まるで霧に閉ざされているかのように薄く靄の掛かった室内。
響くのはジャラジャラと何かをかき混ぜる音と複数の声。
「リーチ」
カラン、と卓に棒が投げられる。
それを苦虫を噛み潰した様な表情で見るアカツキ。
「おいおい、北斗君。まだ初めて数分しか過ぎてないのにもうリーチかい?」
「ふん、牌が良かったんだよ」
ニヤリ、としか形容できない笑みを浮かべながら北斗が答える。
「まさかお前が麻雀を知ってるとは思わなかったぞ」
左手に煙草を銜えながらアキトが言う。
部屋の靄は彼が吸う煙草がもたらしたものだ。
この部屋に入って一時間も過ぎて無いというのに大きめの灰皿は吸い殻が溢れている。
誰が言い出したのか、となるとアカツキだが、彼が唐突に、麻雀をやろうか?と卓と牌を持ってきたのだ。
それに乗ったのが意外にも北斗だったのだ。
そして暇そうなナオをアキトが呼び出し、今に至る。
「確かになあ。どうしても俺は麻雀をやる”真紅の羅刹”というのは信じられないぞ」
「俺自身がやりたいと思ってやったわけじゃない。親父の奴が教え込んだんだ」
「北辰が?」
意外な名前を聞き、アキトが訝しげな表情をする。
それに頷き返しながら、
「ああ。親父は草壁と舞歌、それに南雲って奴がいるんだがな、そいつらと卓を囲むんだよ」
くっくっく、となぜか笑いながら答える北斗。
「それで傑作なのが打つといつも舞歌の一人勝ちでな、それ以外の連中、身ぐるみを剥がされてるんだよ」
思わずその光景を思い浮かべてしまうアキト。
その脳裏には震えながら身体を抱え込むように腕を組む、下着姿の北辰。
ちなみに下着は当然のことながら褌だ。
「ぎゃはははははははは!!」
思わず大きく笑い声を上げてしまうアキト。
想像の中ではあるが”あの”北辰が寒さに震え鼻水を垂らし、褌姿で家の戸を叩くなどギャップが激しすぎるからだ。
「北斗!それ最高!!」
北斗の背をバンバン叩きながら笑うアキト。
ナオもアカツキも腹を押さえ笑っている。
「前なんか家宝の刀まで賭けたくせに負けてな、部下連中がとばっちりを喰らってたぞ」
そこでふと、考え込む北斗。
「もしかして、親父達が舞歌を遠ざける理由って麻雀で負けてるからか?」
その後は北斗を除いた三人の笑い声がただただ響いたのだった。
「あーちくしょう。もう一生分笑った気分だ」
新たに煙草に火を着けながら言うアキト。
今だ顔は笑っている。
「ま、取り敢えず続きをやろうぜ」
ナオが同じく笑いながらヒョイと牌を切る。
それをきっかけに笑いながらも再び麻雀へと気を向ける。
「ちっ」
舌打ちをし、牌を切る北斗。
役満だというのに、牌が来ないからだ。
ちなみに役は国士無双。
なんとも北斗らしいと言うべきか……。
その切られた牌を見て、アキトがにやりと笑った。
「それ、ロン」
「……」
その言葉に無言となる北斗。
そして、
「ちょっと待てっ!アキト!!」
「待たねえよ。ほれ、平和のみ」
「てめえ!俺が国士狙っていたこと知ってたな!?」
「あーん?なんの事だ?いいからとっとと点棒寄こせよ」
邪悪な笑みを浮かべながら言うアキト。
手をひらひらと動かしていると、
「テンカワ君」
「ん?なんだアカツキ?」
アカツキがどこか神妙な顔をしながら口を開いた。
「ただ点の取り合いではつまらない、そう思わないかい?」
「……ほう」
その発言に面白そうに目を細めるアキト。
アキトの反応に気を良くしたのか、アカツキは神妙そうな顔を止め、にやりと悪童の様な笑みを浮かべ、
「ここはやはり脱衣麻雀と行くべきだと思うんだけどね」
「のった」
即断するアキト。
「おいおい、けどそれだと……」
ちらり、と北斗を見るナオ。
「――が、負けた場合は良いけどよ、こっちが負けた場合……」
その光景を想像し、うぇ、と吐きそうな表情をする。
確かにそれはそれは無惨な光景が見られることだろう。
「負けた場合ねえ……」
アキトがナオとアカツキにちらりと目を向ける。
その視線を受け、小さく――北斗に気づかれないように――頷く二人。
「で、お前はどうなんだ北斗?辞めておくか?一応、お嬢さん、だしな」
にやりとわざとらしく言うアキト。
こう言えば北斗が辞めないという事に気づいているからだ。
そしてその目論見は、
「上等だ、アキト。精々全裸にならんように頑張るんだな」
不敵な表情が返事であった。
●
色欲が掛かった場合、男は強くなるらしい。
なにせ、日頃はそれほど戦友という点を除いては接点が有るわけではないアカツキがナオとアキトの二人に向ける合図は素晴らしいものだった。
北斗が上がりそうだと見抜けば、それ以外の人間に上がらせる。
そして北斗以外の人間が当たり牌を出せば、それをわざと見逃す。
よくもまあそこまで連携が取れるモノだと感心したくなるほどだ。
そうして一番負けてるのは北斗――ではなくアキト。
他人の機微を読むのが苦手というのがここまで影響しているのか、残すは下着一枚となっている。
ちなみに一番脱いでいない、つまり一番勝っているのはアカツキである。
伊達で大企業の会長では無いという事か。
そして三人に狙われている北斗は下着とサラシという姿である。
その二枚(?)を剥ぎ取るのにやっきになっている三人だが、
「くっそ……なかなか良い牌が来ねえな」
苛ただしげに煙草を銜えるアキト。
気分を落ち着かせるために一吸いし、紫煙を吐く。
そしてアカツキとナオに視線を向け、
(そっちは?)
(ダメだね)
(後二枚なんだがなあ)
と言葉で語る並のアイコンタクトをする。
その言葉(?)に心中で舌打ちをし、
「おら北斗。早く牌切れよ。お前が親だろ」
アキトの言葉に北斗は無言を返す。
そして、ああ、親子なんだなあ、と思わせる様な笑みを浮かべ、
「上がってるぞ」
と言った。
「……」
「……」
「……」
「「「嘘っ!?天和かよっ!?」」」
悲鳴にも近い、絶叫が響いた。
その絶叫に満足げな笑みを零し、牌を倒す北斗。
「「「それも九連宝燈!?」」」
恐るべし、”真紅の羅刹”の強運。
いや、凶運と言うべきか。
「嘘だっ!!幾ら何でも出来すぎだろっ!?」
「やかましいっ!いいから早く脱げよアキト!」
邪悪な笑みを浮かべながら催促をする北斗。
「ちょっと待てっ!これは幾ら何でも……」
と助けを求め、他の二人を見ると、
「テンカワ君、仮に北斗君がイカサマをしていたとしても見破れなかった時点で……」
「ちくしょう。……アキト、脱ぐならそっちで脱げよ。見苦しいモンを見せるなよ」
と冷たい反応が返ってきた。
「味方は居ないようだな。どうした?早く脱げよ?」
性別を考えれば逆の台詞の様な気がしないでもないが、にやにやと笑いながら北斗は言う。
「くっ!……いいだろう、俺も男だ。約束は守るっ!!」
立ち上がり、勢いよくトランクスを脱ぎさる。
その脱ぎっぷりは清々しさを感じる程であった。
そして、
「なにをしてるんですかっ!?」
唐突に開かれたドア、差し込む光。
ルリの……姿。
その目は、ぶらぶらと揺れる、アキトの――に向けられ、
「イヤァアアアアアアアア!!!???」
と絶叫が艦内中に響き渡り、
「アキトさんの変態!痴漢!短小!包茎!!」
そんな事を叫びつつ走っていく。
そして、
「ちょっと待てやコラァアアアア!!」
北辰に向けるより、凶悪な顔をしたアキトと他三名が残されたのだった。
●
「全く、なにをしてるんですか!」
服を着替え、ブリッジに集められた四人。
ルリの怒声が響くが、四人とも馬耳東風と聞き流している。
アキトに至っては、煙草を吸っているくらいだ。
それにすら気づいていないのか、ルリの怒声はなおも繰り広げられる。
「ネルガルの会長と、”漆黒の戦神”と”真紅の羅刹”もう一人は……まあ、いいとして」
「それはないだろルリちゃん」
ナオの声は黙殺されて、
「その”三人”がよりにもよって脱衣麻雀って……」
「初なネンネじゃあるまいし……」
ぼそりと呟くアキト。
「初なネンネですっ!」
アキトに返した言葉、自分自身が言った言葉の意味に気づき、顔を真っ赤にするルリ。
その隙を見逃さず、
「はい、撤収ね」
とアカツキがわざとらしい笑顔で言い、四人は一斉に走り出し、ブリッジを出て行った。
「アキトさんっ!!」
響くルリの声を無視して。
「それじゃあ俺は飯でも食ってくるか」
通路を歩きながら北斗が言った。
ちなみに北斗の食事はアキト持ちである。
北斗に言わせれば、護衛代との事だ。
”真紅の羅刹”の護衛費用が食事代だけというのを高いと見るか安いと見るかはそれぞれだ。
「そうか。……あんまり喰うなよ」
どうやらアキトにとっては高いようだ。
その言葉に返事を返すことなくナデシコが誇る食堂に向かう北斗。
返事が返されなかったことに漠然と不安を覚えつつ、アキト達は先ほどの部屋、つまり麻雀を行っていた部屋へと向かった。
無論、片づけるためだ。
「つーか、天和で九連宝燈なんてありえんのかよ?」
灰皿から溢れるほどにある吸い殻をゴミ箱に捨てつつアキトは言った。
目の前には北斗の出したダブル役満が並んでいる。
「いやあ、僕としては北斗君ならあり得るかなと思っちゃったけどね」
「言えてる。”真紅の羅刹”だとそれもありかと思ったぞ」
アキトの言葉にそれぞれ苦笑を浮かべながら床を掃き、牌をケースに収めている二人。
「……ナオさん、牌は全部あるか?」
「ん?ああ、全部揃ってるぞ」
静かに発せられたアキトの声。
「そうか……じゃあ、この床の下に転がっている牌はなんなんだ?」
無言で卓の下を覗く二人。
そこにはアキトの言うとおりに牌が転がっている。
そして、無言でケースに収めた牌を手に取るアキト。
「……」
無言でそれを調べ、
「あのおんなぁ……」
と鬼のような形相をし、部屋を飛び出ていった。
それを呆然と見送り、我に返る二人。
「……ナデシコの修理、わざと遅らせる必要、無くなったかな?」
「そうだな」
と現実逃避をすることに決めたのであった。
ずるずると麺を啜る音が食堂に響いている。
北斗だ。
箸を片手に、豪快に麺を啜っている。
テーブルの上に積み上げられた丼の数は3。
アキト達と別れてからそれほど時間が過ぎているわけで無いというのに、それだけの数を腹に収めている。
今食べている四つ目も汁を啜り、ドン、とテーブルに置き、
「火星丼追加だ」
と厨房に向けて言う。
あいよ、と威勢の良いホウメイの声が返ってくる――前に、
「その前に鉛玉を喰らう、っていうのはどうだ?」
アキトが銃口を向けながら北斗の傍に立っていた。
「北斗テメエ……おもいっきりサマしてやがったな」
怖い笑みを浮かべながらアキトは言う。
その台詞と笑みにこれは不味いといった表情をする北斗。
「ア、アキトさん?」
引きつった表情でアキトに声を掛ける、サユリ。
「サユリちゃん、気にしないでくれ。これは、そう、正義の行いだ」
くっくっく、と邪悪な笑いを零しつつ言うアキト。
そんな笑い声を聞かされて気にしないと言う訳にもいかないのだが。
「アキト」
「なんだ、遺言か?安心しろ、北辰には伝えてやるぞ」
「あの長髪が言ってただろう、イカサマはその時に見破らなければダメだとな」
「ほう、そうかそうか……死ね」
無表情で引き金に掛けられている指を絞るアキト。
その刹那、
「シッ!!」
鋭く息を吐き、銃を蹴る北斗。
続けざまアキトに拳を繰り出す。
それも昂気を纏ってだ。
人には出しえぬ速度の拳を、これまた昂気を纏い避けるアキト。
床に一度足を付き、厨房まで跳躍する。
「……しまった」
「テンカワ、あんたなにやってるんだいっ!?」
と呟いたのは、蹴り上げられた銃が北斗の手に収まってからだ。
すぐ近くでホウメイの怒声が聞こえるが、今はそれに構っているときではない。
「これで、形勢逆転だな」
にやり、と笑う北斗。
そうして今度は北斗がアキトに銃を向ける。
「まだだ!まだ俺には股間の大砲が……」
「そうか」
アキトの言葉に一言呟き、銃弾を放つ。
赤い燐光を撒きつつ突き進む弾丸を、
「おわあっ!?」
と本気で焦りつつ避けるアキト。
「テテテ、テメエ北斗!本気で狙いやがったな!?一生モンだって言うのに使いモンにならなくなったらどうする気だ!」
「お前が股間に大砲があるっていうから狙っただけだろうが!」
「ジョークじゃねえか!」
身を隠しつつ叫ぶアキト。
食堂内に居た男性クルーが先ほどの光景に股間を押さえる、その姿は本当に滑稽だ。
「知るか!それに(昂気やDFSがあるんだから)使い道なんてねえだろうが!」
戦闘術等に関しては全知とも呼べそうな北斗であるが、そちら方面に関しては無知である。
だから、アキトの言う大砲とは、大口径の銃だと思っている為に、その台詞がどれほど言ってはならないことなのか気づくよしもなかった。
「言ったな!?言いやがったな!?つまりテメエは大砲の手入れは一生右手でヤレって言うんだな!」
なぜか涙目になりつつ言うアキト。
一部男性クルーに至っては本気で泣いている。
ちなみに女性クルーは顔を真っ赤にしているか、にやにやと笑っているかのどちらかだ。
「はあ?なにを言って……」
「上等だ!絶対お前に使ってやる!!使えなかった時は手入れする時、右手に北斗って名前付けてやるかんな!!」
未だ自分の台詞がもたらしたモノに気づけない北斗。
そんな北斗の言葉を途中で遮るアキト。
「ウォラァアアアア!!」
と叫び昂気を放つ。
丁度それは目眩ましとなり、北斗の視界を奪う。
「北斗憶えとけよっ!絶対お前に熱くてベタつくモンを浴びせて、俺の背中を引っ掻かせてやるかんな!!」
食堂の出口、そして外へと走りつつアキトが言う。
そのアキトの背を見送る北斗。
どこか間の抜けた表情で、
「アイツ、なんであんなに怒ったんだ?」
と誰かに訊くのであった。
●
「ちっくしょー。あの女、男にとってエゲツナイ事言いやがって……」
苛ただしげに煙草を銜え、火を着けるアキト。
立ち止まり静かに紫煙を吐く。
『やあ、テンカワ君。食堂では派手にやったそうだね』
いつもの如く軽薄な笑顔を浮かべたアカツキの顔が中空に現れた。
その顔を睨み付け、
「なんの用だ?」
と訊くアキト。
『”ダカールの日”に向けたプランの進行状況をね』
面白そうに言うアカツキ。
その言葉に同じくアキトも面白そうに、
「そうか。これから向かう」
笑みを返し、早足となった。
誰の趣味なのか、如法暗夜の如く一寸先も見えない闇。
その闇の中で唯一の光源足りうるのは、それぞれの顔を下より照らすライト。
その中でアキトは一番奥、つまり上座に座り手を組んでいる。
「で、状況は?」
この暗さだというのに、バイザーを着けているアキト。
が、そんなことなど誰も気にしていない。
この巫山戯た演出はともかく、これからの会話はなによりも重大なことだからだ。
「じゃ、僕から。……明日香インダストリィの方は君の名前を出したら一発でカグヤ・オニキリマルと会談できたよ」
アカツキが少々恨めしげな目をしながら言った。
その視線を流しつつ、
「明日香の方はどう動くかまでは決まっているのか?」
「いや、さすがにクリムゾンが相手でさしたる利益も出ないこととなると腰が重いね」
「……」
「だけど、カグヤ・オニキリマルが重役連中を強力に押してるから……時間の問題と言えば問題さ」
「そうか、明日香は取り敢えず構わないということか?」
「そうだね。で、問題が……」
「ネルガルの方の重役ですな」
アカツキの台詞を先取りし、プロスが口を開いた。
「正確には障害となる、重役ですが」
「というと……あの狸共か?」
「はい。その狸共です」
狸、とは以前アキトに殴り飛ばされた馬鹿息子を持つ親達の事である。
「テンカワさんと会長が保有する株で首にすることは簡単ですが……」
「けど今この時期に何人もの重役を首にするとクリムゾンにつけ込まれるのよ」
プロスのフォローをするようにエリナが言った。
「はい。その為、後任の選抜、誰もが納得する理由――これに関しては情報漏洩、先代の時の人体実験等がありますが――などが必要でして」
「それ以外にも、一般社員の方の内通者も探さないとダメね」
「頭が痛くなってくるな」
「全くです」
一気に雰囲気的にも場が暗くなる。
それを払うかのように、
「アーキート」
とユリカが口を開いた。
未だ痛々しい、その姿。
だが声は全くもっていつも通りだ。
「お父様と話してみたらね、アキトのプランに賛成だって!」
「そうか……」
ふと、和やかな表情になるアキト。
「だけどこの事は直前まで秘密にしておくように、だって」
「そりゃあなあ、軍部は中将クラスの人間でも知らない事だ。知っている連中にしてはよっぽど隠しておきたいことなんだろ」
例え、殺してでも、とは心中のみで呟く。
「それで、ルリちゃんの方はどうなんだ?」
「それが……」
アキトの顔を見ずに口を開くルリ。
まだ、ぶらぶら揺れていたアキトの――を忘れられないのだろう。
「ピースランドの方は娘であっても顧客の情報は一片たりとも漏らすことができないって……」
思い出すのは秘匿回線で話したときのイセリア女王の厳しい表情。
なぜ、国王でないかは……あの国の支配者が女王だからだろう。
「ま、そうだと思ったさ」
「ただ……アキトさん、ひいてはナデシコとネルガルへの融資は最大限考慮するとの事です」
「考慮、ねえ。相変わらず食えない女王だこと」
アキトの脳裏にはなぜか扇で口元を隠し、ホホホ、と笑う女王の姿が浮かぶ。
「それじゃあ、ルリちゃんはアカツキ達の支援をしてくれ」
「はい」
これで少なくとも電子ネットワーク上は完全に監視できると言っても過言ではない。
「サラちゃんとアリサちゃん――つまりグラシス中将の方は変わらず最大限の支援をするだとさ」
今現在、サラとアリサはナデシコ艦内にはいない。
”里帰り”をしているところだ。
そしてナデシコ、正確にはアキトとの連絡役をしているのがナオだ。
なにせ西欧には”彼女”がいるから、アキトに泣いて懇願したのだ。
もちろん泣いて懇願しなくとも、アキトは連絡役にする気だったのだが……。
ナオの泣いて懇願する姿が楽しいと言うことで、なかなか首を縦に振らなかったという。
「ふ、ん。あの二人には嫌われたと思っていたがね」
「あれは嫌っていると言うより、どう接すればいいか分からないと言った感じだぞ」
「どちらでもいいさ。……協力をしてくれるのならな」
組まれた手で隠された口元。
その下に浮かぶ冷徹な笑み。
それに気づいた者がいるかどうか。
だが仮に見た者がいたとすれば、先ほど食堂で馬鹿騒ぎをしていた人物と同一人物なのかと思っただろう。
それほどまでに冷徹で、純粋な遂行者の笑みであった。
「後は……」
「俺だな」
シュンが口を開いた。
「そうか。……それで、ガトル大将の方は?」
「あまり芳しくない、といった所だな」
「……伝え聞く話とは違うみたいだな」
「いや、違ってはいない。ただ……」
「ただ?」
「立場上、慎重にならざるを得ないということだ」
それは尤もな話だ。
確かに、娘の愛した人物の言葉であってもそれを簡単に聞くようでは反対に信用がおけない。
「それに……バールの奴がいる」
毒を吐き出すかのように吐き出された名。
初めて見たシュンの姿にアキトが訝しげな目を向ける。
「あの典型的な小悪党は失脚した筈だが?」
「少将という立場で、小悪党という性質で、やっかいな人脈を作っているからな」
「なるほどね。……ラピス」
「なに?」
小首を傾げ、アキトの言葉に耳を傾ける。
「ネットワーク上でバールの行動を探ってくれ。見つけたら、俺に教えてくれ」
「うん」
その言葉に複雑な表情をするシュン。
「……決着は自分の手で、と?」
シュンの表情からその心中を察したのか、アキトが訊いた。
「いや。……ああ、そうかもしれないな」
否定し、だが肯定する。
確かにピースランドで、いや昔に振り切った怨讐の念。
だが、それでも、
「そう、だろうな」
「なんだったら、シュンさんに”教え”ますけど」
二人の言葉を意味を真に理解できるのはアカツキとナオとプロスぐらいか。
「……いや、こうであるべき、なんだろうな」
ふ、と寂寥じみた陰が顔を覆った。
「そうですか」
「……終ったら……」
ぽつり、と呟く。
「”全て”が終ったら花でも持っていくことにする。……それで”終わり”だ」
最愛の妻と息子へと。
終わりを知らせるために。
「……」
「そうだアキト。ガトル大将にはお前の事を話してある。あの人自身、お前と一度会ってみたいと言ってたからな……」
「ガトル大将に、ねえ……」
「ああ、なんだかんだ言っても、お前が中心人物であることは確かだしな。……正直、俺とカズシだけでは説得が難しい」
「つまり……直接会って俺が説得?」
「だな」
シュンの言葉に、おいおいマジかよ、といった表情をしたのはナオとアカツキ。
その表情に気づかないフリをしつつ、次回までにスイッチを押すか、紐を引けば床に穴が開く仕掛けを作っておこうかと考えるアキトであった。
後書き
漢の料理!!
今まで私は朝は抜き、昼は外食、夜は外食かコンビニというエンゲル係数が馬鹿高い食生活を送っていた……。
だがしかしっ!!
遂に私は炊飯器を購入したのだ!
これさえあれば満漢全席を作ることも可能だ(*不可能です)
さあ!レッツチャレンジッ!!
……。
…………。
………………。
洗米してないご飯ってこんなに不味いのね……(涙)
だって……面倒だったんだもん。
代理人の感想
歯を食いしばれッ!
研がずに米を炊こうなんて
そんな大人修正してやるッ!
ま、自業自得ですなー。
研ぎもしないでお米を食べようなんて思っちゃあいけません。
江戸の昔ならいざ知らず、今の米ぬかは化学物質だらけです。
それに米を研いでると研ぎ汁でお肌がすべすべになるんだぞー(笑)。
※「ぬか」には本当にそう言う効果があります。
ちなみに代理人の平均的な食生活は以下のとおり。
朝・昨日の残りの御飯でお茶付けor適当なおかずで一膳飯。
昼・更に残りの御飯で弁当を持参。面倒臭い時は塩むすびとお茶のみ。ちなみに一週間のうち四日は面倒臭がる。
夜・御飯を炊いて適当なおかずを用意する。平均二膳。
・・・・・・みんなビンボが悪いんや。
>ニヤニヤ笑う女性クルー
・・・・・・・ホウメイさん以外に誰か笑いそうな人いるかなぁ。(爆)
イネスさんもエリナもそゆとこあれだし。
もっとも、笑わせた時点でそのキャラのファンからクレームが来そうですが(笑)。(だからか?)
追伸
この後書き、実は当初吉野家コピペでなにかやろうとしていたのはここだけの秘密。
いや、時間がなくって(笑)。