機動戦艦ナデシコ<灰>

エピソード00/誰かの見た「始まり」の夢……

 何時頃からその夢を見るようになったのか、わからない。
 けれど、良く見る夢がある…
 けれど、目を覚ました時にあるのは、水の一滴のように、小さな小さな欠片だけ。
 それを…物語にしたことがある。


あるところにお姫様と、王子様がいました。

けれど幸せな日々ではありませんでした。

ある日、魔物が現れ、世界を滅ぼそうとしたのです。

王子様とお姫様は世界や人々を守る為、たくさんの仲間と一緒に旅をしました。

悲しいことや楽しいことが、たくさんありました。

その中でお姫様と王子様は、長い長い旅の中で少しずつ、少しずつ強くなっていったのです。

そして、ついに魔物の正体を知りました。

魔物の正体は、悲しみによって生まれた人だったのです。

悲しみから解き放ちたい、もう一度手を取り合いたい。

そう思って、戦争を止めるために、一生懸命闘いました。

そして、魔物は思いました。もう人を傷つけるのはいやだと。

魔物は魔物である事をやめ、人になったのです。

そして、平和になった世界でお姫様と王子様は結婚し、幸せに暮らしました。


 ここまでを言葉にした時、夢が変わった。
 物語の続き、悲しい夢に。



けれど、幸せは長く続きませんでした。

お姫様と王子様が事故で死んでしまったのです。

残された仲間たちは大きく嘆き、悲しみました。

それでも時が流れることを止めることは出来ません。

時間はいくらでも流れつづけます。

無限の砂の詰まった、大きな大きな砂時計のように。

砂時計の中は、きらきらと煌めく、夢や希望という、綺麗な砂で満たされていました。

でも、ほんの少しだけ、黒い砂も混じっていました。

そう、突然魔王が現れたのです。

真っ黒な夢や、絶望と言う名の希望で、人を魔物に変えて、人を苦しめようとしたのです。

それでも人は希望を捨てません。

お姫様が生きていることを知った仲間たちは、お姫様を助けようと魔王に戦いを挑みました。

そして、突如現れた呪われた黒騎士が、魔王の側近に戦いを挑み始めました。

激しい戦いの中、魔物たちを倒すことが出来、お姫様は助けられました。

しかし呪われた黒騎士は、去っていってしまったのです。

彼の正体は呪われてしまった姿を、仲間たちに見せたくないと言う王子様だったのです。

だから、仲間たちは彼を探すことを決意しました。

もう一度、お姫様と彼を会わせたくて。


 何日も何日も、夢を見ない日が続いた。
 真っ暗な夢。
 寒くて、悲しかった事だけ覚えている。


 気づいた時、新しい夢を見ていた。


天をも駆け巡り、一瞬で離れた場所まで飛ぶ純白の天馬ユーチャリスに乗り、黒騎士は旅を続けました。

人になる事を拒み、戦いつづける魔物たちを討伐する旅を。

でも、もしかしたら、お姫様を助けたことで、呪いはより強力になってしまったのかもしれません。

けれど仲間たちは追ってきます。

ナデシコというもう一頭の純白の天馬に乗って、妖精たちが追ってくるのです。

心はすれ違いました。

黒騎士はユーチャリスの一瞬にして遠くへ飛び立つ力を使い、遠くへ行こうとしたのです。

しかし妖精はそれを無理矢理引きとめようとし、一緒にどこかへ消えてしまいました。


 そして目がさめた時、目の前にあったのは見た事の無い宇宙船。
 けれど分かった。
 目の前で、自分の生まれた街を、友達を、家族を……全てを奪っていく存在。
 それが夢で見たユーチャリス……それだという事に気づいてしまった。

 そして、そして……。


黒騎士は一体、何処に消えてしまったのでしょうか。

ユーチャリスは何故、ここに現れたのでしょうか。

悲劇は……何故起きたのでしょうか。

悲劇を……何故起こすのでしょうか。

悲劇を起こすそれを目の前に、私は何をすれば良いのでしょうか。

私のこの手にある一振りの剣を、どうすれば良いのでしょうか。

切っ先の届かない、この鋭い刃を……。



あとがき

 現れたユーチャリスの影。
 誰かの見た夢。

 黒騎士とユーチャリス。
 それは一体、何を意味するのでしょうか。

 ……ごめんなさい。ギャグを入れる隙間が無かった。
 ……にしても、なんでシリアスに書いて、謝らなくちゃならないんだろう? 謎だ。


 ついでにもう一言。これはエピソード00であって、前に書いたのはプロローグ……似て非なるものです。