機動戦艦ナデシコ <逆行者>
第四話「火星脱出の辺りまでの話」



「「「きゃああああ」」」
「危ない!!」
 悲鳴を上げる女たち!
 アキトは咄嗟に彼女達を抱え込み、何とか落下を防ぐ。
 自販機と自販機の隙間に何とか体を引っ掛け、空いた手でヒカルとイズミをかき抱く。リョーコは仕方なしにカニバサミ風に足で挟む。
 話は変わるが、アキトたちのパイロットスーツは非常に軽量、かつ高性能。更に平たく言えば、体のラインがもろに浮き出るほどに超薄型。……アキトは健全すぎるほど若い青年男性だ。

 結果。

 ヒカルが叫び。
「アキト君、手、胸にあたってる!!!」

 イズミが艶やかに喘ぎ。
あ…うん…テンカワ君、もしかして…テクニシャン?」

 リョーコが顔を赤くして叫ぶ。
「うわああああ、お尻に何か暖かくて硬いものがあたってるううううう」


 ……をいをひ……健全すぎやしないかい?
 そう。第二話からいきなり話はすっ飛んで、いつの間にやら第七話。この辺、色々な事情の問題である。……そこ、ツッコミ禁止!!
 冒頭のシーンは例の火星大気圏突入のシーン。
 滑り落ちそうになるリョーコ、イズミ、ヒカルをその手にアキトが抱きかかえると言うシーンだ。

「……全くユリカめ……重力制御を怠りやがって……(後でみっちりお仕置きだ……)」
 さて、彼の心の声が何を言っていようとも、今は危機である。
 その証拠に。

 ドップラー効果!!!
 ひゅ〜るり〜ひゅるり〜らら〜
 てな具合に落下音を携えて……
「アキト〜親友を〜た〜すけ〜てくれ〜〜〜〜〜〜〜」

「あ、ヤマダ君」
「おい、こら! 何かその辺に捕ま……あ゛」

 べちゃ。

 ひどく、いやな沈黙が降りる。
 そんな中、イズミが口を開いた。

「……思い出すわね……芸人になりたくて大阪に修行に言った日々……毎日毎日お好み焼きを食べて身も心も大阪人になろうとした日々。……というか、もんじゃ……う゛お゛え゛……」

 だらだらだら。
 いや〜、いやな汗が流れること。全く、臭ってきそうです。
「……逆行者、頼む」

 ぽむ。
 逆行者の手が音を鳴らす。金属製のあの手で鳴る訳は無いのだが、そこはそれ、凝り性なのだ。
『そうか』
「……そうか、って何がだ?」
『ヤマダ君だよ。本来なら既に死んでいる人間だ。歴史の修正力、と言うのを聞いた事は無いかい? SFなんかでは良くあることなんだが……まあ、結局のところ、彼は他人よりも遥かに死に易いと言うことだろうね』
 ふと、眼下の光景を見下ろし。
「……納得」
『ちなみに、この<死に易い時期>を越えると、逆に世界が彼を殺させまいと動く。反動だな。そして……不死身の超人ヤマダ・ジロウSUPERの誕生となるわけだ』
 そういうと、地獄の底から声が聞こえてきた。

〜〜俺の名は、ダイゴウジ・ガイだ〜〜

「……幻聴か?」
『……そうだといいな……』
「……やってくれ」
『そだな』

すてっぷ1

 パイロットがエステバリスから降りてくる。
 ちなみに逆行者は「めんどーだしぃー(女子高生風)」の一言で出撃拒否し、今ごろになってアキトはこの時代に戻ってきて始めてエステバリスに乗ると言う事態に陥った。

すてっぷ2

 予定通りにミーティング風にパイロットが自販機に集まる。
 ヒカルは手にペンと「ネタ帳」なるものを手にアキトに話し掛ける。
 今度は「テンカワ・アキト実体験記」を書こうとしているのだ。間違いなく18禁だろう。

すてっぷ3

 暇を潰してナデシコクルーでトレカを作っていた逆行者。
 何故か今は……通路脇でコタツネコばりの突っ張り稽古をしている。

すてっぷ4

 ナデシコ、いつものように傾く
 アキト、今度はさっきと違い、リョーコと体が向き合うように捕まえる。
 ……先ほどより凄い悲鳴が轟き渡る。

すてっぷ5

 ずざざざざざざざ……どーーーーーーん。
 滑り落ちてきたヤマダ・ジロウ、逆行者のつき押しで空高く舞い、宙吊りになっていたウリバタケに激突。
 男同士が抱き合うと言う世にも恐ろしいオブジェと化す。

 今度は比較的冷静な声でイズミがヒカルに声をかける。
「……ヒカル……何スケッチしてるの?」
「今度のコミケ新刊のデッサンに使おうと思って。あ、顔は挿げ替えるから心配しないで
 そういう問題ではない。



 ナデシコ・ブリッジ。
 火星大気圏突入の際、「一時的接触」においてイイ思いをしたアキト。
 彼はこの時点で「コロス・リストNo.1」に踊り出ていた。

 ブリッジでただ静かに語りだす……。
「火星か……何もかも懐かしい……」
 などと、往年の名作アニメの最終回から台詞をパクるアキト。まあ、確かにナデシコも戦艦ではあるが。




 ぽう……
 すっ…はぁ……
 げほごほ。
『何をしている? 吸えもせぬタバコなど吸って』
「いや……こういうシーンは、タバコが似合うのかなーなんて思ってな」
 何処となく、疲れた表情ながら満ち足りたようにも見えるアキト。
『しかしどうする? イネス女史を迎えにユートピアコロニーへ……ナデシコが追ってくれば「前回の二の舞」だぞ?』
「いや、そこら辺はノー・プロブレム」
 そう言って、ナデシコをユートピアコロニーへと移動させた張本人であるユリカの姿を指し示す。

 〜〜注・ACTION HOME PAGEには若年者が多く訪れます。よってお茶を濁した表現をします〜〜
 目隠し、猿轡、露出過多な拘束衣、鎖に首輪……つまりはアキトの部屋の一角『ユリカが18歳未満厳禁な姿で拘束』されているのです。

「本人には『放置プレイ』と言ってある……今のうちに行くぞ」
『……メグミ君が付いて来たらどうするつもりだ?』
 何とはなしに逆行者、悔しげな表情に見える。
 ああ、逆行者よ……太古の昔より言うではないか! 男子、三日会わざれば、と!!
『(いや、こういう成長もありなのかな〜〜と。まあ、面白いから良いけどさ)』
 アキトは不適に笑う。
「それはもちろん……決まっているだろう? ククククク……ハッハッハッハッハァ!! ……ちゃあ〜〜んす」
 赤い人型兵器を操る二番目のパイロットのように笑って見せる辺り、碌な物ではない。


 果たしてユートピアコロニー跡地。
 遠距離走破用のチューニングが成された砲戦フレームにアキトはいた。
「あん……アキト様……ああ……」
 何故か、妙な声を上げるメグミと共に。
 ただ、アキトの用意は非常に良く、メグミはユリカの物に似た皮製のチョーカーをつけていた。……ということは……

 はれるや!!
 ああ、天上に昇りしアキトのご両親よ!!
 あなた方の息子は立派に(しかし微妙に方向性を間違えて)大きく成長されましたぞ!!
 ……いかんいかん。ナレーターがボケては……。


『んー、ちょっと少ないかなー』
 等と言いながら怪しげなカードを並べる逆行者。
 カードには今まで逆行したときのエネルギーと、アキトから流れ込んでくる無尽蔵とも言える負の力を数字で書き表している。
『これとこれは……外せないし……こっちのイベントは……こうすれば良いかな?』
 などと、今後の『攻略本』を鉛筆とメモ帳で作成しているではありませんか。
 もはや『遊○王』のノリである。

『……よし、やっぱりジャンプアウト後の展望室だな』
 そう言いながら赤丸を書き込む。
 ちなみにここは格納庫で、なぜか意気投合した逆行者とウリバタケの作り出した逆行者用の『鈍器』が並べ立てられている。
 ……何があったウリバタケよ。
『とすると問題は……うん、……うん』
 そして最後に、こう言った。
『白鳥九十九君。どうやら君には泣いてもらう事になる……すまない』
 きらりと光る涙。
 どんなメカニズムが存在するかは謎だが。
『けど、君にはまだ他に女の子がいるようだね……ニヤリ』
 とまあ、こんな風に…とてつもなく邪悪だった。



「えっと……確かこの辺……」
 言いつつ、地面の上を跳ねる。……奇行だ。間違いなく奇行だ!!
 しかし。
「ああ……アキト様……そのような御姿も素敵です……」
 この熱と艶の込められた呟きを聞くだに……洗脳は完了したと見るべきだろう。メグミファンの人、スマヌ!
 一通り飛び跳ねた上で、何が足りないのかを考える。
「……体重が足りない……とかかな? メグミちゃん、こっち来て」
「はい、アキト様」
「……(汗)……(もしかして刺激、強すぎたかな?)……ま、いいや。ちょっとしがみついてて」
 そう言いつつ、メグミの体重を加算した状態で飛び跳ねる。
 果たして、地面は崩れ御ち、アキトとメグミは落ちていった……。

 ……しかし、現在の鬼畜王状態のアキトが反省するなど……コクピットの中で一体ナニをしたのであろうか?

 ひゅるるるるる……どむっ!!
 着地して、足に痺れが走るこの状況。

 ジャキ。
 ジャキジャキジャキジャキ!!!

 銃が、一斉に向けられる。
 そんな状態の中、アキトが口にした言葉は。
「にーはお」
「……(汗)な、何者だ?」
 その問いにアキトは非常に明確、かつ分かりやすく答えた。
「火星の人を救助しようとしたら地球連合軍に裏切者扱いされ、撃墜されかかりながらも何とか火星にたどり着いた哀れなネルガル製の戦艦クルーです。……代表者の方はどちらに?」
「わ……私よ」
 答えるイネスの声に、張りがないのは何故なのか。
「ここじゃなんなんで……会議室、ありますか?」
「良いわ……こっちよ」
 あまり警戒心なくアキトを会議室に連れて行くイネス。

 ……およそ二時間という微妙な時間が過ぎた後、疲れたがさっぱりしたというアキトと、頬が艶やかになったイネスが出てきた。とある種類に分類される宿泊施設の区切りもちょうど二時間……まあ、それは言うまい。


 何故か静まり返ったコロニー……イネスとメグミをコクピットの中につめ、アキトはナデシコへ。
 返す刀で今度は輸送船を用いて難民をナデシコに詰め込む。
 人間の大移動を察した無人兵器に襲われるが、地下の人間を押しつぶす危険がないということで平気で戦い、ナデシコはユートピアコロニーを脱出することが出来た。

 ……ナデシコに積み込まれた食料。
 それが難民を乗せたことから減少が激しくなり……人心は荒廃していった。

 特に「若い女性専用蜘蛛の巣」が張られた部屋を中心として。

 野戦服にゴーグル、ガスマスクを装備した一団が、何処をどう見てもアメリカやアフガンなら容易に手に入りそうな、日本ではまず無理な「黒光りするにくいヤツ」を構えてある場所を目指していた。
 一団とは「戦場のロマンチスト」を名乗り、「神よ我々にも愛の手を」と標榜するテロリストであり、生きとし生ける者(男達・一部の女たち)の天敵・人間磁石(美女限定)テンカワ・アキトを駆除しようとする一団である。
 特にその先頭に立つ男など最近自分の名前を「アオイ」から「クロイ」に正式に改名した「ブラックジュン」と呼ばれる青年に違いなかった。
 ブラックジュンは手を「来い来い」と言いたげに振る。おそらく「トラップ解除・前進せよ」という意味であろう。
 ルリに頼み込んで、セイヤが作り上げた完全独立型無線に話し掛ける。
『こちらBJ。生体反応……く、……くっくっく……2! ターゲットはこの部屋にいる模様。容赦は……もはや必要ない』
 据わった目の中に、赤いクモが棲んでいる。
 はっきり言って怖かったが、ブラックジュンには相応しい目かもしれない。
『ラジャ!』
『了解!』
『承知!』
『了承』
 最後のが何か違うが、名も無き整備士三名とウリバタケ<死神>博士の「整備士死天王」が後に続いている。
『こちらウリP。弾頭は跳弾・誤射を考慮し、最新式の粘着弾だ。敵に当たれば一秒で……だ。もちろん人体に無害な中和剤付き。……好きなように撃て』
『了解。ターゲットY・放送室にて確認』
『承知。ターゲットM・艦橋にて確認』
『合点。ターゲットI・医務室に確認』
『BJ了解。……GO!!』
 シャコッ! ピッ! カシュ!
 マスターキーをリーダーに通し、次いで認識音、ドアが開いた。
 ピン!
 制圧用のスタングレネードを投げ入れ、爆発音の向こうに聞こえる悲鳴を無視し、即座に小型ガスボンベを投げ入れる。
「!!?!??」
 悲鳴が聞こえた! 
 その瞬間彼らは鬱憤を晴らすべくありったけの弾丸を撃ち尽くした。

 結果。

 ……取りあえずアキトはいなかったと明記しておこうか。
 ただ、彼らは見てしまったのだ。
 ホウメイガールズNo.5の少女が「お姉さまと呼ぶとある凛々しい表情」の女性を力ずくで「モノ」にしようとする現場だったのだから。
「おいっ、てめーら見てないで……いや、見ないで助けろっ! ていうか助けてぇ!」
「わ、分かったちょっと待ってろっ!! はぁ……眼福、眼福
「てめえらぁああ!!!」
 彼らは、鼻血を出しながら緑髪の女性を助け出した後、記憶を無くすまでその女性に乱舞系の必殺技を喰らったらしい。
 合掌。
「し、…死んで……ない」
「まだ意識があったか! 食らえ、そして記憶を失え!! スバル流高角度ギロチンカカト落しいぃぃぃぃ!!」
 ごおおおおおおおんんん!!
 到底人間が立てる音では無いそれが鳴り響き、彼らは機能停止した。

 追記。
 逆行者の流す可聴領域外の音波は「人間の本心」を暴き立てる。
 これは被・寄生者TAの精神エネルギーを効率よく採取するためであり、またエネルギーの活性化を促す伝説の「歌エネルギー理論」を模した物と思われる。
 どうも
謎な反応を引き出しているようだが。



 さて、ブリッジではなく放送室(本来はリクリエーションルーム)にいたユリカが何をしていたかと言うと、それはもちろん「なぜなにナデシコ」であるが、やっぱり微妙に違った。
「ゆ、ユリカおねーさん…」
「おねーさん、では無いわ。お姉さまよ。夕べの事忘れたの……ルリ?
 ユリカは「お姉さん」ではなく「お姉さま」だった。
 いつもはワンレングスの髪を後頭部で一つに纏め、リング型のピアス、フレームレスの眼鏡、ツーピースの下にはシャツではなくビスチェが見える。さらに……いつもはタイツによって覆われた足が生足だ。
 ……いわゆる女教師ルックに遊び人を加味したような……ややボール気味の変化球だが…!
「は、はい! ユリカお姉さま!」
 最後の「……ルリ」に込められたものに「背筋を這い上がる何かを感じつつ」ルリは返事をした。それが何かを知る事が出来るに彼女はまだ……いや、もう何も言うまい。
「やっぱり時代はお色気なのかしら……」
 その呟きは、鼻血を垂れ流しながら駆け込んできたゴートが泣きながら賛成したためにあえなく流れ、それを知った者達によってゴート殲滅戦隊が結成されたと言う。無論、首謀者はウリ。

 そんなユリカ達を見て……病室のベッドの上、ジュンは血の涙を流しつつ、ウリバタケは何故自分達がここに居るのかを頭を捻りながら考えていた。
 ギロチンカカト落しの「いりょくはばつぐんだ」らしい。

 さて、ここは展望室。そんな「異端」な光景が起きている頃、アキトは頭を痛めていた。
「ゆ、ユリカ……なんて事を……」
 慄き、己の手を、震えるそれを見て全身から汗が流れる。
『アキト、逆行かっ!?』
 何故それほど嬉しそうなのだ、逆行者よ。
『うむ。これはおそらく、君がここ最近スバル嬢にかまけていた事が原因だろう。寂しさからつい自分を頼ってきた少女を手折ってしまったのだろうな……』
 手を滑らせるどころか、直球でアキトの頭にビーンボールをぶつける逆行者。てか既にリョーコに手を出した後だったのか!
 しかしアキトの思いは想像を越えた叫びによって噴出した。
「いいっ!!」
『え?』
「これはこれでいい!! 大人の魅力・ユリカ!! 魅惑のロリータボディ・ルリちゃん!! ああっ、萌えの血が騒ぐっ!!
『……もしも〜し』
「ああっ、深夜の課外授業!! そう、それは禁断の世界!! 青い果実をもぐ悦び!! 少女を愛する女性!! おお、素晴らしきかな人生!!
『……壊れた時は、角を45度で叩くんだっけ?』
 それはテレビの直し方(迷信)では?
「ふっふっふ…ルリちゃん、ユリカはこの俺の全ての技術を教え込んである。あの時代、エリナやイネスさんで試した技の数々を……はぁーーーっはっはっはっはは!!」
『……ま、いいか。そん時の資料映像あるけど見る?』
「無論だっ!!」
 伝説の技「了承(一秒)」に匹敵する肯定の叫びだった。
 そして、その叫びがこだまとなって消える頃ふと口を開いた。
「なんか最近……自分が自分じゃないよ―な……」
『ぎく』
「ヲイ……?」
 今時わざわざ「ぎく」などと返してくれるヤツが居るのかと、ある種感動しながら誰何の声を上げるが……。
『いや、冗談だって、冗談。アキトがそんな事を考えたって答えなんか出ないだろう? イネス女史にでも聞いてくれば良い』
「確かにそうなんだが……」
 そう言いつつもアキトは、色々と思うところがあった。詳細は不明だが、この生活に慣れてしまい(もう既に本人に異常だという意識はない)……回復力と生産力が人間の範囲から外れかけているらしい。(何の?!)
 まあ、そんな事は二の次で、ユリカやメグミ、特にルリと相対しているときに意識が過去、いやそれとも未来か? 何れにしろ「黒の王子」に立ち返るときがあり「正気になってから後悔するような行為」にまで及ぶことがあるらしい。
 そしてそれ以上に、女性陣がそれを好んでいる節があることに奇妙な感慨もあるらしいが。
「俺の本質は……今だあの時のままなのか?」
『ああ。残念ながら……な。君が『黒の王子』であることに変わりはない。だからこそ、それを乗り越えるためには、もう一度立ち向かうしかないのだよ』
「立ち向かう、か」
『そうだ。悩め、苦しめ。そして導き出した答えが合っているなんて事は無い。それでも悩み、苦しみ、考えろ』
 重く、のしかかる言葉だ。
『贖罪のためには、何が出来るかを。しかし、それは全て君の自己満足でしかない。他の誰にもそれを知る事は出来ない……だからこそ考えろ』
「悩め、苦しめ、考えろ。……か」
 そう言いつつ、展望室の床、草の中に体を沈める。
 遠くから、ユリカの哄笑と、何かが振り払われる音に紛れてルリの(微妙な)悲鳴が聞こえてくるような気がするが……取りあえずそれを無視してアキトは考え事に没頭した。
 無視する辺り、完璧にアキトはもうTV版の規範から外れてしまったようだが……。

『ふむ、アキトは……気づいているのか? この音波に……』
 そう言いつつ、何処に入っていくのか分からないジュースを、裂け目のような口に入れる。
 さらには……おもむろにタバコを取りだし、吸い始める。
 ぎ、逆行者……本当に一体何者様……?!
『まあ良い。アキト、君は罪と考えているようだが、彼女達はそんな君に惹かれてもいる。…さあ、曝け出せ。本能の中に棲む獣の姿を!!!』
 ……そう言えば、逆行者の玉座は……木星戦艦の一斉射撃を受けても傷一つ無かった。
 どうやら攻撃の方が避けていったらしい。



「はて。そう言えばこの後……まあ、良いか。他にもあまっている人間いるだろうし」
 そう言ってアキトは本気で寝た。
 ここ数ヶ月の間、色々と「教育的指導」を受けそうな事を延々としていただけに、睡眠不足らしい。……え?
『……アキト』
「ん? 何だよ良い気持ちで寝てたって言うのに……何かあったのか?」
『……ブリッジが大変な事になっている』
 ……ブリッジ?
 映し出される光景。
「……おい?」
『ボクジャナイ!! ボクジャナイヨ!』
「何でカタカナになる?」
『キノセイサアキト! ソレヨリモマエ、ミルネ!!』

 そこに居たのは、いつものブリッジクルー……目の色を別にすればの話だが。有体に言えば瞳の色が恐怖に染まっているのだ。
 ぬらり。
 凄烈な銀の光条では無い。
 濡れているわけでもない。
 曇っているのだ、血煙で。
 ……ヤマダの持つ……ジャパニーズブレードが。
「テメエとの決着、今ここでつけてやるぜ」
 天空ケンの装束に身を包んだヤマダは……眼前の男をまさに「必殺と書いて必ず殺す」という目で見ていた。

 ぎらり。
 赤い光が空間を特異な物に見せている。
 緑と黒のまだらに彩られた巨大な姿。
 ギギの腕輪が……鈍い光を放っている……トカゲを思わせる異形の戦士。
「邪教の輩よ。今ここに、古代インカの秘法の粋を見せてやろう」
 腕から伸びるヒレの様な物が僅かに緊張する。

「……怪獣大決戦か?」
『いや〜、どうもクロッカスが何でここにあるのか、って話からこうなっちゃって。……使う?』
 そう言って逆行者が送ってきたイメージは…「悪」と書かれた白装束と、巨大な剣だった。
『君なら声もばっちり!!』
「意味が分からんわっ!!」


 そのころ。
「……良いんじゃ良いんじゃ……儂なんて儂なんて……」
 と、愚痴りながら忘れ去られたフクベ提督が視界から消えていくところだった。
 ……成仏せいよ。
「I'll be back!! I shall return!!!」
 そういう言葉を使って、復活できた者は居ないのでは……?

あとがき

 諸事情により、書いている時間が無かったため、今ごろになってしまいました。すみません……。というか、リンさんのリクエストのジャンプアウト後の展望室まで行きませんでした……次回持ち越しかな……ハァ。
 ラストのところ、小文字のrとnが重なってmのように見えてしまうのは……問題かな?

 内容が薄いのはカンベン。
 もしかしたら……書き直すかも。

 

 

代理人の感想

薄いと言うべきか、濃いと言うべきか。それが問題だ。

 

・・・・・・・いや、そもそもネタ自体が濃いんでありますが(爆)。