本
零夜は、北斗が読んでいる小説を見て驚いていた。
というのも、北斗自身が小説を読むような性格ではない。
そのような時間があったらトレーニングを重ねるような人間である。
しかし、読んでいる。熟読しているのだ。
恋愛小説を。
一体、どういう心境の変化があったのだろう?と零夜は汗を流しながら思った。
心の片隅では、どうせ上司である舞歌が裏で暗躍しているのだろうとも思っているのだが…。
「ね、ねぇ、北ちゃん。どうして本を読む気になったの?」
北斗は、集中して読んでいたので零夜に見られていることに気付いていなかったらしい、
呼びかけられると同時に慌てたように恋愛小説を背後に隠しながら周囲を落ち着かない様子で見る。
「あ、あの…北ちゃん?」
「お、俺としたことが人に背後を取らしてしまうとは」
ガクッと膝をつきながら自分の不甲斐なさを悔いている。
その様子に少し可哀相に思ったのかポンっと零夜が肩に手を置いて慰める。
「大丈夫!それは、私が北ちゃんにとって特別なだけだから!」
何気にアピールしているような気がするが気のせいだろう。
別に下心があるわけでないのだ。
「零夜……そうだな!
いつまでもうじうじしてたら男らしくないからな!!」
…だが、効果はあったようである。
(そうだな、だいたい零夜がいつも俺の背後から尾行していたり、
ふと気が付いたら横にいて、どこに行っても零夜がまとわり付いてきて
世間一般的にそれはストーカーと呼ばれるものである。
あんまり一緒だから慣れてしまったんだな。そうか、そうか)
慣れてしまうのは、危険なのだが…。
とにかくようやく落ち着いたらしく北斗は、顔を零夜の方へと向ける。
向きあった瞬間、零夜の心臓の鼓動が早くなったり、頬を紅く染めているのは謎である。
「ん、舞歌にこれを読むと良いと言われたからだ」
やっぱり!
と、零夜は、思った。
こういう北斗が似合わない行動をし始めた場合、必ず舞歌が関わっているのだ。
前に聞いた話だと北斗を普通の女の子に戻すというのがイタズラする理由だと言っている。
しかし、零夜は、上司という立場上ずっと我慢しているのだが、
北斗を女の子に戻すにしても他に方法があるだろうが!と突っ込みをいれたかった。
「そ、それで、どうして読むと良いと言われたの?」
「ああ、何でもアキトに勝つ近道はこれらしいからな」
・・・。
「は!?」
「な、何で驚くんだ!?もしかしてまた俺は嵌められたのか!?」
零夜の驚きように北斗は、怒りに顔を真っ赤にしながら言ってくる。
「それじゃあ、これは敵の心を見破る術を習得する本でもなく」
「・・・まあ、確かに別の意味で身には付くかもしれないけど戦いには向いてないかも」
「相手の目を惑わす時に使う女の武器の使い時を教えてくれるのでもなく」
「・・・北ちゃん、相手が狼になってむしろタチが悪くなっちゃうよ。それから目じゃなくて心だよ」
「ということは、最終秘奥義 告白の仕方もデタラメなんだな!?」
「・・・奥義というより勇気が必要なだけじゃないかな」
「そうか、『また』舞歌に騙されてしまったのか、俺は…」
まるで人生に疲れたサラリーマンのように深いため息を零す。
それを見て、何やら思いついたらしい零夜が悪魔のような笑みを浮かべる。
「舞歌様には、騙されたけど大丈夫!
今度は、私が見つけた武術の心得の本を上げるよ!
えっと、これは…その…そ、そう!
心の平常心を保つ為に北ちゃんの意識改革をしてくれるの!!」
「意識改革?それに心の平常心を保つって一体?」
何もわかっていない北斗にメチャクチャ嫌そうにしながらも零夜が説明を始める。
というより、説明をするのは良いみたいだが、アキトが話題に上がるのが嫌みたいだ。
「北ちゃんは、あのテンカワ アキトと会うと胸がドキドキするんでしょ?(-_-メ)」
「あ、あぁ、最近は重症になってきて写真を見るだけで顔が火照ってしまうんだ」
北斗は、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして告白を続ける。
しかし、それとは対照的に零夜の顔は、アキトに対する憎しみで般若へと変わる。
「そ、そこでこの本!!これを読んで影響(?)を受ければ大丈夫!!」
「この本を読めば克服できるんだな!!」
レズビアン推奨 同人誌
…その後、北斗がどうなったのかは誰も知らない。
■あとがき どうも、Sakanaです。 突発的に思いついた割には、一気に書き上げることができました。 ほとんど執筆時間がかかっておりません。むしろ後書きに悩んでいたりします。(T-T) 話の内容が薄い上に、容量も短いですからね。ここでわざわざ語ることも無いですね。 この話って恥ずかしがりやの北斗とアッチの世界の零夜が動き回ったおかげで、 もうスラスラ書けること、書けること…。一体、どうしたんだ!?と疑ってしまう早さでした。 |
代理人の感想
大爆笑。
息が詰まる。誰か助けてくれ。