ガン、と壁に強く叩きつけられる拳。
「くそ!!」
アキトが苛立ちが声と共にもう一度壁に拳を打ちつける。
「アキトさん」
「あと少し…あと少しだったんだ!!」
顔に緑光を浮かべながら叫ぶアキト。
それを見ながらシンジはもう一度呼びかける。
「アキトさん。嘆いてる暇は無いです」
「分かっている!!」
シンジに八つ当たりした事に自己嫌悪を感じながらもアキトは謝る事が出来ない。それに更に自己嫌悪を覚えながら・・・。
「残るは…アマテラス。ですが…」
そこで言いづらそうに言葉を切るシンジ。
が意を決して続ける。
「ルリちゃんが動きます」
「っつ!!」
シンジの言葉に顔を歪ませるアキト。
「巻き込みたくなかった…」
アキトが悔しそうに歯を噛み締める。
シンジはそれをただ哀しそうに見ていたのだった。
●
星の煌く虚空。
その黒を切り裂くように進む白い戦艦。
そして戦艦の最高位者の席に座るルリは静かに刺繍を読んでいる。
その後ろで騒いでいるというよりはサブロウタにからかわれているハーリー。
その声を聞きながらルリはかつていた自分の古巣を思い出し微笑を浮かべる。
が、古巣を、初代ナデシコを思い出すと同時に思い出したのは彼らの事。
テンカワアキト、碇シンジ、ミスマルユリカ、イネスフレサンジュ。
騒がしかった中に常にいた彼・彼女ら。
二人は飛行機事故。もう二人は実験中の事故。
事故がなんであれ死んでしまったとルリは思った。
暗い思考に沈んだルリの気持ちを遮る様にはいるウィンドウ。
ジャンプコロニーからの通信だ。
気持ちを切り替え職務を遂行していくルリ。
様々な報告を聞きながら気を引き締めていくルリ。
ナデシコは既に説明しがたい色の世界へと進んでいる。
ルリの身体に光線の紋が走る中彼女は一言。
「ジャンプ」
その言葉と共に跳ぶナデシコB。
そしてチューリップの門を抜け再び虚空へと戻るナデシコB。
アマテラスよりのガイドが案内する中サブロウタが呟くように一言。
「これからが大変だ」
「サブロウタさん!!」
それを聞きながらルリは確かにその通りだと思っていた。
だが…事態は彼女の思いを超え『大変』となる。
彼女は再会することになるのだから。
かつての姿を失った彼らに……。
●
「何だ貴様らは!!」
怒声が部屋を揺らす。
頭をそり上げたのかはたまた時の結果か?まるで蛸のような男の声だ。
「連合宇宙軍所属、ホシノルリです。そしてこちらが…」
「同じく連合宇宙軍所属、タカスギサブロウタ」
怒声もなんのそので所属を紹介するルリ達。
それがまた蛸男をいやアズマ准将を刺激するようだ。
「そんなことを聞いているのではない!!何故貴様らがそこにいる!!」
アズマ准将の言葉を聞いてルリは心の内でバカと呟きながらとりあえず正論をもって反論しておく。
ルリの言葉を聞きまさしく蛸といえるような顔色になりながら更に言葉をたたみかけようとする。
が、それを遮る傍らにいる男。
その男の視線を身に受け鳥肌が立つルリ。
その男の視線を受け思い出したのはかつてナデシコに乗る前にいた研究所。
そこにいた研究員達のこと。
モルモットを見るような目…ではなくモルモットを見る目と同じ。
それと同じ目。
ルリが襲い来る悪寒に耐えていると何時の間にか話が終わっている。
どうやら思っていたより長い間ルリは悪寒に耐えていたようだ。
「では、そういうことで」
「はい」
唐突に話を振られたため思わず返事をするルリ。
「いやぁ、ありがたい。まさか電子の妖精がガイドになってくれるなんて本当にありがたいことこの上ないです」
「はぁ」
「いえいえもちろん一緒に臨検を行っていただいてよろしいですよ。臨検とガイドさんを一緒に、これぞまさに一石二鳥という奴ですな」
その話を聞き大体のことを把握したルリ。
ルリはそれならばと少しばかり画策をしようと考える。
(精々がんばりますか)
●
ナデシコに戻ったハーリー。そしてアマテラスに残ったルリ。
それぞれが各々の役目を果たさんと動く。
子供達に囲まれながら軽く微笑み受け答えをしているルリ。
そしてハーリーは……。
「そろそろいきますか」
ハーリーの眼前を高速で流れていく数字の羅列。
それを見ながら舌なめずりをせんばかりにテンションを上げているハーリー。
「速度は椀子の中級。できた椀から順次僕に…」
データーを受け取ろうというか盗もうとするハーリーの展開しているウィンドウボールを突き抜け顔を出すサブロウタ。
「よっ」
「うわわわわわわ!!」
その突然の強襲に大いに慌てるハーリー。
つまるところ結局ハーリーはからかわれるのだった。
その後のデーターと事態に反目するかのように……。
●
赤色灯が赤くドック内を染め上げる。
ここはネルガルが保有する秘匿ドックの一つ。
収められているのはユーチャリス。
アキトとシンジの乗る戦舟。
ユーチャリスのハンガーにいるアキトとシンジ。
「アマテラス。ヒサゴプランの中枢。最後に残ったのはここでしたか」
「ああ。ここに遺跡が、いやユリカがいる」
「アマテラスのデーターは入手しました」
「十三番ゲート」
映し出されたウィンドウを見ながら話し合うアキトとシンジ。
「はい。そこから遺跡の置かれている場所へいけます」
ここで初めてシンジがアキトの方に顔を向ける。
「遺跡が置かれているアマテラス。確実にきますね奴ら…」
「だろうな」
「……以前と同じく僕がそれとラピスが守備隊を引き付けます。アキトさんは先行して連中の目を眩ませて下さい」
「ああ」
シンジとは反対にアキトはウィンドウより目を離さない。
いや、遺跡の置かれているマップ部分よりだ。
「……アキトさん。得られるものは二つに一つです。奴かユリカさんのどちらか」
「っつ!」
痛いところを指摘されたのかアキトの顔に浮かぶ緑光。
「甘くないです!奴は…北辰は!ましてや六連まで出てきます!そんな中、奴の首とユリカさん…二つも得られるほど甘くないです……」
語尾が弱弱しくなっていくシンジ。
「…行きましょう。彼女が…彼女達が待っています」
弱い声のままコートを脱ぎすて身体にフィットした戦闘服姿になるシンジ。
アキトもまた声を発することなくつまり返事することなくマントを脱ぎ捨て戦闘服姿となる。
そして彼らは各々の機体に乗り込んだ。
復讐の花言葉を持つ黒百合…ブラックサレナ。
大罪人の在る地の名を持つ氷牢…ジュデッカ。
へと彼らは乗り込んだ。
「ジャンプ」
そして光芒を放ち掻き消えるサレナ。
その残光を見ながらシンジは静かに言葉を紡いだ。
「アキトさん。得られるのは一つだけです。様々なものを得ようとしても手に入らないんですよ、だから選んでください……僕のように後悔することが無いように…」
悲痛な表情で言うシンジ。
その胸に飛来するのは何なのだろうか?
●
アマテラスの中は混乱の坩堝となっていた。
突如コンピューターの異常動作。
暴れるように動くウィンドウ。そしてそれに表示されるOTIKAの文字。
その混乱に拍車をかけるようにアズマのところに送られてきた報告。
「ボース粒子増大反応!!ボソンジャンプです!!」
映し出されたのは禍々しい鳥。
ブラックサレナへと取り付けられた高機動用のパーツ。
ボソンの光片が舞う中それは現われた。
●
今だウィンドウが飛び交うアマテラスを走るルリ。
ルリのような少女が必死で走っているの見かねたのとルリ自身に頼まれたのを切っ掛けに子供達を案内していたガイドの女性が見物用のカートを使い通路を爆走していた。
「すいませんこんな事頼んでしまって」
「いいのいいの。それに燃えるっしょ!こういうのって!」
もしシンジがいればどこぞの誰かに似ているといいそうだが生憎本人は不在の為言うものはいない。
(アレは暗号?アレは偶然?)
ルリの心いっぱいに広がるOTIKAの文字。それは……。
(でもあの人は…あの人たちは……)
脳裏に浮かぶ人物が微笑む。
ルリちゃん…と暖かな言葉を響かせながら…。
●
少女の脳裏に浮かぶ人物が笑ったとき、同時に笑った人物がいた。
が、それは嘲笑。暖かくなく冷たい笑い。
そして彼は虚空を貫く。
打ち出される雨のようなミサイル。それを避けることなくただ直進するアキト=サレナ。
そのすさまじい速度の為にサレナに当たることなく後方で爆発を起こしている。
続々と集結する機動兵器と戦艦を前に臆することなくアキトはアマテラスへと向う。
打ち出される雨霰の弾を時には避け時にはフィールドで受けながらアキトは進む。
そして下されたのは良策、愚策どちらかは解らないが苛烈な決断。
が、それが実行される間に現われたのはアキト達の過去の縁者。
エメラルドグリーンの髪を藍色に戻したスバルリョウコ。
彼女はハイテンションに叫ぶと。ステルスマントをはずしその機体を見せる。
それに続くライオンズシックルの面々。
唐突に現われた存在に緊急回避をするサレナ。
が、リョウコはそれを見逃しはしなかった。
すかさずサレナの後を追っていくライオンズシックル。
途中でアキト同様、破損機を轢くように通り過ぎていくのだがパイロット達に残されたのは邪魔だの一言。
僅かに哀れに思ってしまいそうだ。
先ほどとは反対にアマテラスより猛速で離れていくアキト。
それを追うライオンズシックルと他の部隊。
そして遠く離れた地にいる彼は呟いた。
「ジャンプ…」
●
「ふぁははははは!!見たかねシンジョウ君!これが統合軍の力だ!
宇宙軍め大戦中はでかいつらをしていたがこれからは違う!
陸海空の三軍を持った統合軍はまさに最強!統合軍ばんざーい!地球連合ばんざーい!」
「ボース粒子増大反応!!質量推定…戦艦クラス!!」
アキトよりおおよそ九十度異なる場所へ現われた白の戦舟。
放たれるグラビティーブラスト。重力の牙が幾多の命の噛み砕く。
「部隊側面にグラビティブラスト!被害多数!!」
「な!なんだとぉ!!」
白の戦舟、ユーチャリス。その先端に立つはシンジの愛機、蒼氷の色を持った殲滅者…ジュデッカ。
「ラピス、行くよ!」
ユーチャリスを駆る少女に裂帛の声を掛けジュデッカは蒼光となって虚空を突き抜けた。
そして広がる爆光。
ユーチャリスも負けじとグラビティブラストを放ち遺物と言われている兵器を吐き出す。
爆発が幾つも起こり散っていく命。
その爆発とは無縁なリョウコ。何機となく遺物を本当に遺物にしている。
「逃すかよ!!」
戦闘宙域を離れ再びアマテラスへと向うサレナを確認しライフルを数度撃つがフィールドに阻まれ効果が無いと分かった為、追走するリョウコ。
彼女の部下達がそれに続く。
サレナがアマテラスへと近づくと今までの非ではない銃弾が襲い掛かってきた。
が、それを無視し目的のゲートへと向うアキト。
その後ろでリョウコがその銃弾相手に踊っている。
《ラピス。ゲートを…》
ゲートへと向う最中にラピスへ言葉を送るアキト。
それに呼応して開いていくゲート。
もめているリョウコとアズマを横目にアキトは悠々と侵入していく。
結局リョウコとアズマはルリに突っ込まれるまでもめているのであった。
●
瓦礫が散乱している十三番ゲート内部。
そのためかゆっくりと進むアキト。
がその内心ははやる気持ちを抑えられない。
(ユリカ…)
浮かんできたユリカの姿を思い出しながら歯をきつく噛み締めるアキト。
表示されるマップに従い彼は静かに進んでいく。
(ようやく…ようやく見つけた。ユリカ!!)
終着へと辿り着いたアキト。
極冠遺跡を真似ているのか赤と青ではあるが描かれた大極。
そして近づきテールバインダーを動かしたその時。
「よーし。そこまで」
上部を突き破り現われるリョウコ。
腕より打ち出されたワイヤーが通信を繋ぐ。
ウィンドウに現われるルリ。
その表情は聞きたいが聞けないといった感情が強く出ている。
「突然ですいません。でも貴方が通信を強制的に遮断しているためリョーコさんに頼んだんです」
その物言いに違和感をおぼえるリョウコ。
確かにルリの言葉は知っている人物に話し掛けているように聞こえる。
「一つだけ聞いていいですか。貴方は誰なんですか?」
アキトの心でエコーしたのかはたまたルリが繰り返したのか言葉は繰り返された。
が返事を返すことなくアキトは沈む声で言った。
「ラピス。パスワード解析」
その言葉と共にテールバインダーの先端より出てくるマニュピレーター。それは柔軟に動きゲートのコンソールをオープンしパスワードを打ち込む。
SNOW WHITE
静かに離れるテールバインダー。
大きく振動を起こしながら開いていくゲート。
アマテラス…ならばこれはさしずめ天の岩戸だろう。
その奥にいるものも含めて…。
「時間が無い。見るのは勝手だ」
そう言い捨て進むアキト。
リョウコは見たものの衝撃の大きさに危険を顧みず高速で突き進む。
「形が変わっていてもあの遺跡です。ボソンジャンプのブラックボックス。あの時ネルガルや私達が取り合いをしたあの遺跡……ヒサゴプランの正体はこれだったんですね」
「そうだ」
見た目はなんら変わる事の無いルリ…そしてアキト。
その心中は一体?
「なぁルリ…これじゃああいつらが浮かばれねぇよ。なんでだよ何でこいつがここにあるんだよ…」
「それは人類の未来の為!!」
「草壁…中将!?」
「リョウコちゃん!右!!」
アキトの言葉に咄嗟に機体を動かすリョウコ。
機体に走る衝撃。
一撃、二撃、三撃!!
衝撃が走りきりもみをしながらも夢中で回避行動を取るリョウコ。
それを狙う錫杖!
ボディの部分部分を貫かれながらもコクピットやエンジン部分の直撃は避けるリョウコ。
そしてアキトが動いた。
●
今だアマテラスの外でユーチャリスと共に戦闘を続けているシンジ。
今までどれほどの数を落としたのだろうか?あたりに浮かぶ数々の残骸。
そして今もまた一機落としたときシンジはあることに気づいた。
(連中の動きが妙だ…)
また一機と落とす。
(指揮系統が混乱…いや連中が発起したのか)
その考えに至ったときシンジは笑みを浮かべた。
「ならば奴らが来るな。アキトさん、貴方が北辰とユリカさんどちらを選ぶのか分かりませんが六連の相手は僕がいたしましょう」
そしてシンジもまたゲートへと向う。
「殺されないでくださいね!アキトさん!!僕には貴方が必要なんです!!」
一流の兵であってもGで潰されてしまうのではないかというGの中でシンジは笑みを浮かべながら更に速度を上げゲートを抜けていくのであった。
●
丸型の機動兵器が縦横無尽に動きアキトの攻撃を避けていく。
そしてサレナに接近し攻撃を加える。
ずっとその攻防の繰り返しだ。
「ちっ!」
機体に走る衝撃に舌打ちをしながらアキトは獰猛に動く。
一機であれば勝てる。二機であれば少々苦戦はするが勝てる。が、三機以上であればかなり苦戦する。
それほど六連の連携は素晴らしいものだった。
ましてやアキトは一機。なおかつ後ろには動けないリョウコ。
それゆえにアキトが一機であろうとも普段以上に苦戦することになっている。
時折浮かぶ一つの考え。自らの心に住み着く怨讐の囁き。
怨讐は囁く。見捨ててしまえと…。見捨ててしまえば勝機はある。だから見捨ててしまえと。
(出来るわけ無いだろう!!俺には……!!)
そう考えているうちに思いもよらずリョウコより離れている。
アキトは己の心を確認する為と六連に利用されないように攻撃を捌きつつリョウコの前へ降りた。
「お前は関係ない。とっとと逃げろ!」
「やれればそうしてるよ!」
アキトのいやサレナのパイロットに反論するリョウコ。
これを機に襲い掛かってくるかと思いきや六連は遺跡を照らす照明のもとへと集う。
シャリーン
その音が響いたときリョウコはぞっと悪寒が走った。
(なんだ!?このプレッシャー!?)
そして響く歌。
「一夜にて 天津国まで伸びゆくは 瓢の如き宇宙の螺旋」
青い光が乱舞する。
ボソンジャンプ。その光。
そして浮かぶはアキトの緑光。
憎悪、憤怒、様々な感情が強く浮かぶ。
そして次々と現われる六連。
北辰の元に彼らは集う。
がアキトにもまた集う者がいる。
轟音を立てながら隔壁を突き破り現われるシンジ。
漆黒と蒼氷の機体が並ぶ。
「復讐人とその剣。そろって女の前で死ぬか」
「女?」
その言葉と共に光を放ち花弁が開くかの如く広がる遺跡。
そして開ききり中心に座す者は……。
「アキトォ!!」
リョウコが叫ぶ。
「お前アキトなんだろ!!だからリョウコちゃんって!」
「滅!」
北辰が降ろす錫杖と共に襲い掛かる六連。
リョウコは何時の間にか現われたサブロウタに連れられていっている。
通信機より聞こえる声に耳を貸す余裕も無くアキトとシンジは北辰たちとぶつかり合った。
●
六連がアキトに向う。錫杖をその手に持ち滅ぼさんと。
それをシンジが阻む。
通信を全波周にし叫ぶ。
「貴様らの相手は僕だ!!北辰の剣達!!」
ぶつかり合うジュデッカと六連。
鋭い音が響く。
「邪魔なんだよ!貴様らは!!」
シンジの叫びと共に打ち出される弾丸。
それを避け全ての六連はシンジへと向った。
そして相対するのはアキトと北辰。
北辰は嘲りをアキトは憎悪を。
それぞれの感情を出しながら衝突した!
アキトが撃ち出したレールガン。それを避けることなく一直線でアキトへと向う北辰。
ほんの僅かな間に詰まった距離で北辰は錫杖を振るう。
アキトが横へ跳ぶ!
アキトの居た位置を鋭い風切音が過ぎる。
今一度はなれ撃ちまくるアキト。
流石にこれは受けられないか紙一重で全て避ける北辰。
「テンカワアキト。貴様は良い剣を持っているな」
ぶつかり合うジュデッカと六連を見て北辰は言った。
すかさず今度は距離をつめ北辰の駆る夜天光へと一撃を見舞うアキト。
その一撃を受け止め北辰はなおも言葉を続ける。
「あれほど良い剣を持っているというのに貴様は変わらず未熟よな。どうした?動きに切れが無いぞ」
「黙れ北辰!」
力比べを止め再び遠距離で撃ちあうアキト。
北辰もまたそれを避け時には受けながらもアキトと鋭くぶつかり合う。
「くかかかか。そんなに女が気になるか。だから貴様は未熟なのだよ!」
北辰は気づいていた。時折アキトが妙な動きをする事に。それも決まってアキトの背後に遺跡がある時だということに。
「女を気にしながら我に挑もうとは愚かなり!」
それはちょうどアキトの後ろに遺跡が来たときに振るわれた一撃。
それも背後にあるのは遺跡だけではなく中心に在るユリカがある時。
アキトの脳裏にシンジの言葉が浮かんでくる。
奴の首とユリカさん…二つも得られるほど甘くないです……
「俺は…俺は!!」
「未熟者が」
アキトは…選べなかった。
北辰もユリカも。
その結果が頭を潰されたサレナ。
同時にシンジが六連に際どいところでコクピットをはずしているがボディを破壊されている。
残った腕が北辰の方を向いている。
「やりおるな…大した剣よ」
通信機より響いた北辰の声がアキトの耳に届く。
そこでアキトは理解した。
自分を助ける為にシンジが何かしたと。
その結果シンジのジュデッカは大破。アキトのサレナは頭を潰されるだけですんだ。
「アキトさん。ここは退きます。もう僕たちは戦えない」
「シンジ……」
シンジの言葉にアキトは自分が惨めに感じた。
が、ずっと感じている暇も無いのが現実。
「シンジ」
「はい」
「「ジャンプ」」
二人の声が重なりその姿が消えると同時に破壊されるブラックサレナとジュデッカ。
「逃げおったか……クハハハハ…フハハハハハハハハァ!!」
機体の内部に血なり何なり存在してない事を見た北辰は哄笑を上げる
「行くぞ。遺跡を回収してな」
その言葉に黙々と従いその後に姿が掻き消える北辰たち。
残されたのはナデシコの残骸のみ。
空気すら存在しない場所で虚ろに照明を照り返しながら炎の中へと消えていく。
アマテラスでの戦いは終わった。
何も得れないままで。
残骸を虚空に漂わせて。
こうしてアマテラスでの戦いは終わったのであった……。
代理人の感想
報われないなぁ(苦笑)。
まあ、原作通りなんですが。
わりと悟ってる(吹っ切れてる)シンジに比べてアキトの弱々しい事よ。
まあ、これも原作通り。
ちなみに、皐月さんから頂いたバージョンではフォントの色がもっと濃かったんですが、
(ちなみにこれくらい→原色バージョン「一夜にて 天津国まで伸びゆくは 瓢の如き宇宙の螺旋」)
さすがに濃すぎたので少々薄めさせていただきました。ご了承下さい。