機動戦艦ナデシコ<灰>
エピソード10−3/見えてきた"何か"。
薄暗い照明。
昼だと言うのに、ここには退廃的な空気が漂っている。
タバコや酒の匂いに混ざって、なにやら違和感をもたらせる匂いもする……気分の悪くなるような甘い匂い……それを発している男は、銀紙を巻いたタバコの煙を、口の中で味わっているように見える。
照明の届かない暗がりでは、女が嬌声を上げている。
パシィ!!
肩に触れた手を払いのけながら、ねめつけるように言う。
「……俺に…触れるな」
「つれないなぁ、こぉんなトコにまで着いて来ちゃったんだ。期待してんだろぉ?」
男はそれが理解できていない……あるいは薬物で脳が萎縮しているのか……べたべたと触ろうとする。
それが気に食わないのか、女は腕をしならせるようにして殴り飛ばした。
「こっこ、このアマ!」
パチリと抜いた刃物、それをちらつかせながら。
そう、ちらつかせながら男は空中を飛んだ。
顎に骨があるのか分からないほどに顔を歪ませながら。
それに気づいた誰かが見たのは、足を振り上げたままの少女の姿だけだった。
悲鳴が上がった。
街でナンパしたのだろうか、ヤニ下がった顔の男が、赤い髪の少女に手を出そうとして拒否された。
男は目論見が崩れた怒りからか、その場で押し倒そうとして……鈍い音の後、大量の血を吐き出した。
たったこれだけが、ここで起こった全てだった。
それを見たとき、九十九は違和感を感じた。周囲に何かを感じたのではなく、九十九自身の体の中から違和感を感じたのだ。……ここ最近感じる、体の不調。
「どうした? これを見て、怖気づいたわけでも有るまい」
「そんな訳無い」
「いや九十九、ここ最近おかしいぞ……一度医者に行ったらどうだ?」
「だから、なんも無い……それより仕事だ、仕事」
九十九の不調を感じたのか、元一朗が声をかけた。
彼らの目の前には、血の海があった。
もっとも……故意か偶然か死人はいない。それが幸福か不幸か分からないほどの重体であったが。
「源八郎、犯人の目星は?」
「……最悪だ。被害者の言葉と、隠しもしない指紋や髪の毛……それが全部、舞歌様にいただいたデータと一致した」
これほどの単時間でそこまで分析するこの三人……その能力は高いのだが、何故かコメディアンに見える。
九十九は自分の服を摘みながら表情を歪める。
「しかし何とかならなかったのか、この格好」
「飛厘殿の……源八郎、お前の嫁さんの趣味か? 白衣プレイ……とか言って」
「……」
そういう三人は、まるで科学者か医者のコントのような、見事なまでの白衣を着ている。
「そう言えばアオイ君はどうした? まだ行方はわからないのか?」
「……舞歌様の事だ。どうせ発信機くらいつけてあるだろう……だが、彼は『ある女性に会うんだ』と言って出て行った……今しばらくは好きにさせてやろう」
そこで言葉を切り、源八郎は床を調べる。
血の中から、何かを取り上げた。
それは小さな、ごく普通のカードだった。
「名刺だな。字は……血で汚れて見えない……元一朗、この名詞から血の染みを抜けるか?」
「ああ、時間はかかるが…」
暫くして、三人は急ぎ舞歌に連絡を取った。
この惨劇を起こした者が何者か……その手がかりを得て。
名詞には判別できる部分が少なかったが、それでも「トラブルシューター・影護 北斗」…この文字だけは読むことができたのだから。
早く、正確、そして重い。
「くぅぁぁぁ……!!」
一撃を受けるだけで、その衝撃で全身が砕けそうになる。
ゴン、ゴン!
重い、ハンマーを叩きつけるような音を、骨そのものが発している。
「枝織ちゃん、北斗、目を醒ませ!! そんな戦い方をしたら、体が…がぁっ!!」
ガードする腕が内出血で青黒くなり、腫れ上がっている。
だが、アキトにしてみればガードポイントをずらし、僅かでもダメージを分散させている自分よりも……拳から血を流している目の前の「彼女」のほうが気がかりだった。
「…俺の…心をかき乱す……消えろ……壊れろ…」
淡々とそれだけを呟き、腕を、足を目の前にいるアキトを「壊す」為だけに力を振るう。
「これはどうしたもんかねぇ」
そう言いながら、目的の一つがこのまま死にそうだと思って、考え込む。
とはいえ、このままだと「彼女」を見捨てる事になってしまう……見捨てるのだけは自分の主義を捨てる事に、反する事になるから出来ない。
「仕方ない、加勢するとしますか」
ドッ!!
アスファルトで出来た地面が、ひび割れる事無く、シアの足の形のまま数センチも沈んだ。
それほどの突進力を拳に乗せる。
体当たりと突きの威力を合せたその一撃を受け、アキトだけを見ていた「彼女」の体が沈んだ。
「なんて事を!!」
既に上がらないはずの腕を、今度はシアに向けアキトは……だが。
後方に、足首の力だけでシアが飛んだ。
それはほんの数十センチだけだったが、地面に横たわったままの「彼女」の全力が込められた一撃をかわした事を意味する。
「……ホント、どうしたものかな? 加減したら、すぐ立ち上がるし」
「ジャマぁ…スルナァ!」
全く堪えていない……ようには見えない。だが、現に「彼女」は全てを無視して立ち上がった。
「俺が助ける! 君は手を出すな!!」
そう言って、アキトは「彼女」を止めようと、動きを封じようとして……蹴られた。捕縛しようとして取り押さえる為に手を広げた瞬間だったから、ガードも間に合わずに胸を蹴られ、弾き飛ばされた。
肋骨から嫌な音がし、壁際まで転がって苦痛のうめきを漏らす。
好機と見たか「彼女」は追撃に入った。
指を揃え、貫き手の構えを取る。
ガシ!
シアの手が「彼女」の手を取る。だが「彼女」はそれを気にせず、空いたもう一方の手で再び貫き手を取るが、こちらも封じられる。自由を取り戻そうと腕を動かそうとするが、全く出来ない。
腕を動かす事が出来ない事を知ると「彼女」は膝を使い、攻撃してシアを弾こうとする。
ギ…!!
人間の体から出るとは信じられないほどの重い音がした。
膝と膝。
ギリギリと、全身が軋むような音…それを聞いてアキトが立ち上がる。
「君は……引け! 後は俺が!!」
「ふぅ…テンカワさん、ひと一人がそんなになんでもかんでも出来るわけじゃないよ。それはボクが……この目で見たから知っているよ。……この、自分の目でね」
そう言いながら、恐ろしいほどの余裕ぶりで「彼女」を力で押していく。やがて両腕と片足を封じられたまま「彼女」は、地面に伏せられた。
「えーとさぁ、このままだと結構辛いんで、何か縛るもの探してきてくれない? コンビニあたりに荷造り用の紐かなんか売っているだろうから…」
「だけど、このままに…」
「いいから!! ……今、自分がするべき事をするんだ!! じゃなきゃ、後悔以外の道は無いよ!!」
「…わかった。それまで無事でいるんだ!」
カキシ。
硬いものが、硬いものに当たる。そんな時に鳴る音がした。店に行こうとしたアキトの足も止まる。
「?」
「!」
二人は、別々の表情をした。
アキトはその音がなんなのか分からず――ある意味、昔ほどの緊張感を持ち合わせていないアキトは単に疑問符を浮かべるだけ――しかし、シアは思い当たる事があるのか、顔を真っ青にしている。
ゴッ…ドドドドドドドドド!!!
シアの蹴りによって「彼女」の体が地面を転がり、逆にそれを反動にしてシアは遠くへ逃げる。二人の居た場所は、コンクリートが完全に弾け飛び、その下の地面が見えていた。
ゲホゲホと咳き込む「彼女」を前に……それはそこにいた。
無人兵器のバッタに似ている……のだろうか? だがその形状は洗練され、対人兵器としての小型化が進み大きさは中型犬ほどで、武装も目に見えて強化されている。塗装前の鉄特有の、銀色のバッタの背中に取り付けられた砲身から煙がたなびいている。
空気の緊張する最中、アキトがナイフを取り出し、音もなく切りつける……が。
ギィンッ…ギィィィィィィィィィィィッッッッッ!!
ディストーションフィールド……その強度を破れない!!
いや、アキトの携帯している武器は全てウリバタケがネルガルのバックアップを受けて作ったものであり、特に今、手にあるのは"フィールドランサー"の機能を付加したもののはず…だが、中和どころか、干渉さえろくに出来ていない。
「馬鹿な…?!」
ぎゅい。
バッタ特有の"目"がぐるりと視線をアキトの顔に合わせた。
その無機質な目が、一瞬めまぐるしく動いたかと思うと言葉を、それも日本語を発した。
<顔相パターン認識…合致>
<音声パターン認識…合致>
<網膜パターン認識…合致>
<戦闘パターン認識…合致>
<最優先保護対象発見、敵対者排除任務・一時中止・マスターユニット・保護…>
「何を…言っているんだ?」
バスン。
爆発ペレットを内蔵しているのか、装甲が内側から弾けた。現れたのはアキトが実際に見たことのあるバッタと同じ印象を与えたが、少し違った。
衝撃緩衝材なのか、柔軟性のある繊維が現れた。太さは5ミリくらいだろう……それが一気に弾けた。
触手。
それがアキトの体を縦横に巻き取り、動きを封じる。
<…ジャンプ実こ…>
ガンッ!!
衝撃が襲った。
巻き添えを食った電柱がミシミシと音を立て、そのままボキリと折れた。だが緩衝材に包まれたこともあってか、アキトとバッタには傷一つない。
「拘束を解くんだ!! 逃げろ!!」
「…そうか!」
一瞬……いやそれ以上か、呆けていたアキトがその声で我を取り戻し、拘束された体をなんとか動かし、ナイフでブチブチと切る。
ピュルイ…ピュー……ピピ…ピィーー……
何処となく、迷いが有るように見える。
理由はともかく、保護対象であるアキトが逃げ出し、敵対者と協調し、自分を敵視している……判断は不可能と考えたのだろう……段々と下がっていき、やがて見えなくなった。
「アイツは一体……」
「テンカワさん、今はそちらの女性を助ける事が先じゃないんですか?」
「…! 枝織ちゃん…北斗!」
言われて駆け寄るアキト…それもまた随分な状況かもしれない……薄情で。
その光景を見て、シアは立ち去る事を決めた。
「もしさ、世界を滅ぼすような怪物が居るとして、たった一人を生贄にして他のみんなが助かるとしたら……テンカワさん、どうする?」
「その生贄……まさか俺のことか……?」
「そうだよ」
「一体、何が起こっているんだ?! 何で俺が一体…」
「多分、貴方がここに居る事。それがそれだけが罪なんだよね……」
ネゴシエータ。それは交渉人と呼ばれる職種であるが、ある一面において「トラブルシューター」とよく似ている。
当人では解決できない事件を、代理として解決すると言う意味では。
ミスマル・ユリカ…彼女は今、父親に絶縁状を叩きつけた事で、その決意からか今は「ロジャー・ユリカ」などと名乗っていた。着ているのは男物のスーツだが、そのスーツからネクタイから何まで真っ黒だ。しかし逆に、ユリカの女性的なラインを強調してはいないだろうか。
ユリカは、応接間にて依頼人と向き合っていた。
依頼人はごく普通の中年であり、もう一度街で見かけてもそれがこの男であるかわからない……そんな、特徴の全く無い男だった。
「それは私の仕事では有りません」
「いえ。…これは貴方の仕事です」
ユリカの拒否の言葉に、男は動じなかった。
テーブルの上にあるのは一枚の写真。
写っているのは、どこか和風の部屋にいる一人の少女。髪は赤く、若い。
「私はネゴシエータであり、家出人を探すのは探偵の仕事です」
「家出人捜索ではなく、帰るように説得、いえ交渉していただきたいのです」
ふむ、と手を当てる。
確かにそれは「交渉」の範囲だろう。
「それでこのお嬢さんは今、どちらに?」
「現在、地球最高と言われるトラブルシューター、テンカワ・アキトの事務所です」
逡巡。
それほど、この言葉がユリカの心に与えた影響は大きい。
だが、それでも一度はすると決めた事……。
「分かりました。ではお嬢さんの資料を。交渉の時の予備知識としますので……」
「お願いします……ミス・ネゴシエータ」
差し出された一枚のディスク……それを手にするユリカの心境を、他人が知ることは出来ない。それほどまでに心を硬く、表情を硬く覆い隠していたのだから。
ユリカの事務所のあるビル……その前で、男が自分の顔を引き剥がす。ベリベリと嫌な音を立てたその顔の下には、全く別の顔があった。その男を知るものは、彼のことを"北辰"と呼ぶ。
それはさておき。
街の中が珍しくシリアス一色に染まっている頃、ヤマダ・ジロウ一行は命の危機に晒されていた。
ザァァァァァァァァ……
地底の湖に、滝が流れている。滝はちょうど湖の真上、中心付近で、深いところ…滝壷の辺りでは十数メートルに達している。
とりあえず、溺死と墜落死は免れたのだが……失ったものは、大きすぎた。
「……重要な話がある」
いつもギャグ&熱血オンリーのヤマダだったが、今回ばかりはシリアスにならざるを得なかった。
背中のリュックをひっくり返し、中に何も無い事を知らせる。
「……あたしも」
そう言いながら、ヒカルもリュックをひっくり返す。コロンと缶詰が一個落ちた。しかも、防災用の巨大なカンパンの缶詰…。
「……同じく」
こちらはなんと二品、防水用の袋に入っていた毛布と、固形燃料。
三人の頭の中を、なぜか「冒険の書」が消えた瞬間に流れるサウンドが、こだまのように襲った。
「俺達には今、重要な課題がある」
「それは分かっているわ」
「だからこそ、重要なんだ」
三人はついさっきまで全身を水の中に入れていて、上から砂時計の要領で落ちてきた。つまりずぶ濡れで、体を暖める必要があるのだ……何しろここは地下何十メートルの洞窟なのだから気温も、冗談ではすまないくらいに低い。
「体温を保持する為に、濡れた服は脱がなけばならない」
「固形燃料はまだかなりある。乾かす事は可能だ」
「でも、残っている毛布は一枚」
痛いほどの静寂……いや、二人の視線が、ヤマダには本当に痛かった。
「ヘンな事をしたら、殺すからね」
「男に生まれてきた事を、心のそこから後悔するような手段でな」
「……はい」
ヤマダには、縮こまる以外にする事は無かった。
……僅かな時間が過ぎ、容易に想像できるようになった状態に彼らはなっていた。
「……くっつくな」
「……だからって、こっちに来ないで」
「離れたらはみ出ちまうだろ」
三人の近くには火がともされていて、その周囲には服が広げられている。ついでに下着一式も。
イヤイヤながら……には見えないところが妬ましい。二人は顔を真っ赤にしながらも、その理由は怒り以外のものにしか見えないのだ。だがヤマダ、ラブコメ主人公の見本のように、その裏側に隠されている心情に全く気づいていなかった。
「なんか喋れよ」
「万葉ちゃん喋って」
「ガイ、話せ」
自分に帰ってきた言葉……それは非常に考えさせられる言葉を、彼に思い起こさせた。
ある意味哲学的な、言葉であった。
「……なんで俺達、こんな所にいるんだろうな」
「ヤマダ君が無謀な仕事を受けたから、サポートして欲しいってネルガルの人に頼まれたから」
「ガイが無茶しないようにサポートしてほしいと頼まれた」
「ネルガルのプロスペクターって野郎に脅迫されて家族を守る為に来た」
何故か、痛いほどの沈黙が落ちる。
「ヤマダ君の言うプロスペクターってひと、ちょび髭?」
「ああ」
「ガイの言うプロスペクターと言う男、眼鏡の中年でベストを着ていたか?」
「そうだ」
再び落ちる沈黙。
だが、三人の顔は怒りで赤くなっていた。
「これは……死ねないね」
「ああ、まだやる事が残っているからな」
「プロスペクター……俺達が帰るまで、間違っても死ぬんじゃねえぞ……殺すのは俺達だからな」
「クシュン!!」
「…どうしたかね、プロスペクター君」
「いえ、何か嫌な予感がして……」
そのような会話が、どこかの病院で交わされたらしいが、物語に大勢は無く、過ぎ去って行った。
ぴこーん、ぴこーん、ぴこーん……
その音にラピスは跳ね起きる。
ウリバタケから借りていた200年以上前のDVD時代の遺産を見ていたのに、邪魔されていた怒りなどよりも、これからのことに目を輝かせている。
グゥスマイル…いやラピスマイル。
駄洒落のようだが、駄洒落ではない。しかし、今のラピスの笑顔を、これ以上に的確に表現する方法は無い。
にゅっと伸びた手が、携帯をとった。
「メールリスト全部に送信『緊急事態発生、ラピ工房熱血アニメ部門最大のお得意様に命の危機』……と」
怪しげなメールを連続して自動発信しながら、ラピスは部屋着を脱ぎ捨て、カンフー着のようなものを着た。
たたっ!!
そして、部屋の片隅にある一本の棒に張り付くと、するすると降りていく。懐かしいゴーストバスターズを思いだす光景で、ラピスはそのまま地下一階へ。
壁一面に飾られている怪しげなもの。
ウリバタケの字で「持ち出し厳禁」とかかれているものも少なくない……が、赤い紙にラピスの字で「差し押さえ」と書かれている方が多い……。
「ふむ、今日はこれにしよう」
そう言いながら、タイムスリップ物の映画に登場する、タイヤのないスケートボードを手にとった。
マキビ邸。
ハーリーはその頃、ラピスが作っていた『ホレ薬』の成分分析に余念が無かった。
何しろ手にしているのはハーリーである。誰相手に使う気なのかなど、いまさら聞くまでも無い。
「…おかしいなぁ……なんであの材料で、こうなるんだろう?」
小学生の知識……いや、ネットを使うことで誰でもどんな知識でも手に入るこの時代、材料と実験工程を見ていれば、ハーリーにも、完成品のこの薬の構成物質が変な事に気づいた。
「……もしかして、錬金術って本当なの?」
そう言いながら、取りあえず、人体に有害な物質が無い事を確認したハーリーは、どのようにしてこれを使うか、考え始めていた。
「味付けはミルクキャンディーだって言ってたよな……味覚成分もそうみたいだし…」
ならば、食べさせればそれだけで良いだろう。
……どうやって?
「テンカワさんの事務所にはラピスもいるし……ばれるよな。じゃぁ学校で……他の人もいるし。……ウチかな、やっぱり?」
とても短絡的だが、確実な場所設定である。
「じゃあ、どうやって呼ぶかだけど……」
かなり邪道な手段であるが、とにかく、ハーリーはそんな手段を考慮するほど、周りが見えないくらいに本気なのだろう。
そんな時、ポケットの中から振動があった。
プルプルプルプルプル。
「着信……あ、ラピスからだ。えー……あ゛…てことはヤマダさんに何かあったの?」
ヤマダ・ジロウに対する、ハーリーのイメージ。
給料の大半をアニメ関係に注ぎこみ、今では入手困難と言われる数々のレアグッズの収集をラピスに依頼したり、コスプレ用の衣装をウリバタケ兄妹に依頼する男。生まれる場所を、地球と木連で間違えた……とも言い換えられるほどに、無駄に熱い男。
そして……恐ろしいほどに不死身。
ここら辺はハーリーと同じだが。
ハーリーが家を出た頃……ちょうどラピスがやってくるところだった。
……キキキィキィィィィィ!!!
凄まじい音を……何処から出しているのだろうか。ブレーキもタイヤもないはずなのに……?
「ハーリー、校庭の地下格納庫のあれを出すよ!」
「ち、ちょっとラピス正気?!」
冗談か、を問いただしたいところだったが、つい正直に「正気か」と言ってしまった所で……失策に気づいた。
「……『正気か?』、勿論正気……ね、ハーリー♪」
そう言ってラピスは、とても魅力的な笑みをハーリーに向けました。その微笑みは素晴らしすぎて、誰であろうと逃げ出すくらいに素晴らしくて……ハーリーは恥も外聞もなく悲鳴をあげた。
あとがき
そう言えば設定上、白鳥九十九・月臣元一朗・秋山源八郎……彼らは今、軍から特殊な任務を与えられて通常の指揮系統から外れて、舞歌の直属になっているからと言って……なんで、ここまで便利屋になっているのだろう?
パワーアップしたジュン、しかし……何故その力を「ユリカを追い求める」事だけに使うのでしょうか。
枝織・北斗の復活は?!
そして、ユリカに依頼をした北辰、彼の記憶は……!?
代理人の感想
いやあの、ロジャーってファーストネームなんですが。
そりゃ「ユリカ・スミス」じゃいかにも偽名くさいですけど(爆)。
・・・・しかし、もしかしてこの話のラスボスってルリorラピス(核爆)?