機動戦艦ナデシコ

『影(シャドウ)』


 

 

 

 

 

木連の某所

 

「ズズズズズッ……なに!?うまいだと!!」

 

奇人でも茶のうまさは分かるか」

 

「俺にはどっちかというとお前に茶道の心得がある方が不思議だ」

 

「笑止!!負け犬の遠吠えにしか聞こえぬわ!!」

 

「この野郎っっ〜〜――……また殺すか?

 

お茶のことでもめているのは、アキトと北辰だ。

北辰がアキトに出したお茶が原因だ。

アキトはあんなでも料理人を目指した男……北辰のような外道男に負けたくなかったのだろう。

 

「やめておけ!!

 お茶の所為でこれから話し合う会談を壊したくない」

 

「はっ!!」

 

「……ふぅ〜〜〜――――(落ち着け……)」

 

草壁がわざわざ喧嘩の仲裁をして二人の喧嘩に幕が閉じた。

そして、ようやく話しが続く。

が、アキトと北辰のお茶対決は続いているようでさっきから新しいお茶を立てつづけている。

 

シャカ、シャカ、シャカ、シャカ、シャカ……。

 

「(ゴクッ)チッ!やるな」

 

「(ゴクッ)くっ!美味」

 

そんな二人を見て居合せている草壁の取り巻きは唖然としている。

草壁はもう無視して強引に話を進めることにした。

 

「……すると、君は宇宙に場所を譲ってくれというのか?」

 

「その通り!!(バッ!!)

 俺が欲しいのはここの(ビシッ!!)スペースだ!!」

 

なにやら無駄な動きが多いが……。

アキトの指差した場所はちょうど何も木連側には、特に何ももないので放置していた場所だ。

 

(この男にこの場所を譲るか……?

 しかし、何を考えているのやら……。

 ……何故、こいつはガスマスクをつけているんだ?)

 

草壁の疑問が別のになってしまったが、

そんなこととは露知らず……アキトはまだ地図を指差している。

 

「了承してもらえるか?」

 

「……良いだろう(こいつの素性を調べねばならんな)」

 

少し遅いが草壁はアキトのガスマスクの下の顔に興味を持ったみたいだ。

こうして会談が一段落ついたときにアナウンスが流れた。

 

『ピンポンパンポン♪

 ただいまより、熱血親善野球大会を行ないたいと思います、ピンポンパンポン♪』

 

「おぉ!!

 もうそんな時間か!!

 そっちは人数が足りないのだったな?」

 

「ああ、なにせやろうと言っても疑心暗鬼になっててやろうとしないんだ」

 

このアキトが言っているメンバーとは火星の生き残りの連中のことである。

彼らはアキトとラピスに散々遊ばれて(馬鹿にされた)話を聞こうともしないのだった。

 

「……う〜む、こちらで選んだ何人かをそっちに入れよう」

 

「それじゃあ、会場に向かうか」

 

アキトがマイバットを握って会場に向かおうとしたときだ。

草壁と北辰が何やら小声で話しをしている。

アキトはそれを聞くために補聴器を最大にした。

 

「……別の地球の連中に会ってきます」

 

「頼んだぞ、北辰……」

 

聞けた二人の話しは、それだけだったが、

アキトには内容を理解するには十分過ぎる程だった。

 

 

 

 

 

アキトはメンバーを見てどうするか悩んだ。

 

「……どうして子供がいるんだ?」

 

「なによ!メンバーから外す気!!」

 

「ゆ、ユキナ!!

 大人しくするというから連れてきたんだぞ!!」

 

アキトは白鳥 九十九が来るだろうとは予想していた。

だが白鳥 ユキナがおまけで来るとは予想外だった。

 

「軟式野球じゃないんだぞ?

 硬式野球なんだからな!?」

 

「ふふん♪そんなので脅したつもり?

 地球の連中に見捨てられて漂流していたのを助けてやった恩を返しなさいよ」

 

「……(ああ、そういう設定だったな……)」

 

アキトは地球のド汚い連中に追い出された哀れな青年Aという風に、

草壁などの一部を除いた連中に歪んだ情報を流したのだった。

 

「ふん、お前はベンチウォーマーだ」

 

「むき〜っ!!

 何よ!!スポーツだったら負けないわよ!!」


 

「ゆ、ユキナ、と、とりあえず落ち着け」

 

「わ、分かったわよ、お兄ちゃん」

 

九十九がユキナを落ち着かせたが、

アキトが言った一言がユキナの逆鱗に触れた。

 

「はっはっは、大人に勝てると思うのか?」

 

「アンタには絶対負けないわよ!!」

 

 

 

 

 

「プレイボ〜ル!!」

 

アキトチームが先攻だ。

 

ズバン!! 「ストライ〜ク!!」

 

アキトはまず1球目をわざと無視した。

何故、無視したのかと言うと……。

 

「今さっきのは打てたんじゃないの!?」

 

ユキナが味方なのに罵声をアキトに浴びせる。

そんなユキナの熱い応援に応えるべくアキトは予告ホームランをした。

 

「……ふっ」

 

「っ!!」

 

そして相手のピッチャーがユキナの

視殺できそうな視線(アキトに対してだが、余波をくらった)に耐えながら投げた。

そんな状態で投げているからもちろん球は緩めのスピードだ。

 

カキン☆

 

アキトの打った球は、余裕の場外ホームランだった。

そしてホームへと戻ってきたアキトは嫌な笑みを浮かべながらユキナに言った。

 

「子供には無理だな(ニヤリ)」

 

「ふ、ふん!!あれぐらい私だってできるわよ」

 

と、ユキナを挑発したかっただけのようだ。

 

 

 

 

 

ユキナの番がやってきた。

その前に出番がきた九十九とアララギは三振だった。(ちゃんと書けよ)

ピッチャーが胃を悪くして月臣に変わったのが原因だ。

 

そして、ドス黒い闘気を身に纏ってユキナがバッターボックスに立つ。

 

「……見てなさいよ……絶対ホームランを打ってやるから」

 

「お、おい?親善野球なんだぞ?」

 

月臣をユキナは無視をしてベンチでお茶の研究をしているアキトを見た。

 

「……チラッ」

 

その視線に気付いたアキトは叫んでくる。

 

「代打か!?

 わかった、直ぐに変わってやる!!」

「誰もそんなこと言ってないでしょうが!!」

 

(打ってやる!!絶対に打ってやる!!)

 

ユキナが月臣の方を向いたときだ、

月臣がユキナに向かって言ってきた。

 

「受けてみろ!!

 俺の、熱血ボール59号を!!」

 

なにやら汗臭くて暑苦しいボールが月臣の手から離れて放たれた。

しかし、そのボールをユキナはしっかりと捉えていた。

 

「見えた!!もらった!!」

 

カキン☆

 

「……って、あれ?」

 

思ったほど飛ばなかったのでユキナは怪訝そうな顔をする。

しかし、それは当然の結果だった。

いかに怒りのパワーで普段の力の50%増量してもピッチャーは月臣なのだ。

彼は木連式柔の免許皆伝……つまり鍛え方が違う。

そんじょそこらの奴らには決してパワー負けはしない。

 

そしてボールは……。

 

パシ♪  「ア〜ウト!!」

 

「そ、そんな……」

 

ユキナは呆然とボールが取られるのを見ていた。

そして、重い足取りでベンチへと帰ってくる。

 

「よっ!ご苦労さん」

 

アキトが意外にも普通の言葉をユキナにかけた。

ユキナはてっきり罵詈雑言の嵐だと思っていたのだが……。

 

「……お情けのつもり?」

 

「ん?なんで?」

 

「ふん!口ほどにも無いとか思ってるんでしょ?」

 

「いちいち子供が冒した失敗に口挟んでたらこっちが疲れるからな」

 

「なによ―――――」

 

『火星にて地球の戦艦だと思われる戦艦を発見』

 

言おうとしていた言葉はアナウンスによって邪魔をされた。

アキトはそれを聞くと立ちあがって草壁の方へと向かう。

 

「おい、ちょっと良いか?」

 

「ああ、どうやら火星に地球の戦艦がやって来たらしい」

 

草壁はアキトに答える間も側近にその情報を聞いている。

ナデシコがチューリップに発見されたらしい。

 

「私はこれから無人戦艦を送り込む作業の指揮を取らないといけない」

 

「大変だな、それより……」

 

「要求の物資や食料は君の指定した場所に置いておいた」

 

「だからそうじゃなくて」

 

「なんだね?」

 

「……トイレはどこだ?」

 

その言葉を聞いた者は思った。

 

(((((わざわざ閣下に聞きに来るなよ・・・・)))))

 

「おい!早くしろ、ヤバイんだ!!」

 

アキトが慌てている様子を熱血親善野球をしていた者はあきれて見ていた。

 

 

 

 

 

後編に続くよ……。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 アキトがようやく動き始めてくれました……。

 どうしてコイツはこんなに動くのが遅かったのだろう……?

 

メグミ:「何言ってるんですか?

     あなたが面白がって無計画に書いた所為じゃないですか」

 

 そ、それはそうだけどさ。(^^;)

 ほら!なにしろ初めてのことだったしさ!!ねっ!?

 

メグミ:「これからはちゃんと日々精進して下さいね」

 

 聞いちゃいねえ……。

 

 

管理人の感想

 

 

Sakanaさんからの投稿第十六弾です!!

北辰の煎れたお茶って・・・

何だか木連の戦艦って、ナデシコに似てるな〜(笑)

草壁はやたらと出来た人物だし(苦笑)

そうか

これが真実だったのか!!

・・・でも、山崎はどうなんだろう?

 

ではSakanaさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

感想のメールを出す時には、この Sakanaさん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!