紅の戦神

 

 

プロローグ

 

 

 

『緊急ジャンプを行います!!

 皆さん衝撃に備えてください!!』

 

 ナデシコのオペレーターであるルリちゃんのその声に、嫌な予感のした私達は食堂を駆け出た。

 ひどい胸騒ぎがする。

 いつもは意識の奥隅で眠っている状態の私も、完全に覚醒してしまっていた。

 

 緊急跳躍の影響で衝撃に揺れる艦内も私達にとっては平坦な床とたいして変わらない。

 なのに今はさっきの戦闘の疲れですら些細なことに感じられる程の寒気がする。

 目指すのは格納庫。

 何かがそこへ行けと私たちに命じているからだ。

 

「くっ・・・! なんなんだ、この胸騒ぎはっ!?」

 

『北ちゃん急いで!!』

 

「わかっている!!」

 

 格納庫の扉を力任せに吹き飛ばし、呆然としている人たちの頭上を飛び越えて機動兵器に搭乗する。

 アー君にやられてボロボロになってしまっているダリアも、何とか動いた。

 まるで私たちの不安を感じ取ってくれたかのように。

 

 ピッ!!

 

『北斗さん、なにやってるんですか!?』

 

「ダリアで出る!! ハッチを開けろ!!

 さもなければ吹き飛ばすぞっ!!」

 

 現れたユリカちゃんの顔にこちらも必死の表情で訴える北ちゃん。

 でも私も同じ思いだ。

 半壊状態と入ってもダリアなら簡単に破壊して外に出ることができる。

 

『ダメっ!! 今出たらジャンプできなくなっちゃうよ!!』

 

「ちっ・・・!」

 

 跳躍の技術はまだ完全に解明されたわけじゃなくて、いまだに未知の部分が多いらしい。

 下手なことをしたら2度と帰って来られなくなることだってありうる。

 

 

 ―――そして、大きな不安を胸に抱えたまま、私たちは跳躍体制をとった。

 

 

 

 

『ジャンプアウトしました! 現在地球静止衛星軌道上!

 ―――アキトさん、早くジャンプで逃げてください!!』

 

 ルリちゃんの叫びが開きっぱなしの通信から漏れる。

 

 

 

 そして・・・

 

『・・・・・・ダメだ。俺のジャンプイメージがことごとく遺跡にキャンセルされている。

 ナデシコを連れてのジャンプはできたのにな。

 どうやら俺個人を逃がす気はないようだ』

 

 淡々とした・・・まるで他人事のようなアー君の声。

 私達はそれを聞いた瞬間、許可も待たずにハッチを破壊して外の宇宙に飛び出した!

 ・・・整備員の人たちは既に退避していたので大丈夫。

 

『システムも完全に掌握されたようだな・・・さすがオリジナルと言ったところか。

 くそっ、何か手はないのか!?』

 

 よくはわからないが状況がよくない事だけは確か。

 

 このままだとアー君がどこか遠くへ行っちゃう!

 

「アキト!!」『アー君!!』

 

『―――!! 北斗!? なぜ出てきたんだ!!』

 

 私達のダリアがアー君のブローディアに接触。

 少しでも遺跡からアー君を引き剥がそうと捕らえられているブローディアの腕を破壊する。

 

「勝ち逃げは許さん!!」『私を一人にしないで!!』

 

 完全に遺跡からアー君を引き剥がした私達は、そのまま一緒に離れた。

 通信からも歓声が聞こえる。

 

 

 しかしその時・・・遺跡が再び、信じられない速度でアー君にその触手を伸ばしてきた!

 

『く・・・やはり逃がすつもりはない、か・・・』

 

 今度はブローディアの胴体にしっかりと巻きついてしまい、さすがに破壊することは出来ない。

 

 どうして・・・どうして私からアー君を取っちゃおうとするのっ!?

 

『・・・・・・ディア・・・』

 

『・・・うん、わかってる。

 アキト兄・・・・・・さよなら!』

 

『―――!? ディア! ブロス! 何をするつもりだっ!?』

 

 バシュウッ!!

 

 アー君の驚愕の声と共に、漆黒の鎧からコクピットだけが射出された。

 ブローディアのAIが脱出機構を作動させたんだ。

 自分を身代わりにして、アー君を助けるために。

 

 

 でもその思いすら、遺跡は許してくれなかった・・・。

 

 

 ブローディアの本体を即座に棄て、触手は三度アー君を襲う!

 

「させるかっ!!」『やらせないっ!!』

 

私と北ちゃんの思いを受け取って、ダリアが最後の力を振り絞る。

今にも崩れ去りそうな機体を何とか制御し、私達はアー君の乗るコクピットを抱きかかえるように護った。

 

そんな私たちをも巻き込み、アー君を捕らえた遺跡は虹色の光を放ち始める。

 

『くそっ! ジャンプが最終段階に入ったか・・・!!

 北斗、枝織ちゃん・・・すまないっ!!』

 

そのアー君の声を最後に私の意識が薄れていく。

 

 

真っ白になっていく視界・・・。

ぼやけていく北ちゃんの気配・・・。

 

 

そんな中で最後に私が思い浮かべていたのは・・・・・・、

 

 

 

 

・・・・・・アー君の笑顔だった・・・・・・。

 

 

 

 あとがき

 いきなり連載を増やしてしまった緑麗です。

 予備校での授業中、何故か無性にアキト×枝織を書きたくなったんですよね。

 もう1つの方で、ジュン君を活躍させるには色々理由付けをしなくちゃいけません。

 しかしこの2人は存在するだけで勝手に活躍していってくれるでしょう。

 じつは戦うアキトはあまり好きじゃないんですが・・・。

 それからこのプロローグは初めて自分でHTML化して投稿したものです。

 はっきり言って練習作ですね。だからかなり短い。

 しかもこれでいいのかどうか全く自信がなかったりします。

 代理人さんの苦労を減らすためにも早くマスターしたい・・・。

 

代理人の感謝

 

OKOK!

きちんとHTMLになってますよ!

いや〜、やっぱりHTMLで送ってもらえると楽ですねぇ。

保存してリンク張って感想書くだけで済みますから(笑)。

 

ちなみに、最初タイトルを見て「アキトが赤い柔道着着て武者修業するのか!?」

と思ってしまったのはここだけの秘密(爆)。