機動戦艦ナデシコ
あした
〜懐かしい未来〜
第15話 “The Teddy Bear”
夢を、見ていた。
記憶の奥に埋もれた小さな出来事―
『これ、あげる』
時の中で少しずつ薄れていく、微かな記憶―
『くまさん?』
それでも、どこかで大切にしていた、懐かしい思い出―
『うん。また会おうね』
―夢の残り香のようなそれは、時に前触れもなく、強く香る。
『ありがとう、――』
今日は、2196年12月24日。
何が言いたいかと言えば、つまりクリスマス・イブなのである。
お祭り好きのナデシコクルーが、この1年に1度の大イベントを見逃すはずは無い。
しかも、今は停泊中で暇なのだ。
大々的にパーティーの予定が組まれたのは必然と言うものだろう。
ウリバタケは直前まで独自にパーティーの計画を練っていたが、参加希望者がジュンのみだったので諦めた。
・・・今回は、ルリにも見捨てられたようだ。
パーティーとくればご馳走は付き物。
というわけで、厨房はパーティーの準備で大忙しだった。
しかし、人間忙しいとミスも多くなるものである。
ガシャーン!
なかなか盛大な音を立てて、料理を乗せたカートがひっくり返った。
側を通りかかったミカコが、服を引っかけてしまったのである。
「全く、何やってるんだい!」
ホウメイの叱咤が飛ぶ。
「ご、ごめんなさい・・・」
泣きそうになりながら謝るミカコ。
「わざとじゃないんだ、気にするな」
落ちた皿を片付けながら、アキトがフォローを入れる。
・・・忘れられているかも知れないが、一応アキトは今回もコック兼パイロットである。
「でも、とりあえず作り直さないといけませんね」
片付けを手伝いながらサユリが言う。
「材料は多めにはあったけど、これじゃあ買い出しに行かないと足りないね」
困ったように言うホウメイ。
今はドックの厨房を借りているため、ナデシコにいる時ほど食材のストックがないのである。
当然、この忙しい時にコックの人数が減るのはかなり痛い。
しかし、買い出しに行かないと材料が足りない。
「参ったねぇ・・・」
厨房でホウメイが途方に暮れていた頃、コウジは廊下を1人でとてとてと歩くラピスを発見していた。
因みに、ラピスが来てから既に1週間ほど経っている。
その間ラピスはアキトとイネス以外の人物と殆ど会話していないが、
イネスの所に入り浸っているコウジとは割と面識があり、ラピスもある程度心を許しているようだ。
「ラピス、どこに行くんですか?」
・・・20も年下のラピスにも丁寧語を使うのか、コウジよ。
コウジの呼びかけに、ラピスが立ち止まって振り返る。
「・・・アキト」
ラピスはそれしか言わなかったが、コウジにはそれで意味が伝わったようだ。
「ああ、テンカワさんを探しているんですね。
多分、厨房でパーティーの用意をしてると思いますよ」
「・・・チュウボウ?」
コウジの言葉に、小さく首を傾げるラピス。
「あ、そうか、どこだかわかりませんよね。
じゃあ、僕が案内しますよ、一緒に行きましょう」
「アキト、探しに?」
「そうです」
そう言って微笑むと、コウジはラピスの手をとって厨房へ向かった。
「すみません、テンカワさんいらっしゃいますか?」
コウジがラピスを連れて厨房を覗いたのは、ちょうどホウメイが買い出しに行く人材を考えていた時だった。
まさに、飛んで火に入る夏の虫、と言う奴である。
・・・冬だが。
「ああ、いい所に来たね! ウラバ、今暇かい?」
「えっ? まぁ、暇ですけど・・・」
余談だが、この時夏の虫・・・もといコウジは、ホウメイの目がキラーンと光るのを見たと言う。
「そうか、悪いんだけどさ、買い出しを頼まれてくれないかい?
食材が足りなくなっちゃったんだけど、みんな手一杯なもんでね」
「いいですよ」
突然の頼みに多少驚きながらも、快く承知する。
「悪いねぇ。じゃあ、これだけ頼むよ」
そう言って、コウジにメモを渡すホウメイ。
メモを受け取ると、コウジは当初の目的を果たすべくアキトの姿を探す。
アキトは厨房の奥にいたようだが、さっきのコウジの言葉で、サユリに呼ばれて出て来たところだった。
「あ、テンカワさん、ラピスが探してたんで、連れてきましたよ」
コウジがそう言う間に、ラピスはアキトの所に駆け寄る。
「アキト」
「ラピス、悪いな、今忙しいんだ。
厨房は危険だし、そうだな・・・」
ラピスの目線に合わせて身を屈めながら言うアキト。
続けて「イネスさんの所にでも・・・」と言おうとして、ふとある事を思いついた。
(ラピスの今後の事を考えると、いつも俺かイネスさんとしか関わっていないのはまずい。
ラピスはここに来てから外にも出ていないし・・・ここはやはり)
「コウジに買い物に連れて行ってもらうといい」
その朝、目を覚ましたイネスは、ふとベッドの脇に置いてあるぬいぐるみに目をやった。
ちょうど腕に収まるくらいの、毛足の短い、茶色いクマのぬいぐるみ。
この世界のイネスが持っていたものだから、厳密に言えばイネスの物ではないが、
イネス自身も確かにこのぬいぐるみを持っていた。
小さい頃・・・多分20年前に跳んだ直後、誰かにもらったのだ。
しかし、それが誰なのかが思い出せない。
夢で見たのが、その人物だったような気もする。
考えても思い出せなかったので、とりあえずそれについての考えは切り上げる。
精神的な原因か、ジャンプした直後の記憶は前からはっきりしないのだ。
「・・・それよりも、やる事はたくさんあるしね」
そう呟くと、イネスはベッドから起き上がった。
アキトから預かったある物を持って、ナデシコの格納庫にやってきたイネス。
わざわざエステを移動させる事もないと、整備班はナデシコの修理中もここで仕事をしている。
そこには、1人寂しくパーティー道具を片付けているウリバタケがいた。
「ウリバタケさん、ちょっといい?」
イネスが声をかけるが、ウリバタケは気が付かない。
「くそ〜、みてろよ、こうなったら艦長主催の方のパーティーでアレを出して、
乙女のハートをがっちりと・・・」
なにやら1人でブツブツ言っている。
イネスはそんなウリバタケに半ば呆れながら、もう一度声をかける。
「ウリバタケさん、ちょっと頼みたい事があるんだけど」
「あの辺をもうちょっとグレードアップしておくか・・・いや、それよりも・・・」
それでもちっとも気が付かないウリバタケ。
完全に自分の世界に逝っている。
全く気が付く様子のないウリバタケに、イネスはしばし考える。
「・・・オモイカネ・・・」
イネスが小さく何か呟くと同時に、コンテナの輸送車がウリバタケに向かって突っ込んでくる!
「うわぁぁっ!?」
さすがに戻ってきたウリバタケ、紙一重でその輸送車をかわす。
輸送車はそのまま突っ走り、壁にぶつかってようやく止まった。
「な、何なんだ、一体・・・」
「ほんと、危ないわね。システムの故障かしら?」
呆然と輸送車を見つめるウリバタケの言葉に、イネスがしれっと答える。
「お、イネスさん、何か用か?」
本当に気が付いてなかったのか。
「ちょっと頼みたい事があるんだけど」
既に完全に呆れながら、さっきの言葉を繰り返すイネス。
しかし、ウリバタケは興味無さそうに答える。
「悪いが、今それどころじゃねーんだよ。
なんたってクリスマスだからな、来たれや可憐な乙女達〜、ってな」
もう一度輸送車をぶつける必要が出て来そうなウリバタケに、イネスは言葉を重ねる。
「悪い仕事じゃないと思うけど?
最先端のテクノロジーには興味があるでしょう?」
本当は最先端どころじゃないけど、と心の中で付け加える。
ウリバタケの方は、イネスの思惑通り話に乗ってきたようだ。
「最先端?」
「そう、秘密厳守で、これを修理してもらいたいの。
簡単な設計図はここにあるわ」
そう言って、その物と共にディスクを差し出すイネス。
その物と言うのは・・・最先端どころではない技術の結晶・・・ジャンプフィールド発生装置。
「秘密厳守って・・・ネルガルとか軍絡みじゃないだろうな」
イネスの差し出したそれを、何となく胡散臭そうに見るウリバタケ。
やはり、何を考えているのか分からない上層部、というのは気に入らないものだ。
上の命令で妙な物を作らされる、などと言う事態はウリバタケとしては当然歓迎できないだろう。
メカ好きなウリバタケでも、いや、純粋にメカを愛しているからこそ、
何にでも簡単に飛びつくようなまねはしない。
「その辺は関係ないわ。これは個人的なお願いよ」
イネスがそう答えると、ウリバタケは今度こそイネスの差し出したものを受け取った。
「個人的な、ねぇ・・・いいだろう、任せときな」
ウリバタケは、そう言って不敵に笑った。
さて、ラピスと共に、買い物のため街にくり出したコウジ。
「はぁ、結構いっぱい必要なんですねぇ、料理って・・・」
あのワゴン、そんなにたくさん乗ってたか?と聞きたくなるほどの食材を両手で抱えて呟く。
そんなコウジを見て、珍しくラピスが話し掛けてくる。
「・・・手伝う?」
そう言って、小さな手を差し出してくるラピス。
当然ラピスが手伝えるような量ではないのだが、その心遣いがいじらしい。
ラピスの方から話し掛けるというのも珍しいことだ。
ラピスの情操教育は、今のところうまくいっているらしい。
そんなラピスに、優しく微笑みかけるコウジ。
「大丈夫ですよ、ありがとうございます」
・・・やはり丁寧語なのか・・・。
「ラピスこそ、疲れてませんか? すみませんでした、あちこち連れまわしちゃって」
コウジの言葉に、ふるふると首を振るラピス。
今までとは違って、大丈夫、と言葉を添える。
「あちこち連れまわした」というのは事実である。
ナデシコがここに停泊してから外に出ていなかったコウジには、
当然何の店がどこにあるかなど分からなかった。
それで、一応人に聞いたりもして店を探したのだが・・・迷ったのである。
しかも1つの店で全て用事が済むはずも無く、何軒か回る事になり・・・その度に迷ったというわけだ。
・・・実は方向音痴だったのか、コウジ。
それでかなり時間を食ったわけだが・・・料理は間に合うのだろうか。
そして、今2人は何とかホウメイに頼まれた買い物を終え、ナデシコに向かっているところである。
一見平和そうな街を並んで歩きながら、唐突にコウジが口を開いた。
いつもの笑顔が消え、真剣な表情になっている。
「ラピス、テンカワさんって、どんな人ですか?」
「アキト?」
コウジの突然の言葉に、一瞬きょとんとするラピス。
しかし、アキトの名前には敏感なラピス、少しの間を置いてから主観100%で話し出した。
「アキトは・・・優しい人。強いけど、弱い人。
優しい人。私の大切な人」
アキトの人間像を掴むには十分だが、多分に不十分でもあるその返答に、コウジは一応納得したらしい。
どことなく沈んだ様子で言葉を返す。
「ラピスの大切な人・・・そしてイネスさんにとっても、ですよね」
・・・今のラピスの言葉を、どの程度聞いていたのかは疑問だが。
ラピスの方は、どうしてそこでイネスの名前が出てくるのかわからないらしく、
不思議そうに首を傾げている。
流石に、まだ恋愛感情は理解できないようだ。
「・・・はぁ」
(強敵だなぁ・・・)
・・・どうでもいいが明らかに自己完結している。
「コウジ・・・荷物、重い?」
溜息をついたコウジを見て、見事に勘違いするラピス。
少し心配そうに、コウジを見つめている。
「いえ、そうではなくて・・・・・・あ」
多少苦笑い気味にラピスに笑いかけたコウジは、ふと通り沿いにある店のウィンドウに目を止めた。
少し驚いたようにそこにあるものを見て、それからいい事を思いついた、と言うように笑みを浮かべる。
「ラピス、もう1軒寄り道していってもいいですか?」
部屋に戻ったイネスは、オモイカネにこっそりとアクセスしていくつかのデータを表示させた。
表示されたウィンドウに書かれているものは、ナデシコの乗員名簿、オモイカネのアクセス記録、
ここまでのナデシコの航海記録やイネス自身が作成したファイル、えとせとら、えとせとら・・・
それらをしばし眺めるイネス。
「・・・やっぱり、話くらいはしておくべきよね」
暫く何やら思案していた様子だったが、その言葉でそれを打ち切ったようだ。
そのファイル類を全て閉じると、ちょうど狙いすましたように部屋のドアが開いた。
そこに立っていたのは、なぜかナチュラルライチの格好をしたメグミ。
髪形もいつもと違ってポニーテールだ。
「イネスさん、そろそろパーティーが始まるから来て下さいって、艦長が言ってます。
もう結構みんな集まってますよ」
・・・コミュニケなり何なりで伝えればいいんじゃないのか・・・?
わざわざ部屋を訪ねなくても・・・。
「ええ、今行くわ」
何となく引きながら答えるイネス。
メグミの方も、イネスが見ているのに気付いたらしい。
「あ、これ、カワイイでしょ?
艦長がコスパだって言うから、さっき買ってきたんですよ」
嬉しそうにそう言って、くるっと回る。
「そうね・・・」
一応同意しておくイネス。
「それじゃあそういうわけなんで、早く会場に来て下さいね」
そう言うと、メグミはあっという間に去っていく。
1人部屋に取り残されたイネスは、少しの間を置いて、パーティー会場へ向かうべく部屋を出た。
そして、ドックの一部を使ってナデシコクルーのクリスマスパーティーが始まった。
軍のドックでよくそんな事を、という気もするが。
メグミも言っていたように、前回と同じくコスプレパーティーらしい。
大体のメンバーは何かのコスプレをしている。
メグミのナチュラル・ライチを始め、ヒカルはなぜかプラ○スーツ、
リョーコはヒカルに乗せられたのかプリティ○ミー、イズミは今回は某吸血姫らしい。
新体操のリボンを持った怪盗のユリカ、黒いセーラー服のルリなど、結構壮観である。
料理も、何とか間に合ったようだ。
ホウメイガールズ達が、次々に料理を運んできている。
ほぼメンバーが揃ったところで、ユリカがマイクを持って壇上に上がった。
「艦長ミスマル・ユリカです!
みなさん、今日は思いっきり楽しんでいきましょう!」
おお〜、と会場内から声が上がるのと一緒に、ヤマダが壇上に現われた。
「それじゃあ、景気付けに俺が一発素晴らしい歌を披露してやろう!
ゆめが〜あ〜す〜をよ〜ん〜で〜いる〜!」
「「「またかっ!」」」
前の隠し芸大会と同じ展開に、すかさずツッコミが入る。
そこに出て来たのはウリバタケ。
「よーし、そっちがその気なら、こっちも前と同じ手で返してやろうじゃないか。
しかし、こっちは前回とは一味違うぞ?
出でよ、リリーちゃん弐号!! ぽちっとな」
そう言って、何かのボタンを押すウリバタケ。
すると、会場の隅に置いてあった自動販売機が何やらがたがたと動き出した。
自然とそこに視線が集まる。
がしょん
そんな音と共に、自動販売機から足が生えた。
それを見て、当然キレるプロス。
「ウリバタケさんっ!
ドックの自販機を改造したんですか!? 何て事を!!」
「心配すんな、これはナデシコからこっそり降ろしておいた自販機だからよ」
「もっと悪いですよ!!」
「つまり、軍のものならまだ良いと?」
怒鳴るプロスに、横からルリが冷静なツッコミを入れる。
「あ、い、いやいや、決してそんな事は・・・」
焦るプロス。
どうやら、思わず本音が出たようだ。
そんな会話をしているうちに自販機は完全に変形し、手足のあるロボットになっている。
「よしリリーちゃん弐号、主砲発射だ!」
ウリバタケがそう叫ぶと、変形した自販機の取り出し口から
缶ジュースや缶ビールが凄い勢いで発射された。
懲りずにまだ歌い続けているヤマダと、まだ壇上にいたユリカに向けて。
「ぐはっ!」
「うひゃぁぁ〜」
「ああああ、何という事を!」
缶ジュースの1つが思い切り頭に直撃していきなり気絶するヤマダ。
悲鳴を上げながら慌てて壇上から逃げるユリカ。
もはや放心しそうになっているプロス。
そして、それらを満足そうに見ているウリバタケ。
「さあリリーちゃん弐号、あいつを成敗するのだ!」
ウリバタケの号令で、ヤマダに向かって歩き出す自販機。
・・・どういう仕組みなのだろうか。
とにかく自販機はヤマダの所まで歩いていき・・・そして、ヤマダは文字通り自動販売機に踏まれている。
「ふはははは! 思い知ったか!」
別に今回は大して悪い事はしていないと思うのだが・・・
要するに、リリーちゃん弐号のお披露目をしたかったらしい。
・・・リリーちゃん、と言う外見ではない気がするのだが・・・。
ここでお約束の一言。
「・・・バカばっか」
しっかり安全な所に避難して、ルリが呟いた。
「でも、艦長に乗せられてこんなの着ちゃってる私も、結構バカよね」
自分の着ているセーラー服のスカートをつまんで、そう付け足す。
そこに、水色のノースリーブを着たミナトが現われた。ちなみに、エ○・シーンらしい。
「なかなか可愛いわよ、ルリルリ♪」
そう言ってウインクを送る。
「・・・そうでしょうか。よく、わかりません。
こんなかっこしてどうするんですか?」
ルリの言葉に、ミナトは少し困った顔をする。
「う〜ん、どうする、って言われても困るんだけど・・・。
まぁ、たまには羽目を外して楽しむのも良いんじゃない? ね?」
「そうですか」
そんな風に会場が大騒ぎしていた頃、イネスは会場の隅の壁に寄りかかって、会場の様子を見ていた。
正確には、見ていたというよりも、会場の方を向いたまま違う事を考えていたのだが。
来ている服もいつもの制服に白衣と、はっきり言って、来ただけ、という感じである。
そうして何となくパーティーを眺めていたイネスの所に、コウジが近付いてきた。
コウジは特にコスプレもせず、いつもの私服、黒いタートルネックのセーターを着ている。
「イネスさん、どうしたんです?
こんな隅の方にいなくても・・・」
イネスは、コウジの声で現実に引き戻されたというように、少し驚いたようにコウジに視線を向け、
それからパーティーの方に視線を戻した。
「今出て行くのは自殺行為だと思うけど」
「ははは・・・それもそうですね・・・」
暴れまわっているウリバタケとリリーちゃん弐号に隠し芸大会での惨状を思い出したのか、
苦笑いするコウジ。
しかしすぐに笑顔に戻り、イネスに1つの包みを手渡した。
「イネスさん、これ、クリスマスプレゼントです」
イネスは、差し出された包みを困惑したように受け取る。
「あ、ありがとう・・・」
その様子を、コウジはどこか期待に満ちた笑顔で見ていた。
パーティー終了後、部屋に戻ってコウジにもらった包みを開けたイネスは、その中身を見て一瞬硬直した。
包みの中にあったのは、ちょうど腕に収まるくらいの、毛足の短い、茶色いクマのぬいぐるみ・・・
イネスの脳裏を、1つのイメージがよぎる。
向かい合う少年と少女。
少年にぬいぐるみを渡された少女は、少しぎこちない笑顔でこう言った――
『ありがとう、コウジくん』
TO BE CONTINUED・・・
〜あとがき〜
――はぁ、また長くなってしまいました。実は悩みました、この話・・・。
イネス「コスプレイベントに、でしょう?」
――はい。結局お洒落倶楽部のネタになってしまいました。
イネス「リリーちゃん弐号も小説の方に出てるし」
――それは実は後になって気付いたんですが・・・。
でも今回は結構頑張ったんですよ、たくさんキャラを出して。
イネス「そのくらい普通に使えるようになりなさい」
――はいぃ・・・。で、次回から謎解きです。
既にもろバレって話もありますが・・・でもこっちの方は結構忘れられていたのではないでしょうか。
イネス「まぁ、この話の事を気に止めている人自体いるかどうか疑問よね」
――うっ。・・・と、とりあえず、読んで頂き有難うございました。
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