機動戦艦ナデシコ<灰>
エピソード8−3/恐るべきは変態……それって人類の何割?
アキトと北斗・枝織の体が入れ替わって二日目、もう夕方と言うのに、いまだにシアの家にいた。
いまどき珍しい夕刊を見ながら……別に気にする事ではないと気にするのを止めた。
『発電所を襲った恐怖?!
謎の戦い……巨大兵器の恐怖!!
壊滅する連合軍サセボ基地……連合軍・統合軍の存在意義とは?!』
行儀悪いとは知りながら、その見出しを見ながら口に入れた「ひじきの煮物」……動きが止まった。
「どうしたの、おねーさん?」
くどいようだが、中身はアキトだ。
彼は目に見えてへこんでいた。理由は……
「俺のより、美味い……」
箸を口の中に入れた所為で、石化していた。原因は上記のとおり、味である。
「まあ、小さい頃からやってるし、クーシャのほうが上手だからね」
「クーシャって?」
こちらは非常に幸せそうな…枝織。きっと、ご飯が食べられるなら幸せなのだろう。それが非常においしいのだから、なおの事。
単に、聞いた事の無い名前に引っかかって質問したらしい。
「クーシャはボクの兄さんの子供、つまり姪。まあ、色々事情がってさ」
そう言って、初めて今までの笑みとは質の違う笑みをうかべる……どこか歯切れが悪そうに。
「それで二人はどうする気? もうしばらくしたらクーシャも来るし、ここじゃ三人でもう限界だし」
「どこか隠れられそうなとこ、知らないかな?」
「しお…じゃなくて、この子、この街に来たばかりだって言うし、それは知らないんじゃ…」
「知ってるよ」
「え?」
「何処?!」
あまりにあっさりした答え。
「オンラインの悪魔にバレ無いような場所だよ!」
「オンラインが整備されてないところならいいんでしょ」
「地球や木星の人脈があると、ばれるんだよ!」
「そういうのも無いから」
「そんな場所、火星くらいしかないんじゃ…」
「でもさ、そんな条件じゃ隠れ里に永住…くらいしかないんじゃない?」
「うーむ……」
「迷うな……」
本気で悩み始める二人に、行くにしろ止めるにせよ……もう一押しがいるだろうと、話を続ける。
ふふん、といった笑いを浮かべると、楽しそうにいう。
「ロストコロニーがあるよ」
「ロスト…」
「…コロニー?」
説明しようとして、ほんの少しだけ笑顔が歪んだが、元に戻る。
「知ってると思うけど、月の独立運動をしてても木連に行かなかった人がいるんだ。でも魔女狩りみたいのが起きて…その人たちが作った隠れ里があるんだ。いくつかは発見されたけど、いまだに見つかっていないのも10幾つあるから、行きたいなら教えるけど?」
「そんなものが…」
「百年といったら、人が70年80年平気で生きる時代だし、連合が徹底的に「皆殺し」にしても木連が出来て、当時の資料が幾つも出版される時代……その当時の事を誰よりも詳しく知ってる人たちだから、いまだに外に出るのを嫌ってるから……でもさ、田舎だから住んでる人も純朴だし、のんびり出来るから」
「君も、そこから来たのかい」
「ボクの故郷は……もう、無いんだ」
そう誰にも聞こえない声で言いながら、何かをダンボールの中から取り出す。
出してきたのは、少し古い型のROMカートリッジ。
「これ、航路データ。連絡員にはこのROMを見せて御神楽の紹介だって言えば、何処になるかは分からないけど"ほとぼりが冷めるまで"くらいなら居させてくれると思うから、行ってみたら?」
言われても二人は、やはり悩みを見せるだけだった。
しがらみ……そう捨てきれるような人間ではないという事だろうか……この二人が?!
だが、答えを出さないわけにもいかない。
アキトは考えながら、取り敢えずの答えを出した。
「今は……ここから離れられないんだ。この状況、一週間くらいで何とかなるし、それに……」
「……つけなけりゃならない、決着がある」
続けていった北斗の声……その中にあったのはおそらく、北辰。
それは……アキトの中にある問題でもあった。
ヴィーーッヴィーーッヴィーッヴィーーッ!!
激しく鳴り響くレッドシグナル……普段以上に警戒が厳しいらしいが……その理由までは九十九達に知らされていない。
「白鳥君」
「……舞歌様、何時の間にこちらに」
「これは立体映像よ。私達の所在を知らされる訳にはいかないのだから。……作戦を説明します」
そう一方的に話す舞歌にはいつもの「おちゃらけた」様子は無い。非常に切羽詰った……危機が迫っている事を教えてくれる。
「今回の敵は、かつての我々の仲間であり、危険思想の持ち主……紫苑零夜。殺傷許可は下ろせませんが、最終防衛ラインである貴方方が抜かれた場合、私だけでなく、京子や飛厘までが危険に晒されます……」
そう言いつつ、計算され尽くした舞歌の瞳は月臣と秋山の顔を射抜く。
彼らは恐妻家だが、それ以上に愛妻家である。
燃えた。
九十九は妻が被害予定に入っていないので、気合が抜けたままだったが、次の舞歌の一言で唖然とした。
「それと今、ユキナちゃんが遊びにきてるから」
……それはまあ、有体に言えば「ひとぢち」と云ふものである。
「ユキナ……遊びになんて、なんて事を……?」
そこで舞歌は相好を崩す。
どうやら今までのは、ここまで話を引っ張ってくる為の伏線だったらしい。
何処となくいやらしい顔の舞歌が、なにやら視線で合図をすると、向こうで誰かが操作したのだろう、再び床から色々なものがせり上がってくる。
「これが貴方達の為の、最終型戦闘服……試着してみなさい。……木連のトップシークレット……貴方達なら、使いこなせるわ」
いわれ、三人は笑った。
擬音にするなら「うわぁ」と言った笑いを……浮かべたのだった。
奴らがやってくる。
ピンク色のオーラを、まるでラオウと戦っている時のケンシロウのように全身から立ち上らせて。
奴らが……そう、奴らとは遅刻ペンギン……じゃなくて。
「もっふ」
「ふもっふ」
「もふ」
「ふーも。もふふ、ふもふ」
……この会話でどうやっているのか不明だが、意思の疎通は出来ているらしい。
ずんぐりむっくり、犬だか熊だか分からない、ブチ模様のデフォルメされた可愛い奴。ちょこんと帽子を乗せた大きなおめめの凄い奴。
そう、これこそが西暦2000年ごろ、とある「組」や「アメリカの地方警察」に運用された究極の強化装甲……量産型「ボン太くん」ズだ!!
ちなみに、ラピス達が現代技術でよみがえらせたのに、何故かボイスチェンジャーを組み込まないと、上手く動かないらしい。
ちらっ…
視界に何か、動くものが映った。
ボン太くんは逃がさない!!
その目に隠されたサーモグラフィカメラで熱源の形そのものを映し出す!
ショットガンを腰だめに構え、ボン太くんは躊躇とかいうものをどこか遠くに置き去って発射する。
ぼごぅ。
そんな音が、激しい炎を撒き散らしながらあたりを照らす。
「うわ、うわ、うわ……」
慌てて逃げようとし、とたんに転ぶ氷室君。
憐れな彼はそのまま、恐怖に歪む顔と震える手でサブマシンガンを構え、一気に打ち放つ。
ぽす。
ぽす、ぽす。
ふわふわしたボン太くんの表面にぶつかって、軽い音を立てて落ちる。
カランカランという硬い音は……恐怖に染まった顔に、更なる絶望を上塗りする。
「もっふ(神様に祈った?)」
「ふもぉぉふ、ふも、ふもふも(抵抗しなければ、まだ長生きできたろうに)」
すると、炸裂弾を構えた方ではない方のボン太くん……それがいきなりピンポイントでアサルトライフルでショットシェルを撒き散らす。
氷室君にそれを避ける術など無い。
氷室君は、まるで劇画ばりに格好良く倒れた。
「ぐふぅ」
……格好良い倒れ方だった。
ちなみにこのボン太くん、炸裂弾などの殺傷能力の高い武装をした、頬に×印がある「一号」がイツキ。BB弾を使ったエアガン(違法改造済み)のような非殺傷系を使うのが「二号」の零夜。
「もふ(生きてる?!)」
「もふふ?! (人間…じゃないの)」
「もーふー(多分、人間じゃないかな)」
……こんなのにやられた氷室君は……何故自分がこんな目に会っているのか、何故こんな目に会ってまで舞歌の副官をしているのか、何故コメディアンに成り下がっているのか……気絶する瞬間まで考えていた。
後日、同じ悩みを持った元一朗に相談したところ、ただ黙って飲みに誘われたらしい。
ガチャン!
突然、照明が落ちるが、ボン太くんのノクトビジョンシステムにそんなものは通用しない。もっとも、突然強力な光で視界を潰される可能性があるのでスターライトスコープのようなものではなく、赤外線カメラのような物を使っているが。
ちゃらりらーりーらららーちゃらりりーちゃーらららー
どこか懐かしい音楽が流れ始める。
きっと汎用人型決戦兵器が現れる時の……あれだ!
「とう」
「とうっ!」
「せいっ!」
影が走る!
「もふっ! (甘いッ!)」
ボン太くんは迷うなく当てるつもりで、何処からか突然脈絡なく取り出したロケットランチャーを打ち放った!!
「甘い!」
影は直線機動のロケットランチャーを見切り、まっすぐに突進! すれ違いざまにボン太くん(1)の首に一撃入れ、そのまま走り去る。
しかし、壁に叩きつけられたボン太くんは「もふもふ」言いながら立ち上がる。
ババン!!
ドン!
ドン!
ドン!
スポットライトの光の中、突如上がった花火と共にポーズを取る三つの影!!
三つの影は同時に「何か」を取り出し……叫んだ!
「「「変身!!!」」」
その何かをベルトのバックル位置にはめ込んだ瞬間、それは起こった!
プロスペクターは、何処からどう聞きつけたのか、その仕事を、もっとも似合いの人物の前にもっていった。
「ヤマダ・ジロウさん、貴方に折り入ってお願いがあります。無論、連合軍から一時的に貴方を借りれるように打診済みですが……」
「……」
だがヤマダは硬く目を瞑り、腕を組んだ状態から身じろぎ一つしない。
それは、まるで彫像のようで、息をしているのか怪しいほどに、世界との壁を硬く閉ざしていた。
「ヤマダさん?」
「……」
「……ダイゴウジ・ガイさん」
「おお、この全世界の誰もが待ち望んだ究極のヒーローたるこの俺に一体なんのようだ!!」
やはり、ヤマダはヤマダ……そう言うことか。
気が抜けた、力も抜けた。そんな顔でプロスペクターはまだ平然としている。
どうやら仕返しをしようという腹らしい。
彼は自分に出来る、最も低い声……ドスが効いた声と言い換えても良い。その声で語り始めた。
「まずは、先に言っておく事があります。この件は他言無用の上、他者に漏らしてはなりません。またその場合、ご家族の職がどうなるかは分かりません……何しろ、ネルガルの影響の及ばない企業など……ありませんからね」
ククク……と含み笑いさえしてみせる。
それはどちらかと言うとブラック・プロスペクターとしての、本性かもしれない。
「汚ねえ……」
「それは誉め言葉として受け取っておきましょう」
ついと眼鏡を押し上げ、直す。
……おや、指先ではなく、手の付け根のであげる……この眼鏡の直し方は……
「俺がアンタをぶちのめして、話をオジャンにするってのもあるかもな」
「それは無駄です。貴方は私などよりはるかに弱い」
「なんだとテメ…え?」
それはそこに、当たり前のようにあった。
ヤマダの首筋から一ミリ足らずの、今にも触れるかどうかという距離に。
「コイツぁ…」
「猫の爪……いやお恥ずかしい……私の、過去の思い出ですよ」
そう言いながら両手の指、一本一本に備えられた計10本もの刀……それをつけたままプロスペクターは手の付け根で眼鏡をもう一度押し上げる。
クイッ…と。
二人はその体勢から微動だにせず、ビジネスライクに言葉を交わす。
「貴方に探していただきたいもの……依頼書は遅くとも来週初め、貴方につけるサポーター二名から受け取ってください。ご心配無く…貴方も知っている、気心の知れた友人でしょうから」
「いけすかねえが……分かったぜ」
「報酬はアメリカドルで250万……必要経費は領収書を見て、許容できる内容であるなら…限りはありません」
では、また後ほど……
そう言うかのように、じっくりと猫の爪をそろそろと引くプロスペクター。
だが。
「忘れもんさ」
そう言ってヤマダの手の中にあったのは、彼のネクタイだった。
「……侮れませんね」
「お互い……な」
店の中に備え付けられている一台のテレビ、そこからは訥々と話すアナウンサーの声が流れてくる。
「奇妙な状況なんですね」
そう言いながら、シディはピザを食べる。
「……美味しくない……むしろ不味いです」
ガンッ!!
「おうおうおうおうおう不味いってのか、この俺の作ったピザがよォ!」
「医食同源と言いますし、刺激も強すぎれば健康の害になります。とはいえ一口は食べましたので、御代は払わせていただきますが…」
ドン!
店主はその太い手と足でテーブルを砕きながら…小学校に通っているかすら怪しい小さな子供……そんなシディめがけて殴りかかる!!
す…
だが、その手は透き通るシディに……透き通る?!
「私の責任ではないので、テーブルの弁償はしません」
テーブルが粉々になり、上に乗っていたピザをあたりにばら撒いた時、背後から聞こえた声……店主は振り返り、恐怖に近い声をあげた。
そこに居たのは間違いなくシディ、しかし間違いなくそこに居るという存在感を感じさせ、髪の毛一筋さえ乱れてはいない。
すっくと立ち上がり、キャッシャーへと向かい歩いて行くシディ……例のくまのぬいぐるみのリュックから取り出した財布は犬の顔をしていた。
ごく普通に支払いをしているシディ……その後ろから、店主の声が聞こえる。
「くそう……せっかくピースランドから移住してきたってのに……この街でもかよ……」
……ピースランド……?
不味い、ピザ……?
!
懲りてなかったのか、このピザ屋の店長は!!
「あのグラサンにやられて……連合軍が撤退した途端入ってきたハリネズミ頭にやられて……なんで俺の店はいつもボロボロになっていくんだぁぁぁぁ!!!」
……随分と間抜けな……魂からの叫びだった。
店の外でシディは考える。
一口しか食べていなかったので、逆にお腹が減っているこの状況をどうするかを。
正直、あまり持ち合わせが無かったのでどうしようか迷っているのだ。
「お土産も欲しいですし……どうしましょうか」
「御礼なら、するよ」
「連合軍のオオサキさんでしたね」
「ああ」
そう言いながら、そこに立っていたのはシュン……シディはやはりいつもと代わらない、月のような笑みを柔らかく浮かべる。
「この間の礼をしていなかったのでね……探したよ」
「構いません……むしろ、私の責任でもあるのですから」
「それは一体…?」
「この戦い、連合軍と統合軍の力を強化する為に仕組まれた戦いなのですから……私も、それに荷担した罪人なのです…」
その言葉にシュンは目を剥いた。
「君が……この戦争を……?」
「はい。ですがこの戦いは戦力増強の呼び水という意味を失っています。ですから、私が責任をとって終わらせます」
「出来るはずがない!!」
言葉を荒げるシュン!!
こんな子供が戦争を画策した?!
誰もがどうにも出来ない戦争を止める?!
だが……何故、信じている自分が居るのだ?
こんな子供を信じるなんて!!
「ただ……そのために、ある人の協力が必要です」
その言葉の続きが聞きたかった。
英雄か、神か、悪魔か。
一体、何者の名を呼ぶのか……知りたかった。
「記憶を失った、自らを悪と呼び、自らを外道と呼ぶ戦士……木星の北辰」
この通路――に見せかけた檻――の中は、危険な物質、チューリップクリスタルでコーティングされていた。
ジャンパー。
優人部隊……そう呼ばれる、木連の虎の子達を示す言葉でもあり、しかし、ごく一部のものしか知らない秘密がある。
A級とB級。
そう呼ばれる区別の存在。
だが、ある条件を満たせば……その違いを限りなく小さくする事が出来た。
「「「変身!!!」」」
男達の言葉に合わせ、輝く鎧が……彼らの体を覆った!!
現れたのは、今までとは全く違う!!
そう九十九は仮面ライダー龍騎に!!
源八郎はナイトに……だが何故だ……元一朗は王蛇になった!
「おお…すげえ……」
そう言いながら自分の体を触るのは九十九。源八郎は技術革新に驚くが、元一朗は、心底後悔した声で呟く。
「なんで俺は悪役なのだ……」
「「お前はそう言う役回りなんだよ」」
その言葉……非常に重かった。
この世界に「正史」は関係ないのだが、これも因果応報というのだろうか……それは誰にも分からない。
三人は同時にカードを抜く。
そして、同時にインサートする……
九十九・龍騎は<ソードベント>を。
源八郎・ナイトは<トリックベント>を。
なのに…何故月臣は最初っから<ユナイトベント>なのだ?!
「月臣……やはり、悪か……?!」
「アイツは昔っから、そういうとこあったからな……」
だが、一体何が起こるというのか?
途端、輝きを増す室内……そう、CCでコーティングされたこの部屋は、無人兵器の輸送と同じ理屈で、それぞれの武器を送る事が可能なのだ!!
「おお、剣が……」
「ロボットで影分身か…?」
「……うわ、獣帝ジェノサイダーだ…」
凄い…凄い技術だ舞歌軍団!!
きっと、ここ最近ラピス達が忙しかったのは、この依頼があったからに違いない。
「ふ、ふも? (な、なにこれ)」
「もふ〜ふ〜も、ふもっふ(気にすること無いわ、所詮烏合の衆よ)」
「もふ!(そうね!)」
「もふ!(殲滅よ!)」
「何言ってるか……分からんわ!!」
剣を構えた九十九龍騎が走り出し、遅れじと「Gビット」のような分身を引き連れて源八郎ナイトが走り出す。
その戦いは激しく、一撃を如何に急所に叩きこむかという殺伐としたものだった。
もし互いに強化服を着ていなければ、十八禁なグロイ映像である事は疑いようがない。
九十九の剣をボン太くんが特殊警棒で叩き落とし、剣を拾おうと屈みこんだ九十九を蹴たぐろうとするイツキのボン太くんの足を、余裕を持ってかわす。……可愛さ優先でこれを買ったイツキのミスではあるが。
がしゃぽん。
エアガン特有の、何故か玩具のようなポンプアクションをしながら零夜ボン太くんのショットシェルは源八郎にあたった瞬間、理屈をすっ飛ばして爆発する。「なっ?!」
驚いたのは、誰だったろうか。
映画ターミネーターの最後のあたりを思わせるような内部構造の偽ナイト。それが「ばらんばらん」である。
だが!!
「ふも(ちょうど良いわ)」
と言いながら、ガシャポンガシャポンガシャポンと、目もくらむ速さで打ちつづける零夜……もう、目の前が見えていないに違いない。
とまあ……「男を立てる」とか「女を守るのが男の使命」とか……ンな物ぁM78星雲の彼方に捨ててきたかのように、一撃必殺の戦い……その横で月臣元一朗は……王蛇は震えていた。
恐怖でではない。
純粋な怒りゆえ。
恐妻家であるが、それ以上に愛妻家な彼のこと、今日この時まで我慢していたが、ついに我慢するのを止める時が来た。
だから……キレた。
蛇の頭を模した杖を取り出し、目的のカードを憎しみの目をして使用した。
<ファイナルベント>
そして月臣は、今の心境を表現するように言い放った……。
「なんぴとたりとも、俺の前に……消えろぉぉぉぉぉ!!!」
まさに、ライダー対ライダーの戦いが始まろうとしていた……て、ボン太くんズはどうする気だ?
「巻き添えっても、ちゃんと供養はしてやる、気にすんなぁ!!!」
……王蛇に、最適の人選をしてしまったと、モニター室の舞歌は苦笑いをしていた。
あきれた様子で微妙な笑みを浮かべながら、アイちゃんはとなりのイネスを見た。
「……ちゃんと予備、あるじゃない」
「科学者の、たしなみよ」
「こんな事もあろうかと……そうも言うよね」
にやり。
にやり。
「無線LANだし……バックアップは取ってるんでしょ?」
「ぬかりないわ」
ニヤリ。
ニヤリ。
「分かってるじゃない」
「そうね、さすが昔の私だわ」
「ええ。それでこそ未来の私よ」
そう言いながら、マッド満点な笑みを浮かべる二人は、なぜか非常に楽しそうだった。
何時、このポッドがあることを二人に教えるか考えながら……笑みを浮かべるのだった。
あとがき
アイちゃんとイネス……やっぱり同一人物!
三つ子の魂百まで、マッドの血は変わらない!
代理人の感想
むむぅ。
なんか話がオリキャラ最強物へ転針しつつあるような。
話を収束させる為にオリキャラを使うのはともかく、
そのキャラが妙に強かったりするのは余り宜しくないような気もするんですが。