〜
『お前の刃は何も守れない』
あの男はそう言った。
『何故?』
俺は問う。
『お前の刃には………守る意志が感じられぬ』
『馬鹿な……』
『お前の中にあるもの……それは斬り・突き・殺す。その意志のみしか感じられぬ』
『護るさ………彼女の大切な者を……生きつづける事を願ったもの達の事を……』
その言葉の……なんと白々しい事か……。
ただ心に消えて行く……。
何も残さぬままに……
『解っているのだろう?』
淡々と問いかける声……・。
『あの子の声は…………お前の心には届いていない』
『そんなことはない』
そしてもう一度………。
『解っているのだろう?守るべきものが死んだあの時に…………』
そうだ………。
俺の心は……死んでいる………。
彼女を守れなかった………・あの時に……。
それでも………俺は…………。
あの夜……俺がいた村は………赤く染まっていた。
そして空は、同胞が送りこんだ機械で黒く染まっていた………。
「時が経てばこんなものか」
何年も経っていない。
だが、村があった痕跡すらも無くなり始めていた。
澄んだ青い空は、俺に何の感慨も与える事は無く、太陽の存在と共にある。
俺の隣には、俺の身長の腰あたりまでの女の子がしゃがんでいた。
その前には、彼女の家族の墓があった。
墓と言っても簡素なものだが………。
「お姉ちゃん………久し振りだね」
その懐かしさを帯びた悲しげな声が、俺にあの時を思い出させる。
シルビィ…………。
君が生きていたならば、俺はもう少し違っていたのか?
自分の故郷を、もう少し違う目で見ることが出来たのか?
あの時俺は如何すれば良かったのだろう?
あの時………。
制裁とは名ばかりの、無差別攻撃。
近くにあった街、そして軍の駐屯地が進路上にあったのが災いしたか。
俺が世話になった村は火の海と化した。
初めて知る事になった。
この戦いの凄惨さ。
おそらくこの戦いも、木星では美麗賛辞のオブラートで包まれて、放送される事だろう。
「シルビィ!!何処だシルビィ!!」
のどかな村は、狂乱の極みにあるようだった。
夕方、仕事から帰ってくるこの時間帯、そして主婦達が夕飯の準備の為に、買い物にいく時間。
丁度そんな時だった。
彼女の妹の、家事の手伝いをしていた(させられていた?)時だった。
爆撃の音。
悲鳴。
何かが破壊される音。
そして…………。
気がついたら、外へ出ていた。
彼女の妹を連れて。
ジョロやバッタの行動に気を付けながら、シルビィを探し始める。
狂騒は尚も激しく、そして俺の心は悔しさが沸き起こっていた。
抵抗も出来ないこんな人達を、俺達は…………。
「お兄ちゃん…………あれ……」
!
あれは…………。
「シルビィ!!」
声を張り上げて彼女を呼んだ。
彼女の妹を連れて、彼女の元へ走る。
彼女の微かな笑顔を見た瞬間。
彼女の姿が…………閃光と共に消え………
「!!」
俺の意識も風と共に消えた。
『のどかな村だな……』
『そうね………貴方には物足りない?』
『いや………ここの方が良い』
『もう大分怪我も良くなったみたいね』
『君のおかげだ………倒れていた俺を、君が看病してくれたおかげだな』
『そう?』
『ああ…………』
『怪我が治ったのならば、貴方は如何するの?』
『……………』
『話したくない?』
『その内………話すよ』
『わかった…………』
気がついたら彼女の家にいた。
助けてくれた彼女は、俺の事を詮索する事も無く、看病してくれた。
その時間が、俺に考える時間をくれた。
木連と地球………戦い以外の和解の方法を…………。
何とかできないだろうか………。
「目が覚めたか」
気がつくと、見知らぬ男が立っていた。
「……ここは?」
あたりを見まわすと見知らぬ場所にいる。
白い壁………結構広い………個室の様だ。
「病院だ………お前は四日眠っていた」
そんなに………。
「村は!!マリアは!!シルビィは!!」
次々と断続的に記憶が思い浮かぶ。
だが何よりも……
「シルビィ……彼女は何処だ!!」
彼女の事が知りたかった。
あの閃光に包まれた。
それでも生きていると言う言葉が欲しかった。
「ばらばらだ」
え………。
「お前のいた場所には、奇妙なピンク色の天道虫と、小さな女の子しかいなかった」
「そ………んな………はずはない」
「女のらしい、千切れた腕と足があったがな」
見てみるか?
何の感情も無いその言葉が………俺の心にこだましていた。
「嘘だ……」
コンコン
「ああ……入れ」
ガチャ
「嘘だろう………」
「ああ……彼………目覚めたんですか」
「ああ……あの子は」
「気丈な子ですね……明るく振舞ってますよ」
「そんな筈は………」
「ピンクの天道虫は?」
「彼女についてますね…………しかしタカト……あれは誰が作ったのでしょうかね?あれほどのAIを搭載できる技術など、まだ何処も開発していない筈ですが………ん?どうしたのでしょうねえ?彼………」
「ん?」
「嘘をつくな!!彼女が死んでいる筈は無い!!」
俺は信じない!!
信じるものか!!
生きている筈だ!!
だって………。
「木連のお坊ちゃまは、随分と疑り深いな」
「!!」
何!!
こいつ今なんて……。
「お前が連れた女の子の家族は、皆死んでいる。確かめたからな」
「…………」
「焼け焦げた腕を使って、遺伝子検査したら、あら不思議。お前の連れと、随分とまあ酷似しているじゃないか」
まさか………。
「安心しろ………あの子には俺が伝えておいてやった」
「お前は!!」
「優しい嘘は、時が経つにつれ、残酷になる時もある。あの子ぐらいの年代ならば、はっきり伝えた方が良い。例え酷であったも、事実をな」
「それでも言い方を」
「変えても事実は変わらない………言っておくが、これはお前達がこれからしようとしている事の、一部にすぎんだろう?」
!!
「そ……それは………」
「そうじゃないとでも?」
…………。
「良く考える事だな………当事者達無き戦いに、何の意味があるのかをな」
そう言ってその男は、赤いチョッキを来た男と共に、部屋をあとにした。
当事者無き戦い………。
それでも人は戦う理由にしてしまう。
これではもはや呪いだ。
どちらも、自ら望んでそれに縛られている。
それはとても楽なのだろうか?
そんな時にあの男の顔を思い出す。
北辰。
あったのはたった一回。
あの男の家ですれ違った。
其の時に投げ掛けた奴の言葉。
『無知ほど罪深いものはない』
「お兄ちゃん………如何したの?」
不思議そうに声を掛けるマリア。
「………如何もしない………そろそろ行くか?」
「うん……またねお姉ちゃん」
俺の機体『ウラジロ』に乗り込む。
『おやどうしたのですか?』
ぱっとモニターに表示される文字。
「『緋桜』帰るぞ」
ピンク色の天道虫………それは昔、木星で俺の乳母だったロボットだ。
それが天道虫の正体だ。
俺が地球へむけて出発した矢先、ある事を知ったそいつはジョロに成りすまして、機会を待っていたそうだ。
そして俺を見つけた。
今は俺の機体のメインコンピュータになっている。
奴曰く
「あらゆるユニットから独立している頭脳」
だと言う。
つまりあの船『ナデシコ』のオモイカネと、ほぼ同列だそうだ。
『そうですか………ああタカト様より、メールが届いております』
「あの男から?」
『いかが致しますか?』
「マリアを届けてからだ」
『了承』
ふん………仕事か………。
出来れば……サブロウタに会わない任務である事を願って……………。
草壁 蒼馬
草壁春樹の長子と言う事になっている。
木連(正式名称はかなり長いので省略させてもらうが)の優人部隊の先駆け部隊
烈士部隊の志願者。
高杉 サブロウタとは同期。
木連式抜刀術を修め、その年代の中ではかなりの腕前。
地球へのボゾンジャンプ中事故に合い、生死不明。
「……やっぱりそうか」
三郎太は、それを確認すると電源を落した。
「そうだよな……俺が戻って来たからと言って、過去が変わる訳無いんだよなあ」
突如、通信が部屋に入る。
『サブロウタ!!舞歌様が呼んでいるぞ………速くいけ!!』
「うぃっす……じゃなくて了解しました」
(あ………まず……)
『?お前、大丈夫か』
「ははは……心配ご無用ですって!!(ほっ)じゃ切りますよ」
プチッ!!
「ふう………心配ご無用よ〜〜〜〜〜ってか?」
ろくでもない事押しつけられそうだなあ…………。
ある意味それは的中していた。
中書き
如何もお久し振り
ランで御座います。
「相変わらず、遅いな」
う……。
「待っている人もいるのにな」
そ……それは………。
今度は絶対に早くだしますです。
………多分……。
「……気長に待ってくれる人達である事を祈るんだな。ところでこのオオクラって男だが」
ええお察しの通り、劇場板では多分死者何名かのうちの一人ですな。
「ほお………。しかしA級ジャンパーは、殆ど拉致られたんじゃない?」
多分、見落としてたんじゃないかなあ。
「考えてないのか」
ってよりも、火星の後継者にしても、確証がなかったんじゃない?
だって彼の爺さん、戸籍地球に移してねえもん。
「は?」
別に戸籍を作ったのさ。
どう言う訳か、火星の方達を毛嫌いしてたみたいで………。
「犯罪じゃねえか?」
まあ………ばれてねえしいいんじゃない?
「まて……じゃあ火星の頃の名前って……」
トヨヒデじゃなかったかなあ………。
「………」
ま、そう言う訳だ。
それじゃあまた。
「次、お会いしましょう」
ハイ、お久しぶりですね〜。プロフェッサー圧縮でございます(・・)
・・・戦神アナザーとか見慣れてますと、アキトって暗黒物質並みの普遍的存在に思えたりもするんですが(爆)一応はそうでなく(゜゜)
残された者もいれば、アキトがいない戦場なんてものもごろごろしている訳でございます。
こういった話では「個人の限界」と言ったものをまざまざと見せつけられますが、同時にありふれた人間達の力をも魅せられるのであります(゜゜)
とある漫画で、主役級の一人が「ただの人間の力、見せてやるよ」と言っておりました。
果たしてこの物語では、誰かがそんなことを言う日が来るのでありましょうか?
さあ、次回が楽しみになってまいりました(゜▽゜)機会があったら、またお逢いしましょう(・・)/
いやーSSって、ホント〜に良いものですねー。
それでは、さよなら、さよなら、さよなら(・・)/~~